
朝ベランダでバナナに滑ったみたいに転んで尾てい骨を打った。スローモーションに傾いてゆく身体 ”あ、やったな。” その次の瞬間にお尻がどすんと窓のへりに落ちていった。自分を呪いたくなるくらいに最悪な時は冷静だ。どんな時だってそう。怖くて仕方ない時も悲しくて仕方ない時も、その瞬間に心は止まってる。まるで電波の悪い電話みたい。心の音が来ない。そこには多分タイムラグみたいのがあって、聞こえる筈の声を待ってる。

朝ベランダでバナナに滑ったみたいに転んで尾てい骨を打った。スローモーションに傾いてゆく身体 ”あ、やったな。” その次の瞬間にお尻がどすんと窓のへりに落ちていった。自分を呪いたくなるくらいに最悪な時は冷静だ。どんな時だってそう。怖くて仕方ない時も悲しくて仕方ない時も、その瞬間に心は止まってる。まるで電波の悪い電話みたい。心の音が来ない。そこには多分タイムラグみたいのがあって、聞こえる筈の声を待ってる。

幸せはある日突然いなくなる。
だから、日記を書いておくといい。すごくいい。
本当に人間って馬鹿だなぁと思うのだけど、直ぐに忘れる。それに直ぐに自分の都合の良いように記憶を書き換える。だから、今日感じている事を忘れずに記録しておく。想像を遥かに超えて、不幸と幸福の比率は断然幸福の方が多い。だって、生きている事自体がポジティブだから明日を迎えようとしているのなら既に幸福スタートなのだ。私の最近は最悪の超最悪どん底だ。だけど、日記を読み返していたら、ちょっとハッピーになった。ハッピーだった日の温度を思い出したら、少し温まって、かちかちの心が緩む気がした。今日も日記を書こう。

30才そこそこで、師匠の元を独立してぷらぷらしていた私は日々明太パスタに埋もれていた。弟子入りしてみたものの、やっぱり商業は合わないと直ぐにやめたくなったアシスタント業、師匠に迷惑をかけたくないの一心で続けた。そんなアシスタント業をふんわり卒業した頃だった。夫がやっていたバーの料理を私が担当していて、口うるさい夫(本人曰く「全国をツアーで回っているから俺はグルメなんだ。」そう、だけど真実は闇。)を唸らせる料理を色々と考案した。パスタは幼少の時にボンゴレ狂になって以来、いつしかパスタのパの字も出てこなくなって数十年。明太パスタなんて人生で片手くらいしか食べたことが無かった。魚の卵と麺だけなんて、身体に悪くて変な食べ物だなぁと思っていた。どうしてこのレシピに辿り着いたのか全く覚えてないけど、色々がちょっとずつ変化してこうなった。超がつくジャンクレシピ。
当時、何者にもなれない先の見えない不透明な毎日の連続の中でぼんやりしてた。若さ故か苦しくは無いけれど、心のどこかが寂しかった。今更後悔しても遅い。周りの子と足並み揃えて写真大学でもスタジオでも出て写真をきちんと学んでおけば、もっともっとスマートに写真を生業に出来ただろうに。お金をかけて必死に大事に育ててくれた親が泣くのも無理が無い。親のせいにするのは申し訳ないけど、親がヒッピーだったから悪いんだ。そんなスピリッツが絶対私の身体のどこかにいるはずだ。
言い訳だけど。だけど、いい事がひとつ。明太パスタが大好物になった。ピンク色のパスタを見ているだけでうっとりする。大分遠回りをしてきたけれど、明太パスタが好き。

4年前の写真の整理をしていたら、納豆パスタの写真がでてきた。午前10時30分。さっき遅めの朝食にトーストを食べたばかり。2、3分冷たくなったブラックコーヒーを勢いよく流し込んだけど、もう我慢ならない。キッチンへ走る。湯を沸かし冷蔵庫の中に使えそうな材料がないか探す。パスタの何が好きって、乳化が好き。フライパンの中で私の想うままに素直に乳化してくれる感じが気持ちがよくてやめられない。それに、オリーブオイルの味が好きだから根本的に私と乳化は相性がいいと勝手に思ってる。納豆パスタ愛おしい。いただきます。

悔しい気持ちだった。時々こうなる時がある。
どこのどの血がこうしているのか判らないのだけど、ものすごい憤りを感じる時がある。
だからというか、もう好きな事をしようと思って鰯を捌いてマリネを作る。夜中に気分が盛り上がってギターを鳴らしまくる夫が言う。「すーちゃんは自分勝手だよ。」そうかもね、人間なんて勝手なんだよ。私は今猛烈にキレてる。優しさも欲しければお金も欲しい。好きな仕事も欲しいし愛も欲しい。それに、やっぱりいい写真も欲しい。人の写真見てぶつくさ言い出したら最後。わたし腐ってる。「鰯は足が早いからね。」小さい頃、とても複雑な気持ちになる言葉だった。美味しいのと腐るのが同じ場所にいる。なんだか変だよ。

料理家さんのスタジオでの撮影。
マスクして換気して万全体制の撮影。こういうも、時間が経つと慣れるもので全然苦じゃなくなった。やっぱりすごい。本当にすごい。発想力もすごい。それに、キッチンでテキパキと料理をしている人の姿ってなんでこんなに素敵なんだろう。楽しそうにアシスタントさんと笑いながら料理を作ってる。見てるだけで幸せな気持ちになる。自分で料理を作るのも好きだけど、作ってる人を見る方がもっと好きだな。

8年前、夫がやっていた今にも潰れそうな中目黒駅前のバーで、ゆうきに週一回お店を手伝ってもらっていた。ゆうきの日は、彼女のファンでほぼ貸切状態となる。バイオリニストでグルメの会をしている彼女には沢山のファンがいた。その日だけはゆうきオリジナルのメニュー。だけど、カポナータだけは作って、とお願いした。
私の高校生活は素敵な友人に恵まれたと思う。ゆうきと私の他に、年上の青年実業家な彼氏がいてリッチな生活をしていたエリ。とびきりな美人か、とびきりセンスのいい女にしか興味がない裏原をこよなく愛していた繭。松戸のマックでバイトしていたみき。いつも皆が口を揃えて言ったのは、みきは普通。今思うと、とても失礼な発言だけど、嫌味とかじゃなくて彼女のスタンダードな生活にみんな少し羨ましかったんだと思う。学校が終われば、東京から地元の松戸へ帰り、マックのバイトと恋と地元の友達で大忙しな平和で安全な高校生活。勉強は中、性格も良好、明るくて、口も丁度よく悪く、休みの日はクッキーを焼くような笑顔が可愛い娘だった。
当時の私の注目は心理学とタトゥー。勿論、誰ひとりとしてそれを知らない。みんなで騒ぐのは昼食時と休み時間。それ以外は、それぞれが、それぞれのすべき事のために駅前のマックで軽くお茶をして、バイバイ。まるで会社の同僚みたい。仲はよかったけれど、何か以上に突っ込むことはしない。だから卒業旅行に行こうだなんて誰も言わなかった。
ゆうきの拘りと言えば、マイ唐辛子を持ち歩き、購買のうどんを真っ赤に染める事だった。そしてグルメ狂。時に狂いすぎて、空腹時にマックのチラシを食べているのを何度も目撃した。それから、ジャニーズの追っかけ。全国をあちこち回りいつも忙しそうだった。そんな彼女とは、他の子たちとも、高校を出てからもずっと友達関係は続いた。
どうして私達が友達になったのかわからない。援交や薬物でどんどんガリガリになる真っ黒なギャルとも、クラスで一番大人しい子とも、運動部のエースとも、誰とでも隔てなく仲よしだった私達だったけれど、食事の時間だけは、いつも一緒で最高に楽しんだ。喧嘩なんてした事は一度だって無い。後になって思えば、みんな食べる事が好きだった。スタンダードみきも、結局大学卒業後に突然ミクニさんのところへ弟子入りして、その後パリへ飛び立った。
夏が来る度にゆうきのカポナータが食べたいと思う。昨晩、ふと思い出してメールした。「カポナータのレシピを教えて!」直ぐに返信があった。「忘れちゃった。確か、焦がしニンニクと、パルメザンチーズが決めて!」ん?チーズなんて入ってない。何度も店のキッチンに隠れて食べていた私だから忘れるわけがないよ。まぁいいや、何となく作ろう。だけど、やっぱりゆうきのカポナータが世界で一番美味しい。


焼いたケチャップって何でこんなに美味しいんだろう?って思うんだけど、そのまんまのケチャップも本当に美味しい。うちはふつーのカゴメのケチャップで、特別なケチャップじゃないけど、時々ケチャップの美味しさに、はっ!となる。オムライスは焼いたケチャップとそのまんまのケチャップをミックスして食べるライスなのです。素晴らしい食べ物。

「お腹空いた。何か食べてから出たい。」
さっきまで何も要らないって言ってたのに夫の気分は急に変わる。そういう時によく使う手が冷凍もの。ちょっと多めに作っておいたパスタのソースを冷凍して置く。そうすると10分くらいでパスタができる。パスタを茹でている間にレンジで解凍してフライパンに入れる。オリーブオイル大さじ1と茹で上がったパスタを入れ、くるくると弱火で1分ほど混ぜるだけ。そこそこ美味しいパスタが出来上がる。特別なものは要らない。毎日が美味しければそれでいい。

今日は昨日とは打って変わって朝から気持ちの良い晴れだった。先週にメニューの撮影をしたWhy juiceが下北沢のBONUS TRACKにオープンしたと聞いたので、新しい物好きな夫を誘い機材車に乗り込んでジュースを買いに行った。帰宅して夫はいつもの通り車で何処かに消え、私は納品作業をし、色見本を郵送する為に近くのポストまで歩いた。気づいてみれば家の周りには桜並木が多い。青い空の中で桜が風と一緒に舞ってる。何度も何度も思い切りに空を見上げた。こんな風に空を見上げるなんて久しぶりだ。桜って近くで見るとピンクじゃなくて白かったんだ。日々の恐怖が少し和らぐような気がした。
昨年、夫がやめた筈の酒をまた飲み始めた。それまでは黙っていたけど、散々悩んだ挙句もう無理だと思って夫の母に相談した。大暴れした数日後、ご両親は奈良に近い大阪からわざわざ東京までやってきた。夫が暴れた夜に破った襖を必死に隠していたのはとても滑稽な姿で未だに目に焼き付いてる。それなのにその1ヶ月後、また嘘をついて酒を飲んだ。この家から逃げ出したいと思った数日後。東京の私の家からL.Aにある姉の家まで電車と飛行機と車、移動をいれても1日弱。「よっちゃん、家出してきたんでしょ。」姉に言われた言葉はそれ以上でもそれ以下でもなかった。「離婚しちゃえばいいじゃん。」「そんな簡単じゃないんだよ。」姉に家出した理由は言わなかった。言ったら面倒だし大変なことになるのはわかってる。
東京での生活を忘れたように過ごしてから、サンフランシスコにある叔父さんのアシスタントのチチの家に遊びに行った。そこで食べたスパゲッティー。イタリア出身のチチのお父さんが作ってくれたサーモンがたっぷり入っているやつ。寸胴の鍋たっぷりに作ったソースをいつもの手つきでふるまうお父さん。冷え切った心に温かいトマトソースがじんわりと染み渡った。
あれを作ろう。急にあのスパゲッティーの記憶が降ってきたように頭に浮かんだ。ロックダウンのために買っておいた鯖缶とディルを漬けてたオイルでトマトソースを作り、火傷しそうな程に熱いパスタを頬張る。記憶の中のご飯ってどうしてこんなに美味しいんだろう。

今夜はハンバーグ。母のお兄ちゃんはプロボーラーを怪我で引退してから喫茶店を営んだ。「ママもね、お兄ちゃんの喫茶店をお手伝いしてたの!それでね サンドウィッチは、ナポリタンは、、」そんな話を母から沢山聞いた。若かりし頃の母、ちょっとハイカラなお料理ライフを過ごしていたんだろう。そんな母の洋食レパートリーは沢山あった。ハンバーグ、グラタン、ラザニア、ミートローフ、色々な洋食を作ってくれた。そんな秘密はキッチンの棚。料理本がずらっと並んでいて、夜な夜な、パラパラとめくってはうっとりした。
スタンダードな洋食が好き。日本の素晴らしい文化だと思う。

我が家はトマトスパゲッティに昆布茶を入れる。昆布茶無しでは語れない。



今夜はアカリちゃんが遊びに来てくれた。今日も夜更けまでお喋りがつきない。夫の悪愚痴も散々吐いて、聞いてもらった。今、とても寂しい。最近の夫はまた少しおかしい気もする。だけど時々あること。夫はまるで家出したかのように家庭を脱ぎ去りツアーにでると、殆んどおとさたがない。明後日、10日ぶりくらいに帰ってくる。

夫が好きな鯵の干物。私は苦手だから余り食べない。だから、当たり前のように余ってしまった干物はいつもオイル漬けとなる。今日は、オイル漬けのオイルでズッキーニのパスタを作った。

有元葉子さんのレシピが好き。だけど、有元さんの料理って、あまりに美しすぎて「私、有元さんが好き。」と言うのは少し気が引けてしまう。だけど、オイル煮のレシピは簡単。私でも十分出来る。ざっくりとやるというのがポイントのレシピだからだ。今日は青菜の代わりに白菜ときのこのオイル煮にした。

坂田阿希子さんの本でタラコのレモンオイル漬けっていうのがあって、いつもとはちょっと違うレシピで明太パスタを作ってみた。はじめてのレシピに緊張。そして失敗した。味は最高だったんだけどパスタが硬かった。

坂田阿希子さんのレシピ。ずっとやってみたくて、2週間、いや一ヶ月くらいかな。綺麗なタラコを探してた。タラコの檸檬オイル漬け。

ずっと丸いテーブルが欲しかった。ビンテージで状態がいいのは30万くらい。なんとも恐ろしい値段。 昨日の朝、Harutaの正月セールに出ていた丸くないビンテージのテーブルを夫に勧めてみる。「すーちゃんは丸いのが欲しかったんでしょ、丸にしなよ。」セール品は諦める事にした。だけど、そ んな矢先にネットでたまたま吉祥寺のPleaseで破格の丸テーブルを発見。連日ベッドから起きてこない夫を叩き起こして電車で向かった。今日の朝、一番で到着。「このテーブルは 料理映えするね。」ご機嫌そうに夫が言った。ようこそ我が家へ。ランチはトマトと茄子のスパゲッティーにした。

おせちは昨晩実家で食べたから気分じゃない。「菊地君、昼はちらし寿司と赤味噌のお味噌汁にしようかな。」ベッドの中から声だけが返ってきた。「スパゲッティー。」「あのスパゲッティーがいい。」「太麺がいい。」オーダーが続いた。「太麺はないよ!」なんだかイラっとしてちょっと強めに返したけど返答がない。数日前の夕飯に焼いた鯵の干物をほぐしてスライスした大蒜とオイル煮にする。途中で玉ねぎと塩を少々。その間にスパゲッティーを茹でる。固めに茹で上がったスパゲッティと茹で汁を合わせてトングでぐるぐると回し、ソースがとろっとしてくるのを待つ。お皿に盛りつけて檸檬を絞って青葱の山椒オイル(青葱の微塵切りを花椒の実と一緒にオイル煮にしたもの)をかける。檸檬はたっぷりの方が美味しい。夫はさらに粉山椒をかけてた。今日は元旦。

▽ 材料 ▽
長芋1/2ー1cmくらいにカット
長ネギ 1本ー3cmくらいにカット
鳥もも肉 1枚
ピザ用チーズ

最近ハマってるトマトクリームスパゲッティー。
やけどする位に熱いスパゲッティをハフハフしながら食べるのが好き。
仕事から帰ったら3時だった。そりゃお腹ぺこぺこなわけだ。キッチンへ直行して大きなお鍋に湯を沸かし、玉ねぎ、にんにくを切る。オリーブオイルをひいたフライパンへぽんぽんと入れていく。シーフードミックス、トマト缶、黒オリーブ、昆布茶を入れてグツグツと煮込む。茹で上がったパスタ、オリーブオイル大さじ1をフライパンへ入れて、トングでぐるぐる回すと、そのうちにソースがとろっとしてくる。最後にクリームチーズを入れてざっくり混ぜ合わせて出来上がり。好きなものは一番いい場所から食べたい。だから真ん中に、フォークを入れて食べ始める。一番あっつあつのところから。

じゃがいもを棒状にスライスして、薄くスライスした玉ねぎと、塩、胡椒をして、色が薄くなるまで炒める。(じゃがいもを先に入れる)耐熱皿に盛りつけて、上にアンチョビフィレを並べ、その上にまたフタをするように盛り、最後に生クリームを八分目くらいまで入れる。弱火のオーブンで30-40分で出来上がり。今夜は近所の友達と事務所で芋煮会。簡単で直ぐに準備できるヤンソンさんの誘惑。夫の夜食、面倒くさがらないで温めて食べて欲しいな。

昨日、お料理が上手なモデルさんのお宅で料理の撮影をした。
無駄なものがなくってきちんと整ったキッチンは、普段大事に料理をしているんだなぁっていうのが想像できるような場所だった。テキパキと料理をする姿が美しくて、惚れ惚れと眺める。
母が作るロールキャベツの事を思い出した。大きな鍋にロールキャベツがごろごろと入ってた。確か味付けはケチャップと醤油を少し入れてたな。記憶をたどって作ってみよう。
手にはできない形だけれど、きちんとおさまる場所がある。そういうのが目の前で起きているとき、なんて言ったらいいんだろう、世界がすっごく明るくなるような、そんな不思議な光景になる。キッチンっていう場所は本当に魅力的。そこにある料理も、そこに立つ人も、美しい。

グラタンってなんか素敵よね。
冬になるとグラタンが食卓に並んで、クリームソース自体はそんなに好きじゃなかったけれどグラタン皿を開ける感じがすごく好きだった。うちのグラタン皿は真っ黒で蓋がついてて、丸くって、それぞれの席のところに丸いグラタン皿が並んでた。
真っ黒の中に真っ白なホワイトソースとチーズ。なんだか絶対に美味しい気がする感じが好きだった。


夫の様子が最近またおかしい。
ベッドから出ない。「何もしたくない、起きたく無い。」と言い、数日ずっと寝ている。またこの時期が来たなって不安になって、アカリちゃんに少し相談した。食事はちゃんと食べてる。

台風がまた来た。
家族や友達と連絡を取り合う。夫は朝からずっとぐーすか寝てた。玄関に防災グッズを準備して、テコに首輪をしていつでも出れるようにして寝た。何だかざわざわしていたから、肉と野菜を鍋に放り込んでゆっくりと煮込んだハヤシにした。