夕方から編集の成田さんとリリさんと東長崎にあるイタリアンで飲んだ。RiCEの東京特集で取材した店だそうで、素敵なお店だった。成田さんの最近の恋の話をつまみにリリさんと私とあれやこれやと勝手なことを言って飲んで食べて、ほどよく酔っ払って、店をすぐ隣にあるMIA MIAにかえて、ドーナツにかぶりつきながら、またワインを飲んだ。リリさんはアマレットが入ったカフェオレを注文。小さな街の日曜日の夜、どこからともなくやってきた若者だとか外人だとかでごった混ぜになった熱気むんむんの店内はのぼせそうだった。私もカフェオレだったなと後悔。
出来るだけ静かな場所を探して逃げ込むようになったのはいつからだろう。成田さんの声が遠くに聞こえたり、見知らぬ男の子と目があったり、全部が懐かしい感じがした。あの人たちは今どこで何をしているんだろう。夜だけしか会わない友達もいたし、名前を知らない友達もいた。今は子供とサザエさんでも見ているんだろうか。バカみたいに真夜中を共にして、泡のように全部消えていった今、かすかな記憶だけが残ってる。どこまで行っても終わりの見えないような長い時間を費やしたはずなのに、死ぬ時には思い出さない気がする。それくらいに少しだけしか残ってない。
リリさんは編集という仕事が自分には合ってないと言ってた。成田さんはこないだ紙面でタイの取材をしてからより一層に海外の仕事を増やしたいと言ってた。二人の対極的な話をそうかそうかって聞いた。自分にいつも正直でまっすぐなリリさんと、どんなことがあってもくじけずに前へ向かおうとする成田さん。それぞれにそれぞれの人生があって、これからはまたそれぞれになっていく。私がもうきっと会わない友人たちも、それぞれにどこかへ向かって行ったように。
久しぶりに会った二人と、久しぶりに飲みすぎたお酒。駅まで迎えに来てくれた周ちゃんは起きて待っていてくれたんだろう。眠そうな顔でハンドルを握る。ああ、変わったんだと思った。私が自分で決めた人生だ。田舎暮らしも、大学生活も。スムーズに感じられないのは、なんだかしっくりこないのは、私が勝手にしたこと。あのまま東京にいたら、ずっと同じでいられたのに。変わるのは孤独で不安で苛々する。
ふたりに会えて良かった。