夕飯

Journal, 夕飯 05.7,2023

毎日のもの、例えばオムレツの形だとか、そんなことがあまりに愛おしく思えた日だった。

生理が近いのかな、今日は珍しく車に乗るのが怖いと思った。こういう日はなんでも怖い。胸のあたりがざわざわする。「やっぱり電車で行こうかな。」「もう免許とってから、半年乗ってるのだし、技術的に言えば何も問題ないよ。だけど、怖いと思うなら電車で行ってもいいんじゃない?」周ちゃんが言った。免許取り立ての頃は不安に思う日があったけれど、今日みたいな気持ちは久しぶりだ。

どうしよう。迷っているうちに時間だけは勝手にすぎていった。もう出る時間だ。急いで機材を積んで出発した。いつからそれが消えたのかはわからないけれど、車を走らせて10分も経たないうちに今朝いきなりやってきた恐怖はどこかへ去り、いつものように走っていた。畑には少し早く着いた。今日は映像の撮影。

映像を撮り始めたのは2年前。その時の映像を見た角田さんが声をかけてくれた。角田さんは、時々、驚くようなことを言う。知らない時間のことを知っているかのように話しだす。今日もまたそんなことを言ってた。

午後はキッチンでの撮影。和彦さんがいつものように角田さんのお手伝いをしてる。髪がさっぱりしていて夏らしかった。ふたりは時々、喧嘩してるのかな?って思うことがある。かと思えば、楽しそうにふざけあって話していたりする。まだ出会って半年くらいしか経ってないけど、たぶん喧嘩はしてない。じゃれてる。そんなことも少しづつわかってきた。

和彦さんがオムレツを焼いて、角田さんが、あ、いつものねって顔をした。「真帆ちゃん、あぶないよ。」和彦さんが角田さんのことを真帆ちゃんって呼ぶ音がどういうわけか、すごくすきだ。何度か和彦さんが角田さんに言った。角田さんのトウモロコシの切り方を心配してる。

「オムレツ、この形は綺麗じゃないけど、こうゆう綺麗じゃない方が美味しかったりしますよね。」真ん中でぱっかりと割ったオムレツ。私には潔く黄色だけのオムレツは綺麗に見えた。

和彦さんは途中で歯医者に出かけて角田さんとは陽がくれる前まで話した。帰りに渡したいものがあると言い、アロマのスプレーをくれた。

生活がすきだ。本当にだいすきだ。そこだけに存在する会話、風に揺れる洗濯もの、割れたオムレツ、夕方の音が部屋に入ってきて、キッチンは薄暗くなっていく。

綺麗じゃない方が美味しかったりする。その言葉が染み渡るようにわかる。だけど、私にはそれがあまりにも愛おしくて仕方がなかったりもして、ただ嬉しかった。綺麗だった。写真は撮ってない。撮れば良かったと後悔する気持が半分。残りは無理に撮るよりもここにしまっておきたいという気持が半分。

最近、写真からは離れてる。だけど、より近づいてるような気もする。