
母の病院が終わったのは10時過ぎ。駅前のエクシオールカフェでミルクレープをふたりでつついた。母はコーヒーを、私は冷めた紅茶をすする。結局、1時間くらいここで待っていたらしい。都内は雪が降ったって結局、普通の朝なんだよな、なんて窓からの景色を眺めたり、勉強する学生らしき人や仕事するサラリーマンを横にケータイをいじっていたらあっと言う間に時間が過ぎた。
「夜の取材はリモートになりました」と、リリさんからLINEが入る。母を千葉へ送り、用事を済ませて帰宅したのは15時前。周ちゃんが駅に車で迎えに来てくれたけど、池袋で牛タンを食べたことは言わなかった。立川の病院で色々あって辛かった時に、いいものを食べようと入ったのが牛タンのねぎし。ランチにしては高い。だけど、今日は、あの日みたいに私にいいものを食べさせてあげたかった。別に哀しいことがあったわけじゃなくて、なんとなくそうしたかっただけ。
夕飯は鍋にして、取材はその後に始まった。終わったのは23時半。やっぱり、東京に戻るかもしれない。リリさんと初めてお会いしたライターさんと、まるで初めてじゃないみたいに話しながらそう思った。
リリさんが、私の若かりし頃のことを、よしみさんは「逃げ回っていたんですね。」みたいなことを言ってたけど、確かに、ああ、そうだなって。ライターさんは、世代が一緒だし、東京出身だし、テクノ作ってたし、おばあちゃん家と同じ石神井が実家だし、それだけじゃなくてなんとなく、10代20代と世界が怖くてダサくて嫌いだと逃げ回っていた私と少しだけ似てる気がした。
東京出身の友達と前に似たようなことを話したことがあった。東京はダサい。高校生の時、20歳を迎える時、ずっと東京にいる自分たちは冷めた目で大人を見てたよねって。
むかしの自分は馬鹿すぎて可愛。



