
世界は変わったんだ。今更だけど、ようやくそう思えてきたように思う。大学も卒業して、骨折も治り、桜の木も少しずつ淡くピンクに染まってきている中で、色々と私を取り囲む世界が変化していることを実感してきた。昨日、昨年にL.Aでヘレナに勧められたトリートメント剤。なんとなく使わずに1年が経ってしまったけど、急に思い出して使い始めてる。遅れた時間を取り戻すように。
早く使い切ってしまいたい。なんだか、過去のままにいるような気がして、通常の3倍ぐらいの量を短くなった髪に塗ったくった。そして、流して出てくる筈だった。けど、どういうわけか流さずに風呂から上がった。
なんか、髪がベトベトする。周ちゃんに流し忘れたことを伝えると、「気持ち悪くないの?俺ならすぐに流すけど」だった。別に気持ち悪くはないけど、ちょっと気になる。洗う?いや、別にいいや。髪をよく拭いてそのまま寝た。周ちゃんの返答が想像と違くて驚いたけれど、正直、ベトベトであってもいいやと思った。誰かの一言が気になって眠れなくなるような夜もあるのに、驚くほど雑になれるときもある。人間なんてそんなもの。
週初めにりょーこちゃんに会った。二人でむさこの居酒屋で17時から飲んだ。りょーこちゃんと飲むなんて、最高過ぎる。ずっと大人になってから友達になったのに、出身地も同じで、同じような文化圏内で同じようなものを見て大人になり、ダサいかダサくないかだけが全てだった私たちは、りょーこちゃんは編集者になり私は写真を撮る人になった。そんな話も少しした。もちろん、今はダサくてもダサくなくてもどっちでもいいのも同じってことも。
私がまだアシスタントだった時に、りょーこちゃんは既にバリバリの編集者で、私が独立する頃にはもう編集長になっていた。色々を知っていたけど知らないままに仕事をするようになって、仲良くなって、友達になったけれど、紹介してくれた元CINRAの横田くんの話になって、横田くんが私をアサインしてくれたのはきっと師匠のバンドのファンだったからだとか、そもそも横田くんと会ったのも不思議な出会いで、イラストレータのジュンオソン君が、私が “GR 誰か買わない?” とツィートしたのを見かけて、カメラを探してた横田くんを紹介してくれた。確か、終電がすぎるような時間の渋谷の宇多川町にあるカフェで初めて会った。だけど、たぶん、そこから仲良くなった。横田くんとりょーこちゃんはソニー繋がり。二人は元同僚の編集者で、横田くんはりょーこちゃんのことをめっちゃ尊敬してて「りょーこさん」って呼んでた。
いろいろをやっぱり思い出した。そうだ。りょーこちゃんは、昔、ずっと遠くにいる人だった。同い年とは思えないようなキャリアとセンスで、遥か彼方遠くできらきらと輝いてた。
けど、どういうわけか、ぐっと距離の近い友達になって、仕事も沢山した。それから、どうしてりょーこちゃんが当時、私に写真をお願いしてくれたのかって話もしてくれた。初めて聞いたかもしれない。あの時は、どうして私なんだろうと思ったし、りょーこちゃんが私も憧れるフォトグラファーの方々と仕事をしてるのも知ってた。だけど、あの日々のことを振り返るように、何度も写真のことを褒めてくれた。あと、それから、これからもずっとそれが仕事じゃなくても、見ていたいって。
この現実から目を逸らしたくなるぐらいに、沢山が満たされた日だった。こんな時間を貰ってもいいんだろうかって怖くなるぐらいに。数日経った今日まで、蓋をしてしまいたくなるほどに。
今日は夕方に恵比寿の写美に鷹野隆大さんの展示へ行った。もちろん、一人で。周ちゃんを誘おうかと思ったけどやめた。周ちゃんといるのは楽しいけど、私がなくなってつまらなくなる。それに、周ちゃんが次男だなと思うのは、なんでも私がやることを真似たがるところだ。それは、末っ子の放置されて一人遊びが世界の中心だった私にとって、正直うざったく見える。
もちろん、家族としては最高だし、周ちゃんのことはどんどん好きになっていくけれど、これ以上わたしを薄めたくない。家族である前に、私の人生があるのだから。あと、鷹野さんの写真は最高だった。10年ぐらい前に写真を見てもらったことがあって、声を出さずに眺めた顔は眉間にぎゅっとシワが寄っていたことぐらいしか覚えてないけれど、あの人、すごい人だったんだなと思った。あの時の私には、鷹野さんの写真はすごく難しくてわからなかった。
いい写真に出会うと本当に幸せな気分になる。本屋にたまにしか行かなくなってから、写真はinstaやネットで膨大に見てる筈なのに、昔よりもずっと写真に触れてるのに、これだと思う写真に出会えることはやっぱり増えていかない。綺麗な写真はもちろん山ほどあるし、新しい写真に出会うこともある。けど、心が揺さぶられるような写真だとか、説明できない写真、ぐっと胸を掴んで離さないものは、こうして、稀に出会うことがある。そして、そういう写真に出会うと、勇気がでる。あと、まだまだ生きてていいんだって気になる。
ご褒美みたいな日々が続いてる。