ピザトースト

朝食 28.8,2023

昨日、夢で石井ちゃんに会った。「よしみちゃん。久しぶり!」「石井ちゃん!久しぶりだね。何やってたの?」って聞くと、「私ね、赤ちゃん産んでたんだよ。」って。

石井ちゃんとは3年ぶりだった。最後に会ったのは埼玉のどこかの街の葬儀場。石井ちゃんは、いつ会っても笑っていたのに、あの日はずっと目を閉じていた。私の横でやっちゃんが涙をすすり、後ろにゆうやくんが静かに立っていた。あと、当時はまだ友達じゃなかった藤原さんがいた。あの日は終わってからみんなで話したけど、電車でやっちゃんが隣に座っていてくれて良かったと思う。やっちゃんが隣にいて、向かいにゆうや君と藤原さんが座ってる。みんなで同じ場所にいるんだと肌に触れる温もりを感じるだけで、日常になれた気がした。

久しぶりに会った石井ちゃんは少し派手になっていた。だけど、相変わらず華奢で、その身体には不釣り合いなぐらいに大きい赤ちゃんが胸に当たり前のように抱かれていて、そして、やっぱりいつもの笑顔だった。赤ちゃんの名前を聞くと、確かアトムとかロマンみたいな感じの名前で、どうやって書くのかなと想像したりした。

そして、もうひとり誰か友達がいたけど、誰だったかは覚えてない。皆んなは先に歩いていき、赤くて大きな神社に入り、私は追いかけている最中に岩の隙間に携帯を落として、綺麗に真っ二つに割れた。私の携帯は何故か赤色。一瞬、げって思ったけれど、まぁいっかと思った。綺麗で面白かったからそう思った気がする。それから本屋の中村さんが出てきて、いつものようによくお喋りをしていた。そして、なんだかとにかく楽しくてはしゃいだ。みんながその場所がとにかく全てがハッピーだった。

目を覚ましたのは周ちゃんの声。「よしみ?さっき「携帯壊れました!」って大声で言ってたよ。」周ちゃんが隣で笑ってる。2人で大笑いした。時間は夜の12時半過ぎだった。石井ちゃん、元気だったな。夜中なのに無性にみんなに連絡したくなった。「石井ちゃんに会ったよ!」って。

それから、吉本ばななさんの “はーばーらいと” を読んだ。夜中に本を読むなんて珍しい。普段なら絶対にしない。それに、明後日はレポート提出日で忙しい。けど、どうしてだか無性に読みたかったし、そうしたかった。熱も少し下がっていたからか、夢中になって読んで、辛くなって、嬉しくなって、本は途中で閉じた。怖かったから時計を見ずに寝た。

吉本ばななさんは、哀しい話が上手だ。作家さんに上手だなんて失礼な話なのだけど、どうしてあの場所のことを知ってるのだろうと前にも同じように思ったことがある。あのことを知ってないと書けないような描写があまりに鮮明で苦しくなる。

あの一年は色々あった。私がひとりになって、親友のように慕っていた友人とは縁を切った。そして、石井ちゃんがいなくなって、梃子が癌になった。数ヶ月毎に起きる色々に翻弄されるなか、世田谷のマンションにしがみついた。とにかく日常に戻れるようにと必死に。本の中にも同じようなことが書いてあった。不幸に遭った家族が日常に戻るために、日常をまた取り戻したことを。

日常にいれるようになってから時々、そのことを忘れてしまうことがある。結婚しておいてこんな事を思うのは酷いけど、周ちゃんがいきなり酷い事をしてくるんじゃないか。手をあげたり、殴ってきたり、怒鳴ったりするんじゃないか。はじめの頃はそんな変な幻想がまとわりついて離れなかった。だけど、日常が日常になる頃にはそんな事も忘れるようになった。そうやって日常は当たり前のような顔をいつしかしていた。

けど。ここは今なだけで、いつかまた消えるもの。だからって何というわけでもない。それが生きてるってことなのも知ってる。

石井ちゃんに会えてよかった。あの時間は一生ここにある。