今日は6年ぶりにライターの柳澤さんに会った。初めてお会いしたのは神保町の蔦が生い茂ったような喫茶店だったような気がする。暑い夏の日で店内はすこし薄暗かった。その頃はまだ料理写真を始めたばかりで、いつか料理本を撮ってみたい。だけど、どうしたらいいんだろう。料理写真の何が正解なのかもまだよくわかっていなかったのに、とにかく料理本が撮ってみたい。そう思っていた。だけど、それは夢みたいなものでもあった。
その頃は編集者の友達なんて全然いなくて、出版社に出入りしているざおーに相談すると、先輩を紹介してくれた。それが柳澤さんだった。そして、その1年後くらいにたまたまリンネルの撮影で長野でご一緒して、撮影が終わってから長野の街を一緒に歩きまわったりもした。森岡書店の森岡さんのお手伝いをしてる、とか、器が好きだとか、文を書く以外のことでも、気が赴くままに働き生きてる、私の知らないずっと遠くにいる大人の女性って感じだった。
今日は料理の撮影。現場で数時間ご一緒して、帰り道もずっとお話をしてわかったことがある。この不思議な空気感は大人だからじゃなくて、柳澤さんのものなんだ。掴めそうで掴めないようなふわりとしていたもの。それが何なのかはわからないけれど、側にいると、とても心地がいい。
それから、もう一つ、すごく驚いたことがあった。それは、ご近所さんだってこと。以前に仕事が遅くなったら渋谷とかに泊まってると聞いたことがあったけれど、まさかのまさかだ。
帰りの電車で、「この土地の好きなところを3つ教えてください。」と、聞いてみると、1つ目に湖、2つ目に裏山、あとは、湖までの遊歩道がいいとか、有名な建築家らしい人が作ったという森の中にある墓地を教えてくれた。酒好きの柳澤さんのことだから、酒の店の話になるだろうと予想していたけど、実際にその場所に立ってみないとわからないような、目を閉じても肌が感じるような場所ばかりだった。写真では簡単には撮れないであろうもの。形あるものを撮るのは簡単だけど、感覚的なもの、例えば、光景みたいにその場所を全身を使って感じるものを写真にするのは難しい。だけど、記憶の中に五感で残るものはずっと掴んで離さない。恋をした日に聞いた誰かの唄や、泣きながら食べた味のわからないご飯とか。
今度、近所で飲みましょうねと約束をして、LINEを交換して別れた。