
今日はポークカレー。おかずはレタスのサラダ、胡瓜とチキンの台湾風和え物、納豆、大根のおしんこと、ぬか漬け。レタスのサラダは最近むちゃくちゃハマっていて、近所の畑で採れたてのものが手に入ると、塩とオリーブオイル、塩と海苔と胡麻油とか、シンプルな味付けにして半玉くらいペロッと二人で食べる。少しいつもより遅く帰宅した周ちゃん。「家庭の匂いがする〜。」って嬉しそうに何度も言ってたけど、ここは私たちの家庭だよ。

今日はポークカレー。おかずはレタスのサラダ、胡瓜とチキンの台湾風和え物、納豆、大根のおしんこと、ぬか漬け。レタスのサラダは最近むちゃくちゃハマっていて、近所の畑で採れたてのものが手に入ると、塩とオリーブオイル、塩と海苔と胡麻油とか、シンプルな味付けにして半玉くらいペロッと二人で食べる。少しいつもより遅く帰宅した周ちゃん。「家庭の匂いがする〜。」って嬉しそうに何度も言ってたけど、ここは私たちの家庭だよ。

夕飯にカレーを作った。久しぶりのカレー。「今夜はカレーだよ。」聞いた周ちゃんの嬉しそうな顔を鮮明に覚えてる。可愛かったな。カレーであんな顔するんだ。

週末だけど今日は周ちゃんには会わない。色々が溜まっているし、ひとりの時間が猛烈に欠けてる。このままだと、一ヶ月後にはカスカスで砂漠になってしまう。「週末はやりたい事があるから別々に過ごしたい。」金曜日に周ちゃんに言った。だけど、夜に新しい家の家財道具の打ち合わせをしたいとお願いした。
今日の全てが私の時間だと思うと最高。花粉の所為で外には出れないけれど、ベッドでデスクで思う存分に過ごした。時々、携帯をチェック。周ちゃん、何してるんだろう。天気がいいから自転車でフィールドワークにでも出てるんだろうな。うん、私は私の事をしよう。夕方に打ち合わせの時間を聞いても返答がない。あれ、おかしいな。もう19時を過ぎた。どうしたんだろう、いつもなら直ぐにメールがあるのにな。お風呂に入って、少し心配になってくる。もしかして自転車で事故を起こして死んじゃったとか?ああ、ダメだ。まただ。トラウマ全開だ。過去の痛みがあちこちに根付いたままだ。元夫は何度も何度も酷いことをしてきたけれど、周ちゃんは別の人間。それなのに今に過去の恐怖を重ねようとしてしまう。同じように私はまた不安になろうとしてるけれど、そんな必要は無いよ。もう大丈夫。大丈夫。
20時頃、周ちゃんからメールがあった。”今日は展示で都内をあちこちと回っていたよ。今は六本木。” じゃあ、うちに泊まったらとなった。一昨日に会ったばかりなのに心が弾む。私の夕飯はカレー。先週オオゼキで買った豚バラで周ちゃんにと漬けておいた塩豚。勿体無いからとカレーにしたけど、塩気の所為でしょっぱくなってしまった。美味しいけどしょっぱい。何とも悲しい感じ。だからそっと蓋をして、周ちゃんには少しだけ残った塩豚を茹でて、後は小松菜の中華炒め、昨日商店街で買ったクリームコロッケ、残りの豆のサラダ、ボイルしたブロッコリーとマヨ、豆腐と白菜の味噌汁を作った。何だか嬉しい。カレーが隠れていてもいい。空の冷蔵庫をひっくり返してご飯を作ってるだけなのに楽しい。梃子みたいにはしゃいだ。
私の時間が失くなる事をずっと恐れていたけれど、今でも私の時間が大事だけれど、どうにかそれを守りながら片手間でもいいから周ちゃんに会いたいと思うようになってきた。結婚して数日。後数週間の別居生活。少しそわそわしてる。大好きなひとり暮らし。新しい生活。心はどちらも欲してる。

ライターの古川さんが俳優さんと話しているのを遠くで聞きながらぼんやりと思った。結婚の形はどっちでもいいや。私が温かい場所を望む限り私はいつだって幸せでいられる。今夜、周ちゃんに伝えよう。周ちゃんの好きな方でいいよって。
昨日の朝、結婚の話になって、私の今の気持ちとして法的な結婚を望みたいと伝えた。法的結婚に縛られて苦しんだ過去がある、戸籍には入ったり抜けたりした足跡もきちんとついてる。結婚っていうものが嫌いになった。事実婚を考えたい。言い出したのは私からだった。だけど、何だか考えれば考えるほどに私のそれは周ちゃんに失礼な気がしてきた。それに、未来を恐れてる限り結婚なんてしない方がいい。結婚したいと思ったのなら、私は堂々とまた誰かの場所に籍を入れたらいい。だって、結婚すると決めたのだから。
俳優さんが「あの仕事が色々なところでいい感じに繋がってるんですよね。」みたいな話をしていて思った。そう、いい感じに繋がっていくんだよなって。たまたまの出会いだとか、たまたま手にした何かだったとしても、その先はみんな選んでる。その人と仕事がしたいと思うのは、たまたまなだけじゃなくて楽しいから。一緒にいるときっと幸せな気分になるからじゃないかな。人ってよく出来てるから。嬉しいとか、楽しいとか、美味しいとか、幸せを見つける感覚がきちんと備わってて、放って置いても上手に幸せになれる。窓からの西陽が綺麗。冬の寒い日だってこうして暖かい場所があるくらいだ。世界は明るい。私が幸せになる為に未来を描く必要はないんだ。ただ、私が温かい居場所にいたいと望めばいい。それだけ。
一昨日に姉聞いたこと。L.Aのレストランで周ちゃんとのディナーで言ったんだそう。「よしみは離婚の仕方も知ってるから、あの子は大丈夫だよ。」そう、私はもう離婚の仕方を知ってる。あんな地獄みたいな離婚があっても、幸せになる方法を知ってる。大丈夫。私は大丈夫。それに、私がわたしの事を幸せにできるのなら、周ちゃんの事だって幸せに出来るはず。私の望みは一つで、それはもう持ってる。だから周ちゃんが選んだ方でいい。それで少しでも周ちゃんの不安が拭えるのなら、そうした方がいい。私は未来がどうなったって大丈夫。

昼寝ってどうしてこんなに最高なんだろう。1月2日から仕事を始めようと考えていたけど、昨年のカウンセリングの時にトレーニングで行ってた “何もしない日” をまた復活しようと昨晩に決めた。何もしない日は思いついた事を感情のままにする日。約束もダメ、家事も仕事もダメ。とにかく、赴くままに内声に耳を傾けるという試み。これが結構に効果てき面で、みるみる私の心は回復していった。
これから結婚生活が始まってきっと私はまたひとり勝手に窮屈になりそうな予感がしてる。周ちゃんはそんな私を放っておいてくれなそうだけれど、それさえも笑顔で交わしてしまうかもしれない。だから、私をコントロールする私を一切無視する日をまたやってみようと思った。そして、先日周ちゃんにも提案してみた。家族のルールとして毎週日曜日に周ちゃんの事だけを思う存分にして。そして、私の存在をどうか無視して欲しいと。「よしみは面白い事を言うね!やってみよう。」周ちゃんはいつもと同じように笑顔で言った。
午前はネットサーフィンと日記を書く。途中、ノンカフェインの紅茶とベーグルを食べて、ベッドに戻り姉と電話。「結婚って大変なもの。別に特別にいいもんじゃないよね。」みたいな話をした。これから周ちゃんはお互いに嫌いな所を見つける日がきっと来る。それが許せないかもしれないし、時に諦めてしまうような事もあるかもしれない。だけど、それが誰かと生きるっていう事だとも思ってる。今は殆どが見えてないだけ。別に結婚は夢じゃない。生々しく様々な日常がやってきて勝手にそれが紡がれていくもの。良い事も悪い事も同じ様にただやってくる。
「自分の一度きりの人生だから、自分が思うことをしたらいいよ。そうしたら酷いことが起きても後悔しないから。」姉が言った。いつか本を書きたいってよく言うけど、その壮絶な人生は上中下の三部作くらい長いものとなりそうだなと予想してる。なんだかんだといつも私の背中を押してくれる姉だ。周ちゃんとの結婚も一番に応援してくれた。私がくよくよしてたのが悪い。姉にしっかりしなよと言われて情けなくなった。誰になんと言われようが、結婚したいのはよしみなんだから堂々としなよって。電話の途中で兄からLINEが入ったけど姉と話してる事は言わなかった。今年も私達三兄弟は仲がいい。姉は数日前に兄と電話したそう。兄は少し元気が無かったらしいけど、励ましたと言ってた。もし、兄に何か大変な事があったら兄弟で助け合えばいい。兄の人生は兄ものだ。自由にやっていい。
お腹が空いて電話を切った。昼食は母が買っておいてくれた高級だと言う蟹とホタテでパスタを作って食べた。なんて贅沢なんだろう。時間は1時前、まだパジャマのまま。ソファーの陽だまりの中で本を読もう。梃子が横で気持ち良さそうに寝てる。本を読みだして30分くらい、うとうとしだした。ああ眠くて苦しい。苦しいよ。うん。寝よう。だって今日は何もしない日だものね。ベッドに勢いよく潜って1分も経たないうちに眠りについた。目が覚めると陽が傾いてるのがわかった。何時だろう。昼寝って最高だな。気持ちが良すぎる。こうなったら今日はもう顔は洗わないしパジャマも脱がない。このまま梃子の散歩へ行こう。
昼寝の余韻に浸りながら夕方を歩く。ああなんて幸せなんだろう。昼寝って素晴らしいよな。帰ると急に年賀状の続きをしたくなった。年賀状をやろう!やりたい時の何かって楽しい。本当に楽しい。年末に慌ててやってたのが嘘のよう。あっという間に年賀状を刷り終わった。お風呂でamazon primeを見て、コーラをグビグビと飲んで、煮しめカレーを食べる。先日、ツレヅレハナコさんが撮影終わりに言ってた言葉がずっと頭にあった。料理家さんっていう存在が大好き。一緒にいるだけで面白い話がほいほいと出てくる。「煮しめは飽きたらカレーにしたらいいよ。」なるほど!昨日母が持たしてくれた煮しめは飽きてないけどルーを入れてカレーにした。冷蔵庫に茄子が一本入ってる。素揚げにでもして乗せよう。あとチーズも!
茄子は周ちゃんの好物。今まで茄子は麻婆茄子とかトマトスパゲッティーに入れると美味しいよね程度の関係だったけど、最近茄子を見かけると心が疼く。茄子は関係ないのに茄子にも恋心が汚染してる。人って本当に単純だと思う。周ちゃんに会いたい。数日前にビデオ通話で隠し撮りしたキャプチャーを見てはニヤニヤしてる。ほんと、男前だよ。特に朝のシャワー浴びたての顔が気に入ってる。今日は最高の正月だったな。

周ちゃんが来たのは21時半過ぎ。私は後藤さんと青山でバイバイして急いで家路に向かった。後藤さん、可愛かったな。あの無邪気な笑顔を見ると、この笑顔を放っておかない男が世界にどれだけいるんだろうって想像してしまう。そして、私自身もどれだけこの笑顔に救われたんだろう。
今日は周ちゃんの事を報告して、デニムの話をして、年末に後藤さんの彼氏と3人で忘年会をする約束をした。楽しみだな。何だかすごく嬉しい。後藤さんは彼氏って発音がしっくりこないと終始笑いながら話してた。妻となり誰とも恋をしない契約をした筈の私達がまた誰かと恋に落ちる。色々な事をどう表現していいのかわからないのは私も同じ。むず痒い何かは私達の身体をじわじわと温めていく。彼のマサくんはとても素敵な人そう。早く会いたい。
周ちゃんは疲れたって顔をしてた。今日1日よく働いたのだそう。カレーを食べて、お風呂に入ったら、何かがチャージされた用でご機嫌だった。そのまま、今夜も深夜まで話した。どんな話をしたんだろう。大事な話もどうでもいい話も、とにかく楽しかった。明日は指輪を見に行く。

金曜日も中途半端なままに終えた。さっきまで頭がパンクしそうだったし、なんだかやるせなさで一杯だったけど、お風呂に入ってワインを飲んだらケロっとした。今日の失敗も新しい仕事の猛烈な量のニューな色々も、全部受け止めたという事で良しにしよう。足が地面に食い込むくらいに受け止めたと自負してる。だって、あれもこれも全部初めてだったじゃん。
朝に悲鳴をあげるようにパリのマユミちゃんに連絡。「チャミどうした?」「夜に話せる?」色々が落ち着いた頃、2杯目のワインと一緒にビデオ通話でお喋りした。パリはお昼。マユミちゃんはランチを食べてた。顔を見るのは1年ぶり。最後に会ったのは2年前。コロナが始まる頃にパリで。
2時間ちょっとダラダラとお喋りして、通話を切った。悲鳴の理由については半日も経ったから、もう私の中には殆ど残っていなかったし、ささっと聞いて貰った。話さなくても良かったかなと、人の悪口を言ってる様に聞こえて少しだけ後悔もした。先週の心理学の講座のホームプラクティスで、過去の苦い経験の程度を選んでトレーニングするものがある。「あまり苦しみの強いものは選ばないで下さい。もし大丈夫そうなら、もう少し苦しいものを選んで下さい。」日常に落ちてる様なライトな苦しみで試みる。「あ、全然何も感じない。」次にハードな苦しみと、苦しみの段階によって心の温度が変わるのを体感しながらトレーニングを行なっていく。
苦しみの大きさを測るうちに、苦しみにはサイズがある事がわかった。色や形、苦しみの種類で名前をつけたりして観察を進めていくと、苦しみが色々な箱に整理されていく。そうして、不必要な苦しみは捨てて、必要な分は取っておく。それは、これからもっと観察しなきゃいけないから、まだまだ苦しすぎて手放せないもの。
なんだかすごく面白いトレーニングだった。苦しみは面白く無いけど。

今日は日曜日。
先日にカウンセラーさんから言われた、「週末だけでも、頑張らないゲームをする日をやってみましょう。」の日。ワクワクと感じる事を何でも積極的にやる。特別な事じゃなくていい、朝起きて、まず食べたい物を食べるとかでいいのだそう。日常の中の小さな事。やらねばならない事は一切に手をつけてはならない。だけど、これが中々に難しい。午前は完全に間違えて携帯を片手にソファーでダラついた。そして、何だかダラつき行為に残念な気持ちになり、ちょっとだけ急ぎの作業に手をつける。翻訳の作業。ワクワクするわけじゃないけど、やりたかった。思えば、私のやらねばの中に嫌いな事はひとつも無い。全部好きでやってる。翻訳の添削を姉にLINEで投げると、電話がかかってきた。「ダラダラしてるー?」「ワクワクだよ!!」そこから3時間くらい電話で話した。私のワクワクタイムがどんどん失なっていった。
夕方に下北沢でカレーを食べる約束をしてる。駅前のパレットプラザで久しぶりにフィルムを買おう。これはワクワクだ!初回の方は200円引きというチケットをアプリを登録してゲットした。むちゃくちゃワクワクする!!!

昨晩のカレーを温めないで冷たいご飯の上にかける。冷たいカレーがいい。特に、朝に食べるのが美味しい。
仕事をちょこちょこ終えて3時くらいにウトウトし始めてリビングで横になる。ぼんやりと起きたのが4時。寝起きでサミットにビールを買いに行く。夕飯はお好み焼きを焼こうと考えてたけど、サーモン丼390円を買って帰った。人参の葉っぱと余ったキャベツ、お揚げ、卵を入れてお味噌汁を作る。頭が何だか痛い。偏頭痛かな。ん?何もしたくない。おかしいな。
日が暮れる部屋。少しだけずっしりとした。あ、もしかして。
お風呂に入ろう。夕陽の中で気持ちよく入った筈のバスルームがあっという間に薄暗い。光が塗りつぶされていくみたい。全部が厭だ。あ、やっぱりそうかも。生理まで後1週間。今朝までご機嫌だったのに、PMSだ。トラウマと比例して、前回の生理あたりからPMSが急激に薄れてきたけど肩の重さと偏頭痛。それにこの重力がかかったような倦怠感。Welcome to PMS。
お風呂後の恒例行事。ベッドで無心でヤクルトを飲む。この時間が何故か最高に好き。今日は空にうっすら光る月を見ながら飲んだ。そのままカーテン越しに夜を見てた。何分だろう。何分かしばらく見てた。新婚旅行のアイスランドみたいな空だった。どうして私、ここに一人でいるんだろう。私達、病気さえ無ければいつも仲良しだったよね。私が写真で稼ぐようになったからダメになったのかな。
あ、PMSの後悔が始まった。ご飯、食べよう。お味噌汁を温めて、冷蔵庫のオカズを幾つかとさっき買ったサーモン丼を出した。ビールをあける。もう、いい。今日はさっさと寝よう。時間は19時半過ぎ。何時だっていい、今日を終わらせてやる。有無を言わせず降参でいい。
ベッドにPCと携帯を持って入った。LINEがさっきから何度か鳴ってる。開くのがすごく億劫だったけど、返事を待ってる子がいる。彼かなと思って開くと、編集の成田さんから明後日の撮影の件と、料理家の中島さんからプロジェクトの件。携帯電話の昔のコマーシャルみたいに、遠くに離れてる点と点が光線でピューンと繋がっていくみたい。脳のあっちが急に元気になり出して、脳のこっちPMSに襲われてる方が私の肩にずっしりと重力をのせてくる。どうぞどうぞ、PMS上等だよ。負ける気がしないから。私はずんずんと前へ進むよ。
沢山が沢山をムチャクチャむしゃくしゃしてるけれど、もう動揺しない。PMSもトラウマも地獄の過去も、思いっきりに追いかけておいで。明日に行けるのは私だけだから。

人参を擦って普通のカレーを作った。すっごく甘くてびっくりした。

一昨日のスープカレーがあまりに美味しくって、今夜もスープカレー。ベランダからバジルをもいできて、ちぎる。ああ、いい香り。
今日は朝からずっとフィルムのスキャニングをしてる。この作業、懐かしい。よくやってたな。いつしかデジタルが主流となったけど、プロラボへ自転車で現像を出しに行き、自宅でスキャニング。当たり前の様にずっとずっと何年も何年もやってた。何となく、久しぶりにyoutubeで脳科学者の中野信子さんの話を聞いた。懐かしい。一度目の酒乱の地獄の時、悲しみや恐怖の渦の中に自分を見失わない為に朝から晩までリピートして聞いて、メモに書いて実践してた。何百日分の私を中野先生の話は救った。
今日も面白い話をしてる。妬むのは仕方無いけど、良質の妬みにしましょうって。普通に妬んで感情を放出させたら一時的に気持ちはスッキリするけど社会的関係を壊します。だから、妬む気持ちを、仕事を頑張ってお金持ちになってやる!とか、毎日走って絶対に綺麗になってやる!でも、自分の財産として残る形に使いましょう。そういう風に損得を考えられるのが、知性です!って言う話だった。
上げたらきりが無い位に私の離婚には残酷な人々が絡んでる。妬んでるなんて名前を出したらキリがない。時々、あの女は何で夜中の2時に夫に電話してきたんだろうとか思い出してイラッとする事がある。ベッドの真っ暗の中で女の着信。「あ、またあの子じゃん。」って思った。うん。みんな地獄へ落ちたらいい。これが私の今日までの口癖だったし、何なら地獄へ落ちるところまで想像してやろうともよくよく思ったけど、そういう刺激を脳は自分自身を苦しめる事になるらしい。じゃあ止めよう。
三年前の時は、脳のストレスを失くす為にとにかく走り込んだけど、ストレスの方が強すぎて、最後は泣きながら走ってたし、痩せすぎてトレーニングの先生に体脂肪落ちるから走っちゃダメとなった。悲しい追体験となりそうだから、ランニングはパス。
うーん。何がいいのかな。私は許さないと決めてるのは確か。もし、目の前でこけても手を貸さない。目には目を歯には歯をなんて事は古臭くて怖いからやらないけど、もし、私なら、私と同じように困ってる人がいたら助ける。知らない人でも泣いていたら話を聞く。一緒に警察について行ってもいいし、一緒に弁護士の所に行ってもいい。
そしたら、何か面白い話の一つや二つでもして、うちで熱々のカレーでもご馳走してあげよう。やっぱり、料理かな。大した腕前じゃ無いし、拘りも限りなく無いけれど、食卓は明るくできる自信がある。
そうしよう。妬むくらいなら、美味しいご飯を作ろう。
どうしようにも無い気持ちだからって、どうしようも無く使ったらきっと勿体無い。きっとそういう事だよね。

昨晩、パリのマユミちゃんから手紙が届いた。鮮やかな青い色の封筒を開けると、青い小鳥が二匹、枝の上で見つめあってるカード。可愛い。カードからはマユミちゃんがきっとお気に入りであろう香水の匂いがする。そろそろ、日本の仕事なのかフランスの仕事なのか、色々を決めなきゃいけない岐路に来てるって。困ったり苦しんだりしてる感じじゃなくって、とても明るい内容に見えた。”私は、さてこれからどこに行くんだろう。だけど、これから郵便局に行くことだけは確かって。” って書いてあった。
今日は久しぶりの太陽。なんて気持ちがいいんだろう。昨晩の何となしに作ったカレーが中々の上出来。分厚いトーストにカレーをのせて、チーズをかけてオーブンで焼く。あー絶対にこれ美味しいやつ。
パンを焼きながら、マユミちゃんに手紙を書き始める。スラスラ言葉が出てくる。
さてさて、私はこれからどこへ行こうかな。

先日、ルイちゃんに聞いた深沢のSEIYUに午後過ぎに行った。ゴーヤでグリーンカーテンを作りたいから、ネットと、ゴーヤ、プランター。それから、ハーブを幾つか買った。駒沢公園を抜けて帰る。気持ちがいい。この近くに10年前に住んでいた事がある。この辺は変わらないな。空気が気持ちいい。
歩きながらラジオで面白い話を聞いた。何かを変えたい時、住む場所、パートナー、仕事。このどれかを変えると人生は大きく変わるっていう話だった。それに、住む場所がどれだけその人の人生に影響するかっていう話も。自分にとって相性のいい場所っていうのがあるらしい。いい場所に収まると、全てがすんなりと進み、楽になるのだそう。全く持ってそうだなぁ、って頷きながら聞いた。
最近はベランダ改造計画にハマってる。家庭菜園を始め、ベランダで美味しくお茶が飲めるようにとIKEAであぐらがかけるサイズの椅子を二つ、クッションは今あちこちと探してる。この街に引っ越して半年くらい。あっという間だ。信じられない。引っ越してすぐに買ったローズマリーはいつしかモリモリに成長してる。
通りを歩く度に、未だに深呼吸をする。あー落ち着くって。池尻大橋もいい街だったけど、どうしてだろう真っ黒に見える。こないだ商店街を歩きながら姉と電話してたら、店と店の間の隙間からトレンチコートだけを羽織った落ち武者みたいな髪型の浮浪者がニョロリと出てきた。あまりに可笑しくって、通りを一本中へ入って大笑いした。怖いっていうより、まるでちびまる子ちゃんの世界。この街のクリーニング店のおばちゃんは優しい、花屋のお爺ちゃんの超スローテンポなお喋りもいい。お爺ちゃんと喋ってるとついお薦めされるがままに買いすぎちゃうんだけど、いつも少しまけてくれる。このマンションに住んでる人もいい。みんな気持ちよく挨拶するし、特に隣の家族の事は勝手に好いている。お父さんは私と近そうな仕事をしてそう。頭はいつも爆発してて、分厚い黒縁のメガネ。子供とよく遊んでる。下の子がベランダではしゃぐ声は心地がいいし、ベランダにハンモックがあって、家庭菜園を上手にやってるのも好きだ。
この街は優しいから、私も平和になれる気がしてる。いい場所に住んだなって思う。今まで住んだ街の中で一番気に入ってる。余りに忙しいからって、歩きながらケータイをパチパチする事も無くなったし、スーパーでいきなり割り込むオバちゃんに舌打ちしそうになる事もない。驚くけど、あれだけ毎日ピリピリしてたのに、毎日怒るしかなかったのに、最近、全く怒ってない。怒る事が無い。
昨年と今の私は同じ私なのに。元に戻ったような気もするし、何が元なのかわからない気もする。あの時間が何だか夢だったようにも思う。

カレーの次の日はやっぱりカレーがいい。特に朝のカレーは美味しい。
午後は近所のたまちゃんと世田谷美術館でやってるアアルト展に行った。家具好きとしては、家具が沢山見れるとワクワクして行ったのだけど、アアルト夫妻の功績をテキストや図面で紹介するシーンが多い展示で少しガッカリ。けど、まぁ色々知れて良かった。
展示を見終え、物販のコーナーで文通用のカードをチェック。目ぼしい物が無い。今回の展示とは関係の無いアーティストのカードもチェックしたけど、知らないし全く欲しくない。欲しくないものを送るなんて嫌だ。うーん。あ、アアルト夫妻のボートに乗ってるやつにしよう。
アアルト展で感じた事がまさに詰まってる画だなって思った。展示の最期の方、奥さんのアイノが54歳で亡くなったと書いてあった。多くの作品をこの世に残し、大分若くして亡くなってしまったのか。夫婦が二人で創り上げた多くのデザイン。残されたアルヴァはどんなに辛かったろう。胸が痛む。その次のコーナーで目を見張った。アルヴァは二番目の奥さんと…。「二番目の???」
いつの時代でも、人間は一人。いつだって自分の人生だよね。何だか可笑しかった。どうか不倫じゃない事を祈る。椅子はあまり見れなかったけど、いい展示だった。
二人がボートに乗り笑ってる写真。結局、今なんだよな。元夫のファンから、彼は結婚を隠してるのだから、私のブログに勝手に彼の写真を載せるなと指摘された事がある。二人で台湾旅行をした写真で、そこには彼しか写ってない。彼は、私が彼を被写体にして撮った写真を何度も無断で自分のアルバムやらに使用しお金を儲けていた。一枚の写真が語れる事は多い。真実はその時の今、じゃあそれ以外はなんだろ。

皮付き人参美味しい。口の中で皮を置いて実の部分がするりとする瞬間が楽しくて美味しくて仕方ない。何となく面倒くさくて、皮のまま乱切りにして鍋に放り込んだ。大事だよな。こういう事って。
昼にカレーを作って、夕方はイマムと三茶でお茶をした。セブンっていう昔からある喫茶店。ちょっと仕事の事で話したい事があったから、せっかくだしカレーでもあげようとタッパに一人前のカレーのルーを入れて持って行った。イマムはウェブのフリーのディレクションをしてる。細かい事はよく知らないけど、ナショナルクライアントと色々な仕事をしてるのだそう。知らない単語を色々と教えてもらった。LPとか、与件とか、色々たくさん。それから、提案書っていうのも見せて貰った。全く知らない世界の話を当たり前の様に話すイマム。こないだスノーショベリングの中村さんと、人間は一体に一人しか入れないから寂しくなる。だからこの中に何人かいたら楽なのにっていう話で盛り上がった。よしみちゃんはエヴァンゲリオンを一度みた方がいいって言ってたっけ。そう、だから、人っていうのは世界が本当に狭いものだとやっぱり思う。
同じ頭で一生いかないと行けないから、同じ考えでループするのは想像出来てる。成人を迎えたあたりに、何となくだけどその現実を受け止めたように思う。言い訳をするつもりは無いけど、とにかく狭くて窮屈なのだ。それが自分っていう事になるんだろうけれど、わざわざ窮屈にしてるようにも思う。
どんどん失敗したり、どんどんよくわからない事をやってみたり、急に逆走してみたりとか、流れを流さない事って大事な気がした。当たり前の様に剥いていた人参の皮。剥かないで良かった。
夜、友人が亡くなった事でやりとりをしてた野村さんからメールが入る。野村さんのこの感じ、久しぶりだな。何十通と日記なんだか、メールなんだかのやりとりを過去にしてた。彼は私の知らない事ばかりを教えてくれる友人。男を捨てて男をやってる。そして、長年務めたライターっていう顔を30代も半ば過ぎにぱっと捨て、絵描きになった。自分を捨てて自分を手に入れた愉快な人。久しぶりに会いたいな。彼氏のミッチーにも。

PMSが終わった筈なのに、寂しさが全身にまだ少し残ってる。先月は抜けたらスッキリしてたのにな。どうしてだろう。目が覚めて、ベッドで梃子をさする。気持ち良さそうにもっとやってと手を動かしてる。写真の仕事、何歳までやれるかな。50、60歳になったら今の様には働けない。ぼんやりと考える。携帯を開くと、メッセンジャーにパリのまゆみちゃんからメール。ドイツ人の記事の話が面白いから読んでって。どうして日本人女性は夫のお金に頼ろうとするのか?っていう話だった。白湯を入れて、ダイニングテーブルに座って、これからの事を考える。これからをどう生きていくか、新しい事を考える事はすごく楽しい。一年前くらい、80歳になっても写真の仕事をしたいと友人に言ってた。馬鹿だな。あの頃の私は、本当に無知で幼稚で無謀。だから、こんな事になっちゃったんだよ。なーんも考えなかったな。愛さえあれば乗り越えられるって信じてた。愛は大事だけど、愛だけでは食べれないし、愛があっても現実を変える事は出来ない。世界は私のものじゃないのに。
午前は写真を納品したり、ちょっと片付けをした。何だか色々が回ってる。占いは、オーラも守護霊も、出来れば信じたいけど、本当に大変な時に鼻をかむティッシュより役に立たなかったから信じない。だけど、目に見えない何かは感じる。世界を回してるのを全身で感じる時がある。リズムみたいにトントンと何かが運ぶように回っていく。今日はそういう日だった。そして、寂しさが横にじっと座ってた。もしかしてずっと居るつもりなのかな。
昼食は冷凍してたチキンカレーにチーズを乗せてレンジで温めて、炊きたてのご飯にかけた。ぬか漬けの古漬を薄くスライスして茶碗の端にのせる。カレーとぬか漬けって、想像以上に美味しい。
夜はみつみちゃんと近所でもんじゃを食べた。美味しいって楽しい。

昨夜はカレーを作った。またバンバンジーソースを作る。にんにくとラー油は入れない方が美味しい。

あっという間に1月が終わった。さぁ、気合い入れて行こう!そう思った矢先に朝から寝坊した。もう光の中にいる事はわかってるんだけど、しばらくベッドに潜っていよう。昨晩見た映画が辛くて、嫌な夢も見て、気分はどんよりしてる。LINEを開くと姉からココがソファーで気持ち良さそうにしてる写真。メッセンジャーにはまゆみちゃんから犬の動画。マッチングアプリを開くと、映画と本のメッセージ。今日はだらだらしようかな。

昨日のチキンカレーの残りにチーズをかけて、オーブンで焼く。30分もしたら、焼きカレーの出来上がり。熱々をハフハフしながら、食卓で頬張る。
家にある物が急にするすると無くなっていく。また一つ、また一つと誰かの手に渡っていく。荷造りをしてると、2年前か3年前の手紙が出てきた。手帳に大事に取って置いたものだ。メモみたいに短い文章が記してある。「ごめんね。」直ぐにゴミ箱に捨てた。
何回、何十回、何百回と、彼は私に謝っただろう。人を許すのは簡単だ。だけど、許した自分を捨てるのは簡単じゃない。後悔が私の後をずっとずっとついてくる。
早く引っ越しを終わらせたい。
叩いて出てきた埃みたいに、色々なものが出てくる。要らないもの。消えて欲しいもの。私にはもう必要が無いもの。

久しぶりに無性にカレーが食べたくなって作った。今日はすごく疲れた。

朝から天気が良くて洗濯機を二回まわした。14時から心療内科の電話診療だ。緊張してる。
14時を過ぎた頃に電話が鳴る。
「菊地さんのお電話ですか。今から電話診療に入りますね。先生に変わります。」
ドキドキする。看護婦さんに伝えていた内容を確認しながらゆっくりと先生は話す。友達のお父さんみたい。丁寧で気さくな感じ。
先生が言った。
「イネイブラーって知ってますか?お酒を飲む人を家族が支えてしまう事を言います。」
「今夜、旦那さんが帰ってきたらどうしますか?」
「もう荷物を全部持っていったので帰って来ません。」
私の生い立ちだとか、先生の質問は続く。しばらくして、先生がまた同じ質問をする。
「今夜、旦那さんが帰ってきたらどうしますか?」
「もう、帰って来ません。荷物も持って行ったし、それに…」
先生は、夫が今どこにいる?とか、どこに泊まっているの?とか、やたら夫の事ばかり聞くなぁって思った。私の話を聞いてほしいのに。
別の話をする、体調はどうですか?どんな感じですか?
しばらくすると、先生がまた言った。
「今夜、旦那さん帰ってきたらどうしますか?」
「もう無理です。夫が来るのが怖いから。」「もう離婚なんです。」
私は私の声にびっくりした。
「あなたが離れる事を決めているなら、もう大丈夫。これから状況は良くなりますよ。もう大丈夫です。」
先生の質問の意図がようやくわかった。私の意思がきちんと自分で理解出来ているのか気付かせたかったんだろう。そして、私は鬱病だと風邪ですよっていう感じで先生が言った。不眠も頭痛も恐怖も涙も止まったのに鬱なんだ。きっと夏がピークだった様に思う。2年前もきっと鬱を発症してただろうな。だけど、毎日朝から晩まで仕事してたし、自然と治った。現場に行って仕事の人に会うとすごくほっとして、現場から出るとまた哀しくなった。家に着く頃には目からポロポロと涙が落ちる。あの時も写真以外の全てが憂鬱だったな。
先生に当たり前のように、あなたは鬱だからって話をされてほっとした。私、もうギブアップって誰かに認められたかったのかな。もう夫を助ける事を止めたかったのかな。夫を嫌いになったわけじゃないのに。

最近悩んでた。書いちゃダメなんじゃないかって。悲しい事は書いちゃいけない気がして書けなかった。だけど、山若君がどんどん書きなよって。今、書きなよって。
「新宿の公園で遊んで、寝て帰ったんだよ。まだお酒が残ってる。」麦わら帽子に短パンで現れた編集の山若君。本が大好きな山若君。「マサヤ君はさ、本当に本が大好きなの。」彼女のナナちゃんが言った言葉がずっと胸にある。渋谷の東に午前11時に待ち合わせて、山若君おすすめのフラットホワイトっていうコーヒーを飲みながら、写真を見てもらった。写真の事、全然出来てなかった。毎日にいるだけで必死で、毎日が終われば、ベッドに入って今日もどうにか終わったって電気を消した。こうして写真の話が出来るなんて嬉しい。好きに生きていいんだよって言われてるみたいで嬉しかった。だけど、書く事は哀しみも受け入れるって事。

夏といえば、温かいご飯に冷たいカレーだよね。

昼に電話がかかってくる。「今夜、話そう。鍋が食べたい。」
ようやく夫と話せるんだと思って嬉しかった。スーパーに行って、夕飯の支度をした。すごく嬉しかった。
20時頃、電話が鳴った。
「まとさんから大事な話があるって連絡きて、今日は仕事の打ち合わせで遅くなる。」
「じゃあ、打ち合わせ終わるの待ってる。話がしたいから。」
電話を早々に切った夫にLINEした。 “お願いだから、話したい。お願いだから今日は帰って。待ってるから。”
デジタル時計が刻々と変わっていくのを夜中の間に何十回も見た。夫のお気に入りの時計。こういう夜中は何十回と体験してる。つい二年前も。結局、夫が帰ったのは朝方だった。完全に泥酔して床に潰れてる。横に夫の携帯が床に転がっていた。怒りや憎しみがこみ上げてきて、携帯を開いた。
わかってた。携帯を持った時にダメだって思ったのはわかってたからだ。この数ヶ月、夫は遊んでいた。沢山の女性とも遊んでた。夜中の12時以降に沢山の数の女性が夫とLINEを交換し、翌日に昨晩の話をしてる。夫は世界では独身だった。それに、世界は夫の事をピュアな男だと言ってた。ファンには可愛いとまで言われていた。もう40歳なのに。だから、夫も知ってる。自分が何をしようが、ピュアだから仕方ないって事を。知らないのはこうして携帯を見てしまった私くらい。今はみんなが自粛してる。だけど、夫は毎晩の様にまた酒を浴びる様に飲んでる。
2年前と同じだ。夫の酒も、嘘も、完全に戻った。

毎晩泥酔して夜更けに帰宅する夫に、泣いて怒った。
私の感情を露わにしたらいけないってずっと我慢してたけど、限界だった。
夫は向き合う事が多くなればなる程にお酒も色々も悪化する。わかってたのに怒ってしまった。
夫はそのまま家出した。

二ヶ月前、近所の遊歩道で私の胸に泣いて飛び込んできたナオコが今は隣で笑ってる。「私、やっぱり女の子がいいの。男の子でもいいかもしんないけど。」ナオコは女の子と恋してた。素敵な恋だったと思う。私は二人と友達で、どちらのことも大好きだった。
端正な顔立ちで、明るくて、優しくて、一緒にいると空気が明るくなるような子なのに、どこか影がある。恋人だったあの子もそういう不器用さに惚れたんじゃないか。けど、もしかしたら、ナオコは恋人のお陰で闇を持て遊ぶことが出来んだろうなって。愛がナオコを駄目にさせていたようにも見える。二人の恋愛がダメだったんじゃなくって、愛がきっとそうしたんじゃないか。「別れてから、、当たり前なんだけど喧嘩をしなくなって、穏やかに話ができたりして、また前にもどったみたいな気になっちゃってさ。けどダメだって言われて。私、本当バカだよね。」笑いながら言った。ナオコはもう前のナオコじゃない、新しい仕事も見つけて、とにかく今は必死に明るくしてるけれど、だけど、それも何だかナオコらしく見えて素敵だった。
2ヶ月前のナオコ、今思い出しても胸が冷やっとする。コロナで色々がおかしかった所為もきっとあるけど、怖かった。この子、このまま突然にいなくなったりしないよね。彼女の眼差しはどこにも焦点が合ってない。ただただ真っ暗に見えた。だけど、今日は大丈夫だった。とにかくもう振り返らない。そう心に決めているように見えた。夫が出張から帰って来る。夜が遅いというのでポークカリーを作って寝る事にした。冷めたカレーはきっと美味しいと思う。

久しぶりに美容院へ行った。和美ちゃんに教えてもらって1年くらい前から通ってる美容院で、最近店を改装した。改装後の美容院には旦那さんもいた。ペットのワンちゃんも一緒にサロンに出勤してる。毛に覆われた人形みたいにもふもふのワンちゃん。
今日は髪を染めてから10cmくらいカット。夫婦二人が私の髪を触ってる。二人で時々小さな声で言葉を交わしてる。「この薬は強めだから、ここだけにして。」「うん。わかった。」なんだかすごくほっとした。夫婦っていうのは、男と女というのはこんなに優しい距離の中にいてもいいんだ。傷つけあったり、強がったりしなくても、穏やかでいられるんだ。そうだ。世界って優しい場所だった。すっかり忘れてた。
幸せになるのは、私が想像しているよりもずっと簡単なのかもしれない。久しぶりに心が温かくなってゆく気がした。雨が上がった代官山は少し生ぬるい空気が漂っていて、水たまりに光る夕陽がキラキラして見える。もしかしたら私達の生活もまた前みたいに戻るんじゃないか。どうかお願い。叶わない夢を願うみたいに心の奥で祈った。正直、最近は毎日が嘘つきだ。本当じゃない。
今朝、珍しく夕飯の献立を聞いてきた夫。今日は帰ってくるのだそう。久しぶりの夕飯。久しぶりの夫。話したいことは沢山あるけど、とにかくなんだか嬉しかった。ずっと朝から嬉しかった。だけど、夜の20時。食卓に並んだ食事をよそに時間だけが勝手に過ぎていく。電話を鳴らしてみる。「今日は遅いって言った。りょうさんと飲んでるから。」イライラしているのが電話からも伝わってきた。おかしい。この怒り方、おかしい。お酒を飲んでる事を私に堂々と公言してる。夫は私の前では今でも禁酒している事になっている筈なのに。現実も時間も全てがぐちゃぐちゃになっていくのは2年前と一緒だ。またあれが本当に来るんだろうか。
私の身体がどんどんと硬直していくのがわかる。恐怖に飲み込まれそう。携帯を取ってあかりちゃんにメールした。「ごめん。電話していい?」何かを察したのか直ぐに電話をくれた。「すーちゃん、どうした?」あかりちゃんの声。一気に全身の緊張が解けていく。喉が悲しみでジリジリと焼けてるみたい。言葉が出ない。言わなきゃ。ダメだ。言わなきゃ。唾を沢山飲み込んで、全身の力を振り絞って言った。「お酒始まっちゃったの。」
家の前にタクシーが止まる音。バタンとドアが閉まり玄関が思いっきりに開いた。「ごめん。帰ってきた。」電話を切った。鬼の様な形相の夫。リビングの床に横になりずっと怒ってる。「りょうさんと仕事で久しぶりに会ったから、高田馬場で19時から二杯飲んだだけ。」夫は怒り続けてる。何に怒っているのか何を言ってるのかよくわからない。時計を見ると22時45分。夕方の電話では19時より早く帰るかもと言っていた。
夜中にベッドでフジモンにメールをした。フジモンはカウンセリングを勉強しているしきっと何かを教えてくれる筈。「よしみちゃん、とにかく落ちついて。今日はゆっくりと休もう。」フジモンは何度も私に落ち着く様に言ったけれど、私の話なんてどうでもいいから夫をどうしたらいいのか教えて欲しいと思った。とにかく怖くて堪らないし、過去と現実がごった混ぜになり正気でいられなかった。フジモンが言ってた双極性障害っていう病気。初めて聞いた。夫はアル中じゃないのだろうか?

昨晩、夫と喧嘩した。
原因はいつもの通りだ。帰るといった時間に帰らない夫。冷めていく肉味噌麺。しなれていくサラダ。刻々と過ぎていく時間と沸々と煮えたぎっていく苛立ち。何度やってもあの時間が嫌いだ。夫は酒を止めてる。だから、連絡のない夕飯時にどこかで泥酔してるなんて事はない筈だ。だけど、ルーズな癖まで治る気配はない。それに。私の中のどこかは未だに夫の事を信じてくれない。「帰る。」とメールがあってからどれくらい経ったのだろう。ようやく帰宅した夫と完全に冷めた食事を頬張った。味なんて勿論どこかに消えた。せっかく作ったのにな。話しかけてくる夫を無視して食べ続けた。笑って話せるわけがないじゃん。あと何度これを繰り返したらいいのだろう。帰り道に友人に会ってしまって一杯。仕事の打ち合わせが入って午前様。夫の夕飯問題については今夜だけの話じゃない。だから、耐え忍んで食べてる。過去は過去なのだから。ガチャン。皿が大きくなった。箸を投げて夫はベッドへ去っていった。
「そこに愛があるんかな。」昨日、数年振りに電話した時に絵描きの健太郎さんが言った言葉。かっこよすぎて痺れた。健太郎さんが言ったのは、人への想いやりもそうだけど、自分を大切にしないとダメだって事だったんじゃないかと思った。「今をこの場所を人生を愛しましょうよ。」そういう言葉にも聞こえた。箸を投げられて、荒れたテーブルには愛が少しだってない、生ぬるい食事がどろっと皿に乗っているように見えた。可哀想な食事とは思えるのに、可哀想な私とは思えない。ただ苛立つ事しかいつも出来ない。
誰かを想うことも、誰かのために何かをしてあげる事も案外簡単だ。だけど、自分の人生を大事にするっていうのは難しい。自分から逃げないでそこに愛を持つ事も難しい。

酸っぱい好きとしては、中々いい塩梅でした。

人に会うとよく言われる言葉。「きくちさんカレー好きだよね!」「インスタのカレー見てますよ!」え!ありがとうございます。なんだか嬉しくなってそう答えていたけれど、人に言われて気づいた。確かに週1回は作ってる。思い返してみると、実家の冷蔵庫か冷凍庫にはカレーが常備されてた。母の定番は圧力鍋でしっかりと煮込んだチキンストックをベースにしたカレー。冷蔵庫から出してタッパを開けるとコラーゲンがぷるぷるしちゃうくらい。「身体にいいんだから!」と毎朝のようにパンと一緒に頬張る母の顔を思い出す。私のカレー好き?は母譲りかも。ぷるぷるなカレーも、カレー粉をせっせと炒めて作るカレーも、ルーが無いことにびっくりしたドライカレーも、うちのカレー美味しいんだけど、母の料理が大好きなんだけど、外で食べるのとは違うカレーたち。少しはがゆかったな、思春期の私には。