
めかぶ卵ご飯

13年前と同じだった。
師匠に会ったのは2009年の秋。大学生みたいに肩からトートバッグをかけて、何かが始まったばかりのような、これから始まるような初々しさ、いや春の新芽のような清々しさに近い。本当にこの人がフォトグラファー?少し拍子抜けした。
“アシスタントを募集していませんか?” コマフォトに載っていたメールアドレスにメッセージを送ると、”募集はしてないけどポートフォリオを見ることくらいなら。”と返信があった。それから3年間、写真を撮る師匠の横で、同じ目線で被写体をそして師匠を見続けた。
「お久しぶりです!」「あ〜お久しぶり〜。」
歳を重ねれば重ねるほどに思う。この人がいなかったら私は写真を生業になんて出来なかった。どこまでもとにかく真っ直ぐで、強がったりかっこつけたりしない、誰かのことを馬鹿にしたりなんかもしない。向き合うのはいつも自分だけ。弱い自分の事を弱いんだと言いながらも、カメラを構える姿に胸を強く打たれた。
今日会うのは3年ぶり。そしてあの日を境に元夫は家に帰らなくなった。
きっかけを作るのは時間の問題だったと思う。きっと大切な人のせいにしたかったのかもしれない。久しぶりに師匠から手伝ってくれない?とLINEが入った。アーティストの撮影でお台場で朝までの長丁場。それまで週6日で撮影をしていた日々はコロナの影響で仕事がパタパタとキャンセルになり暇を持て余していた。
帰宅したのは7時前くらい。玄関を開けると酒気の中でゆらゆらと溺れている夫がいた。病は年末あたりからじんわりと始まっていた。それは数年ごとにやってくる悪魔。やめたお酒を当たり前のように飲み、大声で発狂したり暴れたり。急に激しく喋りだしたかと思えば、死んだかのようにパタリと連絡が取れなくなったりもした。
元夫の奇行はアレみたいだ。マリオがスターを見つけると完全無敵になるやつ。だけど、あれはゲームの中の話。生身である人間の身体が同じことをしたら身体中が傷だらけになるだろう。よくわからないのだけど、元夫は全身のすべて、心も完全に麻痺してるみたいに見えた。痛みの全ては何処かに消えてしまったようで、アドレナリンに縫い付けられた身体がマリオみたいに爆走していた。
コロナが始まり私を恐怖のどん底に追いやったのは、コロナだけじゃない。元夫と一緒になってからというもの、私は変わった。誰かに「大丈夫?」と声をかけられても酔っ払い相手だし酔拳みたいな暴力だしさと笑い飛ばした。私はミュージュシャンの妻だ。こんな事で泣き言なんて言ってられない。頑なに私は宛もない誰かに牽制し続けた。これが愛なんだって。家族だから私が夫を助けなきゃいけない。だけど、もう我慢も限界で、久しぶりに師匠の顔を見ると直ぐにそれを認めた。
「また嘘ついたの?またお酒のんだの?お酒やめるって言ったじゃん。」夫を叩き起こし責め立てる私の声が部屋中に響き渡った。喉のあたりがジリジリと押し潰されるみたいに苦しくなって、目からは涙がどんどん溢れていく。そして、半年後に離婚した。
元夫はお酒が酷く入ると師匠の悪口を言った。「お前の師匠は中途半端に音楽やりやがって。」って。
悔しかったんだろう。仮にもメジャーデビューしたのに、フォトグラファーをやりながらもミュージシャンとして、今でもラジオや街で曲が流れているSpangle call Lilli line。それに比べ、自分の音楽はどんどん衰退していく。師匠が音楽をやっていたのも、元夫がミュージシャンだったのも、全てはたぶん偶然だけど、もしかしたら必然にしたのは私なのかもしれない。元夫は苦しかっただろう。私は写真も音楽も真っ直ぐにひたむきに頑張ってる師匠が大好きだった。
「よしみちゃんの料理写真は情念があるんだよ。それに、本当に情念の人なんだよ。昔は僕が師匠だったけれど、今は学ばせて貰ってる。」師匠は少し酔っ払っていたのかもしれないし、そうじゃないような気もした。ただ、久しぶりに会ったことを喜んでくれてるみたいだった。毎年送ってる年賀状も楽しみにしてると言ってくれた。今日はフォトグラファーの松村さんも一緒。3人で吉祥寺の暖簾がいい感じの店でビールを飲んだ。師匠は誰もが知ってるようなミュージュシャンのジャケットを撮っているし、松村さんはコウケンテツさんの料理や暮らしの手帖など憧れの雑誌で撮ってる。尊敬する二人のフォトグラファーの前で自分の写真が褒められるだなんて恥ずかしいやら嬉しいやら、何て言っていいのかわからなくて上手く返せなかった。
だけど、もし師匠の言うように私が情念というものを持っているのなら、それは間違いなく師匠から貰ったもの。「僕は本当に自分のことしか考えてないから。」と何度も言ってたけどそうじゃない。なんとなく応募した1wallで、するりと何度か審査を通ったくらいで、ギャラリーに所属したりもしたけど、結局のところ写真作家としてパッとしなかった。言い方は変かもしれないけど、酔っ払っては何台もカメラを壊していたような私を引き取ってくれたのは師匠だ。それまでの人生、世の中を斜めばかりをみていた私に真っ直ぐと前を向いて写真を撮ることを教えてくれた。
何も出来ない私に師匠が怒ったことは一度だってない、嫌に思ったこともない。師匠の車で流れる音楽が好きで、夕陽だとか光が綺麗な時間に「綺麗だね。」って短い言葉だけを交わす時間も好きだった。多分、もしかしたら遠いい過去に同じような場所で生きていたんじゃないか。例えば互いに海の生物だったとか。水の奥底でしか見えない景色を知ってる。そんな感じだった。だけど、私はあんなに立派じゃない。だからこそきっと憧れた。
私が失ったものは沢山あったけど、今日もこうして写真を撮っていられるのは師匠のお陰だ。師匠の強さは私の人生を変えてくれた。
久しぶりに髪を切った。明日は久しぶりに師匠に会う。
私が焼くパンケーキはぺっちゃんこだ。そして、試験の結果も惨敗だった。
勉強が楽しいっていうのと、大学で勉強をするっていうのは近そうで遠いいい場所にあるんだと知った。判定はD。あんなに勉強したのに。だけど、試験での手応えは全く無かった。ちんぷんかんで苛立ちさえ覚えたくらいに。
中学2年で勉強を止めてしまった私のIQ。エスカレーター式というモラトリアムを推進するようなシステムのお陰で全く勉強をしないで自分のことだけを考えて大人になれた。四国が何処にあるのか知ったのは5年前くらいで、ジャニーズの嵐が誰なのかを知ったのも同じ頃。社会の事も政治の事も歴史の事も全然知らなかった。同じくして子供の頃から芸能活動や音楽に勤しんでいた姉に限っては、結局20代でアメリカへ行ってしまったので四国どころか生まれ育った関東、そして北海道と沖縄以外は知らない。
勉強よりも大切なことがある。確かに親の言う事は間違ってはいなかった。姉は昨年ミュージックカンパニーを立ち上げ、私もフリーランスのフォトグラファーとして食べてる。確かに勉強なんてしなくても生きていけた。だけど、大人になってわかった。強いては、大学での勉強を初めて気づいた。私ってIQがものすごく低いっぽい。教科書が読めない。どうやって勉強していいのか分からない。
ここ数年はリリさんのお陰で本を少しずつ読めるようになったけれど、教科書の独特な文章が理解できなくて、沢山の参考書やyoutubeで知識を深めている。そしてこれはこれで楽しい。だけど、判定Dというのは落第だ。なんとも言えない気持ち。私、大学で本当に勉強を続けられるんだろうか。今日は数学の本を買ったけど未だ開いてない。不安ばかりが募っていく。
夕方に美容院へ行き、そのままサウナへ行った。
男の人は褒めるとずっと同じことを繰り返す生き物だと思う。周ちゃんが作るパンケーキはいつしか朝食のスタメンになった。とても有難い話だけど、気分屋の私にとってルーティンほど怖いものはない。こんなにパンケーキミックスを買ったのは人生で初めてだと思う。これから味でも色でもなんでもいいから変化してくれることを願うしかない。とりあえず今日も焼き加減は最高だった。ふたりで暮らすのは楽しい事も沢山あるけど、自由がきかないことも増えていく。出来るだけ互いが互いに編み込まれてしまわないようにしたいのだけど、日々の暮らしは思ってる以上にスムーズに浸透していく。結婚当初から口を酸っぱくして言っていた結婚のルール。今じゃ殆どが何処かへ行ってしまった。
ここ数日、料理家の角田さんとメールでやりとりしてる。前にゲイの友人と文通のようなメールをしていた事を思い出した。言葉だけど言葉じゃないような感じのやりとり。角田さんは、とても忙しい方だと思うし、遊び半分のような事は言ってはいけないと丁寧によく考えながらメールを返答してる。数日前のこと、私が前に撮った映像をどうやら気に入ってくれたらしく、角田さんの心を強く動かしたみたいなことが書いてあった。本当は飛び上がってしまうくらいに嬉しかったけど、あまり調子に乗らないようにと言い聞かせた。けど、やっぱり嬉しい。
角田さんは料理家だけど、アーティストみたいな感じだったり、経営者のようだったり、とても不思議な方だ。周ちゃんはうちの姉に似てると言ってた。「どこが?全然似てないよ。」「懐が深い所。」姉はとんでもない性格だ。だから、アメリカに行っちゃったし、ギリシャ人と結婚したし、未亡人になり裁判3つやっつけて、今では自分の音楽の会社を作り女でひとり子供達を育ててる。私とは真逆だ。あの強さは一体何なんだろうかと思う。だけど、強く生きているのと同じくらいに、辛い事もしっかりと受けとめてきてる。口先だけの優しい人は沢山いるけど、それが悪い人だとも思わないけど、姉は心底優しい。私を助けると言ったら、世界中の全てを敵に回したとしても絶対に助けにきてくれる。周ちゃんの言ってる事が少しわかる気がした。角田さんが作る料理をまた撮りたい。
昼に新宿ヨドバシに行って、そのまま紀伊國屋、伊勢丹とおつかいを済ませてから幡ヶ谷のサプライへ。いまむちゃんとゆうちゃんと15時に待ち合わせ。いまむちゃんは最近パスタにハマってるし、ゆうちゃんはワインが好き。私は二人を紹介したい。という事でサプライを1週間前に予約した。
2ヶ月ぶりのゆうちゃん。今日の髪はミルクティー色だった。ゆうちゃんに初めて会った時は、なんて素敵な黒髪だろうと思った。昔の蒼井優みたいな黒のロングヘアー。いつからかゆうちゃんは金髪だったり、ショート、刈り上げと、色々な髪型に挑戦するようになったけど、それはそれでゆうちゃんらしかった。対象的にいまむちゃんはいつもの通り全身真っ黒で登場。勿論髪も真っ黒。昨日自転車にひかれたんだと、左腕の湿布を何度もさすってた。
何を話すわけでもなく、とにかく飲んで食べて、お喋りした。「東京が恋しくなった?」二人が下北の話で盛り上がってると、いまむちゃんが私に聞いた。恋しいも何も、東京は大好きだけど、今の生活も大好きだから、正しく答えるならば、「今も恋してる。」。だから、こうして東京にいる友人達とワインを傾ける夜が私の最高の今だ。引っ越した当初は寂しく思う事もあったけれど、今は大分見え方が変わってきた。東京の良さも知ってる。だけど、世界はそれ以上に広かった。田舎暮らしで知ったことは、地方や海外には東京には無いものがある。何十年と住んだ東京よりも、とても魅力的に見えた。
それに好きだった東京の夜も、もういいかなと思うようになった。曖昧にぼんやりとした夜の中を気持ちよく流れるままに身を預ける。明日になったら忘れてしまうような誰かとの形にならないような話や、ヘッドホンから聞こえてくるダウナーな音楽、昔の好きだった男の淡い記憶とか。そんな夜が好きだった。終電を逃したらタクシーに乗ればいいし、気持ちが良ければ歩いて帰ればいい。夜は朝が来るのを忘れたみたいに時間は止まり、自由で、無敵な感じがした。だからって、子供とクリスマスツリーを作る夜に憧れてるわけでもない。それはそれで素敵だろうけれど、周ちゃんが帰ってくるのを待ちながら、静かな夜を冷えた缶ビールを飲みながら夕飯を作るような今で十分だ。
いまむちゃんが眠い眠いってうるさいから今日は早めに帰ることにした。もう少し飲みたかったけれど、「またね。」と言ってバイバイした。朝食はスクランブルエッグと駅前で買ったパンと果物。それから、いつものバナナジュース。
生理2日目。とにかく気持ちがいい。出血はいつもの生理よりも多いけれど、今までの全ての不安が流れでていくみたいで清々しい。午前は明日の梃子の手術に備えてお尻の毛をカットしたり、駅前に食材の買い出しと、大学の履修科目生の授業料を払いに銀行へ行った。明日の手術の事を考えると気持ちは落ち着かないけれど、なるべく普段の通りに過ごすようにした。午後は少しだけ仕事の事をして、夕飯のカレーを作った。今日はチキンカレー。そして今日はいい夫婦の日だ。昔、この日に結婚した友達がいたけど、彼女は今でも幸せにやってるんだろうか。結婚式にセックスフレンドが7人来ていたと後に聞いたけど、その中のひとりは友人のカメラマンだ。もうひとりは友達の旦那さんの同僚。何度かその奥さんとお仕事をした事もあった。何とも複雑な想いの結婚式で、その後、その子とは何となく近所に住んではいたけど疎遠になった。数年前に2駅先に新居を建てたと聞いたけど、やっぱり遊びに行く気にはなれなかった。
周ちゃんは夜に撮影の立ち合いがあるか何かで帰宅が遅い。ひとりで早い夕方にチキンカレーを作って食べた。勿論、お代わりだってした。ダメだってわかってるのに、カレーと炊き立てのご飯。相性が良すぎる。スパイスはこないだハラールフードで買ったパキスタンのマサラ。思っていたよりもずっと美味しく出来た。そのまま夜はデスクワーク。梃子がずっと今日は離れない。膝の上でいびきをかいて寝てる。いつもならこの時間はベッドなのに、何かをわかってるんだろうか。今日は一日私から離れない。19時を過ぎた頃、リリさんからのLINE。驚いて直ぐに電話をかけるといつも通りの元気そうな声。今日の昼にリリさんの事を思い出した所だった。もしかして結婚破棄になったんじゃないか。ちょっとドキドキしていたけど、すごく嬉しい。聞きたいことも話したいことも沢山あったけど、明日が新居への引っ越しだというので20分くらい手短に話をして電話を切った。自分が思っている以上に私の色々が嬉しかったんだろう。珍しくお風呂で鼻歌なんて歌ってた。そして湯船に浸かりながら少し泣きそうになった。
昨晩の周ちゃんの日記。最高だったな。私の日記を読んだ後に書いたようで、私の心が読めなくてこわい〜って小学生がお化けを怖がるみたいな字で書いてあった。周ちゃんは背筋がピンとしていて、それなりにマッチョで、学芸員で、黒縁メガネのイケメンだ。背は176cm。絵に描いたような男だと思う。頭もいいし、ハキハキ喋るし、下手に今っぽい感じの服を着ないのでそこがまた好感ポイント。そして紳士で、しっかりもしてる。勿論、実際には色々とあるけれど、一見、非の打ちどころが無さそうな周ちゃんが、”こわい〜。”なんてミミズみたいな字を書くなんて誰が想像するだろう。可笑しくて堪らない。
昨晩はそんなに呑んでないのに、なんだか少し二日酔い。カメラマンの松村さんと、料理家の角田さん、編集の野村さんと一緒だった。一軒目で角田さんが帰宅して、二軒目では一杯だけ。野村さんは飲み過ぎたようで最後は少し辛そうだった。ちゃんと帰れたんだろうか。
二日酔いの日はやっぱり汁物だとか、しょっぱいものが欲しい。朝食は、鮭を焼いて、冷やご飯の上にのせて、玄米茶をかけてお茶漬けにした。昨晩に野村さんが話していた事と、こないだふみえさんが話していたことがリンクしてる。それが小さな小骨みたいに喉に軽く引っかかってる。私とは関係のない話だと話半分でしか聞いていなかったけれど、気になるからそこにいるのだろう。売れるって、そんなに大事なことなんだろうか。売れるものを作り、誰かの為になることはいいことだけど、誰かの事ばかり考えていたら自分は蔑ろにならないのだろうか。頑張った代わりに、地位や名誉やお金を貰えたとしても、放っておかれた自分は寂しくならないのだろうか。私は強くもないし、上手く出来ない性格だから、きっと孤独になってしまうと思う。頑張れば頑張るほどに独りになる。褒められても嬉しいのは束の間で、また寂しさを癒すためにがむしゃらに走って欲しがってしまう。
それに反してとゆうか、あっけらかんと話す角田さんのお喋りがとても面白かった。「売れるってさ、特別なことをするんじゃなくて、日々の積み重ねというか、小さな事だったりするんだよね。」誰もが知っているような企業で売れるという仕組みを仕掛けた事のある角田さん。その時の話をしていた。アーティストの坂口恭平さんの本にあった、売れるっていうのはスムーズなこと。水の流れのように広まっていくこと。っていう文章を思い出した。がむしゃらに何かを、欲望の飢えを潤すように何かを得ることではなくて、必然的にそうなっていくのだとか。角田さんは料理家だけど、とても不思議な魅力の人だなと思った。話を聞いていてなんだかすごくわくわくした。
昼前から周ちゃんと梃子とドライブした。北欧ビンテージの家具を見に行って、メッツァビレッジに寄って、帰りに回転寿司を食べた。とにかく車で走った1日だった。少しずつ少しずつ運転も慣れてきた。遠くへ行ける車は楽しい。
遅く起きてきた周ちゃんに「紅茶のむ?」って聞いたら、「ねぇ。これ見て。」携帯の画面にあるグーグルカレンダーを指した。”何もしない日” って書いてある。書いたのは私。食べるも寝るも別、と加えてある。周ちゃんはやっぱり結婚がしたかったんだと思う。初めての結婚である周ちゃんに、私に構わないでとか、別々でいたいとか、そんな事を望む私の方が我儘だ。きっとお揃いのパジャマを着て、熱々のパンケーキの上を溶けるバターをカフェオレと一緒に流し込みながら朝を迎え、昼はぶらぶら買い物したり食事したりと手を繋いでデートをして、夜は部屋で映画なんかを見たいんだと思う。「今、紅茶を淹れてたから、いるかなと思って。」「うん。じゃあ、いる。」周ちゃんが一昨日に買ってきてくれたケーキを紅茶と一緒に食べた。
昨日は松陰神社に住んでた時に通っていた梃子の病院へ行った。セカンドオピニオンの為。前の家の直ぐそばにあるカンノンコーヒーで珈琲とスコーンとチョコクッキーを買い、角の寿司屋でお稲荷さんを、インド人の肉屋でサモサを買った。そしてThisという雑貨屋をぐるりと見て、下北沢の発酵デパートメントへ向かった。よく買っていた五味醤油さんの甲州味噌と醤油と変わったバルサミコ酢を買った。まるで半年前の生活みたい。
運転はずっと私。初めて東京まで運転したけど思っていたより怖くなかった。それに、道も街も、知っている場所を通るのはなんだか嬉しかった。「あ、あのローソンの上に二十歳くらいに好きだった子が住んでたよ。」環七の信号を止まった時に丁度そんな場所だった。「ここを曲がるとミッチャン家。」「そこを曲がるとこないだうちに遊びに来てくれた子の家だよ。」世田谷、大好きな街。私だけすっぽりとどこかへいなくなってしまったけれど、ここは今も変わらない。
今日はキッチンの大掃除をして、昨日の夕方に買った葉牡丹を鉢に植え替えた。なんだか昨日の世田谷はすごく楽しかった。だけど、私の家はここ。ここを離れる時は淋しいと思うくらいに素敵な場所にできたらいい。
今週も周ちゃんは忙しい。先週から始まった展示のプレス対応で朝は早く出かけて、夜も遅い。お陰で私はひとりの時間を満喫してる。
寒い午後、ネットで北海道行の航空券とホテルを探した。雨はずっと止まない。リビングがあまりに寒くて屋根裏から引っ張りだしてきたホットカーペットが温かくて気持ちがいい。
一昨日の夜に周ちゃんに話した。「来週の西表島はもう無理だし、西表島の秘祭に行けないならアイヌに行きたいの。」私から出た言葉に拍子抜けした顔をしてる周ちゃん。話を進めるうちに、だんだんと瞳が大きくなってゆくのがわかった。リゾート地とか、リゾートホテルが厭なこと。バックパッカーの旅みたいに、土地を歩いたり、ただ景色を見たり、その土地の人が食べるご飯を食べたい。旅っていうより、暮らすみたいにそこに居たい。きっと、昨日からの無理はしないと決めたことも手伝ってる。今は頑張りたくない。私のままでいたい。だから、どうか好きな場所で、好きなタイミングで息を吸ったり吐いたり、歩いたり休んだり、ただただ腰を据えて眠りにつきたい。私の小さな願いを伝えた。現地で別行動でもいいからとも付け加えた。周ちゃんは貧乏性だから、絞りだすくらいに全てを欲しがる。私は無駄遣いが得意だから、欲しい分以外のものは捨てても要らない。だから、きっとそれがいい。
本当のことは言わないで「私はゆっくりしたいから。」と言ったら、頷いてた。
「朝は何がいい?」私がキッチンに立てなくなってから三日目。シェフは周ちゃんとなった。病院からは絶対安静にとしか言われてないけれど、姉からは「料理なんてもってのほか!」と怒られた。「トーストして、アボガドのマッシュをのせて、上からカボスを絞りたいな。」「バターは?」「要らない。」「わかったよ。」
私のいつものアボガドトーストは、アボガドはマヨネーズ多めで、檸檬をさっと絞る。周ちゃんシェフはマヨネーズ少なめ。なるほどね。では、カボスは多めにかけてみよう。この組み合わせが想像以上に美味しくて唸りながらペロッと平らげた。
日々の中で時々、驚く程に美味しいレシピを見つけてしまうことがある。今日はそんなレシピに出会えた日。万歳。
昨日撮影で貰ったおにぎりを朝ご飯に蒸し器で炊いた。ダイニングテーブルには数日前にペイントした名刺が乾かしてあるからここ数日は和室のちゃぶ台で食事をしてる。ちゃぶ台でおにぎり。なんだか特別に美味しい気がして、何度も目を見合わせて美味しいねと言った。私の体調の悪さが少し落ち着いてるからか、今日は平穏。
昨日の夜が遅かったからすっかり寝坊。7時くらいにみんなで裏山に散歩へ行った。もうすぐ夏も終わりなのかな。山の中は少しひんやりしてた。帰宅して山若くんは温泉に行き、フミエさんと周ちゃんと私は山若くんが買ってきてくれた西瓜を食べた。周ちゃんは私が一つを食べ終わる前に3つくらい食べていたけど西瓜が好きだってことを初めて知った。それから、フミエさんは周ちゃんに聞きたかったという日本の豆文化について教えて貰い、私は書斎で写真の整理をした。
「お腹空いたな。何か食べる?ご飯かパンかひやむぎか。」帰ってきた山若くんに聞くと「ご飯!オランダ煮できる?」とのこと。昨晩も作ったオランダ煮。山若くんがよくお婆ちゃんに作って貰ったという石川県の郷土料理。昨晩に初めて作ったけど、揚げ浸しと似ている甘辛い味付け。こないだ那須で買ってきた米を研ぎ水に浸して、夕飯の残りのスペアリブと冬瓜の塩煮にゴボウや人参を入れて味噌汁にして、茄子のオランダ煮を今日は甘めに作って、あとは適当に梅干しとからっきょうとかを準備した。フミエさんと周ちゃんはずっと豆の話しをしてる。
「山若くん、ちょっと聞きたいんだけど。写真のレイアウト迷ってて。写真を組むのはすごく好きなんだけど、組んじゃうんだよね。言ってる意味わかる?」「え?どういうこと?」「うーんと、組で写真をコントロールしちゃうっていうか。」「ああ、写真の意図を作ったらいいんじゃない?」「うーん。そうなんだけどね。」「あのさ、例えばなんだけど、あれ、なんで俺ここにいるんだろう?って思うような事って無い?」「どういう意味?」「例えば、清澄白河に展示を見に行ったんだけど、そこで仲良くなった人がいて、うちでも展示やってるっていうからついて言ったら、なんかすごい狭い路地みたいな所にある部屋に連れていかれて、ドアをあけたら、明らかに怪しそうな入れ墨いっぱいの男の人がいてマリファナ吸いながら皆んなで作品を見るっていう場所で。」「え?それは、怖いねぇ。それってさ、若い時にしてたバックパッカーでの旅とかで遭遇しそうな状況。仲良くなった外人の家の実家に遊びに行ってそのままご飯をご馳走になるみたいなのでしょ。」「昔じゃなくて最近は無いの?」「えー?うーん。あるかなぁ。周ちゃんとの出会いがそうかな。」「えー。違うよ。それは面白くないよ。じゃあさ、例えば、ナナちゃんで言うと、こないだ仕事の人とご飯たべて、そのまま事務所に行く予定だったのだけど、たまたま出会ったタイ人と仲良くなってお家に言って、小さなマンションの一室にものすごい数のタイ人が住んでて、もの凄い辛いカレーを食べて帰ってきたんだけど、そういう感じ!」「うんうん。言ってることはわかるけど。最近はあるかなぁ。」それから、今やってるアレックスソスの展示の話し始めた。ソスの展示の中で1時間弱の映像作品があって、アメリカを横断しながら出会った人にちいて行き写真を撮るというドキュメンタリーなのだそうだけど、すごくいいよって。そういう事なのだそう。
山若くんはきっと、私に意図しないような出会いをレイアウトを組む時の参考にしてとアドバイスしたかったのだろうと直ぐに気づいたけど、期待に応えられるような返答が出来なかった。それに、それは一つの行動パターンに過ぎないよね、なんて事も言えなかった。山若くんはヒッピーや反社会的、社会不適合っていうキーワードに弱い。そこに強い憧れがあるんだろうなというのがよくわかる。その彼女のナナちゃんはいつも山若くんと一緒にいる所を見かけるし、行動パターンはおのずと似てくるだろう。だけど、。私はもうそういう世界は見たくない。前に元夫の友人が夫の事をアンダーグラウンドで面白いと言ってたけど、現実はコーラみたいに喉だけを刺激して去ってくれるようなものじゃない。身体が切り裂けるような痛みだったり、ゴールのない洞窟みたいな。もう、二度と見たくないし、二度と知りたくない。ぜんぜん面白くないしカッコよくもない。あそこは、ただの地獄。
一生懸命に説明してくれるのは嬉しかったけど、曖昧で凄いねとか、そうだねって優しそうな言葉でしか返せなかった。元夫と一緒だった時に、結局、悪そうな事をしたり、奇抜なことを好む人こそ程、地獄にはおちないよねって何度も意地悪く思った。実際に堕ちる人は勝手に堕ちていく。駄目だと言ってもあっという間に堕ちる。
目の前に起きる事がまるで運命かのように見えるような事もある。ただ雨が降っただけなのに、そこに虹がかかっただけなのに、この出会いは運命だとか導かれたとか。だけど、大体、殆どが自分の意思や目的でここにいるし、何処かへ行く。なんとなくでも、たまたまでも、選んでる。山若くんが言ったような話は映画みたいで面白そうな匂いがぷんぷんするけど、お父さんとお母さんがある日突然に街角で出会って稲妻が走ったように恋に落ちなくても、排卵日にセックスして精子が卵子に辿り着けば赤ちゃんが出来るのが現実であって、お互いが望んで好んで求めて出来た一つの結果だ。偶然や必然的なものが存在しないとは思わないけど、その可能性を膨らませているのは神様でもアンダーグラウンドな世界でもなくて自分自身なんじゃないかなと思う。
今日から周ちゃんは久しぶりにフィールドワークに出かけた。行ってらっしゃいと、笑顔で送ったけど、本当は結構寂しい。だけど、すごくいい時間だと信じてる。毎週デートするよりも、断然、時々デートの方がいい。私が自分の時間を大切にしたいように、周ちゃんの時間も大切にしてほしいから。私達はいつでも同等であって、いつかサヨナラする日が来ても、それぞれがしっかりと自分のままでいてほしい。もし、二人で一つの形を成してしまったら、足らない何かに苦しまなきゃいけなくなる。今でもいつかでも互いに幸せでありたい。
周ちゃんが朝に出かけてから夕方までずっと昨年に訪ねた氷見で撮ったシェフインレジデンスの作品作りを進めた。フィルムで撮影したデーターの現像作業と日記のリライト。書いていない数日については記憶で書き進めた。夜は残り物を食べて、ビールとポテチで晩酌して、何事もなかったように周ちゃんに電話しておやすみを言ってから布団に入った。
最近、自由になりたいと強く望んでる。また金髪にしようかなとか、なんかそれは違くない?とか。ああなりたい、あの人が羨ましいとか。けど、私はそれじゃないよねとか。そんな風にどこに行こうか迷ってるし、もう全部、何でもいいんじゃないか?とも思う。美味しいだけでいいとか、楽しいだけでいいとか。人が好きだなと想ったり、あの人はやっぱり苦手とふさいでみたり。別にそんなにもう無理しなくてもいいし、結局のところすべて私が決めてる。いいも悪いも。そうやって一周回っては、別にどうでもいいじゃんとなる。そしてまた自由になりたいと望んでる。
ユーチューブで田中みな実さんが、欠点を見つけたらチャンス!だと言った言葉に流石だなぁと感心した。しばらく欠点について考えたけど、欠点って?とも思った。そんな事を言ったら私なんて欠点だらけだし。けど、逆に言えば、きっとシチューみたいに色々が詰まってる。時々、焦げた玉ねぎが出てきても、それが飴色だと言えば、旨味なわけだし。けど、みんなそう。みんな個性的でみんな欠点を持ってる。昔、BFが私の事をスルメイカみたいな子だねと言ったけど、あまりに素晴らしい表現だったので今でもしっかりと覚えてる。理由は、噛めば噛むほどに味がでるのだそうで、それは私だけではなくて、人そのものに対する考察だ。人の欠点は味そのもの。甘いのに辛い?とか、酸っぱいのに柔らかいとか。その個性ひとつひとつに惚れていく。大人になればなるほどに惚れっぽくなるのは舌が肥えてきている証拠だ。世界には愛おしい人が沢山いる。
梃子と私だけのベッドは最高だった。周ちゃん、いつ帰って来るんだろう。そして、私はどうして自由になりたいんだろう。近い感覚と言えば、バックパッカーしてた時の気持ちと似てる。誰も私を知らない場所で自由に旅したい感じ。厭だな、青臭い。
今週はあっという間に終わった。今日は土曜日だけど周ちゃんは月一回の休日出勤。昼からミュージアムへ出かけて行った。今日はいつもよりもずっと優しくハグをして出かけて行った気がする。友人達にあげる豆板醤を瓶詰めして喜んで見せびらかしてたからだろうか。けど、途中の発酵で出た白カビを綺麗に取り除いてくれたのは周ちゃんだし、豆を綺麗に潰してくれたのも周ちゃんだ。だけど、確実に周ちゃんは豆板醤を愛でる私を愛でていた。ありがたいけど、特になにもしていないし、なんだかちょっとズルをしたような気分。
ここ数日のご機嫌は豆板醤がいい感じに作れたことだけじゃない。りりさんから突然入った “よしみさん、日曜日に群馬に行きませんか?” っていうメールもすごく嬉しかったし、まゆみちゃんがパリで新しい家が見つかったよという知らせが入ったことも、ADのしみるさんにお願いしてる新しい名刺がいい感じになりそうだったり、朝に成田さんと請求書のやりとりの片隅で密やかに、だけど心では大声で威勢よく互いに明るい未来の話をしたことも、そして新しく発刊された料理の雑誌がすごく素敵だった事だったり、ふみえさんを撮った映像がいい感じになりそうだとか、買ったばかりの川島小鳥さんの写真集が部屋に入る度に目が合うことも。すべてがしっくりとパズルがはまるみたいに私が喜ぶところにピタリとハマってる。重かった肩の荷を下ろしたら、すっかりとご機嫌だし世界はまた好きに戻った。
8月は楽しいことが沢山待ってる。新しい水着を下ろすのもそうだし、数年ぶりにりょうこちゃんに会えることも、いまむと約束してる花火も。あと、ふみえさんと編集の山若くんとうちで作品合宿をするのも楽しみだ。ああ、夏が好き。大好き。いよいよ来たよ、私の夏。遊びも仕事も思いっきりに楽しもう。
朝からふみえさんのアトリエで映像の撮影。久しぶりのふみえさん。なんだか心がほっとした。撮影の前にあんみつを食べながら色々と話したけれど、この一ヶ月色々とあって、少し心が忙しかったのだとか。不思議なもので、私もそうだった。私も、殆どを私の部屋で過ごしていたように思う。仕事のことがあってから、心が忙しくて中々作業が進まなかったり、外にもあまり行かなかった。丁度、一週間前あたり。免許の卒業証書の紛失あたりでドスンとまた落ちて、そこから急に這い上がってきた。
「私、今までの環境がきっと良すぎたんだと思います。思ってる以上に落ち込んじゃって、。なんか酷い時には、写真の仕事をやめようかなとまで考えたりしました。」簡単にではあるけど、仕事で起きたことや、友人のADが言ってくれた言葉、色々をざっと話した。「信頼してたのに、信頼が途切れたことが辛かったんです。」「うん。そうね。」「ショックで。けど、もう大丈夫だし、やめません。」ふみえさんは長かった髪をバッサリと切って夏らしくて可愛かった。「なんかね、星?的に今って色々が変わる時期らしいよ。」「そうなんですね。なんか、最近、私も何かで見たような。。」まぁいっか。そんな感じで話は終わった。同じような時期に別々の問題だけど、お互いに何かと戦ってた一ヶ月だったんだなって思うと、少しおかしかった。
それから、今日の朝食は山形のだしだった。和室のちゃぶ台にパソコンを広げて映像のチェックをしつつ、手元でプリントアウトした資料をペンでマーカーしつつ、急いでご飯を頬張ってると周ちゃんがダイニングテーブルからカメラをこちらに向けながら言った。「マルチタスクすごいね!」「だって、女だからね。」
相変わらず新婚みたいな生活を続けてる。夜はキスをして寝て、朝はまたセックスをする。もうこれが最後のセックスなんだろうと思うけど、もう他の誰かとしなくていいと思う。もう十分に誰かを愛したり愛されたりを繰り返してきたから、きっと私の隅々までが欲してない。一昨日の夜に周ちゃんが少し変なことを言ったのは、きっと私が悪かった。私の方がずっとデリカシーがないから。
「三茶が好きかって聞いたでしょ。」「うん。英語でね。」「気になって考えてたの。好きというわけじゃないし、住みたいとも思わない街。だけど、胸に何かがすごくひかかって。それでね、思い出したんだけど、昔に付き合ってた男を振った街だったの。あとはすごく好きだった子のお母さんがやってるスナックがあって、デートで訪ねたりして、それから、少し年上の人、会社とかやってる面白い男が好きだったんだけど。初めてというか誰かと結婚したいって思ったんだよね。彼と出会ったのも三茶だったの。あとは、20代前半の大学生の頃に初めて三茶に行ったんだけど、2つくらい上の好きな男の子の家でさ、何度か通ってさ。」「えー!?よしみにとってすごい街じゃない。」「自分でもびっくりしてるよ。何も思い入れないと思ってたのに。それから、まだあるんだよ。10年付き合ってた子とね、結婚しようとしてたのだけど振ったの。別れた後に居酒屋でご飯たべたのが三茶で。そしたらまだ俺の女だって言われたんだけど。あれも三茶だった。彼と会ったのはそれが最後。あとは、元旦那さんと出会ったのも三茶。」それから、少し機嫌が良くなかった。思い違いかもしれないけど、なんか変だった。私の恋愛のほとんどが三茶だったことじゃなくて、あまり話さない元夫のこと?
私は別に周ちゃんの前の彼女の話だって、前の彼女達とどうセックスをしてたとか平然と聞ける。私の話だって、笑い話のように色々を引張りだしてきては楽しませてあげることが出来る。だけど、一番最後の婚約者だけは別だ。彼女の事は未だに気になるし、私のジェラシーが見え隠れする度にばれないかとヒヤヒヤするときだってある。そんなこと、私の一人問答だってこともわかってるのだけど。
周ちゃんは昼からフィールドワークにでかけた。今日は近場に行くのだそう。私はフィルムのスキャニングとか、映像機材の事とか、一昨日にアップデートしたパソコンの整理とかをした。夕方に図書館に行って、無人販売所で夕飯用にほうれん草、トウモロコシ、ゴーヤを買って、最近ハマってる神戸のクラフトビールを駅前に買いに行った。「陽が暮れる時間がすごく気持ちがいいんだよ。」「へぇーそうなんだ。」「山がね、さわさわ言うの。ひぐらしの音も聞こえるし。山だとか空がすごくきれいなんだよ。風がね、昼はないのに、いい風がふくんだよ。」夕飯を食べながら話した。夏がきてから食卓が鮮やかになった。地場で採れる夏野菜のお陰だ。毎晩、食卓に並ぶ野菜の話をしてる。新鮮な野菜の味は濃いから調味はなるべく薄味にする。それが薄ければ薄いほどに、シンプルなほどに周ちゃんは喜んで食べる。
馬鹿みたいなのだけど、一度目の結婚のときも同じように思った。このままでいい。この時間が何度も何度も続くだけでいい。もう誰も愛さなくていい。このままどっちかが先に死ぬんだろうけど、どっちでもいい。ただ、それまで思い切りに愛していこう、って。人間ていう生き物は変わらなくて、馬鹿みたいだなと思う。一度目の結婚とは全然違うのに、一度目みたいな気持ちに落ち着くことがある。けど、周ちゃんとの結婚は圧倒的に違うものもある。それは何も望んでいなかったって事。私を幸せにして、子供を産みたい、誕生日は一緒に祝って。結婚してとも思わなかった。ただ、別々でいてくれればいい。それだけをお願いして結婚をした。今、想うことは、周ちゃんを幸せにしてあげたい。また大切なものを失うのが怖いんじゃない。過去を後悔してるわけでもない。ただ幸せであってほしいと願っていたい。お腹いっぱいでいて欲しいとか、ぐっすり眠って欲しいとか、そうして翌朝は寝坊してしまうくらいに寝て欲しいとか、朝ごはんを美味しい美味しいって口いっぱいに頬張って欲しいとか、無邪気なままに沢山のなにかに満たされていて欲しいと毎日想う。
最近、またハグの形が変わってきてる。それが具体的にどうなのかはわからないけど、ハグの中にあるものを掴むような感じが、何度やってもまた感じるそれが重ねても重ねても嬉しくなる。何度食べても美味しい好物みたいに。
ここ数日元気がない。理由は色々あると思うのだけど、多分仕事。これから何をしたらいいんだろう。なんだか急に不安になった。生活の基盤を整えることで今年の半分が終わって、ようやく落ち着いてきたと思った矢先にメインとしてた仕事がひとつなくなった。結果として良かったのだけど、忙しければ忙しいで忙殺される毎日に不満を言ったりだとか、色々を見過ごせる毎日に甘えてしまったりする癖に、面と私に向かう時間ができたら尻込みをつく。本当、人間って勝手なもんだなって思う。そうやって不安と共に過ごした数日。
だけど、よく考えてみたら、この2年ちょっとは生きることで精一杯だった。コロナが起きて離婚して色々が壊れて立て直して、ようやく落ち着いたと思ったころに結婚。そして田舎への引っ越し。さて、私はこれから何がしたいんだろう。オファーされた仕事だけじゃなくて、私がこれからしたいこと。後回しにしてきたこと。コロナの前に同じ紙面でよく顔をあわせるようなフォトグラファーの子達は最近立派に活躍してるのをインスタで見かけて少し驚いた。なんだか私ひとりが置いてけぼりみたいで少し引け目さえ感じてる。あのまま私も走り抜けたらどうなっていたんだろう。あの頃は、とにかく仕事、仕事。仕事が何より大切だった。チャンスがあってもなくても、私が、私が撮りたいって思っていたし、中身なんてどうでもよくて、印象の残るものを撮ること。ただそれだけで、月末に銀行口座にあちこちの会社からギャランティーが入るのを見て、これで良かったんだと理解した。
これからの人生、写真は私を感動させてくれるんだろうか。今日までで言えば、そこそこ膨大な写真を目にしてきたけど、ここ何年もパタリと出会ってない。綺麗な写真だとか雰囲気のある写真を撮る写真家は沢山知ってる。図書館で見たジョエロマイヤウィッツの海の写真が17歳の私の心を動かしたように、荒木さんの料理写真が料理写真の世界を覆してくれたように、女が写真を撮って生きることに、希望を持たせてくれるような、その魅力に翻弄されてしまうような女性の写真家に会いたい。そして、話をしてみたい。ただ勢いのあるような、ただ作品ばかり撮ってるようなものじゃなくて。もうそういうのは散々見てきたから、そうじゃないもの。あまりに美しくて衝動的になってしまうような写真。そんな写真を撮る女性に会いたい。
昨日ワクチンを打って夜中から少し熱が出た。
今朝はしらすトーストと、こないだの残りのカレースープ。撮影の日は周ちゃんが朝食を作ってくれるのがルーティンとなってる。周ちゃんのしらすトーストは丁寧で美味しい。しらすの置き方は均一だし、チーズやマヨネーズも丁寧に隅まできれいに塗られてる。私のとは大違い。だけど、実は私はいびつを好んでる。成り行きのある自然な感じ、例えば出過ぎてしまったマヨネーズとか、塗り忘れてるのか面倒だから塗らなかったのか、余白を残されたようなトーストの端っこなんかに愛を感じたりする。ロボットにお願いしたら上手にやってくれそうなものはタイプじゃない。だけど、周ちゃんのは特別。トーストの隅まできちっとしているのは周ちゃんらしい。
青山のスタジオで撮影を終えて急いでタクシーに乗って駅に向かった。池袋で行きたい眼鏡屋がある。どうゆうわけか疲れていても買い物はしたいし出来る。お店を二往復くらいしてから店員さんと色々と話をした。幾つか気になっていたブランドがあったけれど、結局またayameにした。4本目のayame。そして、今回こそ黒いフレームにしようと決めていたのにブラウン。でもとっても気に入ってる。眼鏡を新調するって、美容院へ行くみたいな気分。まるで新しい人生が始まるような気持ちになる。
朝食に周ちゃんがパンケーキを焼いてくれた。黒磯で一緒に仕事をしたワカナさんから連絡があって先日の映像の仕事が決まったとのこと。嬉しい!それから、久しぶりに高木さんから料理の仕事が入った。引っ越す間際にギャランティーの事で断った仕事がある。交通費や移動費が東京で暮らしていた時のようにはいかない事を心配してしまったことが理由だけど、なんだか胸に引っかかってたから嬉しかった。
引っ越してから、より一層に心理学を勉強したいと思ったり、もう作品は作らなくてもいいんじゃないかと、今は新しい生活や家庭の中で生きていく事だけで十分なのかもしれないっていう気持ちになったり、だけどやっぱり、すごく料理が撮りたかった。フミエさんとの本づくりのリサーチで本屋に通ってはいるけど、前のように左上から右下まで片っ端まで舐めるように本を漁らなくなった。闇雲に頑張るのはもういいんじゃ無い?って気持ちとか、いい歳だし今更やってもさとか、もう十分かもよ?っていうよくわからない自分への言い訳がましい諦めとか、なんだろう。毎日や新しい生活に甘えていく自分がいた。そうじゃなくて、きっとこの生活はこれから私を支えてくれるはず。もう、夜中のタクシーに怯えなくていいし、ベッドサイドにあるデジタル時計の数字だけがどんどん増えていくのを数えなくていい。朝は綺麗にやってきて、行ってきますを聞いてくれる人がいて、今にも泣き出してしまいそうな気持ちを押し殺しながらシャッターをきらなくていい。もう、私は自由なんだった。急いで家に帰らなくてもいい。急いでスーパーに寄って帰ってご飯を作らなくてもいい。ポッケの中で鳴り続ける電話を無視しなくてもいい。右を向いても左を向いても何処にいても自由なんだ。
夜は自転車でスーパー銭湯へ行って、帰りに山田うどんに寄って帰った。早く車が欲しい。
私みたいに怒るフリをする周ちゃん、すごく不恰好ですごくブサイクだった。すこし怖くも見えた。周ちゃんの目には私があんな風に映ってるんだと思ったら哀しくて恥ずかしくて言い訳の為にずっと拗ねていたいような、もうこのままそんなブサイクな人になってしまえばいいやと自分に嘘をつきたくなるような、エスカレーターに乗りながら頭が猛スピードで混乱した。本当にいや。すごく嫌だ。
一昨日にトイレに水没した携帯。結局、今日になっても電源はうまくつかず、駅前の楽天モバイルで新しい携帯の契約をしに出かけた。昨日、店へ行ったとき、店員さんが契約に関する持ち物を丁寧に教えてくれたけれど、そこに楽天IDは無かった。いざ今日契約をしようと行くとまず楽天IDがないと出来ないと言う。もしくは新規で作りますとのこと。楽天銀行も楽天クレジットも持っているのに、どうしてまた別のIDを作らなきゃいけないんだろう。直ぐに自転車で帰宅して三度目の楽天モバイルショップへ。店では怒らなかったけど、契約が終わり店を出たあとに私の堪忍袋の尾が切れ始めた。
怒るってゆう感情を止めるのはよくないと思う。喜んだりわくわくしたりと同じ、様々な感情と一緒に肩を並べている仲間でいい。今回だって、店員さんが事前に教えてくれたら夏みたいに暑い日差しの下を自転車で急勾配な坂を上がったり下がったりハァハァと登らずに済んだ。そりゃ怒りたくもなるよ。だけど、。あんな周ちゃん。声を荒げたり、否定的な話し方、そして意地悪い顔をした周ちゃん。あんな顔、いや。だけど、周ちゃんは私のそんな顔をきっと見てたんだろう。なんて醜いんだろう。周ちゃんはふざけて私の怒る真似をしたのだろうけれど、そんなのは全く冗談なんかには見えなかった。だって、それは周ちゃんであり私なのだから。
私の内側と、私の内側を外側から見る景色。それは似ているようで全然違う。私達が同じ景色を見る時間が増えれば増えるほどに同じものに感じるような錯覚に陥ってしまう。本当は全然違うし、全然わからないのに。側にいるのに寂しい。手を伸ばしたところに背中があるのに寂しい。そんな気持ちになった過去がある。あの時の元夫と私はあまりに近くてあまりに遠いい場所にいたのかもしれない。私達は愛し合っていたんじゃなくて、きっと私は愛して欲しかった。
失うことを恐れるよりも、どうか私の隣にいる間は笑っていてほしいと思えば、もうあんな醜い私にはならないですむ。きっと。
今日も朝から腰痛。「じっとしてるより適度な運動がいいんだよ。」先日にぎっくりをやった周ちゃんが言った。「歩ける?」「うん。頑張る。歩いてる方が楽だよ。」梃子と裏山へ散歩へ出た。雨がポツポツと降り出した頃だった。腰痛はどんどん酷くなっていく。何をしても痛くて仕方がない。家の中での生活がままならない。トイレに座るのも痛いし、食事をする為に椅子に腰掛けても痛い。階段は両手両足を使っていつもの3倍くらい時間をかけて上って、下るのも手すりに這いつくばりながら降りた。ああ、どうなっちゃうんだろう。心配ばかりが募る。仕事の合間に夕飯のハヤシライスを作った。こないだスーパーで特価だったスペアリブを水で1時間くらい煮込んで、軽く痛めた玉ねぎと合わせて1時間くらい煮込んで、人参と最初の方に入れる予定だったトマト缶を入れて30分、ハヤシライスのルー、きのこをいれて20分。ソースで少しだけ調味して火を止めた。ご飯は周ちゃんが炊いてくれた。お米用の無水鍋だって持つのが辛かったから本当に助かる。
夕飯はいつも通りの時間に食べた。周ちゃんはハヤシライスを目をまん丸くしながら食べてる。「すごい美味しいよ!えーすごい美味しい!!」「ただ煮込んだだけで大したことは何もしてないよ。」「すごいよ〜!」「腰痛が治ったらもっといいものを作ってあげるから。」と約束した。腰痛が始まってから家事も料理も殆どを周ちゃんがやってくれてる。親以外でこんなに世話を焼いてもらったのはきっと初めて。元夫なんて高熱の私に忙しいからとポカリだって買ってきてくれなかった。そういえば、先日ドライブ中に周ちゃんと歴代の彼氏彼女の甘えん坊ワースト合戦をやった。「いつもは几帳面でキビキビしてる子なんだけど、朝とか赤ちゃん言葉で喋る彼氏がいてさ。パンツ一丁で 私の腕をさすりながら “なんでベッドにいないのぉ、ぼくぅさびしかったよぅ” って。」「えー!!本当にそういうのいるの!?」「全然いるよ。彼は中々だったけれど。長男だし、もしかしたら家の環境で親に甘えられなかったんじゃないかなって思うんだよね。」「あとは靴下履かせてと言う男とかかな。」「えー!靴下って自分で履くもんじゃないの?なんで?え、なんで??」「何でと言われても、履かせてと言うんだもの。え?って思ったけど履かせたよ。」それは彼氏ではなく元夫の話。周ちゃんには言わなかった。私が寝込んでも頼んだポカリを忘れたと嘘をつく元夫のこと。
朝の4時40分にアラームをかけてベッドに横になった。横になるのも一苦労。だけど、横になったらなったで体が固まって寝返りがうてない。「周ちゃん、くるっと横に押してくれない。」「いいよ。介護みたいだね。」と周ちゃんが笑ってる。笑い事じゃないよと思いながらも散々と甘えさせてもらった今日も心から感謝感謝と思いながら寝床についた。明日の撮影、本当に大丈夫なんだろうか。とりあえず雨予報は無くなって天気だそう。天気はいいけど、撮れなかったらせっかくの天気も台無し。とにかく寝よう。今は寝るしか出来ない。
朝一番に起きるのは私。その後、梃子が7時くらいに起きてきて、梃子が二度寝をしにベッドへ戻った時に周ちゃんを起こしてくるのがいつもの朝。今日も。書斎で日記を書いていると梃子が部屋に入ってきた。「てっちゃんお早う。」今日はこのまま抱きかかえていよう。日曜日だし周ちゃんはたまには寝坊した方がいい。朝食は目玉焼きご飯と残り物のおかず、納豆、キャベツと揚げ麩の味噌汁。今日は初めて畳の部屋で食事をした。テーブルは買ったばかりのちゃぶ台。私が数ヶ月にわたり周ちゃんにプレゼンし続けて口説き落としたテーブル。中々、高価な買い物だったからか、ずしりと新しい生活に根をおろしたような気持になった。
昼頃から庭の土おこしを始めた。周ちゃんはポカリスエットのCMにでも出てきそうな清潔感たっぷりのTシャツ姿で大きなスコップで汗をたらしながら土を掘りおこしてる。私はその脇で掘りおこした土の根や雑草をとり続けた。今日の庭仕事は土を整備し、昨日買った金木犀の木、ミモザの木、トマト、胡瓜、茄子の野菜の苗、それから、私がマンションのベランダで育てたハーブや月桂樹の木、巨大アロエを植えること。暑い初夏みたいな午後はどんどん過ぎていった。玄関横に前の人が育てていたらしいミントの香りがする木を見つけて林檎箱に植え替えたりもした。途中で周ちゃんがコンビニで買ってきてくれたシロクマアイスを食べたり、アールグレイのアイスティーをいれて飲んだ。ああ、暑い。時間は16時前、ようやく色々が片付いて遅い昼食に素麺を茹でて食べた。冷やし素麺は今年初めて。氷を沢山入れて冷え冷えにした。
ああ、土いじりって気持ちがいい。だけどちょっとまた熱中症気味。身体が重い。夕飯を食べながら高橋くんの話になった。「昨日は楽しかった?」「うん。高橋くんの3箇条、楽しかったね。よしみがメンターみたいだったよ。」「楽しかったね。けどさ、1つ目については心の叫びに聞こえたよ。」「うん。俺も。聞いてて辛かったよ。優しさというより、痛みにきこえちゃってさ。」「うん。私も。だけどいいと思う。こうやって人は自分の人生を選んでいくんだよ。」
人生って平等だなって思う。地獄みたいな日々を過ごしていた時期は世界を恨んだりもしたけど、選んだのは私だったと今となっては自覚してる。まさか愛した男に酷い事をされるなんて想像はしなかったけれど、あんなに酷くなる前に逃げる選択は十分に出来た。言葉を変えるなら、いなくなる選択肢は愛する選択と平等に持ち備えていた。世界中の人が平等とは思わないけど、私の人生においては平等に出来てる。幸せにも不幸にもなれる。しっかりと今日まで選んできた。だから、高橋くんが優しい人を求めるのは、もう愛した人に傷つけられたくないと切望するのは、高橋くんのこれからの人生の希望であり道筋になる。次に会う人は優しいだと思う。大丈夫。「1つ目は中々見つけられないよね。」って高橋くんは言ったけれど、「自分を信じれば大丈夫だよ。」って伝えた。優しい高橋くんは、優しい人に出会う。もし優しくない人に出会ったとしても、もう愛さないと思う。
朝食は周ちゃんのスクランブルエッグ。今日は少し甘め。午前に色々を終えて、午後は周ちゃんと約束してたミュージアムにカレーを食べに行った。今日は天気がとびきりいい。新しい自転車に乗って一緒にミュージアムまで走った。周ちゃんはカジュアルなスーツスタイルに黒いリュックを背負ってる。桜並木の中で桜の花が散ってゆく。なんて綺麗なんだろう。だけど目も花も花粉で痒くてたまらないし、マスクの下では私のニヤニヤが止まらない。好きな男のスーツスタイル、私の大好きなものの一つ。
周ちゃんは鯖のココナッツカレーを、私は定番のスパイスカレーにした。大きなローテブルにソファーが並んだ席に向かい合わせに座った。この食堂は一般の方も社員の方も食事が出来る場所らしく、ランチミーティングをしている人や、ミュージアムに遊びに来た感じの人がちらほら食事をしていた。カレーを食べる周ちゃん。紺色のブレザーに、紺色のパンツ。シャツは薄いグレー。髪はいつもの天才作家のようなボサボサ頭じゃなくて、ちゃんとセットされてる。薄いフレームの黒縁のメガネ。姿勢がいい周ちゃん。爽やかさが溢れてる。ああ、かっこいい。こんな男をレストランで見かけたら3秒で恋に落ちちゃうよ。カレー半分、周ちゃん半分のランチタイム。至福だった。「どうしたの?」ニヤニヤが止まらない私に周ちゃんが言った。「いいよ。すごくいいよ。周ちゃん。」私の回答はまるでエロカメラマン。
少しオフィスを案内して貰ってコーヒーを飲んでバイバイした。駅前で爪の手入れを2年ぶりくらいにして、西武のGUでパジャマを買って、OKストアーでこないだ買って美味しかった会長おすすめの鯖を買って帰った。GUのパジャマを着るとなぜか周ちゃんが喜ぶからもう一着買った。楽しい爽やかな金曜日。
朝食は目玉焼きを焼いてご飯にのせた。周ちゃんは出会った頃は半熟派だったけど、最近は私のしっかり両面焼きにはまってるらしい。今日は駅前のビッグカメラで赤い自転車を買った。紺色にするか迷ったけど、店内で赤い自転車をまたいで試乗する私に「よしみは赤が似合うよ。」って言った笑顔の周ちゃんが良かったから赤にした。ハンドルもタイヤも赤。埼玉の田舎を走る赤い自転車。ちょっと恥かしい気もしたけど、まぁいっか。