
周ちゃんは台湾から帰ってから展示の準備で出張続きだ。昨晩も夜遅く帰宅したというのに、土曜日の朝から埼玉のドレス屋で結婚して3年も経つ奥さまのウェディングドレスのフィッティングに付き合わされている。
「これだね!」
あれだけ、結婚式だのなんだのってものには興味がないと言っていたのに、周ちゃんは「夫」みたいな顔して、「夫」のように、私のドレスを判別してる。事実、周ちゃんは私の夫なのだけど。
コロナ禍だったからじゃなくて、私は結婚(式)2回目で、彼は興味がないという理由で結婚式はあげなかった。だけど、父の死を見て決めた。リビングに飾ってある父と母の結婚式の写真は私も大好きだったから。母と父、その隣に立つ親友のヘスや仲間たちが笑顔でこちらに向かって、それがずっと今日までずっと笑ってたから。そして、父がいなくなっても、あの日はずっと今日も幸せのままここにある。そう思うだけで、なんだかすごく安心して、世界が嫌いだとは思えなくて済んだからだ。
父が死んでから写真への見え方がまた一つ変わった。