
外は嘘みたいに激しい雨が地面を強くたたきつけてる。今朝も4時からずっと勉強。時計を見ると16時。何時間やってるんだろう。周ちゃんとは昨晩にブチ切れてから一度も顔を合わせてない。おはようだって言ってない。
最近の寂しい病。レポートも一段落して少しだけ心の余裕が出てきたのかもしれない。とは言っても、次の試験は3週間後。7月にはその10倍くらい恐ろしいテストが待ってる。だけど、そろそろ仕事を思いきりしたい。いやしなきゃだめだ。勉強したいけど、勉強ばっかりやってちゃだめだ。写真を撮りたい。
” 新茶が出たらカナちゃんと大場さんに連絡。” 昨日、5月の手帳の脇に書いてある頁を見て、あっ、そうだったと急いで連絡をいれた。 カナちゃんのことは、冬に大変なことがあってから、何か私に出来ることはないかなと考えようやく見つけた答えが “新茶を送ろう。” だった。もっといい何かを思いつけないものかとも思ったけれど、きっとこれくらいの方が気を使わせないでいいのかもしれない。カナちゃんからメールの返答が入った。
“今、子供が寝てて、すごくタイミングがいいよ。” お茶を来週に送るねと伝えると、”来週の楽しみができた!” とのこと。なんだか、なんだろう。胸がぎゅぅっとちぎれてしまいそうだった。だけど、カナちゃんが少し元気になってる様子が嬉しくて、ほっとした。カナちゃんは明るい子だから、大丈夫。きっと絶対に大丈夫。
それから、大場さんからも朝一番で返信が入っていた。成田さんがタイに行くよと記してあって、無性に会いたくなって成田さんにLINEした。そして、ミオちゃんから “後藤さんと3人でパリいこう!絶対超絶たのしいから “とメールが入った。そんなの言われなくたってわかるよ。パリの夜、たぶんミオちゃんが借りたステイ先のどこかで3人でワインを何本も空けるだろう。殆どはきっと後藤さんがたいらげてる。潔い飲みっぷりと一緒にきもちよく泥酔していく後藤さん。”後藤さんって本当に無邪気だよね。”って、それぞれが心のなかで思うはず。
大人なのに無邪気で素直。「だから悪い男に騙されるんだよ。」と以前はよく言ってたミオちゃんも、最近は言わなくなった。そうゆうところがミオチャンらしいとゆうか、本人はドライを装おっているけど、実は愛情深い。だからとゆうか、二人といる時間は落ち着く。それに、パリは大好きなまゆみちゃんがいる街。ずっとずっと会いたかったまゆみちゃん。HUGOにも会える。
さっきカナちゃんからまゆみちゃんの誕生日が昨日だってことを聞いたんだったと思い出して、急いでyoutubeでbirthday songと検索をして、まゆみちゃんにメローな感じの映像をアイラブユーっていうメッセージと一緒に送った。すぐに返答がきて、勉強が苦しいことを聞いて貰ったり、勉強の苦しみと楽しみを互いに共感しあった。いつもは手紙でしか話さないことを、消えていくようなスピードでメッセージを打ち続けた。
“言い訳してる自分を見つけた時に、ぎょっとするんだよ。言い訳なんて幾らでも出来るでしょ。”
“わかる。私もね2年前に思ったことがある。それからすごく勉強したよ。フランスの学校で先生にこんなに真面目に勉強している子いないって言われて。だけど、沢山勉強して本当によかったって思う。”
まゆみちゃんの返答に、なんだか、すごくほっとした。ひとりぼっちだと思っていたけど、ひとりぼっちじゃないのかもしれないって。もしかしたら、性格が少し似てるのかな。負けず嫌いっていうのとは違うんだけど、やるならやりたい。あと、自分に嘘をつきたくない。体力も勇気も大してないのだけど、ただそれだけ。
そうだ、ざおーにLINEしよう。ずっと気になっていたことがあったことを思い出してメッセージを送った。”しゅうちゃん大丈夫?” ざおーは周ちゃんの事を心配してくれてるみたいだった。出会った時から、会う度に同じように同じ事をいつも思う。この人の心根は本物だって。それに触れる度にはっとして、生まれ変わったらこうゆう人間になりたいと毎度思う。今日も思ったってことは、私には難しいのだろう、きっと。
それから、ざおーにも少し愚痴を聞いて貰ったり、互いに色々を話したりして、なんだかやっぱり落ち着いた。それに、柿ピーのマスタード味が美味しいのと、ドンキーで売ってる生姜味の煎餅が美味しいっていうのも教えてくれた。近いうちにオンライン飲みしようねと約束した。
結局、たぶん、勉強の手を止めてから1時間くらいLINEしてたのかもしれない。寂しい病がスーッとどこかに消えていったみたい。連日の睡眠不足も、周ちゃんとの喧嘩も、季節外れの台風も、すべてが嘘みたいで、本当はぜんぶ辛かった。それに、もう寂しいっていう気持ちも終わりにしたかった。
18時を過ぎると1Fでバタバタと音がし始めた。周ちゃんがキッチンに何かを作ってる。お腹空いたな。キッチンへ向かった。「なに作ってるの?」中華鍋を振る周ちゃんの手が止まる。えって顔の周ちゃん。そのままぎゅっと抱きしめてきた。あ、ごめん。って思った。私の我慢の限界がきたのは仕方ないことだけど、その限界を受け止めるのは辛かったよね。どんなことがあるにせよ、怒りなんてぶちまけるもんじゃない。周ちゃんはきっと今日1日、最悪最低な時間を過ごしていたのだろう。私って奴はやっぱりワガママで幼稚な女。
周ちゃんが作った八宝菜風野菜炒め。おいしかった。