咳が止まらない。周ちゃんは早朝に千葉へ向かった。まだ外は真っ暗で、わたしはもう一度ベッドへ潜った。最近は早朝の勉強はしてない。病院の先生に「寝なさい。」と言われたから。頑張ることは簡単だけど、頑張らないっていうのはちょっと難しい。月末まで忙しいのに、睡眠も削れない。完全に板挟み状態。
携帯なんて殆ど見ないのに、今日は一日中、周ちゃんから返ってこないメールを何度もチェックしてうんざりした。全部捨ててやろうかと思ったりもしたし、とにかく心が忙しくて苛々する。ここが東京なら、適当な夜の中に消えたい。公園でもどこでもいいから、冷えたビールを飲んで、全部なかったことにしたい。結婚も今も全部を全ての時間を。知らない人と話して二度と合わない人と笑ってバイバイして、また飲んで。
どうしたらこんなに真面目になってしまったものかと後悔するけど、あのまま適当に生きていたらと思うとゾッとする。気づけば、いい加減になれなくなる日がきて、思っている以上にかちこちになった。だから、せめて男くらいは適当に遊んでおくべきだったのに。滑り込むように結婚して、寂しくて1日中携帯がそばにある日が来るなんて。うざったいし疲れる。嫌な女。ダサい女。
星野源さんを聴きながら日記を書いてる。周ちゃんはまだ帰ってこない。昔、豪くんと一緒に住んでた時によく星野源を聞いてた。豪くんがかせきそーださんの事務所から帰ってくるまで。恵比寿の駅前のマンションで今は下の階に有名な火鍋屋がある。夜になると、よくベランダに座ってタバコを吸った。豪くんのことは朝から晩までとにかく大好きだった。
豪くんと数年前に会った時、どうして会ってくれたんだろうって思ったけれど、きっとちゃんとバイバイを言えなかったからだろう。いい男なのか、そうじゃないのかよくわからないけど、私は豪くんが考えてるほどあの日のことを想ってない。結局、サヨナラなんてそんなもんだし、だから、久しぶりに会おうだなんて言える。
周ちゃんとは恋愛せずに結婚したけど、もし、恋愛してたら結婚してなかったかもしれない。