
実家っぽい春巻きを作りたくなってスーパーへ走った。うちのは具沢山でケチャップをつけて食べる春巻き。あの春巻きが食べたい。せっせと具を炒めて春巻きを巻いていく。皮が余って数本だけベトナム風春巻きと自家製スィートチリソースを作った。何の連絡もなく急に夕方過ぎに帰宅した夫。
「春巻き作ったんだけど食べる?」「うん。」ベッドに横たわって春巻きを食べ始めた。「こっちの方が美味しい。」ベトナム風の方を気に入ったらしい。食卓を囲んだわけではないけど、久しぶりの夫との食事。私もベッドの脇に座り春巻きを食べた。
まるで昨日までの日々が嘘みたいに夫は前の夫だった。それだけでもう十分な気がした。過去は過去で今は今だ。色々を掘り返したところで何かが良くなるわけじゃない。お互いに何が悪いのかぐらいわかってる。私が夫を責めたって夫の気持ちも私の気持ちも、もう元に戻れないのだから。夫に出来る精一杯の何かは私への甘えで、それを見つけた私に出来ることは隣で春巻きを頬張ることだと信じてる。じんわりと全身が満たされていった。