「 “ばーか”って大声で叫んだらさ、目の前にいる人がびっくりしてたんだよ。」姉が言った。
春くらいから始めたairbnb。結構順調らしい。客室のために雇った掃除屋が仕事が雑だとクレームが入ったので解雇すると、最近仲良くしてるグアム人がやりたいというのでお願いすると音信不通になり「やめる。」とのメールが入ったのだそう。「彼女、すごくやる気だったから、掃除機とか掃除道具も買い揃えたんだよ。掃除屋にお願いしたら買わないで済んだのに。」そのグアム人とやらは、最近L.Aに引っ越してきたらしく、学校の仕事で出会って仲良くなった。だけど、生活に困っていたみたいで、まだ友達もいないみたいだったしと、気にかけていたのだとか。誰かれ構わず困ってる人を見つけると捨て猫を拾ってくるみたいに放って置けない姉は姉らしくて私はその性格が好きだけど、本人曰く、そんな自分が嫌になるのだそう。
「だけどさ、怒っても仕方ないし。彼女にはOKとしか言ってない。けど、余りにも腹立たしくなって、道路で叫んだらさ、超気持ちよかった。見知らぬ人に。けどさ、おかしくなっちゃって、なんか笑っちゃったよ。」2人で電話越しに大笑いした。
「あっちゃん。叫ぶのはいいけど、人以外にして。海とか木とか草とか。」「海は好きだからいや。」「じゃあ、木と草でいいよ。お願いだよ。」
姉とは最近ちょくちょく電話してる。今日も周ちゃんが朝いなかったから。私と同じ時間に起きた周ちゃん。「早く起きたんだし、もう行っちゃたら?」少し急かしてみると「そうだね!」と嬉しそうに出かけて行った。時間は5時前で少し暗かった。私はそのままいつも通り勉強。それから、1時間後くらいに梃子の散歩をしながら姉と電話した。周ちゃんには言わないけど、家が私だけのものになる時間が好きだ。時々勘違いされるけれど、夫に飽きていたり、夫を無下に扱ってるわけじゃない。周ちゃんのことは大好きだし、今でも付き合いたての恋人とまでは行かなくても、恋人じゃんって思うくらいに愛し合っている。私の人生の中で愛した人は沢山いるけれど、周ちゃんが誰よりも一番好きだ。
だけど、こうして周ちゃんがいない部屋は、がらんとしていて静かで音楽が色みたいに聞こえてくる。窓からの光がいつもよりも光って見えるし、窓辺に飾った花の傾きがいい感じだとか、梃子のちょっと仕草だってカメラを構えたくなる。どういうわけか、ひとりになると世界が美しく見える。正確にいうならきっと、誰かいると色々な感覚はシャットダウンされてしまうのかも知れない。
それに姉との電話も周ちゃんがいる時はあまりしない。だから、今日はちょっと特別。8時過ぎには電話を切って勉強を始めた。それに、姉はこれから寿司を食べるのだそう。