かぼちゃグラタン

洋食 29.8,2023


たったの一年前は妊娠したのに、もう生理が終わるかもしれないと先生は言う。あれだけ嫌だった生理が終わると思うと、寂しい気もした。

いや、そんな風に思ったらかっこいい感じがしたけど、本当のところ、わからない。今日はいつもと違う坂道を通って帰ることにした。本当はこっちの道は好きじゃないはずだったけど、道を間違えたから戻らずに自転車で走った。遠くに青すぎる空に入道雲、そして森の緑が鮮やかに見える。今からまた夏を始めたい気持ちになった。暑くて肌がじりじりする。坂道をぐんぐんとスピードにのって降りていくのはあまりに気持ち良すぎた。

先生は、不妊治療をするか、生理を起こすためのホルモン注射を始めるかどちらかにしましょうって。それは正反対の治療になるから、どちらか選んで下さいとのことだった。先生は忘れているようだったけれど、私が妊娠した時に初めて見て貰った先生だった。あの時はなんてぶっきらぼうで怖い先生なんだろうと感じたなと思い出した。

大学で臨床のことも勉強し始めてから、また一つ世界が広がったように思う。病院がちょっと知ってる場所になった。採血をされながら見える景色。壁に何かの当番表があるとか、棚の乱雑具合や、あそこで看護師が世間話してるなとか。今まで見えなかったものが見えるようになると、先生も怖くなくなった。ただ、ぶっきらぼうな性格なだけ。この人は私のことを威圧的に扱ってやろうなんて思ってない。先生は何十年この仕事してるのかな。とか、ものすごい勉強したんだろうなとか。休みの日は孫と遊んでるのかなとか、先生じゃない時の先生を想像した。脳の視床の話は勉強したことがある話だった。

帰り道、何となく私が可愛そうな気がしてジャイアントコーンを買って帰った。だけど、本当にそうだったのかはわからない。クーラの下でジャイアントコーンを食べながら思った。いつものオールチョコーレート味。いつものように甘くて、いつものように最後のコーンの先っちょを食べる瞬間が嬉しかった。全てはいつも通りだ。もしかしてまた強くなったのかなと考えたりもしたけど、多分、そもそも子供が欲しいとか欲しくないとか興味がなかったからかもしれない。ただ、周ちゃんとそういう話をしてただけ。周ちゃんのせいにするわけじゃなくて、家族になりたい。それだけだ。

私は流産のせいもあったし、たまたまそうゆう病気らしく早く生理がなくなるらしい。だから、治療しなきゃいけないんだけど、別にホルモンの薬を飲むくらいで、なんてことはない。数ヶ月来なかった生理の理由を聞けて、ほっとしたような気もするし、そうじゃない気もするし、自分の気持ちがよくわからない。

夕飯は久しぶりにカボチャグラタンにした。なんか、今日はちゃんと料理をした気がする。ホワイトソースも作った。