カテゴリー: Journal

eat new me

Journal 29.12,2020

変な夢を見た。姉が大量の血を吐いて、私が背中をさすりながら「大丈夫。大丈夫だよ。」って言ってる。姉が大量の血を吐いたのは、ストレスの所為。そのストレスの原因は私の色々を全部受け止めてしまったから。昔、姉が怒り過ぎてホクロから血が吹き出した事があったけど、きっとその事がずっと胸にあったんだろう。姉の吐く血は、まるで蛇口から勢いよく出てくる水みたいな速さで、すごくびっくりしたけど、とても綺麗だった。

目覚めてから、あまりに強烈な夢にどきどきしながらgoogleで調べる。なんと、大金が入ってくる夢らしい。今の状況が悪ければ悪いほどに、大金だそう。やったー!姉にメールする。「私達、すごい大金が入るよ!」

昨日は昨日。今日は今日。明日は明日。泣いてばかりもいられないし、うつつを抜かしてばかりもいられない。

仕事の活動名、旧姓に戻す事を躊躇っていたら友達がダサいって言うし、心機一転で名前を変える事にした。さぁ、大金が入ったら家族や友人にご馳走しよう。飛び切り美味しいご飯を一緒に食べよう。

食べる事は生きること、生きることは食べること。
怖がらないで、新しい毎日を食べよう。新しい私を食べて、食べてもらおう。




新しい日記のタイトルは、eat new me.









チキンカレー

Journal 27.12,2020

久しぶりのチキンカレー。我ながら絶賛。私のチキンカレーは美味しい。この美味しさを誰かにあげたいって思う。今日は林檎を一個すりおろして入れた。いい感じの甘さ、最高。

全部捨てた筈だったのに、彼の写真が久しぶりに出てきた。見ちゃいけない。見たくない、怖い。とっさに目を伏せる。いや、見よう。もし、怖いと思うなら見た方がいい。今から逃げてても逃げ続けるだけ。ちゃんと見よう。彼のどこが好きで、どこが嫌いだったのか。

一つ一つを思い出す。
アトピーだから、首元はよくただれていたな。髪はいつもボサボサ、フケもすごいから彼用に少し高いオーガニックのシャンプーをネットで買ってた。顔だけはそこそこハンサムだけど、服を脱ぐとこなきじじいにそっくり。表向きは騙せても、身体は真実だなぁと関心した。服はボロボロで、お酒を飲むお金はあるのにいつも服を買ってとせがまれてた。なんでだろう。なんで私が服を買わなきゃいけないんだろう。お酒を呑むと変なテンションになって、お酒が入らないと借りてきた猫みたいで、子供みたいで、だけど、子供みたいっていい表現に聞こえるけど、それっていいのかな。みんなが可愛いと言う彼を私も可愛いと思ってたけど、本当に可愛かったんだろうか。みんなって誰。私の周りの人は誰もそんな事言ってない。

写真を覗けば覗くほどに、わかってくる気がした。人生をいつしか諦めてしまったのは私なんじゃないか。妻になったから、この人の悪い所全てを受け入れる。私が求める事、やりたい事、望む事が叶わないのなら、世界からそれを捨ててた。

前に仲の友人と子供の事について話した事があった。「うちは夫が子供を要らないって言うから、前は欲しかったんだけど今はいいかな。」ちょっと寂しそうに見えた。私より年が1つ上の彼女にとって、今という時間はいつなんだろう。彼女が自分の想いを世界から消失させてる気がした。きっとあの時の彼女と同じだ。私は一体何を望んで彼の妻として私の人生を生きてたんだろう。

彼の病気も、私の諦めも、同じように進んでいった。一緒にいれるだけでいい。本当にそうだったんだろうか。自分の人生の舵を誰かに委ねるような生き方って間違ってる。夫婦でも、相手に委ねるものじゃない。できる方がやればいい、それも間違ってた。世界は出来る出来ないで作られてない。出来る人も出来ない人も同じように今を生きてる。

結婚っていう幸せを手にしたから、私は人生を諦めちゃったのかな。

ああ、今日も最高なカレーだったな。
もう嫌だって、毎日、何度もどこかで人生をやめたくなる。
そうじゃない時間の方がずっとずっと多くなったけれど、そう思った時に全てもういいやってなって、ぶっきらぼうに適当な食事を食べると今日っていう日が何だかつまらなくなる。だから、やっぱり諦めない方がいい。

料理も人生も、今っていう時間を諦めない方がいい。

キムチチゲ

Journal 18.12,2020
キムチチゲ
アサリ
キムチ
豆腐
玉ねぎ(スープに甘みを出す)
ねぎ
さつま揚げ
にんにく 2片 すりおろし
ごま油

鶏のスープ
味噌

鍋にごま油を多めにひいて、キムチを炒める。(旨味を出すため。豚肉有りの時もこのタイミング)野菜(にんにくも)を入れて、しばらく蒸し焼きにして、あさり、キムチの残り汁、鳥のスープ、さつま揚げ、豆腐を入れて煮る。火が通ったら、味噌でほんのり味付けをして出来上がり。

食卓とラナンキュラス

Journal 18.12,2020

夜中の1時に目が覚めた。
最近は夜が早く来るから、寝る時間も早くなった。陽が暮れるとお風呂に入って早々に寝る準備に入る。ふかふかの真っ白のベッドに、梃子とお気に入りのお茶と一緒に飛び込む。たぶん8時過ぎには寝てたのかな。

心も身体も大変だった時期、フジモンがよく私に言った言葉。「よしみちゃん、寝よう!今日は、まず寝よう!」彼女の言葉に何度救われたんだろう。本当のところ、実際にはベッドに入っても中々寝れない。目をつぶれば悪夢がやってくる。だけど、横になってるだけでいい。心はダメでも、身体が休んでくれると、そのうちに心も良くなってくる。人間の身体って、良く出来てる。

夢の中で、すごく久しぶりに彼に会った。
昔みたいに、酷い事をした時みたいに、私に必死に謝って甘えてきた。今、思うと本当に3歳くらいの子供がお母さんに強請るみたい。

私の中で、もう終われた。きっと、もう本当に良くなったんだ。夢の中の私には、怒りや悲しみや恐怖なんて無かったし、もう騙されてもいなかったし、知らない女の人もいなかった。ただ、彼が甘えてた。

今更なんでこんな夢って思ったけど、私の中で少しずつ整理してるんだろう。私が手放したのは、彼ではなくて彼が向き合わなかった彼の問題なんだ。私が助ければ助ける程に彼は私に甘え、病気は進行した。

近所に住む朋子ちゃんがラナンキュラスを持ってきてくれた。色々な形、色々な色のラナンキュラス。なんて綺麗なんだろう。同じ種類なのに、こんなに違う。同じ時間が同じように世界を進んでいくのにそれぞれに美しい。人生ってのがまだよくわからないけれど、毎日もよくわからないままに今日を始めてるけれど、きっと、たぶん、美しい。

デスクから見える、ラナンキュラス。食卓の上で光ってる。

自家製キムチ

Journal 13.12,2020

今日は友達と家でキムチを漬けた。
今年の2月に家で皆で漬けてから10ヶ月後。花沢さんは、あの後、妊娠が発覚して、一児の母になった。世界はコロナで大変な事になって、アリちゃんはすっかりyou tuberになって、私は新しい家で新しい生活を始めてる。たったの10ヶ月で、こんなにも色々な事が起きるのかって。

だけど、また同じ様にキムチを漬ける。笑いながら、お喋りしながら。

自分がここに立っていれば、大丈夫なんだ。
今朝、深夜のパリにいるまゆみちゃんとも、同じ様な事をメッセンジャーで話した。自分がやりたい事に夢中になってやる。それでいい。それだけで、きっと、どうにかなる。

フランスでは結婚しない人が多いし、大統領でさえしてないって。家族と結婚っていうのは、別の話なんだそう。名前が変わった今、本当に辛い。何で女性である事でこんなに苦労しなきゃいけないんだろう。何でこんなに辛い経験をしなきゃいけないんだろうって。

もう名前とか要らないって思う。
私が誰だかわからなくなる。

手作りキムチ
水抜きした白菜 半玉
[ 出汁 ]
にぼし 60g
昆布 20cm
水 4カップ
上新粉 大さじ4
はちみつ 大さじ4

甜菜糖 大さじ2
長葱 2本
せり 1束
人参 1本
ニラ 1束
りんご すりおろし 2個
にんにく すりおろし 4片
生姜 すりおろし 60g

アミの塩辛 100g
ナンプラー 大さじ4
粉唐辛子 120g

ラザニア

Journal 09.12,2020

「夕飯なんていらねーんだよ!誰が作れなんてお願いしたんだよ。」

お酒が酷くなり始めた時に彼が吐いた言葉を思い出す。
夜中に泥酔する日々の中で私がお酒を止めてとお願いすると、夕飯を作るお前が悪いと怒鳴り散らした。私達のいつもの食卓が一瞬にして壊れていく。もう、私にはどうにも出来なかった。

食卓さえ温かくしておけば帰って来てくれると信じて、信じるしか無くて、いつもの様に好物を作って、冷蔵庫には彼が好きなものを入れておく。夏がくると毎年食べる、桐の箱に入った今にも折れてしまいそうに細い素麺は夏が過ぎる頃には友人にあげた。朝に焼くウィンナーも、食後に食べるアイスクリームも、全て、夏が終わる頃に捨てた。

食卓が好きだった。大切な人と食卓を囲むって最高だと思う。美味しいを一緒に味わえるって、そんな幸せは無いんじゃないか。1日の終わりに、1日の始めに、一緒に食べる。毎日やったって飽きないし、毎日美味しいし、毎日毎日、本当に最高な気分になれる。だって、目の前で熱々のチーズが溶けていくのを一緒に頬張れるなんて、チーズが冷めるまでの、ほんの一瞬の時間を味わえるなんて、最高な出来事だよ。

料理が大好きなのに、誰の為に作っているのかわからない食事を作る事が毎日なんだか辛いし、どこか後ろめたい。手を動かせば紛れる何かがあったけれど、やっぱり寂しい。気持ちの問題だと思うけれど、気持ちの問題だからどうにも出来ない。だけど、やっぱり料理が好きだし、食卓が好き。私の好きを失くしたく無い。

幸せは自分で作るものだと思う。だけど、一人じゃ幸せにはなれない。
大皿で作ったラザニアを一人で平らげるなんて、私は楽しくない。

今夜は後藤さんと家でお祝いをした。一緒にいて、心がほっとする人。美味しくて、とても幸せだった。

ラザニア
ミートソース [豚挽肉、玉ねぎ、セロリ、人参、ケチャップ、砂糖、トマト缶、コンソメ]
ラザニア
ピザ用チーズ

12月3日

Journal 03.12,2020

哀しい事があった。数ヶ月も前にあった事で彼が怒り、友達の夫に電話があったんだそう。彼らも友人同士。友達は声を震わにして私に怒りをぶつけてる。彼が起こした行動なのにどうして私が怒られているのか、よくわからない内容だった。胸が痛くなる。

人が怒るのは哀しい。とても哀しい。彼が未だに過去の事で怒っているのも哀しい。あれは自分の起こした罪だ。あの日は彼を残して誰一人として悪くない。私は朝まで帰らない彼を何も言わずに待っていただけ。いつもの様に。いつもの様に彼は嘘をついて帰らなかっただけ。大事な話の約束をしてたけど、当たり前のようにすっぽかされた。そういう日に起きた出来事。彼の40回目の誕生日。私にとっても特別な日だった。

もうこれ以上に哀しい気持ちになりたくない。自分だけじゃない。目の前で誰かが哀しむ顔だって見たく無い。友達が哀しむ顔も、知らない人の哀しむ顔も嫌だ。私には関係無いとは思えない、胸のどこかが勝手にひりひりとしてしまうから。もう本当に厭。

撮影から帰宅してすごく疲れてる。引っ越してきたばかりの家で、まだまだ心の整理もついてない、行き場のない不安だけが毎日を繋げてる。ぽろぽろと涙が落ちてきた。

彼は、私じゃない誰かも、自分の苦しみから逃れる為に平気で傷つけたんだ。どうして、彼にとって大切な友達を傷つけるんだろう。数ヶ月も前の事を掘り起こして、そこまでして自分の苦しみを誰かにぶつけても、楽になんてなれるわけがないのに。

引っ越しても、電車に乗っても、街を歩いても、私達の8年間の思い出が至る所にある。もし、あのまま我慢してたら、今でも私はあの家に住んでいただろう。帰らない彼を待って、寝ずに仕事に行って、作った食事は冷めたまま。だけど、そのうちに彼の病気が落ち着いたら、また一緒に食卓を囲める。季節が終わるように待てば、ずっと私達は一緒にいれたのかもしれない。私が友達に話さなければ、家族に話さなければ、病院へ警察へ行かなければ、弁護士の所に行かなければ、私は今も彼と一緒にいれた。毎日の苦しみから目を背けていれば、ずっと今も家族でいれた。ただ、食卓で彼の事を待っていさえすれば。

全て自分で選んだ。沢山の想いや選択があったし、ひとりぼっちになんてなりたく無かった。だけど、一つ一つの事から、もう、目をそらす事が出来ないし、ダメだって。彼からじゃない。自分から逃げちゃダメだって。

明日、ひとりで離婚届を出しにいく。なんで、今日に限ってこんな話を聞かなきゃいけないんだろう。一番に側で私を支えてくれた友人からの連絡は、とても残念で哀しいお知らせだった。

11月30日

Journal 30.11,2020

今日は、朝からママと梃子と松陰神社の新しい家に来た。ママは着いて早々にスーパーと商店街で食材を沢山買ってきて、冷蔵庫と冷凍庫をいっぱいにして帰って行った。

「離婚届を千葉に送ったから、今すぐにお金を振込んでって。」

朝4時に起きて、色々とバタバタ動き回って片付けとか何だとか、もうボロボロの身体を湯船に浸からせ、一息ついた時だった。にーちゃんからのLINEが入る。時間は夜の20時前。胸は全く痛くない、ただ、深い溜息だけが出た。

彼から送られてくる筈の離婚届は一向に届かなかった。役所に離婚届を二度、取りに行く。何で、こんな事を二回もしなきゃ行けないんだろうって、虚しくて悲しかったけれど、今想うと自分で行って良かった。結局、そうして私が白紙の離婚届を準備して彼に渡す事となった。

彼は、いつも私におんぶにだっこ。人前で華やかに偉そうにしても、家に帰ると私が全部、彼が出来ない事をした。大変な事が起きても、私がどうにかする。いつもそう。ドラえもんみたいに、私に泣きついてくる。支えてるつもりだったけれど、嫁になったらいい嫁のつもりだったけれど、全部つもりだったのかもしれない。独りよがりの愛情は、結局、こうやって離婚届を二度も取りに行く事となる。私だって、哀しいし、辛い。私だって、弱いし、甘えたい。どうして、いつも一人で強くいなきゃいけなかったんだろう。

本当は離婚届は彼に出して欲しかった。最期くらいは、一度くらいは。

しばらく自分の幸せを望めない気がする。私の事を考えたくない。私から離れたい。人の哀しい顔をこれ以上見たくない。救ってくれた家族や友人を大切にしたい、今はそれ以外に何も思いつかない。何で、自分がここにいるのかだってよくわかんない。

風呂から出て、濡れた髪のままで銀行へ走る。身体が未だ火照ってる。だけど、悲しくない。どうかしてる。もう色々な修羅場を見すぎて強い女になっちゃったのかな、それとも、心をどこかに失くしてしまったのかな。


11月28日

Journal 28.11,2020

千葉から始発で池尻の部屋に向かう。
時間になっても、引越し屋さんが来ない。20分位経ってようやくきた。だけど、トラックのサイズを間違えたみたいで、今日は出来ないとなった。

ずっとやっぱり、頭がぐるぐるしてる。
本当に今日という時間が過ぎるだけで精一杯だ。私の荷物は重くて重くて、1分でも早くここから出したいのに、出れない。

にーちゃんからLINEが入る。
哀しくて下らない内容ばっかり。「俺の何が悪い?俺の皿を返せ、俺の椅子を返せ。」ってさ。にーちゃんは未だに苛々してるけど、私はもうずっと呆れてる。椅子も皿もそれ以外も全部、要らないよ。全てあげるし、そんな話は聞いてない。きちんと想ってる事を今、言わないとあなたは一生後悔するよ。

家族は彼を許さない。気持ちはわかる。こんなおかしな事、もし兄弟に起きたら、友達に起きたら、簡単に許そうなんて思えない。だけど、裁判をして誰が幸せになる??裁判で勝って何が幸せ??彼を犯罪者にして本当に幸せに戻れる?家族にぶつける言葉はまるで、いつも自分に問いてるみたいだった。私の腹の内に落ちた苦しみは、もうどうにも出来ないんだよって。

新しい部屋の鍵を不動産屋さんから受け取って、新しい家のカーテンだけつけて千葉に帰った。パパとビールを呑んでると、ふと思った。いわゆる悪い人って、もっともっと悪い人なんだって思ってた。今日ネットのニュースで読んだ若い俳優さんの記事を思い出す。そんな事で騒ぎ立てて、世間からバッシングされる程の事だろうか。

私の夫という人は、もっともっと悪い事を沢山してるよ。だけど、いい所だって沢山あって、落ちてゆく人を助け続けた私って一体なんだったんだろう。

あと少し、あと少しなんだけど、踏ん張れない。
進もうとすると隕石みたいのが降ってくる。痛いけど進もうとするのに、また降ってくる。そして、また降ってくる。

11月26日

Journal 26.11,2020

今日がこの部屋での最期の夜。夕方、駅前にある文化浴泉に行ってきた。久しぶりだな。サウナに入ったら、夏の日の事を思い出した。

彼から久しぶりに電話が鳴る。ドライヤーで髪を乾かしてた時だったかな。心臓が止まりそう。直ぐに3分20円のドライヤーを切って電話に出た。内容はたいした事は無かったけど、凄く怖かった。そう、ただただ凄く怖かった日のことを思い出した。

今日でぜーんぶ綺麗さっぱり銭湯行って、サウナですっきりって思ったんだけど、哀しくなって帰った。そうだ、あの日にあの日もあの日だって、凄く苦しかった。電話を切って、不思議な気持ちだった。私には、病気の彼と、そうじゃない彼と、いつもの彼が入り混ざって、だけど、もう本当に限界だった。明日もまた、酷い事が起きる。彼を信じようとする自分がいるのに、明日が来る事に怯えた。

どうして夫になったのに、どうして世界で一番信用しているのに、この生活を壊したんだろう。私が何より大事にしてるのに、何より大事にしてるここを、テコを、傷つけたんだろう。何回、何十回、何百回と思ったけど、彼は加速して最悪になっていった。

銭湯を出て、濡れた髪で家まで走る。最期の夜に気持ちよく終わろうとした自分に後悔した。簡単に逃れられるわけがないよ。苦しい事の方がずっとずっと多かったのだから。いい思い出がある筈なのに、出てこない。濡れた髪がどんどんと肩の上で冷たくなっていく。


苦しい夜は、今日で最期になって欲しい。
もう、これ以上の哀しみを世界に見たいと思えない。

林檎

Journal 25.11,2020

11月25日。空白の日だった。
あれが何時だったのか思い出せない。
離婚が決まった。

姉とLINEしてた時に、兄弟LINEにメールがはいる。にーちゃんからだ。

「終わったよ。」
協議離婚が固まったという内容だった。頭がまだぐちゃぐちゃ。本当に?本当に離婚出来るの?

彼の両親に書いた二通目の手紙の直後だった。最初からわかってた。彼には後始末が出来ない。だって、自分のした事について話が出来ないから、逃げるように家を飛び出して行った。

貯金を寄こせ、家具を寄こせ。惨めなメッセージばかりが、兄から入ってくる。「お金が無いみたいで、泣きついてきてる。」多分、両親が終わらせてくれたんだろう。直ぐにわかった。

この家を出るまで、後1日。

夜はキャベツとツナのナンプラーパスタ。写真を撮ったけど、消えちゃった。ずっと何だか動揺してる。この家から出ることが怖い。幸せになる事も怖い。一刻も早く、ここから離れたい。

ひっぱり素麺

Journal 18.11,2020

哀しい事があった。東京に帰ったらきっと、そうなるだろうって予測してた。だけど、こういう哀しみが待ってるとは思わなかった。

彼のお母さんには、2年前からお酒の事を相談し、一緒に彼のお酒を治そうって頑張った。彼が家で大暴れした時は、大阪から直ぐに東京に来てくれて、家族でお酒の事を話し合ったりもした。お母さんは、「何も知らない、彼はそんな事をしない、淑美ちゃんに悪いところは無いんですか?」って言ってる、全て知ってる筈なのに酷いよ、あの人。絶対に許せない。これ、犯罪なんだよ?姉が電話で怒ってる。うちの母は裁判するって。

また、人に裏切られたんだ。ずっと必死に頑張って信じてやってきた事は一体なんだったんだろう。私って本当に馬鹿な人間。ずっと哀しい午後だった。

夕方、薄暗い部屋に帰って、床に座った。哀しい。だけど、お母さんは私を傷つけようとしてる訳じゃなくて、彼と同じ、現実を受け止められないんじゃ無いか。今まで嫌がらせを受けて来たわけじゃない。それは、一緒に頑張ってくれた時間が証明してる。

人が人を傷つけるのは、自分を守る為なんじゃないか。彼もそうだった。自分が苦しみから逃れる為に、人を傷つけてしまう。決していい選択じゃ無いけど、仕方ない事な気がする。許すとか許さないの問題じゃない、哀しいのは、私が傷ついた心じゃなくて、その選択をしてしまったその人、そのものなんじゃないか。姉に言った。「みんなに伝えて。お母さんを咎めたりしないで欲しい。」

” 彼を救ってあげて下さい。” 先週にお母さんに書いた手紙は、簡単に意味が無いものとなった。彼もお母さんも、自分を守る事で必死だ。人はひとりじゃ生きていけないのに。少しの勇気があれば、少しだけでもいいから、自分の弱さを認めたら、ずっとずっと景色は変わる。

夜はやっちゃんが遊びに来てくれた。
一緒に、ひっぱり素麺をひっぱりながら、色々な話をした。大切にしたい。今も、側にいる人も、私の見える世界を大切にしたい。

ひっぱり素麺
美味しい小豆島の素麺
[タレ]
納豆
青ネギ
だし醤油
鯖缶水煮
お好みで卵


※ひっぱり饂飩
山形の郷土料理。鍋から饂飩をひっぱってタレをつけて食べる。
熱々の饂飩を食卓で楽しく食べる饂飩。

11月13日

Journal 13.11,2020

朝、4時に起きる。動き出そう。私がやらなきゃいけないんだ。直ぐにパソコンを開いて、彼の両親に丁寧に手紙を書く。

2年前から彼の酒乱の事を相談していた両親。一度、大暴れした時に、大阪から東京へ駆けつけてくれた。お互いに苦しい想いを散々してきた。彼を救って欲しい。どうか話をして欲しい。もう彼を救えるのは両親しかいない。兄も姉も、母も父も、皆んなが怒ってる。私の家族が怒りで傷を負い始めてる。もう止めたい。セブンイレブンで手紙と、アルコールの記録をプリントアウトして郵送をする。10時40分、チェックインの時間まであと少し、急いでパッキングする。頭が今にも割れそう。

高松駅の駅前のスタバでチャイティーを頼んだ。フェリーまでの時間、少し落ち着こう。これから友達に会うのだから、こんな顔して会いたく無い。少ししてLINEが鳴る。姉だ。

携帯から飛び出るような早口な声。怒ってるけど、何だか爽快だった。姉の意見は私と同じ。全部こうなる事なんてわかってた。本当に酷い事ばっかりだった。もう、これ以上相手に関わらないでいい。調停なんてしなくていい。裁判もしなくていい。

遺産相続で3つ目の裁判が終わった姉。嬉しそうに言った。
「最近、新しい目標を作ったんだけど、聞いてくれる?あの人達にされた事は法で裁かれたけど、今でも煮えくりかえる程に辛い。だけど、許そうと思って。だってさ、私が許さないって思う時間が嫌だなんだよね。」

「うん!私もそう思う。だけど、もし道で倒れてても、もう助けないよ。」
「地球で最期の一滴の水が目の前にあっても、絶対に譲らないね。」

1時間くらい、大声で笑って、話して、フェリー乗り場へ走った。出航まで後10分。私の人生を明るくしてくれるのは家族や友人。だけど、笑うのは私なんだ。

11月12日

Journal 12.11,2020

出張先での撮影が終わって、ホテルに帰る。心が切れそう。これはいつまで続くんだろう。セミダブルのベッドに横になる。こういう時は頭が全く動かない。辛い、哀しい、辛い、哀しいの繰り返し。感情が思考を支配する。

疲れた。

朝から開けなかった兄からのLINEを読む。「彼との話し合いが上手くいかない、よしみに怒りを露わにしているよ。調停をしよう。」

私の怒りなんて、とっくに失せてる。もう救いたいとも思わない。ただ、救われて欲しい。誰でもいいから、少しでもいいから、彼の側で彼の話を聞いてあげる人がいて欲しい。今、現実を見ないと、戻って来れなくなる。それは私も同じ、今から逃げちゃいけない。ここにあるものが苦しくて苦しくて堪らなくても、誰かのせいにしちゃいけない。自分で選んで歩いてきた筈。どっちが悪いじゃなくて、自分が前に進む為に痛みを飲み込む。

あかりちゃんに伝えたくなって、メールを送ると、直ぐに電話が鳴った。20分くらい話をして、気持ちが追いついてくる。

私は、調停も裁判もしたく無い。

「これはモラハラ問題です。酷いですね。裁判をやれば勝てます。」弁護士さんの言葉に心は全く響かなかった。裁判してどうするの?兄はここ最近ずっと怒ってる。「こんな酷い事をされて、相手は逃げ得になるんだよ?それでもいいの?」

酷い事をして、俺は知らないと声を荒げて言うのは認める事が出来ないだけだと思う。自分を守る為には、もう怒るしか無い。それは、決して得なんかじゃない。何があったのか知ってるのは彼自身なのだから、自分に嘘をつくのは自ら泥沼にはまっていくようなものじゃないかな。哀しい事だよ、だから、どうかもうやめて。

蕪のトマトスパゲッティ

Journal 09.11,2020

昨晩、東京に帰った。
家まで編集部の方が車で送ってくれた。お土産に撮影時に購入した蕪をくれた。雨が少し降っていて、生ぬるい夜。

この部屋に帰る度に悲しさが溢れる。
不毛だってわかってるけれど止められ無い。何回も何十回も、何百回も思う。「どうして、こんなに苦しまなきゃいけないんだろう。」

幸せだった。結婚してからも、結婚する前も、ずっと本当に幸せだった。お酒の事を除いては毎日がとても幸せだった。後出しジャンケンみたいに、沢山の人が口を揃えて「ほら、だから言ったでしょ。」って。だから、あの男は駄目だって言ったのにって。幸せが無くなっていく毎日をどう思って、そんな事を言うんだろう。

兄から、彼と連絡を取ったとLINEが入る。
あまりいい内容じゃなかった。大体想像は出来てた。

あと何回、胸が潰されるように苦しんだら、私は普通になるんだろう。彼はきっと、これから鬱に入ると思う。冬にかけて、来年にかけて鬱に入ると思う。その頃には私達はもう他人になってるだろう。こんなに酷い事があっても、私は彼を嫌いになる事は出来ない。むしろ、兄を通してだけど、彼に会えた様な気がして、ほっとした。嫌いたいのに嫌いになれない。

神様という人がもしいるのなら、どうして、彼に病気を授けたんだろう。どうして、彼の様な弱い人間にそんな事をしたんだろう。彼には、直ぐに根をあげてくれて、他の男に飛びつく様な女が似合うのに、どうして私みたいなのが彼の隣にいたんだろう。

もう、本当に厭だ。喉のあたりが、ずっと満タンで、ぎゅっとなってる。哀しみが一気に溜まってしまって、声が出なくなるやつ。

11月8日

Journal 08.11,2020

栃木に出張。行きの車でずっとJpopが流れてる。彼の事を思い出して吐き気がする。知らない人の声なのに嘘つきの声に聞こえる。

歌を聞くのが辛い。どうしても彼に重ねてしまう。突然にやってきた彼の酒の時期。病気なのはわかってる。だけど、それが彼だった。ずっとずっと前から私は悲鳴をあげていたのに、私の手で両手で口を噤んだ。

「私なら大丈夫。」何百回と心の中で言ってきた口癖は、今、私を苦しめる。

いつもそう。撮影が終わると、急に世界がやってきて寂しくなる。自分が一番不幸だなんて思ってない。ただ、果ての来ない悲しさの中で、どこにも着地できないだけ。だから、私は手っ取り早く私を責める。責める理由が尽きる頃には、また悲しみに飲み込まれる。どうして、私はこんなに疲れちゃったんだろう。

寂しくて、どうしようも無い毎日が終わらない。

11月6日

Journal 06.11,2020

朝の4時、姉からLINEが入る。
” 本当によく頑張った。だけど、監禁されてたわけじゃない。あなたのチョイスだから。新しい人生を始める事に集中しよう “

何度も何度も話し合って、彼はいつも人が変わったように「僕を信じて。」と私の目を見て訴えた。選べない。そんな人を置いて出て行く事なんて、私には絶対に出来ない。酔っ払って暴力を振るっても、「二度としない。もう傷つけないから。」その言葉を諦める事が出来なかった。「今夜は早く帰るよ。」という言葉を信じて、彼と一緒に食べる為の食事を作り続けた。

私の人生な限り、全ては私が選んだ事になる。だけど、私と彼が決めた事。一緒に暮らそう。一緒に食事をしよう。一緒に生きていこう。結婚をしよう。

そんな簡単な約束じゃない。

姉の言葉はわかってる。とにかく、”もう離れて。”そう言ってるんだと思う。だけど、私には答えが見つからない。

トマトとほうれん草のスパゲッティ

Journal 05.11,2020

昨晩、兄の元にようやく彼から連絡があったそうだ。
彼の話は変だった。すっぽりと犯した全てが抜け落ちていた。現実だけが、ぽつんと残ってる。兄は困惑していた。

息を切らせて興奮して話す兄。それは無意味な事を私は知ってる。自分の常識で彼の話を聞いちゃいけない。彼の言葉じゃなくて、今、どういう行動をしてるのか、どうしたいのか意図を汲んであげないと、こっちが壊れる。彼との対話は簡単じゃない。

彼は、ある時期が来ると天地がひっくり返り別人となる。ある時、肩書きを沢山持つ人となっていた。プロデューサー、デザイナー、アーティスト、経営者、オーナー。見知らぬ人にいきなり自己紹介をして名刺を渡しまくる。一度や二度じゃない何十回とそんな彼を見てきた。それが段々と加速すると、人を使うようになる。音楽しか出来ない彼はまるで大社長かのようになって、とても威厳的で、身内の色々な弱い人に悪態をつき、汚い言葉や強い言葉を当たり前のように放つ。「お前さ、要らないから。別にもう連絡しないでいいから。」そんな風に人を物みたいに切っていった。お金も有り余るように持っているような態度になって、キャバクラに行くようになる。普段はシャイな人なのに見知らぬ女性との交流が激しくなっていく。毎晩違う女性と遊んでる。そんな時期が数ヶ月と過ぎると、「もう死にたい。」「もう音楽なんてやりたくない。」と、ベッドから数ヶ月出てこないような時が続く。「もう何も出来ないよ。ねぇ俺はどうしたらいい??ねぇ。」朝から晩まで弱々しい声で甘えてくるこの質問は私にまとわりついた。癇癪の時間も酷かった。それは完全に子供のそれ。だけど、数分も経つとケロッとしてるか、もしくは急に悲観的になって「どこにも行かないで」と私の腕を離さない。目は完全に怯えていて、全力で私に甘えた。彼の行動パターンを私は大体に熟知してた。こういう性格なんだって思って上手にやりくりしながら、奇妙な現実を誰にも公言する事なく私達の8年間は過ぎていった。彼の秘密を話す事は彼を傷つける事にもなるし、私は彼から離れなきゃいけなくなるんだろうという事もどこかでうっすらと気づいてたんだと思う。だから隠した。

今日は朝から辛い。だんだんと頭痛が始まってくる。私のトラウマはそんなに簡単には終わらしてくれない。駅を歩いてると、くらっとした。頭が破裂しそう。過度なストレスが溜まると、固まる。目の前は忙しなく動いているのに、私は石みたいに、ぽつんとその場所に停止してしまう。あれが始まると私は何も出来なくなる。

早く帰宅して横になる。苦しい。やらなきゃいけない事がたっぷりあるのに。兄の話していた彼が私の中でループする。人を憎みたくない。変わり果てた彼でも嫌いにはなれない。ただ、全身で嫌がってる。名前でさえ耳が拒否してる。ただただ、怖い。

少し横になってから、デスクに座った。
さぁ、始めよう。少しずつでいい、前に進もう。

紫陽花

Journal 02.11,2020

11月2日、私の誕生日。
今日は時効の日。何ヶ月も前からずっと決めてた。今日という日がきたら、時効にしようって。私が飲み込んでしまった全ては、私の血や肉となってしまうのだろうけれど、もう知らない。トラウマが私を襲い続ける毎日を毎時間を隣に置いたままで、今を生きよう。今を生きなきゃ。

誕生日の前日に警察に被害届けを出しに行った。9月に出すようにと人に言われてたけれど行けなかった。今日の小さな勇気を捨てたら、あっという間に来年の今日になる、その日に後悔する私が見える。私を守るのは私しかいない。だけど、本当にこれが正しい決断だったのかわからない。もう全てがとにかく怖い。何ひとつ整理も出来なければ、答えも出ない。ただ、これ以上に傷つきたく無い。

震える口から出てくる言葉が変だった。女性の警察官に何度も強く言われた。「あなたのことを聞いてるから、あなたの話をして下さい。」私は私じゃなくて、彼だとか、誰かがとかばかりで、上手に話せなくて、時間をかけてゆっくりと話した。過剰に話さない。大丈夫です。とも言わない。他人事みたいに私が見た出来事を淡々と話した。

「それって、おかしいよ。DV受けてる人みたいだよ?」沢山の人に言われたんだけど、全く何を言ってるのか聞こえてこなかった。「実際には叩かれない事だって沢山あって、叩くふりをよくするんだよ。だから暴力じゃないよ。まるで酔拳なんだよ。」っておチャラけて返した。彼は私を傷つけたいわけじゃない。怒りを上手に爆発出来いみたいなんだよねって。だから殴ろうとした拳は私の顔の直前でピタっと止まる。親友みたいに仲良くしてた子もその話に同意してくれてたから、私の意見は正しいと信じてた。彼女の夫も病気持ち。「本人達はね、辛いんだよ。」って彼女は言ってた。私達よりもずっと辛いんだよって。

後になって知ったけれど、病院の先生と話してて、そうなんだって呆然としちゃったけど、拳を目の前で止めるのも、大声で喚いたり、壁や机を叩きわるような音を出すのも、暴力の1つで、それを世界ではモラスハラスメントって言うんだそう。本当に殴ったり、蹴ったり、首を絞めてくるのはドメスティックバイオレンス。どちらの事もよく知らなかった。だから、うちはモラハラとDVのセットみたい。

良い悪いじゃない。許す許さないじゃない。
今日で時効。どこかで決めたかった。思考ばっかりが回って回って、辛いしもう何が何だかわからないから。時効にしたい。

夜は友人と下北沢で食事をした。
外はずっと雨。全てが流れて無くなってくれたらいいのに。

ラザニア

Journal 01.11,2020

不安で押しつぶされそうな夜ばっかり。
ひとりの東京は本当に寂しい。誰かと一緒にいたいけど、誰でもいいわけじゃない。料理だけはちゃんとやろう。今夜はラザニア。こないだ、姉と電話でママの料理何食べたいシリーズで盛り上がった。「冬といえば、ラザニアだよねー」って。あれから無性にラザニアが食べたかった。

哀しい。心の病気のやつじゃなくって、癒えない心が哀しいって言ってるだけ。悲しんでも仕方ないのに止んでくれない。涙が溢れそうな予感がして、作ったラザニアをオーブンに放り込んだ。グツグツとミートソースが動いてる。いい色。私のミートソースはちょっと甘め。後でお腹が重くなるからチーズは少なめ。表面に焼き色をしっかりつける。熱々を一気に食べたら、少しだけ元気になったかな。

明日は誕生日。いい日になりますように。

ラザニア
ラザニア用のパスタ
ミートソース (玉ねぎ、豚ひき肉、にんにく、セロリ、トマトケチャップ、ソース、テン菜糖、コンソメ、トマト缶)
ピザ用チーズ

鰤とカボスの味噌汁

Journal 31.10,2020

夕方にふと、7月22日、夫の誕生日の夜の事を思い出す。彼の本心がどこにあろうが、あの夜はやっぱり帰るべきだった。私の夫である前に、ひとりの男として、ひとりの人として、自分の家に帰って欲しかった。

「今夜は少し遅くなる、だから朝に話そう。」夜中になっても帰らない彼に連絡を入れるのは止めた。私が幾ら信じても、それは無力だから。

ずっとずっと前から私は彼の事を知ってたように思う。出会った時、この人はいつか私を捨てるかもしれないって感じた。あれは予感じゃない。彼の仕草に、その言葉の端々に見えてたのかもしれない。私の事だけは捨てない、そうは思えなかった。沢山の人を裏切って、沢山の人が離れていくのを見た。あまり気持ちの良い光景じゃなかった。

彼の通う中目黒の酒場が、どうしても好きになれなくて、馴染めなかった理由はわかってる。昼間とのギャップのある彼を人間らしくて、弱くて、面白い、可愛い、と言う男や女が気持ち悪かったから。一度でいいから、家に来て、彼に殴られてから、同じ言葉を吐いて欲しいと、何度も、何度も心で願った。

彼がまたお酒に溺れていくには、あまりに全てが簡単過ぎたんだ。

酒場が自分の居場所じゃない。そこには楽しい事があるかもしれないけど、そこに答えは無いのに。後悔しても遅いけど、私が後悔してもどうにも出来ないけれど、どうか、帰って欲しかった。

10月30日

Journal 30.10,2020

東京の我が家に帰ると、ポストに少し前に撮影した雑誌の献本が入ってた。
ぺらぺらとめくる。付箋の貼ってあるページにポストカードが挟んである。編集の成田さんからだ。ミミズみたいな文字が愛らしい。

夫のお酒が大変だった時期、すがる想いで西原理恵子さんの本を手に取った。西原さんの夫はアルコール依存症で亡くなった。そういう事が書いてある自伝。本の中で依存症の夫との結婚生活の事を “地獄だった” と表現する言葉にすごく救われた。地獄の事を知ってる人がこの世にいるんだ。

東京に帰った今日は3週間ぶりの心療内科の通院日。
先生には旅行の事は秘密にしたけど、人と時々お酒を始めた事と、今は辛く無い話と、3kg太った事を報告した。先生は嬉しそうに聞いてくれる。「お酒は一杯目はいいんだけどね。」って。その言葉が身に沁みてわかる。そう、一杯目まではいい。

カメラの話だとか関係の無い話を談笑する。「他に何かありますか?」先生が最後に言った。夫の双極性障害の事が頭を過ぎる。多分、彼はこれから鬱になると思う。暴れて沢山の人を傷つけて我儘やりたい放題した後に、誰か側に一人だけ置いて、ようやく自分の時間に入る。

いや、やっぱりやめよう。もう心配しない。考えてもいけない。「大丈夫です!有難うございました。」気持ちよく挨拶して診察室を出た。

私は妻をやめる。夫がした事は現実になってゆく。お互いに死ぬまで持つ事になる現実。大切だった時間よりも苦しかった時間の方が今も強烈に私の中に残ってる。だけど、もう明日も明後日も、明々後日も地獄は来ない。夕飯はピェンロー鍋にした。鍋をよそう度にテーブルに置いてあるミミズ文字が何度か目に入る。人間ってなんて愛らしい生き物だろう。ここは大丈夫。目の前に広がるこの世界は愛に富んでる。


和歌山県の勝浦

Journal 29.10,2020

旅はいい。やっぱりいい。
知らない場所に来て、大きく深呼吸をすると、すっきりする。囚われていた何かが、私から少し離れた所にいるのが見える。東京に帰ったらあっという間にまた堕ちてゆくんだろう。想像がつくけど世界が広い事を知れただけでいい。私はあれから離れて遠い場所ににいけるんだ。

海をじっと眺めると「水平線はいいんだよ。」と言う父を思い出す。父は海が大好きだ。水平線、大人になればなるほどに、好きになる。真っ直ぐに伸びる水の線。勝浦は海の町。海ばっかり見た。水平線をずっと眺める。どこまでも行けるんだ。世界は広いからね。

熊野古道

Journal 28.10,2020

「こっちおいで、お月さんが見えるよ。」海を見ていたおばちゃんが、お湯からあがる時に声をかけてくれた。空を見上げると、明るい月。「あ、綺麗!」

ホテルの露天風呂。目の前にある海から波の音がする。晴れた夜の海が子供の頃から大好きだ。夜が来て真っ黒になってしまった海は怖いけれど、月が明るいから何だか安心する。すんと、胸が静かになる、すごく気持ちがいい。

何だか、今、優しい気持ち。優しい人達といるからかな。

昼間、熊野古道を必死に歩いた。久しぶりに無心になって歩いた。びっしょりかいた汗や、足に溜まった疲れが、私を癒していく。

伊勢2日目

Journal 27.10,2020

伊勢に行った。
「伊勢に行きたいの!行こうよ。」うちでトランプしながら、友人にお願いした。友人って最高だと思う。

私の色々を知らなくたって、側にいてくれる。深く話せない私に、聞いてきたりしない。一緒に今を楽しんでくれる。

夜に、たまちゃんと宿の近くの銭湯に行った。お風呂に入りながら「辛い日ってどうする〜」って話をした。お風呂に浸かりながら、辛い日の話をのほほんと出来る友人がいるって、何だか幸せだなぁって。

伊勢1日目

Journal 26.10,2020

近所の友達、しみるさん、たまちゃん夫婦と、今むと伊勢に来た。この面子は、とても落ち着く。声を荒げる人は誰一人いないし、麦酒を呑んだって楽しく笑ってる。誰一人として、悪態つかないし、大声をあげたりしない。穏やかな男の人を見ると少し不思議な気持ちになる。私が忘れてた世界。

初めて食べた伊勢うどん。
ふわふわで、甘くて濃くて、麦酒にぴったりだった。

雑魚と紫蘇の柚子胡椒パスタ

Journal 25.10,2020

姉が朝から彼氏の話で怒ってる。喧嘩をしたそう。人の悩みっていうのは、簡単に聞こえる。窓から差し込む光が温かい。

「相手のした事は異常だと思うよ。私も姉の考えに賛成だけど、彼も同じ様に姉がわからないって言ってる。どちらが悪いじゃなくて、どうするかを考えるなら、答えはお互いに受け入れる。だけど、ただ一方だけが相手の苦痛を受け入れるだけなら、手を引くしかないよ。彼は苦しくて、自分を救う為に起こした行動だから。それに気づけないなら、苦しみをぶつけ続けるよ。彼は辛いと思う、苦しいでしょうよ。だけど、救われない。」

するすると言葉が手を取るように、想像する彼の痛みさえも大事に運ぶように口から出てくる。何だか自分に言ってるみたいだった。離れれば、離れる程に、自分がした過ちの大きさに気づく。どうして、私は彼を庇い続けたんだろう。

ピェンロー鍋

Journal 24.10,2020

ミュージュシャンを撮った。夫がよく似てると言われる人。だけど全然似てなかった。表舞台の人は何を考えているのかわからない、上手だから。別にそれでいいと思う。ただ、そういうのを、お互いに折り合いをつけるのが難しい。だから私は人を撮るのが下手くそだ。料理みたいに、私の言う事を聞いて、って言えないから。

数年前に写真家の吉祥丸さんが「何も考えないで撮る。」って言ってた。若いのに何だかすごいなって。吉祥丸さんの写真が群を抜いて、いい意味が何となくわかった。師匠もそう、似た様な事を言ってた。「撮れない日は諦める。」

夫を信じる事をやめなきゃいけないって決めてから、世界を諦める事にした。期待するから辛くなる。何だか思った。私、少しだけ、人を撮るのが上手になったかもしれない。

ピェンロー鍋
白菜 1/4
鳥手羽元(鶏肉なら何でも)
豚バラ
干し椎茸

春雨
ごま油 おたま1〜2
※塩と唐辛子、飽きたら甘い醤油で食べます。

豆もやしご飯

Journal 22.10,2020

昨年、料理家さんのアトリエでキムチ作りをした。その時に教えて貰った豆もやしご飯。韓国ではよく食べるんだそう。冷蔵庫に残ってた豆もやしを見て急に思い出した。あ!あれを作ろう。

双子の兄と姉がこれからの事を一緒に進めてくれてる。兄弟LINEで双子のやりとりが続く。夫の事をぼろくそに言ってる。ふざけないと、現実を受け止められないんじゃないか。夫が最低な事は知ってる。出会った時から最低だった。だけど、いい所も沢山あって、けど、最低な所は本当に最低だった。一緒にいて、変わったのに、夫は変われたのに、また戻っちゃった。これから何が起こるのか想像が出来る。だけど、もう見ない。

急に色々が動き出してる。前へ進む為に準備してきた事が、本当に前へ進むと思うと怖くなった。最近はずっと調子が良かったけど、少し頑張りすぎたのかな、午後から頭痛が酷い。4時に麦酒1本とオオゼキにみどり寿司を買いに行く。飲まない方がいいのはわかってる。もっと辛くなる。だけど、飲まなくても今日は辛い。これから沈殿した何かみたいになる。

夫がいなくて寂しい。ひとりぼっちの家が本当は寂しくて堪らない。この家をぺっちゃんこにして捨ててしまいたい。

豆もやしご飯

豆もやし
ごま油