カテゴリー: 冬の料理

里芋と葱の味噌グラタン

Journal, 冬の料理, 晩酌 26.2,2023


私は性格が悪い。それが具体的にどうなっているのかを一字一句間違わずに言える。

今朝は久しぶりに家族会議をした。旅行や家のこと、家計簿とか色々と細かい話。どうしてだろう。周ちゃんは私じゃないのに、周ちゃんが出来ないことに苛立ってしまう。

私達は正反対のような性格や特性を持ってる。思った瞬間直ぐに行動に移したい私と、じっくりと考えてから動き始める周ちゃん。大きく広く見る私と定めた部分を奥深く見る周ちゃん。どっちもどっちでいいも悪いもないのだけど、せっかちな私が苛立つのは大体いつものこと。

周ちゃんは同じ話を何度もするし、辞書だとか取扱説明書かってくらいにそれについて細かく丁寧に説明をし始める。私はもうその3分先くらいの場所にいるから早く終わって、どうでもいいから次に行きたいと思いながら話は殆ど聞いていない、聞かない。何でもかんでも思った時にはもうやりたい私は失敗も多いけれど、細かいことなんてかまいたくない。細かいことが気になってそれをしっかりと理解するまでは動けない周ちゃんは失敗は少ないけど論理を組み立てるにはそりゃ時間がかかるし遅いし、もう目の前のそれはとっくに冷めたよ。みたいなことも多い。

お願いだから世界とコミュニケーションして!と思うのは私で、周ちゃんはいつも一人で刻々と時間を重ねてしっかりと前へ進んでいく。コミュニケーションなんてきっと要らないし納得していないと進めないんだろう。

だからいつも私が先にカチンときて怒る。なじる。意地悪を言ってしまう。そんなことを考える度に私が傷つけたひとりめの夫のことも思い出す。私は決して被害者なだけじゃない。沢山の人は勘違いしてると思うけれど、私は過去だって最低だった。

周ちゃんは勉強は出来るし賢いけど、鈍臭くて腹が立つ。周ちゃんにしたら、IQは中学受験どまりでアホで無知でよくわかんない事ばっかりする私は騒がしくて迷惑だと感じてるんだろうと思う。だけど、そうやって出来る限り傷つかない術を持っていて欲しい。

夕飯は一人でグラタンを作って食べた。午後から周ちゃんが出かけてひとりきりの最高なはずの時間を過ごしてると、不意に周ちゃんに会いたくなったりもする。寂しいとか早く帰ってきてとは思わないけど、やっぱり好きじゃんなんて思いながらワインをガブガブと飲んだ。

牡蠣と水菜のおろし鍋

冬の料理, 和食, 夕飯 10.1,2023

L.Aの姉から電話が鳴った。「最近どう?」「退屈してる。」本当にその通りだ。大晦日も正月も楽しかったけれどとっくに飽き飽きしている。家に縛り付けられてるような気分だ。最近の周ちゃんが嫌だとは言わなかった。「本当に退屈してるんだよね。」あくびを何度もした。「手の届かない所にあるライトを変えてくれる人がいたらいいのに。」「あっちゃん。それ、いつも言うね。」「結局さ、その役割をしてくれる人が欲しいだけかな。」「そうじゃない。それでいいんだよ。結婚なんてさ、良くも悪くもないでしょ。」「まあね。」大体いつもこんな話になる。「だってさ、こっちで一人で子供育てて、色々やって。全部自分で決めなきゃいけないでしょ。前は全部ニコが決めてくれてたでしょ。」「最高じゃん。そんな最高な事ないよ。自分の人生だもの。全部自分で決めたいよ。」「確かに。」「だからやっぱり彼氏がいいよね。」「そうだね。」結婚を選んだ私が堂々と言えることじゃないけど、彼氏っていう存在はパーフェクトだ。結婚が駄目ってわけじゃなくて、彼氏ほどバランスとれた関係性はない。姉はしばらく彼氏なんて要らないと言った。仕事忙しいし、私、男が出来たらハマっちゃうじゃんって。ごもっとも。今日は周ちゃんのことで特別うんざりしてる。さっさと寝よう。

ピェンロー鍋

, 冬の料理 07.12,2022

朝一番で梃子の抜糸。採取した癌細胞の検査も良性だと先生に詳しく説明を受けた。別室で痛そうに鳴く梃子。抜糸されるのが痛いのか悲鳴のような鳴き声だった。そわそわとしながらも周ちゃんにLINEしたり、10時からのオンライン打ち合わせに遅刻することを連絡したりとメールを続けた。

午後は柳瀬さんと一本取材。今日もやっぱり平和で穏やかな取材だった。やっぱり、仕事って人なんだよなぁ、としみじみ。取材先の人も丁寧でかわいい柳瀬さんにご機嫌そうだった。柳瀬さんの彼が林檎農家の息子だと聞いてから、青い空の下にどこまでも広がる林檎畑がぼんやりと頭の中に広がっていくようだった。今日みたいな晴れた空の下になる真っ赤な林檎。綺麗だろうな。そんな木の下で育った男ならさぞ優しかろう。

それからミオちゃんと駅前にあるブルックリンなんとかっていう新しいカフェで待ち合わせ。春に渋谷でランチして以来。「元気?田舎暮らし大丈夫?」「もう大丈夫!今はすっごく楽しいよ。」アンチ結婚と超がつくシティーガールだったらしい私のあまりに急な展開に誰よりも心配していたミオちゃん。「元気そうなら良かった。」と何度も言ってた。それから、ちょっと仕事を休んでいた事と、その理由が妊娠と流産だったことも伝えた。「よしみちゃんの人生は激動過ぎるけど、よしみちゃんらしいと言えばらしいよ。望んでいないのに子供が出来るとか、導かれてるとしか思えないよね。元気そうでよかった。」呆れながらも私の今を喜んでくれてるみたいだった。「私がおかしいみたいに言わないでよ。イスラエルのシェルターの話する女も中々いないよ。」私の言葉に目を丸くして笑ってた。ミオちゃんは秋に2週間ちょっとイスラエルに滞在していた。流行のレストラン、歴史的なもの、街、それからパキスタンにも少し渡ってみたり。軍服にはお洒落なメーカーがあるみたいな話から、戦争や経済の事まで私でもわかるように簡単に教えてくれた。宗教的なものや、国家的なものまで、独特なイスラエルの文化について、とにかく色々と勉強になったと話していた。「だいたいロンドンもNYもシティーはどこもそんなに変わらないでしょ。」「うん。そうだよね。楽しいけどね。」「そうそう。やっぱりこういう文化的なことを学べる経験はいいよね。」自分が持っていたイスラムへの偏見が間違っていたと、特に恥じる事もなく淡々と話すミオちゃんはやっぱりそれこそミオちゃんらしくて好きだなと思った。それから、ミオちゃんのお父さんが常連だった青山の蔦っていう喫茶店のマスターが倒れたっていう話も聞いた。前に取材帰りに連れて行って貰ったお店。カレーが美味しかったけど、他の人が頼んでるサンドウィッチも美味しそうだった。ミオちゃんも小さい時からお父さんに連れられてよく通っていたらしい。「私、やろうかな。いきなりコーヒー屋とかになってたらごめんね。」「うん。いいと思うよ。」

人生なんて何が起こるかわからないし、何になったっていいし、人が何と言おうが思われようが、それで失敗しようが大丈夫。畑を越えたら全然違う話をしてるみたいに、人が欲しい物もやりたい事も全然違うのだし、年齢も性別も生きてきた環境も、なんなら貧困の差だってある。大体誰かは批判して、大体誰かは賛同してくれる。いきなりコーヒー屋になるのはすごくいい。

塩豚のホワジャオスープと焼いた卵

, 冬の料理, 中華 19.1,2022

今日はスッキリと目が覚めた。やっぱり早寝早起きはいい。昨晩は周ちゃんと電話しなかった。周ちゃんとの時間も楽しいけれど、やっぱり私の時間が好き。外は未だ暗いままで朝はしばらく来なそう。白湯を飲みながら色々を進めた。気づいたら9時過ぎ。慌てて支度をして駒沢公園へ映像の編集で使う為に空を撮りに出かけた。公園に着く頃には白い雲が辺り一面に広がってる。あーあ、なんだよ。帰ろう。

帰り道に松陰神社の商店街にあるお花屋さんへ寄った。店番をしてるお爺ちゃんを見る度に近所のフォトグラファーの渉さんがお爺ちゃんの話し方のマネするのを思い出してちょっとおかしくなる。「チューリップ下さい。すみません、一本でもいいですか?」「いいよ〜。150円ね。」チューリップの札には200円と書かれてるけど、いつものように少しまけてくれた。「この花、ちょっと短いの。いる?三本あげるよ〜。チューリップにはちょっと合わないけどね〜。」結局、4本の束のお花を抱えて家路に着いた。紫色の綺麗なお花。名前を聞いたけど忘れちゃった。何だか可笑しいな。

帰り道はインド人がやってる肉屋の通りを入って小さな公園の裏を通るのがお馴染みのコース。そして真っ直ぐと通りを家の方へと向かう。この道も何回歩いたんだろう。少しでも家が華やぐようにとお花を買い始めたけど、寂しいとか怖いとか不安だとか、私が1年の間に落としてきた色々がまだこの通りに残ってるみたいで少し頬が冷たく感じた。

帰宅して昼食を食べながら姉と電話をした。兄の事だとか、結婚とか夫婦とか、色々な話をした。最近姉がハマってる後ろ歩きについての話もした。「後ろ歩きで坂を登るのが超難しいんだけどさ、頑張って登り切るでしょ。最近は登れるようになってね。それで前へ向いて歩くと、すっごく楽に歩けるんだよ!」「あっちゃん。それは後ろ歩きしてたからだよ。」「違うよ!超歩きやすいんだってば。すっごく快調なんだよ。色々が。」姉の事はよく知ってるけれど、沢山の事をまだまだ知らない。とりあえず嬉しそうだからいいや。とにかく沢山笑った。それから、結婚がいいもんじゃ無いって話もした。うん、これから二度目の結婚をしようとしてるけれど、そう思う。結婚はいいもんじゃ無い。

兄は幸せだったと思う。どうして元気が無いのか姉は少し聞いてるようだったけれど、結局姉妹の推測でしかない。ただ、姉も私も結婚に苦しんだことがあるから、その虚しさが少しでも想像できる気がした。妻になる。夫になる。父になる。母になる。役を担うのは簡単。どうにかして頑張ればいい。だけど、難しいのは役に自分が喰われないようにすること。頑張れば頑張ってしまうほどに喰われていく気がしてる。嬉しい楽しい苦しい悲しい、色々な時の自分が気づいたらどんどんムシャムシャと。いいよって言ってないんだけど、家族が夫が妻も一緒になって食べてる。誰も意地悪してやろうなんて一切思ってないし、それって生きる為に必要だったりそうじゃなかったりなんだけど、私の栄養が私が生きる為のそれが気づいたら底をつくまで喰われていく。「お腹空いたから今すぐ何か作れる?」「ご飯もう作らないでいいよ。作ってなんてお願いした?」「全部別々でいいから。好きにさせて。じゃなきゃ離婚でいい。」「今日は早く帰れるから一緒に食事しよう。」「お土産に醤油買ってきたよ。」家に居たり居なかったりがよくわからない元夫の口から出る言葉は全くよく理解出来なかった。抱きしめられたり突き飛ばされたり。とにかく私を蝕んでいった。あの頃の私は何を担っていたんだろう。今でもよくわからないけれど、戸籍には妻だったと書かれてる。

電話を切ってから少し考える。姉はしばらく一人で生きたいって言ってた。誰かを想うことで自分を失ってしまう時間が来るのはもう嫌だって。私もそう思う。だから誰かと一緒になりたいとは思わない。結婚はするけど、ずっと別々でいたい。周ちゃんが家族の何かを担おうとしたり、それで苦しんでしまったりしたら、どうかここから離れて下さいとお願いしようと思う。離れて欲しく無いけど、切り離された場所は露わになって私は生きづらくなるかもしれないけど、それでもいい。それがいい。

塩豚と大根のスープ 按田餃子の按田さんのレシピ
塩豚 [豚肉に5%の塩を揉み込んで数日冷蔵庫で寝かせる]
大根
生姜
花椒