7月のハードな試験を終えてから駆け抜けるように暑い日々が過ぎ、念願だったバリでは青い海で泳ぎ、ようやくって感じで日常が帰ってきた気がした。ゆるゆるとクラゲのように何色だかどんな形だかわかんないようなままに夏は終わったけど、思ってた以上に人に会ったし、ストレスが溜まっていたんだろう、それなりにダラダラと過ごせた。そして、ホルモン治療に入らなかったことがきっと原因で体調はあまり良くなかった。そして、極め付けは細菌性胃腸炎。免疫力低下のせいで2週間近く苦しんだ。
人生において、こんなに体調が悪いことってあっただろうか。年齢の問題もあるかもしれないけど、生粋の健康オタクの私が、風邪だってまずひかない、昨年の健康診断がオールAだった私が、こんなにまで体調を崩すなんて。だけど、実際には身体のことよりも、前から降ってくる生きづらい日々にノックダウンされたのは心だ。
そして、体調不良の原因の一つが菜食だったからということもショックを受けた。否応なく、20年間続けたベジタリアンをやめた。肉食になったことで子供にピーマンや人参を騙し騙し食べさせるように、どうにかこうにかして肉を食べはじめた。これが思っていた以上に辛い。口にする度にうぇーと心で小さく叫ぶ。身体のためとは分かっていても、思っていないことをするというのはやっぱり苦しい。
今宵も肉をうぇーと思いながら食べていると、どんな話の流れからだったのか、周ちゃんが大学での勉強のことを褒めはじめた。夏は全然ダメだったし、体調も悪くてとにかく苦しかったと伝えると、「40歳を過ぎて大学へ行こうなんて思うだけですごいよ。」「え、思うだけで、勉強は全然できないよ。」「半年前はどうだった?」
半年前は4月。まだ大学に入学してほやほやだった。あの頃は、教科書を1日20頁くらい読まなきゃいけないのに、1頁読むのに1時間かかっていた。専門用語だけじゃない、普段聞いたこともないような日本語が山のようにやってきて、圧倒されっぱなしだった。出来る事と言えば、怯む身体をどうにかこうにか倒れないようにと踏ん張ることくらい。夏までの数ヶ月間の記憶がほとんどない。絶対に逃げない。全身の中でその言葉だけが山びこみたいにこだましていた。
周ちゃんは明日から新しい会社での仕事。学芸員という肩書では無くなるけれど、コミュニケーションデザインとか、アートと暮らし、地域、、。よくわからないけど楽しそうな仕事が始まる。今日一日、何度も「明日の支度しなきゃ。」と言ってた。緊張しているんだろう。周ちゃんのことだ、前日に支度を始めるなんてありえない。
「もっと自分を褒めてあげていいんだよ。」夕飯の最後に周ちゃんが言った言葉だ。周ちゃんは勉強の事となるといつもの1.25倍くらい目が真剣になる。今日もそうだった。それは周ちゃんが苦労してきたからだし、沢山勉強して、イレギュラーな道で学芸員になって、今度はずっとやりたかった仕事に就く。勉強が周ちゃんという人の人生を作ってきたからだろう。好きと消去法だけで生きてきた私とは大違いだ。
どうしてだろう、がむしゃらに走ることは出来るのに、自分を褒めてあげる?そんなの難しい。だけど、褒めてくれる人が隣にいるんだと思うと、今までとは違う感じがした。
頑張りたい。