今日がこの部屋での最期の夜。夕方、駅前にある文化浴泉に行ってきた。久しぶりだな。サウナに入ったら、夏の日の事を思い出した。
彼から久しぶりに電話が鳴る。ドライヤーで髪を乾かしてた時だったかな。心臓が止まりそう。直ぐに3分20円のドライヤーを切って電話に出た。内容はたいした事は無かったけど、凄く怖かった。そう、ただただ凄く怖かった日のことを思い出した。
今日でぜーんぶ綺麗さっぱり銭湯行って、サウナですっきりって思ったんだけど、哀しくなって帰った。そうだ、あの日にあの日もあの日だって、凄く苦しかった。電話を切って、不思議な気持ちだった。私には、病気の彼と、そうじゃない彼と、いつもの彼が入り混ざって、だけど、もう本当に限界だった。明日もまた、酷い事が起きる。彼を信じようとする自分がいるのに、明日が来る事に怯えた。
どうして夫になったのに、どうして世界で一番信用しているのに、この生活を壊したんだろう。私が何より大事にしてるのに、何より大事にしてるここを、テコを、傷つけたんだろう。何回、何十回、何百回と思ったけど、彼は加速して最悪になっていった。
銭湯を出て、濡れた髪で家まで走る。最期の夜に気持ちよく終わろうとした自分に後悔した。簡単に逃れられるわけがないよ。苦しい事の方がずっとずっと多かったのだから。いい思い出がある筈なのに、出てこない。濡れた髪がどんどんと肩の上で冷たくなっていく。
苦しい夜は、今日で最期になって欲しい。
もう、これ以上の哀しみを世界に見たいと思えない。
カテゴリー: Journal
林檎

11月25日。空白の日だった。
あれが何時だったのか思い出せない。
離婚が決まった。
姉とLINEしてた時に、兄弟LINEにメールがはいる。にーちゃんからだ。
「終わったよ。」
協議離婚が固まったという内容だった。頭がまだぐちゃぐちゃ。本当に?本当に離婚出来るの?
彼の両親に書いた二通目の手紙の直後だった。最初からわかってた。彼には後始末が出来ない。だって、自分のした事について話が出来ないから、逃げるように家を飛び出して行った。
貯金を寄こせ、家具を寄こせ。惨めなメッセージばかりが、兄から入ってくる。「お金が無いみたいで、泣きついてきてる。」多分、両親が終わらせてくれたんだろう。直ぐにわかった。
この家を出るまで、後1日。
夜はキャベツとツナのナンプラーパスタ。写真を撮ったけど、消えちゃった。ずっと何だか動揺してる。この家から出ることが怖い。幸せになる事も怖い。一刻も早く、ここから離れたい。
ひっぱり素麺

哀しい事があった。東京に帰ったらきっと、そうなるだろうって予測してた。だけど、こういう哀しみが待ってるとは思わなかった。
彼のお母さんには、2年前からお酒の事を相談し、一緒に彼のお酒を治そうって頑張った。彼が家で大暴れした時は、大阪から直ぐに東京に来てくれて、家族でお酒の事を話し合ったりもした。お母さんは、「何も知らない、彼はそんな事をしない、淑美ちゃんに悪いところは無いんですか?」って言ってる、全て知ってる筈なのに酷いよ、あの人。絶対に許せない。これ、犯罪なんだよ?姉が電話で怒ってる。うちの母は裁判するって。
また、人に裏切られたんだ。ずっと必死に頑張って信じてやってきた事は一体なんだったんだろう。私って本当に馬鹿な人間。ずっと哀しい午後だった。
夕方、薄暗い部屋に帰って、床に座った。哀しい。だけど、お母さんは私を傷つけようとしてる訳じゃなくて、彼と同じ、現実を受け止められないんじゃ無いか。今まで嫌がらせを受けて来たわけじゃない。それは、一緒に頑張ってくれた時間が証明してる。
人が人を傷つけるのは、自分を守る為なんじゃないか。彼もそうだった。自分が苦しみから逃れる為に、人を傷つけてしまう。決していい選択じゃ無いけど、仕方ない事な気がする。許すとか許さないの問題じゃない、哀しいのは、私が傷ついた心じゃなくて、その選択をしてしまったその人、そのものなんじゃないか。姉に言った。「みんなに伝えて。お母さんを咎めたりしないで欲しい。」
” 彼を救ってあげて下さい。” 先週にお母さんに書いた手紙は、簡単に意味が無いものとなった。彼もお母さんも、自分を守る事で必死だ。人はひとりじゃ生きていけないのに。少しの勇気があれば、少しだけでもいいから、自分の弱さを認めたら、ずっとずっと景色は変わる。
夜はやっちゃんが遊びに来てくれた。
一緒に、ひっぱり素麺をひっぱりながら、色々な話をした。大切にしたい。今も、側にいる人も、私の見える世界を大切にしたい。
ひっぱり素麺
美味しい小豆島の素麺
[タレ]
納豆
青ネギ
だし醤油
鯖缶水煮
お好みで卵
※ひっぱり饂飩
山形の郷土料理。鍋から饂飩をひっぱってタレをつけて食べる。
熱々の饂飩を食卓で楽しく食べる饂飩。
11月13日
朝、4時に起きる。動き出そう。私がやらなきゃいけないんだ。直ぐにパソコンを開いて、彼の両親に丁寧に手紙を書く。
2年前から彼の酒乱の事を相談していた両親。一度、大暴れした時に、大阪から東京へ駆けつけてくれた。お互いに苦しい想いを散々してきた。彼を救って欲しい。どうか話をして欲しい。もう彼を救えるのは両親しかいない。兄も姉も、母も父も、皆んなが怒ってる。私の家族が怒りで傷を負い始めてる。もう止めたい。セブンイレブンで手紙と、アルコールの記録をプリントアウトして郵送をする。10時40分、チェックインの時間まであと少し、急いでパッキングする。頭が今にも割れそう。
高松駅の駅前のスタバでチャイティーを頼んだ。フェリーまでの時間、少し落ち着こう。これから友達に会うのだから、こんな顔して会いたく無い。少ししてLINEが鳴る。姉だ。
携帯から飛び出るような早口な声。怒ってるけど、何だか爽快だった。姉の意見は私と同じ。全部こうなる事なんてわかってた。本当に酷い事ばっかりだった。もう、これ以上相手に関わらないでいい。調停なんてしなくていい。裁判もしなくていい。
遺産相続で3つ目の裁判が終わった姉。嬉しそうに言った。
「最近、新しい目標を作ったんだけど、聞いてくれる?あの人達にされた事は法で裁かれたけど、今でも煮えくりかえる程に辛い。だけど、許そうと思って。だってさ、私が許さないって思う時間が嫌だなんだよね。」
「うん!私もそう思う。だけど、もし道で倒れてても、もう助けないよ。」
「地球で最期の一滴の水が目の前にあっても、絶対に譲らないね。」
1時間くらい、大声で笑って、話して、フェリー乗り場へ走った。出航まで後10分。私の人生を明るくしてくれるのは家族や友人。だけど、笑うのは私なんだ。
11月12日
出張先での撮影が終わって、ホテルに帰る。心が切れそう。これはいつまで続くんだろう。セミダブルのベッドに横になる。こういう時は頭が全く動かない。辛い、哀しい、辛い、哀しいの繰り返し。感情が思考を支配する。
疲れた。
朝から開けなかった兄からのLINEを読む。「彼との話し合いが上手くいかない、よしみに怒りを露わにしているよ。調停をしよう。」
私の怒りなんて、とっくに失せてる。もう救いたいとも思わない。ただ、救われて欲しい。誰でもいいから、少しでもいいから、彼の側で彼の話を聞いてあげる人がいて欲しい。今、現実を見ないと、戻って来れなくなる。それは私も同じ、今から逃げちゃいけない。ここにあるものが苦しくて苦しくて堪らなくても、誰かのせいにしちゃいけない。自分で選んで歩いてきた筈。どっちが悪いじゃなくて、自分が前に進む為に痛みを飲み込む。
あかりちゃんに伝えたくなって、メールを送ると、直ぐに電話が鳴った。20分くらい話をして、気持ちが追いついてくる。
私は、調停も裁判もしたく無い。
「これはモラハラ問題です。酷いですね。裁判をやれば勝てます。」弁護士さんの言葉に心は全く響かなかった。裁判してどうするの?兄はここ最近ずっと怒ってる。「こんな酷い事をされて、相手は逃げ得になるんだよ?それでもいいの?」
酷い事をして、俺は知らないと声を荒げて言うのは認める事が出来ないだけだと思う。自分を守る為には、もう怒るしか無い。それは、決して得なんかじゃない。何があったのか知ってるのは彼自身なのだから、自分に嘘をつくのは自ら泥沼にはまっていくようなものじゃないかな。哀しい事だよ、だから、どうかもうやめて。
蕪のトマトスパゲッティ

昨晩、東京に帰った。
家まで編集部の方が車で送ってくれた。お土産に撮影時に購入した蕪をくれた。雨が少し降っていて、生ぬるい夜。
この部屋に帰る度に悲しさが溢れる。
不毛だってわかってるけれど止められ無い。何回も何十回も、何百回も思う。「どうして、こんなに苦しまなきゃいけないんだろう。」
幸せだった。結婚してからも、結婚する前も、ずっと本当に幸せだった。お酒の事を除いては毎日がとても幸せだった。後出しジャンケンみたいに、沢山の人が口を揃えて「ほら、だから言ったでしょ。」って。だから、あの男は駄目だって言ったのにって。幸せが無くなっていく毎日をどう思って、そんな事を言うんだろう。
兄から、彼と連絡を取ったとLINEが入る。
あまりいい内容じゃなかった。大体想像は出来てた。
あと何回、胸が潰されるように苦しんだら、私は普通になるんだろう。彼はきっと、これから鬱に入ると思う。冬にかけて、来年にかけて鬱に入ると思う。その頃には私達はもう他人になってるだろう。こんなに酷い事があっても、私は彼を嫌いになる事は出来ない。むしろ、兄を通してだけど、彼に会えた様な気がして、ほっとした。嫌いたいのに嫌いになれない。
神様という人がもしいるのなら、どうして、彼に病気を授けたんだろう。どうして、彼の様な弱い人間にそんな事をしたんだろう。彼には、直ぐに根をあげてくれて、他の男に飛びつく様な女が似合うのに、どうして私みたいなのが彼の隣にいたんだろう。
もう、本当に厭だ。喉のあたりが、ずっと満タンで、ぎゅっとなってる。哀しみが一気に溜まってしまって、声が出なくなるやつ。
11月8日
栃木に出張。行きの車でずっとJpopが流れてる。彼の事を思い出して吐き気がする。知らない人の声なのに嘘つきの声に聞こえる。
歌を聞くのが辛い。どうしても彼に重ねてしまう。突然にやってきた彼の酒の時期。病気なのはわかってる。だけど、それが彼だった。ずっとずっと前から私は悲鳴をあげていたのに、私の手で両手で口を噤んだ。
「私なら大丈夫。」何百回と心の中で言ってきた口癖は、今、私を苦しめる。
いつもそう。撮影が終わると、急に世界がやってきて寂しくなる。自分が一番不幸だなんて思ってない。ただ、果ての来ない悲しさの中で、どこにも着地できないだけ。だから、私は手っ取り早く私を責める。責める理由が尽きる頃には、また悲しみに飲み込まれる。どうして、私はこんなに疲れちゃったんだろう。
寂しくて、どうしようも無い毎日が終わらない。
11月6日
朝の4時、姉からLINEが入る。
” 本当によく頑張った。だけど、監禁されてたわけじゃない。あなたのチョイスだから。新しい人生を始める事に集中しよう “
何度も何度も話し合って、彼はいつも人が変わったように「僕を信じて。」と私の目を見て訴えた。選べない。そんな人を置いて出て行く事なんて、私には絶対に出来ない。酔っ払って暴力を振るっても、「二度としない。もう傷つけないから。」その言葉を諦める事が出来なかった。「今夜は早く帰るよ。」という言葉を信じて、彼と一緒に食べる為の食事を作り続けた。
私の人生な限り、全ては私が選んだ事になる。だけど、私と彼が決めた事。一緒に暮らそう。一緒に食事をしよう。一緒に生きていこう。結婚をしよう。
そんな簡単な約束じゃない。
姉の言葉はわかってる。とにかく、”もう離れて。”そう言ってるんだと思う。だけど、私には答えが見つからない。
トマトとほうれん草のスパゲッティ

昨晩、兄の元にようやく彼から連絡があったそうだ。
彼の話は変だった。すっぽりと犯した全てが抜け落ちていた。現実だけが、ぽつんと残ってる。兄は困惑していた。
息を切らせて興奮して話す兄。それは無意味な事を私は知ってる。自分の常識で彼の話を聞いちゃいけない。彼の言葉じゃなくて、今、どういう行動をしてるのか、どうしたいのか意図を汲んであげないと、こっちが壊れる。彼との対話は簡単じゃない。
彼は、ある時期が来ると天地がひっくり返り別人となる。ある時、肩書きを沢山持つ人となっていた。プロデューサー、デザイナー、アーティスト、経営者、オーナー。見知らぬ人にいきなり自己紹介をして名刺を渡しまくる。一度や二度じゃない何十回とそんな彼を見てきた。それが段々と加速すると、人を使うようになる。音楽しか出来ない彼はまるで大社長かのようになって、とても威厳的で、身内の色々な弱い人に悪態をつき、汚い言葉や強い言葉を当たり前のように放つ。「お前さ、要らないから。別にもう連絡しないでいいから。」そんな風に人を物みたいに切っていった。お金も有り余るように持っているような態度になって、キャバクラに行くようになる。普段はシャイな人なのに見知らぬ女性との交流が激しくなっていく。毎晩違う女性と遊んでる。そんな時期が数ヶ月と過ぎると、「もう死にたい。」「もう音楽なんてやりたくない。」と、ベッドから数ヶ月出てこないような時が続く。「もう何も出来ないよ。ねぇ俺はどうしたらいい??ねぇ。」朝から晩まで弱々しい声で甘えてくるこの質問は私にまとわりついた。癇癪の時間も酷かった。それは完全に子供のそれ。だけど、数分も経つとケロッとしてるか、もしくは急に悲観的になって「どこにも行かないで」と私の腕を離さない。目は完全に怯えていて、全力で私に甘えた。彼の行動パターンを私は大体に熟知してた。こういう性格なんだって思って上手にやりくりしながら、奇妙な現実を誰にも公言する事なく私達の8年間は過ぎていった。彼の秘密を話す事は彼を傷つける事にもなるし、私は彼から離れなきゃいけなくなるんだろうという事もどこかでうっすらと気づいてたんだと思う。だから隠した。
今日は朝から辛い。だんだんと頭痛が始まってくる。私のトラウマはそんなに簡単には終わらしてくれない。駅を歩いてると、くらっとした。頭が破裂しそう。過度なストレスが溜まると、固まる。目の前は忙しなく動いているのに、私は石みたいに、ぽつんとその場所に停止してしまう。あれが始まると私は何も出来なくなる。
早く帰宅して横になる。苦しい。やらなきゃいけない事がたっぷりあるのに。兄の話していた彼が私の中でループする。人を憎みたくない。変わり果てた彼でも嫌いにはなれない。ただ、全身で嫌がってる。名前でさえ耳が拒否してる。ただただ、怖い。
少し横になってから、デスクに座った。
さぁ、始めよう。少しずつでいい、前に進もう。
紫陽花

11月2日、私の誕生日。
今日は時効の日。何ヶ月も前からずっと決めてた。今日という日がきたら、時効にしようって。私が飲み込んでしまった全ては、私の血や肉となってしまうのだろうけれど、もう知らない。トラウマが私を襲い続ける毎日を毎時間を隣に置いたままで、今を生きよう。今を生きなきゃ。
誕生日の前日に警察に被害届けを出しに行った。9月に出すようにと人に言われてたけれど行けなかった。今日の小さな勇気を捨てたら、あっという間に来年の今日になる、その日に後悔する私が見える。私を守るのは私しかいない。だけど、本当にこれが正しい決断だったのかわからない。もう全てがとにかく怖い。何ひとつ整理も出来なければ、答えも出ない。ただ、これ以上に傷つきたく無い。
震える口から出てくる言葉が変だった。女性の警察官に何度も強く言われた。「あなたのことを聞いてるから、あなたの話をして下さい。」私は私じゃなくて、彼だとか、誰かがとかばかりで、上手に話せなくて、時間をかけてゆっくりと話した。過剰に話さない。大丈夫です。とも言わない。他人事みたいに私が見た出来事を淡々と話した。
「それって、おかしいよ。DV受けてる人みたいだよ?」沢山の人に言われたんだけど、全く何を言ってるのか聞こえてこなかった。「実際には叩かれない事だって沢山あって、叩くふりをよくするんだよ。だから暴力じゃないよ。まるで酔拳なんだよ。」っておチャラけて返した。彼は私を傷つけたいわけじゃない。怒りを上手に爆発出来いみたいなんだよねって。だから殴ろうとした拳は私の顔の直前でピタっと止まる。親友みたいに仲良くしてた子もその話に同意してくれてたから、私の意見は正しいと信じてた。彼女の夫も病気持ち。「本人達はね、辛いんだよ。」って彼女は言ってた。私達よりもずっと辛いんだよって。
後になって知ったけれど、病院の先生と話してて、そうなんだって呆然としちゃったけど、拳を目の前で止めるのも、大声で喚いたり、壁や机を叩きわるような音を出すのも、暴力の1つで、それを世界ではモラスハラスメントって言うんだそう。本当に殴ったり、蹴ったり、首を絞めてくるのはドメスティックバイオレンス。どちらの事もよく知らなかった。だから、うちはモラハラとDVのセットみたい。
良い悪いじゃない。許す許さないじゃない。
今日で時効。どこかで決めたかった。思考ばっかりが回って回って、辛いしもう何が何だかわからないから。時効にしたい。
夜は友人と下北沢で食事をした。
外はずっと雨。全てが流れて無くなってくれたらいいのに。
ラザニア

不安で押しつぶされそうな夜ばっかり。
ひとりの東京は本当に寂しい。誰かと一緒にいたいけど、誰でもいいわけじゃない。料理だけはちゃんとやろう。今夜はラザニア。こないだ、姉と電話でママの料理何食べたいシリーズで盛り上がった。「冬といえば、ラザニアだよねー」って。あれから無性にラザニアが食べたかった。
哀しい。心の病気のやつじゃなくって、癒えない心が哀しいって言ってるだけ。悲しんでも仕方ないのに止んでくれない。涙が溢れそうな予感がして、作ったラザニアをオーブンに放り込んだ。グツグツとミートソースが動いてる。いい色。私のミートソースはちょっと甘め。後でお腹が重くなるからチーズは少なめ。表面に焼き色をしっかりつける。熱々を一気に食べたら、少しだけ元気になったかな。
明日は誕生日。いい日になりますように。
ラザニア
ラザニア用のパスタ
ミートソース (玉ねぎ、豚ひき肉、にんにく、セロリ、トマトケチャップ、ソース、テン菜糖、コンソメ、トマト缶)
ピザ用チーズ
鰤とカボスの味噌汁

夕方にふと、7月22日、夫の誕生日の夜の事を思い出す。彼の本心がどこにあろうが、あの夜はやっぱり帰るべきだった。私の夫である前に、ひとりの男として、ひとりの人として、自分の家に帰って欲しかった。
「今夜は少し遅くなる、だから朝に話そう。」夜中になっても帰らない彼に連絡を入れるのは止めた。私が幾ら信じても、それは無力だから。
ずっとずっと前から私は彼の事を知ってたように思う。出会った時、この人はいつか私を捨てるかもしれないって感じた。あれは予感じゃない。彼の仕草に、その言葉の端々に見えてたのかもしれない。私の事だけは捨てない、そうは思えなかった。沢山の人を裏切って、沢山の人が離れていくのを見た。あまり気持ちの良い光景じゃなかった。
彼の通う中目黒の酒場が、どうしても好きになれなくて、馴染めなかった理由はわかってる。昼間とのギャップのある彼を人間らしくて、弱くて、面白い、可愛い、と言う男や女が気持ち悪かったから。一度でいいから、家に来て、彼に殴られてから、同じ言葉を吐いて欲しいと、何度も、何度も心で願った。
彼がまたお酒に溺れていくには、あまりに全てが簡単過ぎたんだ。
酒場が自分の居場所じゃない。そこには楽しい事があるかもしれないけど、そこに答えは無いのに。後悔しても遅いけど、私が後悔してもどうにも出来ないけれど、どうか、帰って欲しかった。
10月30日

東京の我が家に帰ると、ポストに少し前に撮影した雑誌の献本が入ってた。
ぺらぺらとめくる。付箋の貼ってあるページにポストカードが挟んである。編集の成田さんからだ。ミミズみたいな文字が愛らしい。
夫のお酒が大変だった時期、すがる想いで西原理恵子さんの本を手に取った。西原さんの夫はアルコール依存症で亡くなった。そういう事が書いてある自伝。本の中で依存症の夫との結婚生活の事を “地獄だった” と表現する言葉にすごく救われた。地獄の事を知ってる人がこの世にいるんだ。
東京に帰った今日は3週間ぶりの心療内科の通院日。
先生には旅行の事は秘密にしたけど、人と時々お酒を始めた事と、今は辛く無い話と、3kg太った事を報告した。先生は嬉しそうに聞いてくれる。「お酒は一杯目はいいんだけどね。」って。その言葉が身に沁みてわかる。そう、一杯目まではいい。
カメラの話だとか関係の無い話を談笑する。「他に何かありますか?」先生が最後に言った。夫の双極性障害の事が頭を過ぎる。多分、彼はこれから鬱になると思う。暴れて沢山の人を傷つけて我儘やりたい放題した後に、誰か側に一人だけ置いて、ようやく自分の時間に入る。
いや、やっぱりやめよう。もう心配しない。考えてもいけない。「大丈夫です!有難うございました。」気持ちよく挨拶して診察室を出た。
私は妻をやめる。夫がした事は現実になってゆく。お互いに死ぬまで持つ事になる現実。大切だった時間よりも苦しかった時間の方が今も強烈に私の中に残ってる。だけど、もう明日も明後日も、明々後日も地獄は来ない。夕飯はピェンロー鍋にした。鍋をよそう度にテーブルに置いてあるミミズ文字が何度か目に入る。人間ってなんて愛らしい生き物だろう。ここは大丈夫。目の前に広がるこの世界は愛に富んでる。
和歌山県の勝浦










旅はいい。やっぱりいい。
知らない場所に来て、大きく深呼吸をすると、すっきりする。囚われていた何かが、私から少し離れた所にいるのが見える。東京に帰ったらあっという間にまた堕ちてゆくんだろう。想像がつくけど世界が広い事を知れただけでいい。私はあれから離れて遠い場所ににいけるんだ。
海をじっと眺めると「水平線はいいんだよ。」と言う父を思い出す。父は海が大好きだ。水平線、大人になればなるほどに、好きになる。真っ直ぐに伸びる水の線。勝浦は海の町。海ばっかり見た。水平線をずっと眺める。どこまでも行けるんだ。世界は広いからね。
熊野古道





「こっちおいで、お月さんが見えるよ。」海を見ていたおばちゃんが、お湯からあがる時に声をかけてくれた。空を見上げると、明るい月。「あ、綺麗!」
ホテルの露天風呂。目の前にある海から波の音がする。晴れた夜の海が子供の頃から大好きだ。夜が来て真っ黒になってしまった海は怖いけれど、月が明るいから何だか安心する。すんと、胸が静かになる、すごく気持ちがいい。
何だか、今、優しい気持ち。優しい人達といるからかな。
昼間、熊野古道を必死に歩いた。久しぶりに無心になって歩いた。びっしょりかいた汗や、足に溜まった疲れが、私を癒していく。
伊勢2日目






伊勢に行った。
「伊勢に行きたいの!行こうよ。」うちでトランプしながら、友人にお願いした。友人って最高だと思う。
私の色々を知らなくたって、側にいてくれる。深く話せない私に、聞いてきたりしない。一緒に今を楽しんでくれる。
夜に、たまちゃんと宿の近くの銭湯に行った。お風呂に入りながら「辛い日ってどうする〜」って話をした。お風呂に浸かりながら、辛い日の話をのほほんと出来る友人がいるって、何だか幸せだなぁって。
伊勢1日目

近所の友達、しみるさん、たまちゃん夫婦と、今むと伊勢に来た。この面子は、とても落ち着く。声を荒げる人は誰一人いないし、麦酒を呑んだって楽しく笑ってる。誰一人として、悪態つかないし、大声をあげたりしない。穏やかな男の人を見ると少し不思議な気持ちになる。私が忘れてた世界。
初めて食べた伊勢うどん。
ふわふわで、甘くて濃くて、麦酒にぴったりだった。
雑魚と紫蘇の柚子胡椒パスタ

姉が朝から彼氏の話で怒ってる。喧嘩をしたそう。人の悩みっていうのは、簡単に聞こえる。窓から差し込む光が温かい。
「相手のした事は異常だと思うよ。私も姉の考えに賛成だけど、彼も同じ様に姉がわからないって言ってる。どちらが悪いじゃなくて、どうするかを考えるなら、答えはお互いに受け入れる。だけど、ただ一方だけが相手の苦痛を受け入れるだけなら、手を引くしかないよ。彼は苦しくて、自分を救う為に起こした行動だから。それに気づけないなら、苦しみをぶつけ続けるよ。彼は辛いと思う、苦しいでしょうよ。だけど、救われない。」
するすると言葉が手を取るように、想像する彼の痛みさえも大事に運ぶように口から出てくる。何だか自分に言ってるみたいだった。離れれば、離れる程に、自分がした過ちの大きさに気づく。どうして、私は彼を庇い続けたんだろう。
ピェンロー鍋

ミュージュシャンを撮った。夫がよく似てると言われる人。だけど全然似てなかった。表舞台の人は何を考えているのかわからない、上手だから。別にそれでいいと思う。ただ、そういうのを、お互いに折り合いをつけるのが難しい。だから私は人を撮るのが下手くそだ。料理みたいに、私の言う事を聞いて、って言えないから。
数年前に写真家の吉祥丸さんが「何も考えないで撮る。」って言ってた。若いのに何だかすごいなって。吉祥丸さんの写真が群を抜いて、いい意味が何となくわかった。師匠もそう、似た様な事を言ってた。「撮れない日は諦める。」
夫を信じる事をやめなきゃいけないって決めてから、世界を諦める事にした。期待するから辛くなる。何だか思った。私、少しだけ、人を撮るのが上手になったかもしれない。
ピェンロー鍋
白菜 1/4
鳥手羽元(鶏肉なら何でも)
豚バラ
干し椎茸
春雨
ごま油 おたま1〜2
※塩と唐辛子、飽きたら甘い醤油で食べます。
豆もやしご飯

昨年、料理家さんのアトリエでキムチ作りをした。その時に教えて貰った豆もやしご飯。韓国ではよく食べるんだそう。冷蔵庫に残ってた豆もやしを見て急に思い出した。あ!あれを作ろう。
双子の兄と姉がこれからの事を一緒に進めてくれてる。兄弟LINEで双子のやりとりが続く。夫の事をぼろくそに言ってる。ふざけないと、現実を受け止められないんじゃないか。夫が最低な事は知ってる。出会った時から最低だった。だけど、いい所も沢山あって、けど、最低な所は本当に最低だった。一緒にいて、変わったのに、夫は変われたのに、また戻っちゃった。これから何が起こるのか想像が出来る。だけど、もう見ない。
急に色々が動き出してる。前へ進む為に準備してきた事が、本当に前へ進むと思うと怖くなった。最近はずっと調子が良かったけど、少し頑張りすぎたのかな、午後から頭痛が酷い。4時に麦酒1本とオオゼキにみどり寿司を買いに行く。飲まない方がいいのはわかってる。もっと辛くなる。だけど、飲まなくても今日は辛い。これから沈殿した何かみたいになる。
夫がいなくて寂しい。ひとりぼっちの家が本当は寂しくて堪らない。この家をぺっちゃんこにして捨ててしまいたい。
豆もやしご飯
米
豆もやし
ごま油
塩
梅干しご飯と火鍋の残りとアボガドマヨ。

昨日から急に嬉しい事がやってくる。
まず、伊勢丹で驚くほどに気に入ったコートを見つけた。仕事の時、その辺にぱっと脱ぎ捨てても気にならないような黒とか、少し防水機能があるようなコートにしようって思って探してたんだけど全然いい感じのが無い。頭の中ではもう300着以上試着してる。伊勢丹でおねーさんとお喋りしながら色々なブランドの色々なタイプのコートを7着くらい試着した。私が欲しいのとは全然条件の違うコートが1枚。袖を通した瞬間にこれ!って。けど、予算だってずっと超えているし、黒じゃなくてベージュだ。私の大好きな薄いベージュ。「ちょっと、5分考えて来ます。」って言って、1分で戻って買った。正直、好きすぎて着たく無い。
それに、頼んでた来年度のほぼ日手帳が届いた!毎年誕生日の頃に買って、早々と新しい年の物を使うのが私の新年を迎えるスタイルだ。何だか無性にドラえもんのが欲しくなって、いい歳だし、子供っぽいかなぁって思ったけれど、誰になんと言われようが、もういい!ドラえもんがいい!!ってドラえもんがやってきた。早速開封して、にんまりやって、今は大事にデスクの引き出しにいる。来月の誕生日をスタンバってくれてる。ドラえもんに、時には哀しい事も書く日もあるだろう。だけど、大丈夫。だってドラえもんだから。
午後から、8年間のアルコールの記録に目を通す。これはこれから大切な記録として私から離れていく。自分の感情を乗せないように記さないと、冷静に文章に目を通す。何だか自分の事じゃないみたい。優しい夫はどこにいったんだろう。思い出を必死に真っ黒に塗りつぶしてる。外はもう真っ暗。ああ、お腹空いた。
米をお鍋にセットして浸水させてる間に風呂に入る。風呂上がりに、火をつけてぱぱっと炊く、残り物の火鍋を温めて、アボガドにマヨをかける。茶碗に米を山盛りにして、上にのせて炊いた昆布、梅干しをちょこん。余りに可愛くって、走ってカメラを取りに行った。
バターチョコレートサンドとミントティー

朝食はバターチョコレートサンドとミントティーにする。姉と電話で喋りながら食べる。「あのさ、淑美、もしかして未だ戻りたいなんて思ってないよね?」
夜、渋谷で後藤さんと会った。もし運命とか縁というものがあるなら、彼女との出会いはそういうものな気がする。大学生の時にバイトしてた、渋谷の桜ヶ丘にあったWIRED CAFFEの先輩。APCのデニムに白のコンバースが後藤さんのスタイルだった。数年前に近所の居酒屋で遠くのテーブルに白のコンバースを履いてる女性がいる。見上げると17年ぶりの後藤さんがいた。
偶然の再会から1年後くらい。当時よく一緒に仕事をしてたミオちゃんの上司だって事を知る。嘘でしょ?って、あまりに偶然が重なった。こんな再会ってあるもんだ。
「困った事があったらいつでもいいから連絡して。」
私が一番大変だった時、直ぐに家に駆けつけてくれた。私達の間にあった十数年の年月は、あっという間になくなった。「考えたって仕方ないんだから。考えない。進むしか無いんだから。」後藤さんは離婚を控えてる。長い決断を一人で乗り越えた。きっと大変だっただろう。だけど大人な対応だった。もう結婚はしないって。
こういう人と家庭を持ったら、男は幸せに生きれると思う。前向きで過去を振り返らない。淡々と今日を笑って過ごす。「だって、悩んでる時間勿体無いじゃん!」今夜も大きな笑顔で笑ってる。ほっとする笑顔。
何かに宙ぶらりんとなった私は、行ったり来たりを繰り返してる。わかってる、わかってるのに、この現実を受け止められない。私の心には未だ、夫がいる。
東京
用事があって新宿を歩く。何だかすごい人。
伊勢丹に行って直ぐに帰る。もう嫌。
帰って久しぶりにチューハイを呑む。東京目黒ハイサワーっていうチューハイ。成城石井にしか売ってない。お気に入りのチューハイ。
直ぐに酔っ払う。テレビをつけるとサザエさん。
いつになったら私はもう少し楽になれるのかな。結婚っていうのは、人生にとって大きい事だと思う。昨年に夫と生命保険をかけあった。夫は不摂生ばかりしてるから、きっと私より夫が先に死んじゃうのかなって、だけどそれがいいって思った。私は強いから大丈夫。正月には夫の実家の近くでアンティークのチェストを買って、東京に帰ってきたら吉祥寺で北欧アンティークのテーブルを買った。10年後、20年後、この家具がどうなるのか、すごく楽しみだなって。昨年の新婚旅行でデンマークに行ってから、北欧家具が好きになったから。家族の様に家具を大切にする。そういう文化が素敵だって思って、長く使える家具を選んだ。ずっと一緒にいようって。ずっと一緒にいたかった。出来る事なら。
心療内科の先生からお酒は飲まないようにって言われてた。その言葉がよくわかる。お酒を飲むと何かが、ぐっと溜まる。ずっとそこに停滞してしまう。
早く寝よう。お願いだから、今日を終わりにしよう。明日が来れば、明日っていう日はいつだって新しくなる。
西表島

緑色の中をずっと車で走る。ずっと緑。上は青。ずっとずっとそう。人が優しい。穏やかだ。目をつぶって深呼吸を沢山する。
今の私には東京が辛い。千葉で生まれて、直ぐに東京の学校に通って、ずっとずっと東京で暮らしてきた。優しい人の側にいたい。優しい場所で安全に暮らしたい。東京が嫌いってわけじゃない。だけど、ここに来て感じる事は、やっぱり狭い場所にいたって事。あの地獄は池尻大橋のマンションにある一室の出来事だった。外に出たら、世界はずっと優しかった。美しかった。伸び伸びと深呼吸をする。通りがバンを走る度に怯えなくてもいい。街角で帽子のつばを深く被らなくてもいい。ここには夫の影はいない。
ずーっとずっと先まで見える景色に安心する。ずっと青とか、ずっと緑っていい。今日は心から言葉が出て来ない。すごく、いい。すごく、調子がいいって事だと思う。
ソーキ汁定食

ソーキ汁定食。ご飯と汁のセット。シンプルですごくいい。汁には、空芯菜、昆布、冬瓜、豚肉が入っていた。コレーグースをたっぷり入れて戴く。最高だね。何も考えないで、空や海を見て、移動する車の中で昼寝をした。こういう風に全身で何かを思いっきりに感じれる時間って久しぶり。身体が喜んでる。頭よりもずっと身体の方が素直で色々な事を知ってる気がした。広大な景色を目の前にしてファインダーを覗く時にいつも思う。なーんてちっぽけなんだろうって。写真って本当ちっぽけ。さっさとカメラを投げ出して、景色の中に全身で埋もれる。あー気持ちい。
石垣島

久しぶりに東京を離れた。
気持ちがすごく楽だ。朝目覚めた時に新しい場所にいる。それだけで、ずっと楽。
気づいた事がある。
夫が暴れても、それが病気だと言うなら私は夫を支えなきゃいけない。だけど、夫が私に手をあげても、病気だと言わないなら私はただ庇ってる事になる。現実は同じなのに。病気でも病気じゃなくても、現実はどっちでもいいんだって思った。
私はずっと夫が病気だからと思って我慢してきた。我慢して乗り越える事が私の出来る事だと思っていた。
石垣島は今日は曇ってる。
ねぎそば

お腹が空いた。もうすぐ2時だ、お昼食べなきゃ。
以前なら次から次へと入って来る仕事を綺麗にこなしてた。とにかく時間がない、朝から晩まで時間がない、だから効率的にやるには、記憶の浅いうちにデーターを仕上げる。だけど、今は何でもいい。いいタイミングでいい。夫の世話が無くなった私にはたっぷり時間がある。心の言う通りにしていたら、あっという間に週末には仕事が溜まっていた。
朝から作業をして、納品を終えると同時に寂しさがやってきた。朝から曇っていた空から陽射しが部屋に差し込む。すごく寂しい。その後ろには未だ怒りもいる。この苦しみに何の意味があるんだろう。べったりと心にこびりついてるそれを何度も何度も拭ったけど、取れない。取れたとしても、また翌朝には出てくる。決めようと思う。
もう許さない。前に進む為に。
ねぎそば
中華麺
ねぎ
黒酢
ごま油
中華だし
目玉焼きトースト

2週間ぶりの心療内科。
「先生、実は、薬は3日目で吐き気が止まらなくってやめちゃいました。だけど、お酒はずっと飲んでません!心も体もすごくいいです。」
私の元気な様子に先生はびっくりしてた。笑顔で言う。
「よく頑張りましたね。お酒は睡眠に障害を与えるし、どうしても枯渇していってしまうからね。いい状態で良かったです。何があったのかな。」
1週間前、夫が鍵をポストに入れていった。
それが理由なのかわからない。だけど、私はこの2週間で見違えるように元気を取り戻した。もう怖く無い。まだ完全じゃないけど、今日は前へ向かってる。
2週間前、病院に中々着かなかった。
246を三茶に向かって歩く。歩いても歩いても進まない。歩くって、こんなに大変なんだって。身体が重くて、足を前へ運ぶのが、歩くことが、どこかへ向かう全てが辛い。生きるってこういう事なんだ。時間が流れている以上、私は生きるしか選べないんだ。ここで全てを止めたい止まりたいのに、時間も止まって欲しいのに止まらない。目の前の世界がテレビのノイズみたい。何も聞こえないのに煩くて堪らない世界が重く私にのしかかった。
チーズトーストを焼いて、その上に目玉焼きをのせて、ケチャップをかける。ぱくぱくと頬張ると、お皿の上にゆっくりとしたスピードで黄身が落ちていった。なんだか音が聞こえてきそう。黄色い黄身。すごく綺麗。慌てて食べないでしばらく見ていよう。静かに時間の中に落ちていく。
チーズトースト
6枚切りの食パン
スライスチーズ
目玉焼き2つ
ケチャップ
ポキ

昨晩、ベッドで考えてた。
今日1日に起こって感じた事について。色々がするするとわかってくる。夫との過去をずっと探してる。救えなかった事だけじゃない。何が悪かったんだろう。私達がこうなる事は最初からわかってたのかな。
2年前の酒乱が始まるまで、ずっと仲良しだった。お酒や暴力があっても、夫はとにかく謝った。それは本心だったと思う。僕は変わりたい。その言葉も本心だったから、私の隣で謝り続けたんじゃないか。
私が夫の音楽に興味無かろうが、夫が私の写真に興味無かろうが、そんなのはどうでもいい。ただ、一緒にいたかった。それだけで十分だった。
秋刀魚の刺身

「大事で大好きな友達だよ!」「ずっと我慢してたのは、バカなんかじゃなくって愛情深いからだよ。」数日前、りょーこちゃんから貰ったメールが胸にずっとある。彼女の言葉は私を救う。私は何ヶ月もずっと、私を責め続けている。
3年前の春だったかな、りょーこちゃんから数年振りにFBのメッセンジャーが入る。「久しぶり。よしみちゃん、お料理撮ってるの?」料理写真を始めた頃だった。菊地食堂の写真を見てくれたのかな。嬉しかった。お仕事をお願いしたいっていう連絡だった。それまでは、私も師匠にならって人を撮ってた。料理を撮ってみたい、だけど。
自分で作って自分で撮って日記を書く。やってみよう。それが菊地食堂の始まり。そのうちに夫の酒乱の時期に入った。苦しかった。だけど、とにかく作って撮って書いた。気づいたらお仕事も増えて、ぽんぽんって、うまく撮れた。私は技術を持って無い。学校もスタジオも通ってないし、人を得意とする師匠についてたから、いつもちょっと申し訳ないような気持ちだった。だけど、好きな料理の写真が撮れる事がとっても嬉しくて楽しかった。壊れた家庭の中で正気を失ってゆく自分を捨てて、私は写真に向かった。地獄の毎日の中にはもう生きる目的が少しだって残ってなかったから、私の居場所は写真しか無かった。私が沢山の料理写真を撮り続けるようになった頃、夫の酒乱は霧の様に消えていた。
まやかしみたいな1年だったように思う。あれから2年後、すごい勢いでまたアレは春に帰ってくる。アレは夫の闇に潜んでただけ、夏が終わる頃に夫は夫を捨ててた。蝉の抜け殻みたいに、するって。私に料理写真を与えてくれた夫には感謝してる。夫じゃなきゃ、私はここまで来れなかったと思うから。
私には大好きな言葉がある。
「よしみちゃんの好きなように撮って。」りょーこちゃんが現場で言う言葉。この言葉が私は大好きだった。彼女はいつも私を信じてくれる。彼女の強さが私に勇気を与えてくれた。
今年は久しぶりに秋刀魚を焼かなかったな。夫は焼き魚が好きで、よく焼いた。何だかずっとずっと昔の事みたい。もう、この家を出よう。夫の抜け殻が残るこの家にはいたくない。私はきっと夫の帰りを待ってしまうだろうから。