カレー

カレー 25.11,2021

周ちゃんが来たのは21時半過ぎ。私は後藤さんと青山でバイバイして急いで家路に向かった。後藤さん、可愛かったな。あの無邪気な笑顔を見ると、この笑顔を放っておかない男が世界にどれだけいるんだろうって想像してしまう。そして、私自身もどれだけこの笑顔に救われたんだろう。

今日は周ちゃんの事を報告して、デニムの話をして、年末に後藤さんの彼氏と3人で忘年会をする約束をした。楽しみだな。何だかすごく嬉しい。後藤さんは彼氏って発音がしっくりこないと終始笑いながら話してた。妻となり誰とも恋をしない契約をした筈の私達がまた誰かと恋に落ちる。色々な事をどう表現していいのかわからないのは私も同じ。むず痒い何かは私達の身体をじわじわと温めていく。彼のマサくんはとても素敵な人そう。早く会いたい。

周ちゃんは疲れたって顔をしてた。今日1日よく働いたのだそう。カレーを食べて、お風呂に入ったら、何かがチャージされた用でご機嫌だった。そのまま、今夜も深夜まで話した。どんな話をしたんだろう。大事な話もどうでもいい話も、とにかく楽しかった。明日は指輪を見に行く。

きのこのホイル焼き

和食 24.11,2021

昨晩から周三君は周ちゃんに改名となった。これは本人の希望。親しみのある名前なのだそう。そして、もう一つ。今週末から半同棲を始めてみることになった。とりあえず、押入れを片付けたり、周ちゃんの洋服を入れられるスペースを作った。物事がとんとんと進むってよく言うけど、多分、これはそのとんとんじゃない。私も周ちゃんもとりあえずやってみたい。もし失敗したらその時に考えたらいいよって考え方が一緒なんだと思った。

周ちゃんの家も職場もうちからはすごく遠いい。どんな風に新しい生活が成り立っていくのか想像がつかない。本当に大丈夫なんだろうか。私とテコの家に住人が増えるって言う現実がすごく不思議。ここは私達だけのもので、住み始めた時と同じ様に、この部屋とさよならする日もずっとそうだと思ってた。誰かが住むなんて考えられない。彼は一体この部屋のどこに住み着いていくんだろう。これから、生活がどんどんと新しくなっていく中で、心も身体も例えば撮る写真だってどんどん初めて出会う何かに侵食されていくのだろう。そうやって彼は私の世界に色々な色をつけてゆく。

夕方にポストを開けるとパリのマユミちゃんから手紙が届いてた。そこには、お誕生日おめでとう!って、3週間前の私の誕生日をお祝いしてくれる内容が書いてあった。先日に買っておいたポストカードにこの3週間で起こった事を書いて封筒に入れ今日の日付を書いた。2021年11月24日。もうすぐ今年も終わる。2年前はアルコールを断つと約束した元夫との新婚旅行を終えてこれから新しい生活を立て直そうとした頃だった。1年前は8年間積み上げたものがバリバリと剥がれて落ちて失くなってゆくのを何も出来ずにただ呆然と見てた。そして、大切な夫との離婚の準備を始めた時だった。全く想像もしなかった未来が当たり前の様にやってくる。

朝食

朝食 23.11,2021

「ベランダで食べない?」
テコとベランダで日向ぼっこしてた周三君が言った。白いテーブルクロスをアイロンかけてる時だった。なんだよーせっかくアイロンかけてたのに。朝食と白いテーブルクロスの相性は最高なのにな。渋々とトレイに焼いたベーグルと目玉焼き、スープを持ってベランダへ出た。周三君は半熟の目玉焼き。私は固めの目玉焼き。前の結婚の時は好きじゃない半熟卵を何食わぬ顔をして食べていたけど、そういうのはやめた。それに、フライパンの場所で調整すれば簡単にそれぞれが好きな目玉焼きが作れるという事もここ数日で学んだ。なんて気持ちがいい朝なんだろう。太陽の陽が強くて暑いくらい。

結局、3日間ずっと一緒。昨日も一昨日も、今日もとにかく一杯お喋りした様に思う。何でもかんでも話した。いいずらい話も、聞きずらい話も全部。生活の事、お金や仕事への考え方、妊活や育児にセックス。とにかく色々を話した。周三君が泊まりに来てから、私は緊張してたのか海外旅行でもしない便秘をした。お腹が妊婦みたいにポッコリ大きくなってて嫌だったけど、お腹が張って痛いと言うと、ずっと恥ずかしいお腹を周三君はさすりながらお喋りは続いた。こんな誰にも見せたくない様な姿を好きな男に見せるなんて。すごく変な気分。だけどお腹は安心してる。

今年と来年の話になって、「来年はどんな一年がいい?」って聞くと、「一緒に過ごせる楽しい1年!」と周三君。私は周三君とのビジョンは用意してなかったから、「離婚した1年後に結婚したいという夢を持っていたけど、想像以上にトラウマが酷くて男性を好きになる事すら出来なかったから、繰越で来年の夢となるかな。」と伝えると嬉しそうに笑ってた。未来はわからないけど、結婚に希望を持ってる自分がいるみたい。

時間は15時半を過ぎた。帰る周三君を送るついでに一緒にサミットまで歩いた。別れ際に白昼堂々と夕方の人がごったかえした世田谷通り沿いでハグをする周三君。ああ、この人はこういう男なんだって。何だろう、すごく嬉しい。女の扱い方で大体にどんな男なのか想像してしまうのは、もう本当に自分がいい歳なんだろうって事に気づく。だけど、そんな面倒な自分も全部引っくるめて今日は嬉しい。愛の事は怖くて忘れてたけど、ハグの仕方も、SEXの仕方も、もう十分に思い出した。それにしても疲れた。何だか気持ちが思いっきりに動いて、全力で目一杯にした。新しい色々を受け止めるのは色々が消耗する。不思議な感覚がしてる。多分これは、昔の淡い恋でも、激しいいつかの恋でもなくて、新しい感じの恋だと思う。今日はビールを飲んで早く寝よう。テコと二人っきりのベッドで最高な夜を過ごそう。

焼餃子

中華 22.11,2021

「月曜日は振替休日にしようかな。」結局、周三君は火曜日まで泊まる事になった。「午後に三本打ち合わせがあるから、終わったらスーパーへ行こう。」周三君は、振替休日だと言ってたのにダイニングテーブルでずっと打ち合わせをしてる。私は自分のデスクで納品作業を進めた。少し離れた所に彼が見える。いつもよりもディスプレイにずっと近づいて彼の顔が見えないようにした。

「夕飯に餃子はどう?」満面の笑みで承諾する周三君。彼がよくする子供みたいな素直な反応にいちいち心が踊る。可愛いな。お風呂に入ってビールを飲みながら一緒に餃子を巻いた。何の話をしてたんだろう。よく覚えてないけどずっと楽しかった。周三君は学芸員という仕事をしてる。だけど、そんな話は殆どなくて、22、23才の頃に二丁目のゲイに世の中の酸いも甘いもを教えてもらったとか、アイヌのウポポイの研究での刺青の話だとか、沢山の話を子供を寝かしつける親みたいに優しく話してくれる。だから、いつどこでどんな話をしたか覚えてないくらいに、いつもとにかく楽しい。そうして、何だか覚えてないけど沢山笑った話の中で、私が不意に「そう言えばさ、何か言う事なかったっけ?」って意冗談混じりで聞くと、餃子を手に持ったまま真剣な顔でプロポーズをしてきた。「これは歴史に残るね!」嬉しそうに笑ってる。何だか色々が目まぐるしくてよくわからなかったし、数日前のLINEでのプロポーズの事も話半分にしておこうと思ったけど、この人となら何だか幸せになれそうな気がした。

朝食

朝食 21.11,2021

誰かとの朝食はどれくらいぶりだろう。何だかすごく新鮮だった。

朝起きて、二人分の朝食を作り、食卓を囲み、私は心理学のオンライン講義を、周三君は仕事でもあり、自身のフィールドワークの事で近所の郷土資料館へ出かけた。頭では心待ちにしてた講義が始まる事をワクワクしているのに、講義の大体の時間は恋煩いの様なものに侵された。ダメだ、ちゃんとやらなきゃ!と思っても数秒後にはもくもくと周三君が現れた。

お昼に近所の魚の美味しいお店でランチをして、午後は映画を見た。私は昨晩の夜更かしでずっと眠かったから冒頭の数分で寝た。映画はノマドランド。映像の大場さんが傑作だと教えてくれた映画。

たったの一ヶ月前の今日には世界の何処にも彼はいなかった筈なのに、今日はこの家にいる。時間を重ねれば重ねる程に、素敵な男は好きな男へと変わっていく。

寄せ鍋

和食 20.11,2021

午前は編集の野村さんと仕事。帰ってから急いで支度。もうすぐ周三君が来る。周三君は午前の仕事が終わってからこっちへ来るとの事。14時半を過ぎ、急いで納品データーをまとめてると、写真家の広瀬さんから電話が鳴った。

広瀬さんはうちのお兄ちゃんみたい。歳は3つ上で、何だかずっと慕ってる。特に離婚してからは何でも聞いてくれるし、結婚してた時も「暴力とか良くないから、本当に困ったら相談して。」って、中目黒の飲み屋で言ってくれたのをずっと覚えてる。最後に会ったのは夏で蓮井さんの写真展。「なんかあった?」電話での一声。「何もないですよ。」何かあったのかと思って連絡してくれたらしい。私の声が踊ってたみたいで良かったって。たわいもない話を続けてる中で、先週に彼氏が出来て、プロポーズされたことを打ち明けた。「えー!!」電話越しでもびっくり仰天してるのがわかる。そして、否定するわけじゃなくて、まだ早くない?って心配してた。本当にお兄ちゃんみたいな人。「俺の話だけど、俺は家族でも友人でも与えるっていう事をいつも考えてる。だから、彼が結婚したい、欲しいって、何かを望むのが悪いわけじゃないけど、あなたに彼は何を与えてくれてる?お互いに与え合える関係の人ならいいと思うんだよ。」

正直、周三君からのプロポーズは驚き半分、喜び半分、そこに微分の不安がくっついていた。私の馬鹿さ加減といったら、ほとほと悲しくなる。あれだけ苦しい結婚を体験したのに、急なプロポーズに不安よりも興味や喜びが先立っていた。広瀬さんの言葉がずしっとのしかかった。そんなタイミングで周三君が家に来た。広瀬さんとの電話を切って練り物屋さんへ出かけた。

お喋りをしながら頭の中で “与える” が行ったり来たりしてる。携帯のメモにもさっと書いた。与える。彼は私に何を与えてくれるんだろう。そして私は彼の結婚願望を満たしたら、その次は何を与えられる人になるんだろう。

夕飯は寄せ鍋。夜遅くまで沢山話しをした。沢山、沢山した。
それに、急で不安な気持ちがあるとか、どうして結婚したいのとか、メールでも話していたけど、顔を合わせて沢山の話をした。子供が欲しいか、妊活はどうやって進めたいか、どこに将来住みたいか、セックスは好きか、親の介護はどうするか、不倫したことがあるか。そして、女の人に暴力は振るったことがあるか。一緒に生きていく為に私が不安に思ってる事のすべてを聞いた。「何でも聞いて、全部答えるから。」私達は突然に出会ったから、もしかしたら突然にお別れするかもしれない。だから、彼がいいと言うなら、全部聞こう。

パンとバター

パン 19.11,2021

色々が決まってく。来週にアメリカの家族の所へ行く周三君のお母さんが東京にくるそうで、会うことになった。その次の週末は出張先の富山へ彼が来る。

8年かけて大切に積み上げてきた物が一瞬で失くなったかと思えば、1ヶ月前に存在ですら知らなかった人と数十年後の未来について話し合おうとしてる。

よくわかってない。余計な事は考えない。今日は早く寝よう。

ご飯と味噌汁

和食 18.11,2021

今日はずっとずっとずーっと眠かった。昨晩、夜遅くまで周三君とメールしてたから完全に寝不足。どういうわけか、私の勘違いがきっかけでLINEでプロポーズを受けた。「LINEで言うのもなんだけどさ、僕はこないだから伝えてたよ。」「え?!LINEで言うのはなんだよ。」人生で初めて、正々堂々とプロポーズを受けた。泥酔して部屋に横たわった元夫が小さく折りたたんだ婚姻届をポッケから出したのは6年前のいつか。元夫が弱いから私は好きだったんだなって、今更になって気づいた。私の目を見て言えなかった彼も、それを受け取った私も同じ様に弱かった。

朝にプロジェクトの事で連絡を取ったフミエさんにプロポーズの事を伝えた。何だか頭がぐるぐるしてる。一体どういう事なんだか朝になってあたふたしだす。とりあえずフミエさんに聞いて貰おう。フミエさんもただただ驚いてる。けど、もしこれが現実なら離婚と似てると思った。目の前に用意されたコース料理みたいに、どんどん時間が満たされていく感じ。自分の意思とは別に決められた次がどんどんとやってくる。

午後に打ち合わせでzoomした山若君にも彼の事を話すと、「良かったじゃん。」拍子抜けする返答だった。それに、何だかすごく優しい顔だった。山若君のこんな顔、初めて見たかもしれない。時々、この人の悪意ある発言や行動に本当に悪魔だなぁと笑ってしまうけど、何だかいい光景を見ちゃったなって。だけど、しばらくするといつもの悪魔が「その人、性癖が絶対変だから。」と、根拠の無い発言だけを残した。それに、「来月の富山での撮影はフィルムで好きなように撮ったらいいじゃん」って。「撮ろうみたいの、今回はやめたくて。」って言ったら、「そういうの要らないから」って。「夜は撮れないよ?」って言ったら、「夜は撮らなくていいよ。」って。何だか、すごく嬉しかった。

夜の21時過ぎ。ユウヤ君からの電話。またきっと事務所で飲み放けてて、ふざけて電話してきたのかなって思ったけど、年明けにお願いされていた映像の仕事の話だった。ついでに、来月にドキュメンタリー撮るかもしれないけど不安だって相談をすると、「好きに撮ったらええやん。よしみちゃんの映像いいよ。」って、邦画みたいでいいよって。それで、真面目に男の人の意見を聞いてみようと思ってプロポーズの話をすると、「良かったじゃん。」と一緒に電話の向こうでお酒を注ぐ音がした。だけど、あまりに突然過ぎてまだ正直よくわからないよって今の素直な気持ちを話すと「好きなら好きでええやん!」。ユウヤ君。気づいたら完全に酔っ払ってた。

別に明日の話なんてしなくていい。ただ、今、会いたいのか、好きなのか、一緒にいたいのか、楽しくて仕方ないのか、そんな気持ちがここにあるだけで十分かもしれない。結婚はしてもいいし、しなくてもいい。どっちでもいい。今日に見えてない未来の幸せまで欲しいとは思うほどの余裕はないよ。なんだか、今日だけで十分にご機嫌。

海老のカクテルサラダ

洋食 16.11,2021

朝5時過ぎに起きて、まだ半分寝てる梃子を無理やり起こして電車に乗って実家へ向かった。ああ、怠い。ちょっと気持ち悪い。二日酔いだな。

昨晩、帰宅してから酔っ払った勢いで周三君に聞いてみた。土曜日にちょっと立ち寄った近所の喫茶店でお気に入りの席に座り、私は背の低いグラスに入った白ワインを、周三君はケーキセットを頼んだ。話が楽しくて楽しくて、気づいたら3杯おかわり。私は案の定、酔っ払ってご機嫌となる。保険の契約みたいに私達はカップル成約を交わして、帰り際に子供の話しになって、私は養子に興味がある旨を伝えた。周三君は賛同してくれていたように思う。

あまりに突然の出来事に心のどこかは私の恋が一瞬で終えた事をちょっと寂しく感じてる。駆け引きを楽しみたかった訳じゃなくて、恋を、愛でて、育てたかった。そして、段々と熟していい色合いになってきたら、相手の気持ちはどうであれ、そっと触れただけでも溢れてしまいそうなままに、好きだと言ってやるんだと私のシナリオは大体完成していた。

「どうしていきなり付き合いたいと言ったの?」むずむずして聞けなかったここ数日。酔っぱらいの私が聞いた。周三君からの回答は至ってシンプル。「今だと思ったから。」直感なんだと。熟りきれないままにもぎ取られた私の恋心は、流れ星を見過ごしてしまったような気持ちが一杯のままだ。ずるい。やられた。

母とスーパー銭湯へ行き、お昼は海老のカクテルサラダを山ほど食べて、夕方頃まで二日酔いは続いた。どこからどこまでが夢なのかわからない。

おでん丼

和食 15.11,2021

火曜日はどうしてもスーパー銭湯にママと行きたいから、今日も朝から一人勝手にバタバタした。大慌てで仕事して、昼ごはん食べて、郵便局に手紙を出しに行って、撮影に走る。そして家に帰って仕事して、電車に飛び乗って三茶へ。

今日は西丸会。編集の西丸さんとの集い。編集者、ライター、カメラマンの男性たち。みんないい子。大好きな面子。どうでもいい話を楽しく平和にお喋りして、お酒を飲んで顔を真っ赤にして帰る。それだけの会。今日はちょっと加藤さんがヘビーな話をしてたけど、加藤さんはそういう話が好き。だから、きっと大丈夫。嬉しい夜だったな。ちょっと飲み過ぎた。

おでん

和食 14.11,2021

あっと言う間に週末が終わった。今日の心理学の講座。完全に私はマインドワンダリング状態。始まってから終わるまでずっと周三君と遊んだ昨日の事がぐるぐるとぐるぐるとぐるぐると、目眩を起こしそうなくらいに回転してる。先生の言葉も生徒の言葉も耳を通り過ぎるところまでは見えてるのだけど、勝手に行方不明になって、気づけば昨日を追いかけてる。

途中の休憩時間にキムチご飯を食べたのも悪かった。後半の講義は完全に夢うつつとなった。最後はもうノートを取るのを諦めた。今日は正直言って学んでる所の話じゃない。注目すべきは俄然昨日だと全身が言ってる。周三君はいい人間だと思う。だけど、変わってる。私がよく知ってる病の変ではなくて、竹を割ったような、武士みたいな感じで、今のところ東京では見たことがない。あんな武士。

私が一人勝手にワインを飲み始めたのも悪かったのかもしれない。帰り際にハグをしようと言われて、びっくり仰天した。彼のやる事、為すことに衝撃を受けてる。だけど、結構にまともな発言と行動で、納得がいくから、ああ、そうだね。ってなる。それで、頭は混乱したけどハグをした。ハグってどうやるんだっけ?最後にしたのは元夫の誕生日。「今日は帰る、だから信じて、信じよう」とお互いに誓って、そして、やっぱり本当に帰らなかった。あの嘘が確か最後の嘘。それ以降は、もう怖くて1ミリも彼の全てを信じられなくなってしまったから。あのハグから1年と3ヶ月ぶりのハグ。久しぶりのハグは何だかすごく硬かった。

結婚するまでも、いつも誰かと恋愛していたし、ハグなんて数え切れないくらいにしてきたのにな。ハグってどうやるんだっけ?その人を想いながら抱きしめ合う。何だろう、今の私には空港でするハグか、無事に何処かから生還した時のハグしか思い出せない。私の記憶はどこに行っちゃったんだろう。昨日のハグ、もう一度やり直したい。

キムチチゲ

エスニック 12.11,2021

どうして午後一番で美容院の予約を入れちゃったんだろうと大後悔。朝の納品の激しさに頭が割れそうになる。歩きながら昼ご飯を食べて、急いで電車に飛び乗った。渋谷で降りて、美容院のある青山まで歩く。いつものポストカード屋さんで文通用のカードを買った。胸の奥がじわじわと温かくなるようなカード。スタッキングチェアに座ってる夫婦が椅子の反動でキスをするというイラストが描いてある。パリのマユミちゃんもじわじわしてくれるかな。じわじわとしたままに髪を切って、編集の瞳ちゃんと周さんの展示に行って、ライスプレスの成田さんとお喋りして帰宅。あっという間の一日だった。明日はデート。髪、ちょっと切り過ぎちゃったな。

晩酌

夕飯 12.11,2021

毎日納品マシーンな私。あんなには忙しく無いけど、何だかコロナ前みたい。たったの2年前まで、今とは全く違う生活だった。毎日、毎日、納品してた。忙しくて心が切れっぱなしで、ずっとガソリンが漏れてるまま走って、直ぐにガススタでハイオク満タンにしてまた走る。とりあえず、私が悲鳴をあげたら家庭が崩壊するんじゃないかと恐れて、私の心という物質はこの世に存在出来なかった。

昨晩に見た黒木華さんのドラマでの名言。ずっと鳴り響いてる。「誰にも尽くさない。」完全に痺れた。大好きな人が出来たら是非言いたい。いや、一度は言ってみる。「あなたの事が大好きだけど、私は誰にも尽くさないの。」だけど、もし次に恋人だとか、大切な人が出来たら、私の事を大切にしてくれる人に出会ってしまうような予感がビシビシしてる。それで、私は毎度、カルチャーショックを受けて、「え?何でそんなに優しいの?」って何度もひつこく聞く。「え?ゴミ捨てしてくれるの?」「え?夕飯の買い物してくれるの?」「え?今、大丈夫?って言った?お願い。もう一回だけでいいから言って。」優しさを初めて見た宇宙人みたいに、何度も馬鹿みたいに驚いてしまうんだと思う。っていう妄想をしてる。そんな私の真意はわからないけれど、どうにもこうにも止められない。だって勝手に浮かんできてしまうんだから。

今日はとっても気持ちがよかったな。取材先まで歩いて、帰りも途中の駅から歩いて帰った。梅ヶ丘で大きな大根を一本と、写真家の松村さんに教えて貰った蒟蒻湿布をする為に手作り蒟蒻を買った。楽しみだな、蒟蒻湿布。お腹とか腰とかに温めて貼るだけで一気に色々を吸い取ってくれるのだそう。「すごい効果があるんだよ」と一生懸命に話してた。

そして明日は髪を切る。そんな事でも今日は朝からご機嫌だ。因みに髪を切るのは土曜日にデートをするからではなくて、お気に入りの髪でデートしたら楽しそうだから。いや、絶対に楽しいに決まってる。

晩酌
サミットの鯖の棒ずし
秋鮭の粕汁
小松菜とシラスの檸檬とオリーブオイル和え
いろいろ野菜の醤油麹焼き
大根サラダ
日本酒檸檬サワー

お土産のラーメン

中華 10.11,2021

お昼はアキチャンがお土産にくれた棒ラーメン。シンプルに卵だけおとした。

午後はふみえさんのアトリエへ。写真を撮って、打ち合わせをした。ふみえさんとの会話は楽しい。ずっと話が尽きない。新しく買った食器棚が可愛かったな。

帰り道、渋谷駅の乗換で後ろ姿が亡くなった友人に似ている女性を見かけた。しばらく目で追いかける。黒髪のショート、身体の線が細くて、肩がゴツゴツしてる。ゆったりとしたパンツをお洒落に着こなして、静かに歩く。名前を呼んだら満面の笑みで振り返るんだと思う。

私が知っている限りだと、あの子が人生の最後にセックスした人は彼女が好きな男だった。見えなくなっていく女性を見ながら不意にそんな事を思い出す。彼は彼女がこの世界からいなくなった事を知ってるんだろうか。

一人になってもうすぐ一年。こないだアキチャンが「大丈夫だよ。」って、男性への不信感を払拭出来ない私に言った声がすっと身体の中に入ったまま、今も胸のところにじんわりとある。

ピェンロー鍋

エスニック 10.11,2021

朝から雨。気持ちがいいな。ベッドに潜って出てこないテコと一緒に10時くらいまでダラダラと過ごした。外から雨の音が静かに聞こえる。いい朝。朝食にスープパスタを作って、起きてきたテコにも朝ご飯をあげた。

午前はメールとか企画の事を考えて、午後は映像の納品、そしてレタッチ作業の鬼となった。ライスプレスの成田さんから電話。何だかちょっと久しぶりだな。元気が無いって言ってたけど、元気そうな声を聞いて良かったとも思った。とはいえ、本人は大変な渦中。どうにか一日でも早く抜け出せますようにと小さく祈った。

あっという間に夜が来て、もう買い物へ行くのも面倒だし、冷蔵庫に残っていた白菜と鶏肉と椎茸で夕飯はピェンロー鍋にした。何だかんだともう10年以上この鍋の虜。12年前、この街に2年だけ住んでいた時に同棲していたBFが感動してた。「何だこの鍋!」って。丁度、20代の途中から後半にかけて、大連に住んでた友人と旅をしてから、中国の食事にハマり始めていた私は小麦料理とか、スパイスとか、ピェンローにもハマった。やっぱり自分にとっての食べ物との出会いは、流行りを纏った街のレストランじゃ無くて、フィールドワークが私の心を撃ち落とす。

マユミちゃんに教えて貰ったドラマの続きを見ながら、鍋を食べ、そのままベッドで見続けた。女優の黒木華さんがとにかく可愛い。可愛いシーンをキャプチャーショットした。派手なワンピースでデートに行く姿。鵠沼駅の商店街を歩く後ろ姿。嗚呼、可愛い。明日にでもプリントアウトしてトイレにでも貼っておこう。気づいたら22時50分。あ、もう寝る時間だ。フミエさんから仕事の事と、周三君から何だかもの凄く長いメールが入ってた。何だこれ。最後のメッセージに “これはLINEの使い方じゃ無いよね。”って書いてある。

うーん。今読むべきか否か。長文で折りたたまれたメッセージを開いた。読めども読めども続く続く文章。ちょっとした本を手に取ってしまったみたい。お母さんの事を書いたとても素敵な文章だった。一昨日に色々話してたからなのかな。3、4年前に書かれたものだったけれど、今も同じ気持ちのままでこの文章が彼の場所にあるのだとしたら、周三君という一人の人間の事がより一層に好きだなと思った。彼が見てきた光景や苦労を少しだけ感じられるような気がした。

それに、私も日記を書いてるから少し親近感が湧いた。日記を書き始めたのは結婚してからで、全く文章とは縁の無い人生の中で、絵や写真を見て何十年も本を読解してきてしまったツケは確実に私の乏しい文章力へと繋がった。初めの頃の “すごい” の多用は半端無かったと思う。日々の食べ物の記録として書き始めた日記だったけれど、今は周三君と同じできっと未来の為に書いてる。苦しかった時期はもう2度とこんな気持ちにならない為に書いているとも思ったけれど、人間はどんどん忘れる生き物だし、どんどん過去を書き換えてしまうから、いつかの不甲斐ない自分の事や、大切な誰かの事を、その時の今をただ持って置きたいと思う。精神科医の名越先生がラジオで面白い事を言ってた。「人間の世界はSFですよ。」思い込みが大半っていう意味なのだけど、聞いたときは、最高な表現だなって感心した。

どんな過去があっても、どんな酷い事に出会っても、受け止め方は色々。忘れたっていいし、バイバイしたっていいし、しっかり手放さずに懐に隠してたって、堂々と自分の一部の様に見える所に被ったって、旗にして掲げてもいい。何でもいい。人生ってきっと何でもいい。だけど、どうせなら楽しいのがいい。だから、ストーリーは面白くて深みがあった方が私は美味しく感じるから、忘れない為に日記を書いてるのかもしれない。

それで、周三君はどういうつもりで世に公開していない素敵な日記のような文章を私に送りつけて来たんだろう。本当の意味は彼しか知らない。わざわざ聞くのも野暮ったいし、私は一人勝手にその理由を想像しよう。だって世の中SFだし。

明太子たまごとカニクリームコロッケ

和食 08.11,2021

朝にアキちゃんと代官山で仕事をして、家に帰って、サミットで明太子とカニクリームコロッケを買ってきてお昼にした。そのままダイニングテーブルの上でPCを開いて色々を片付けてたらあっという間に部屋が真っ暗。もう17時か。明日からは金曜日の納品に向けてまとまった作業が続く。だから、今日は土日返上のオフにしよう。明日の事は何も考えないでいい。夕飯の食材とビールを買いに行こう。

京都の祇園でスナックのママをしてるメグちゃんからメールが入る。「よしみちゃんに紹介したい人がいるの。」撮って欲しい写真があるのだそう。京都かぁ。久しぶりだな。メグちゃんとは20代からの付き合い。色々があった中で、あっという間にメグちゃんはOLから祇園のママに変身した。

お風呂から出てすぐ火照ったままでビールをぐびぐびと飲んだ。最高。準備しておいた湯豆腐と一緒にまたビールを飲む。ドラマでも見ようかな。あ、そうだ。昨日パリのマユミちゃんから面白いドラマがあるよってLINEがきてた。URLを開いてみると、中国語のサイトへ飛んだ。何だこれ。マユミちゃんに連絡して、どこからドラマを見たらいいのか教えて貰った。そのまま何となく年末年始の話をしてると、年始に京都へ行くかもしれないとのこと。「え?じゃあさ、一緒に行こうよ!」

今さっきメグちゃんと京都の話をしてたのに、今度はマユミちゃんと。何だかすごく嬉しい。来年が来る事を子供みたいにわくわくしてる。こういう感覚って久しぶり。変なの。可笑しい。

里芋とゴルゴンゾーラのグラタン

洋食 08.11,2021

今日は講義。今日の講義は少し長かった。色々な実践を終えた後に生徒が二人グループになりブレイクアウトセッション。今日の実践についての感想を伝え合い、話し合う。その後に皆んなの感想を聞いていく。確実にステップアップと共に学びを体現していく事を皆んなが楽しんでる。日々に躓くような事があったとしても、それもステップの一つとして捉えている人が目立った事も印象的だった。それに、「私はこういう考えを持っている人なんです。」と、自分のネガティブな問題を前提として話す人も増えた気がした。挨拶みたいに聞こえていいなって思う。言葉にどんな色を付けるのかは自分で選べるから。

今日は何となく私の問題についてサラッと話してみた。
「気持ち、少しわかります。丁度、昨年の今頃は私も堕ちちゃって、病院通いながらも自分を責め続けたり、もっと頑張れ、もっと出来ることがあるって自分に喝を入れたりしていました。」私が話すと相手の表情がさっと変化するのが分かった。ああ、もしかしたらこの方は堕ちた先の事を知ってるのかもしれないな。

数日前に似ている人を見かけて、気になって今は作家となった宮崎君の事をネットで調べた。宮崎君は酒飲みだと聞いていたけどある時に急にお酒を止めた。それからもうずっと会ってない。記事には、ただの酒飲みの話じゃなくて、もっともっと深い本当の理由について書いてあった。そこに、”自分は強い人間だと思ってたし、それで今まではやってきたのに、そういうんじゃなくて、堕ちていった。” みたいな事が書いてあって、ああ、あそこかって想像するとぞくぞくした。だけど、あの頃は宮崎君の360度どこにもそんな彼に私は気づけなかった。

夕方に周三君と電話をした。どうして話の流れがそっちに言っちゃったのか全くわからないけど、周三君が20代の時にお父さんが倒れ植物人間状態になってしまって、家族のために働いてとても苦労して、お母さんもお父さんの苦労が沢山あって、亡くなった今が第3の人生みたいに生き生きしているのだと話してくれた。私はパンを妹の私の為に焼いて送ってくれる兄ちゃんは、昔は不倫して大変な時があって、姉ちゃんと母が激憤したとか、私が夫と裁判だけはやりたくなくて、元夫の色々を許せない家族を説得したという話をした。「結構、引いちゃう話したよね。」って周三君が申し訳なさそうに言ってたけど、私の話は別として「とてもいい話だよ。」って何度も言った。

人は誰しも過去に苦しみを持っているけど、今がハッピーならそれが答え。そういう答えになる。声を揃えて、だよね、だよねって、相槌を打ちながら話した。

今日は何だか沢山の痛みのある話を聞いて、私も他人事みたいに私の話をした。

もやしラーメン

中華 07.11,2021

今日は編集のアキちゃんと自由が丘で仕事。アキちゃんに会うのは一年ちょっとぶり。最後に会ったのは、夫が帰らない家で餃子会をした夏の暑い日。あの時は、誰かが家に来てくれるだけで、生きてる実感が湧いたように思う。会っていない間に色々な事が起こったけど、あまり話さなかった。

アキちゃんは2年前に離婚してる。初めてアキちゃんと代官山でお茶した日にアキちゃんの会社の近くで話してくれた。「あっという間だったけど長い一年だったよ。」撮影が終わってお昼を食べに行く途中に私が言った。アキちゃんは離婚したあとに日常がちゃんと戻ってくるまで、どれだけ長い年月がかかるのかを知ってる。この1年の事を詳しく話さなくても、何となく大体はわかってたみたいだった。だから、とくに聞いてこないし、私も言わない。

遅い昼に蕎麦を食べながらビールを飲んだ。アキちゃんはいつも明るくて元気だけど、今日は何だか穏やか。色々な話をして、最近の話を聞いて、今付き合ってる人の話も聞いた。恋多き女は、色々を清算し、たった一人の男にゾッコンなのだそう。彼との馴れ初めや、どんな人なんだとか、仕事は何をしているとか、もう一杯お酒をお代わりして色々とお喋りした。芸能活動していた元夫の事をすごくリスペクトしてるけれど、悪い部分もちゃんとわかってる。今の彼にしか無いものが自分にとって必要。アキちゃんの言葉は私の心の声みたいに聞こえた。

「今までずっと陰を持った人とばかり付き合ってきたけれど、今は明るい人がいいんだよね。」

カウンセリングで愛の新定義についての宿題があって、ここ一ヶ月ずっと考えている。最近ようやく答えが見つかった。それは “明るい人”。アキちゃんも話していた明るい人。それは場を和ませるとか、面白い話ばかりするとか、元気な人っていう意味じゃない。生き方が明るい方向へ進んでいる人。それは私と一緒だった。

離婚をしたら沢山恋をしてやると離婚当初は思っていたけれど、愛していた夫と離婚をして簡単に誰かと恋になんて落ちる事が出来ないまま、あっという間に時間だけが過ぎて1年。心はようやく過去から引き剥がされて今を生き始めてる。アキちゃんに今日会ったのは必然だったのかもしれない。幸せそうに話すアキちゃんと一緒にいる時間がすごく幸せだった。それに、笑顔がとても可愛かった。帰り道「今日、よしみちゃんと会えて本当に良かった。」ってアキちゃんが言った。結局最後まで色々は喋らなかったけど、やっぱりアキちゃんは色々がわかってるんだろう。バイバイしてからも、電車の中でしばらくLINEをした。次はアキちゃんの彼と三人で飲もうねって。

晩酌

夕飯 07.11,2021

朝一番で梃子の病院へ抜糸をしに行った。それから、取り除いたお尻の癌の組織の病理検査はグレード1で、正式に全身への転移は見られないものであったという結果が出た。未だお尻の傷は肉が見えた部分もあるけれど、たったの一週間で梃子はみるみると元気になって、いつもの様に家中を走り周ってる。本当に良かった。家に帰って、ほろほろと目から涙が落ちた。

今日は珍しく夜まで仕事をして、夕飯は晩酌をした。ただとにかく、何だか今がいい。

晩酌セット
ロゼ
日本酒とかぼすのソーダ割り
きのこの蒸し焼き
蓮根の醤油麹焼
枝豆
ロマネスコとシラスのペペロンチーノ
カブの昆布和え
モヤシのナムル

納豆ごはん

和食 03.11,2021

昨日は全く仕事をしなかったから、朝に少しだけ仕事をした。慌てて食事と化粧を済ませてダッシュで世田谷線に飛び乗る。案の定、靴下を履き忘れた。何でだろう。慌てると必ずひとつ忘れちゃう。けど、まぁいっか。

今日はちょっと遠くの美術館へ行った。隣の隣の駅におばあちゃんのお墓があるから寄ろうと思ったけれど、全然時間が無くて行けなかった。駅を降りると、11月とは思えない強さの陽が気持ちよく照ってる。正直、仕事を切り上げて、梃子を留守番させてまで遊ぶって何だか面倒で仕方無かったけれど、約束したしな。何度か断ろうかなと思ったけれど、やんわり遠回しにキャンセルを促したけれど、遂行出来なかった。それに、ドタキャンなんて流石に出来ない。ああ、なんて気持ちがいいんだろう。10分くらい歩くと、目の前にまるで海外のどこかみたいな建物がどーんと見えた。すごい。美しい建物。建物だけじゃなくて、その背景に見える景色も全てがパズルみたいにピタッとハマってる。全身がこの景色の中で気持ちがってる。こんな風に身体がふわっと風に舞い上げられるような感覚って東京では中々出会えない。すごく久しぶりに浮き足立った。頬を抜けていく風も気持ちがいい。建築家ってすごいな。

周三君が直ぐにエントランスに来てくれて、見たい展示だけじゃなくて、ギャラリーの下から上までの殆どを紹介してくれた。こんな贅沢な事ってあるのかな。結構集中したし、すっごくお腹が空いた。一緒にご飯でも行きたかったけれど、彼は仕事中だったからチベットの話をちょっとして帰る事にした。帰り際、周三君がモゾモゾとジャケットのポッケからなにやら木の破片を出してきた。二年前に写真家とのフィールドワークで訪れたネパールで買った幸せな手っていうスタンプなのだそう。誕生日プレゼントにどうぞって。

思わず笑ちゃったけど、すごく嬉しかった。今度、私も昔チベットに行った時の写真を見せようと思う。彼がいつか行ってみたい場所だって言ってた。インドのずっと北。パキスタンとの国境の近くで、冬は早くから国内線の飛行機が不安定になるし、情勢の問題で外国人の入国がセンシティブになる場所。私が行った時はそこそこ大丈夫だったけれど、銃を持ったパキスタン側の兵士をよく見かけた。とにかく覚えているのは、あんなに空が近くまでやって来たのは初めてだったって事。高山病の薬を飲み続けながら、自分の吸ったり吐いたりする呼吸の音の中で、ただ青い空を、ただ星が落ちてきそうな空を見た。

またいつか行きたいな。

兄の焼いたパンと兄の漬けたチーズのオイル漬

パン 03.11,2021

誕生日の朝食は兄オンパレード。兄の焼いたパンに兄が漬けたチーズのオイル漬。LINEを開くと、兄と姉から誕生日のメッセージが入っていた。まず、恒例のほぼ日手帳の新調から始まる。新調とは言っても、新しい歳のやりたい事リスト100を思う存分に埋めるだけ。とりあえずそれで書初めを終えた様な気分。

とにかく朝から気持ちがいい。気持ちが良くて仕方がない。この1年を無事に乗り切った。39歳は悪夢で、40歳という年は大変ハードな歳だった。どうにか離婚を決意し、裁判はやらないと家族を説得し、走って離婚届を世田谷区役所へ出しに行き、家を引っ越し、新しい生活を始めた。心療内科は早々に卒業して、44kgまで落ちてしまった体重も太るプロテインと炭水化物で元に戻して、亀の一歩くらい小さな歩幅で普通の生活を始めて、新しい名前に変わりアイデンティティを一気に喪失して、新しい活動名の名刺を刷って、沢山の銀行とか保険とかあちこちに隠れてる見たく無い名字を見つけては変更する作業を死ぬほどやって、仕事も少しずつ始めて、完全に落ちた体力も毎日ちょっとずつちょっとずつのウォーキングで戻して、家具を揃えて、映像を勉強して、映像を撮って、新しい写真のプロジェクトを始めて、カウンセリングへ通って、心理学を学び始めて、梃子の癌の手術を無事終えて本日。数日前に聞こえなくなった片耳は早々に治った。過労とストレスで一時的なものだったみたいで、片耳の問題くらいで心は殆ど動揺しなかった。とにかく1年死なずにやりきった。それだけで、今日気持ちよく生きてるだけで何だか最高なんじゃ無いかって気がしてる。それに、梃子もお陰様で生きてる。

一年前の秋に沢山のお気に入りの指輪達を一つ残らず指からとった。いくつかは渋谷の質屋へ売った。大好きな指輪を死ぬまで付ける筈だったのに、理由はよくわからなかったけど、多分もう見ちゃいけないから、療養で殆ど仕事が出来なかった時期に少しでも生活の足しにしようと売った。私は指輪が好き。祖母や母の影響、姉の影響もある。二十歳を過ぎてから指輪をつけていない時なんてあっただろうか。両手じゃ足りないくらいに指輪をしてきた。一つ一つに思い出がある。それが指輪。何と無く買った指輪なんて無い。悪魔になった指輪達。だけど、指輪が好き。何だかすごく複雑な気持ちの一年を過ごした。

だから、今日、自分で自分に指輪を買う事にした。トラウマに邪魔されて、好きな指輪をつけられないなんて人生どうかしてるよ。おかしい。だから、新しい指輪を買おう。怖くても、もう怖く無いよきっと。だから、とびきりお気に入りの指輪を買えばいい。「これ、いくらですか?」NYでデザイナーをしてる日本人のジュエリー作家。日本じゃ殆ど置いてる所がないけど、たまたま渋谷のセレクトショップにあった。もうずっとずっと好きな作家。「4.8万ですね。」お姉さんがさらりと言った。完全に予算オーバー。「うーん。中々ですね。買います。」だって私、今日、生きてるから。買う。

指輪の箱を鞄にしまい気分良く歩いていると、前から編集の浅井さんが歩いてきた。お喋りに花が咲いて太陽が浅井さんの右顔から私の左顔を通りそのまま夕方へと去って行った。どれだけの時間お喋りしてたんだろう。むちゃくちゃ楽しかった。料理雑誌の副編集長を退職し、今はフリーランスとして活躍されてる。これからの話とか、自然由来の話とか、二人で道路をぴょんぴょん飛び跳ねてしまうくらい興奮した。浅井さんは本当に素敵な大人の女性。すごく憧れてる。「呼び止めちゃってゴメンね。」長話の後に浅井さんが言った。「いや、私、今日誕生日だから遊んでるんですよ。」「え?私も三日後誕生日だよ!おめでとうー!!」なんと私達は蠍座の女同士だった!という話でまた盛り上がって、一緒にいるなら魚座の男がいいよというアドバイスと、誕生日プレゼントにサーモンピンクの電動歯ブラシを頂き解散した。サーモンピンクは私の大好きな色。嬉しい。何だかこんなにハッピーな気分の誕生日っていつぶりだろう。覚えてないぶりに楽しい。帰りに梅ヶ丘のリカーランドなかますでビオのロゼと、美登利寿司で好物の本鮪の赤身と赤貝のお寿司を買って帰った。お風呂に浸かりながら母とお喋りして、夜は梃子とゆっくりと過ごす。幸せだな。ありがとう。私も梃子も、生きててくれてありがとう。

寄せ鍋

夕飯 31.10,2021

午前は心理学の講義。二ヶ月のプログラムが半分過ぎた。あっという間。後、半分で終わっちゃうなんて寂しい。講義は私の様な心理学への知識が殆ど無い人も、心理士の様に専門職の方にも、皆に向けて行われる。だから、毎回感心するのだけど、先生はすごく考えて講義を進めてるのだろうって思う。とはいえ、時々見知らぬ単語も出てくるから、ノートを取るのに必死。だけど、とにかく楽しい。今日はまた一つ興味深い講義だった。私が講義を受けた理由はとにかくもっと心理学を知りたかったからだけど、いつしか自分自身を救うプログラムとなっていた。

講義と一緒に読み進めてる本や、毎日のホームプラクティス。サンプルは自分で、自分がどう感じたか、どうなったかを講義でまた話しあう。色々な意見、感じ方があるけれど、人の心の落ちどころは良い場所と悪い場所が決まってる様にも見えた。全く異なる経験でも、どうにかその場所へ行こうとする回路があるみたい。その回路の太さやどんな形をしてるかとか、個性は有るけれど、きちんと皆んなゴールにやってくる。そして自分達が歩いてきた道について講義で話し合う。そして、この話しあう時間がすごく好き。

いつか私の問題も乗り越えなきゃいけない、乗り越えられる日がきっと来ると信じてきたけど、もうこのまま、痛いままでいいのかもしれない。けど、もしかしたらこの痛みがあるから、心理学っていう学びが瑞々しく身体に浸透してくるのかもしれない。それに、先生も言ってた。問題には乗り越えられる問題と、乗り越えられない問題がありますって。人殺し、自殺、近親者の事故死、レイプ、日常ではあまり出会わないような問題が世の中には存在する。私の問題も片足突っ込んだような問題だった。

夕飯は寄せ鍋。冷蔵庫の余った色々で寄せ鍋って出来るんだなって。味が染み込んでて美味しかった。

枝豆

夕飯 30.10,2021

兄から送られてきた枝豆。ベストな茹で方についても後からLINEが入った。ビールと枝豆が永遠ループだからと言ってたけど、本当みたい。食べながら、youtubeとかインスタで色々な方の街角演説を見る。法律を変える為、生きやすくする為、誰かの為に、こんなに必死に頑張れるなんてすごいな。何だかとても勇気を貰った。ビールのせいじゃなくて、心が打たれて泣いた。

今日は兄と姉の誕生日。いつもありがとう。

ペンネ

洋食 29.10,2021

やっぱり耳が聞こえない。何だか昨日よりも聞こえなくなってる。左耳を塞ぐと耳栓状態。耳の周りもじんわりと麻痺してる。完全にストレスだ。心身共にピンピン何だけどな。だけど、どこかが頑張り過ぎてるって事だよね。今日は仕事するのをやめよう。

「耳の周りの血流がストレスとかで滞ってるのよ。温めてマッサージ!」母からメールが入った。プロジェクトのやり取りでメールをしてたフミエさんからも「自然に触れたりするといいかも!」と、教えてくれた。ベッドでしばらくマッサージして、ゴロゴロして、午後は駒沢公園へ行く事にした。ポストを開くとマユミちゃんからの手紙があった。黄色の封筒にスラスラと書かれたフランス語。ポストに手紙が入っていると、一気に気分が上がる。公園で珈琲でも飲みながら読もう。

珈琲を買って、ベンチに腰掛けゆっくりと時間をかけて手紙を読んだ。二周して、封筒にしまった。手紙は9月26日の事が書いてある。一ヶ月前に、パリの部屋で彼女が手紙をしたためてるのを想像するだけで幸せな気分になる。

夕方に一本だけ堀江さんと電話で打ち合わせ。もう7、8年の付き合い。当時はクリエイティブディレクターアシスタントとして、今はフォトグラファーとしてお仕事を請けてる。

先週の撮影の帰り、恵比寿のスタジオから三茶まで送って貰って、何となく離婚の話になった。私がミュージュシャンと結婚する事が決まって、昔バンドマンだった堀江さんはすごく喜んでたけど、離婚の話を打ち合わせの時に話して目を丸くして驚いてた。それで、簡単に離婚の理由を説明すると、自分の離婚の話をしてくれた。当時の私なら全然聞こえてこなかった話でも、今の私なら全く違う感覚で堀江さんの話が聞こえる。それも、何だか鮮やかに聞こえる。堀江さんは今も昔も変わってないのに不思議な気分だった。私が知れなかった堀江さんは、沢山の苦労を乗り越えてきた人だった。どうしていつも、どんな時も、面倒見がいいとか、嘘をつかないとか、嫌な事が起きてもきちんと向き合ってくれるとか、色々な背景に納得した。出来る事なら、離婚する前に相談したかった。そしたら、もっと傷つかずに傷つけずに離婚が出来たかも知れない。

当時は、大概の人が離婚した方がいいとアドバイスしてくれたし、夫の音楽友達でさえ、離婚も有りだと思うって遠回しに離婚を勧めてきたけど、結局のところ、誰もが離婚未経験者で、離婚がどれだけ苦しいかなんて、離婚後にどうやって生きていけばいいのかなんてアドバイスをしてくれる人は誰一人いなかった。想像と実際に経験するのは全く違う。だから、離婚を選ばない友人達を見て、勇気がないだけ!なんて今は言わない。99%離婚しない方を勧める。苦しむ覚悟が無いなら、やめた方がいい。そもそも今の問題を解決できていないのに、離婚したからって解決できるわけでも無い。もっともっと大きな溝に堕ちる。人生そんなに甘くない。ただ、逆に言えば、覚悟が決められる。

「この仕事が終わったら、こないだの話の続きをしましょうね!」電話を切った。何だか、すごく嬉しい。人生って面白いものだと思った。

新米

夕飯 28.10,2021

午後、母から新米と兄からパンと枝豆のふさが届いた。梃子の手術は昨日終わり、特に合併症なども起こらなかったので、予定通り夕方に迎えに行った。先生と話してた事は覚えてるけれど、受付の方が話してた内容が全く聞こえなかった。抜糸の予約をして家に帰宅。ほっとしたからなのかな。緊張の糸がプツリと切れた音までは聞こえたけど、その先が消えた。耳がおかしい。

手術直前は吐き気がする程に忙しくて、悲しんでる余裕なんて無かったし、絶対にやってやるってメラメラしてたけど、これって自律神経かな。右の耳が水の中にいるみたい。しーんとして重い。心身共に元気だけど、ストレスの重力は想像以上に大きかったのかもしれない。よくわからないけど、右耳だけが重くて静か。

テコは帰宅して喜んではしゃぎ回っていたけど、しばらくするとベッドでずっと鳴いてた。苦しいと哀しいがミックスした様な鳴き声。そうだよね。こんなに小さな身体でお尻を切って、何針も縫って、訳も分からないままにこんな事になって、怖くて痛くて、よくわかんないよね。テコのお尻はフランケンシュタインの様にギザギザの糸が露わで、そこから少しだけ黒い血が固まって見える。

母から何度も連絡がある。「梃子はどう?」
兄からもメッセージが入った。「次は梃子の快気祝いにパン焼くよ。」豆のベストな茹で方についても丁寧に教えてくれた。

梃子の手術が成功して本当に良かった。母と兄、ありがとう。
夕飯は新米と粕汁、糠漬け、カツオの刺身にした。

昨日のおでん

夕飯 25.10,2021

今日は久しぶりの白ホリのスタジオ。先週までの映像の仕事の色々がようやく終わったと思ったら、今週の撮影の進行とか準備とか撮影以外の色々に追い立てられようやく今日撮影が終わって、残すは明後日の撮影で私の安息の待ちに待った二週間ぶりの休日がやってくる!先がようやく見えてホッとして力が抜けた。今夜はゆっくり昨日のおでんと一緒に晩酌にしよう。

ビールを飲みながら、おでんをつまみながら、江口のりこさん主演のドラマを見た。私がしくしく泣いているとテコがベッドルームから起きてきた。哀しいというより、とにかく悔しい。相手を庇い自分を苦しめる江口さんの姿に自分を重ねてしまった。私の離婚は病とお酒が原因だけど、彼の行動の最後はお金と名誉が欲しくて家族を捨てたって感じだった。たったの8年だけど、仕事が無い時も、沢山の人に裏切られた時も、彼が人生を放棄してしまいそうになって、ポツンと世界にひとりぼっちになった時、いつもいつも、本当に何度もいつも、最悪な時に何度も何度も手を差し伸べてきた。営む大赤字の店を手伝い、お金が無くても楽しくなれる様に毎日お弁当を作り、私が居ない時でも一人ぼっちにならない様に冷えた晩食を置いておいた。だけど、ある日突然に彼の目の前にお金と名誉が現れた時、「僕は変わるから信じて。」と、健気に愛情だけは深いんだと愛を歌う男が、一瞬でコロリと変わった。私が怒る暇もなく出て行ったから、何も今だって話してない。何だか江口さんが会社のお金を横領して逃げたパートナーを殴るシーンは爽快だった。私も殴れるものなら殴ってめちゃくちゃに蹴り倒してやりたかった。「あんたはお金の為に私といたのか?」っていうセリフが心に響いた。

すごく悔しい。絶対に負けたく無い。誰に負けたく無いのかって言ったら自分にって言いたいけど、ものすごく疲れてる筈なのに酷く怒ってる。私が泣いた所為でテコはずっと側を離れない。どうしてこんなに可愛い子が、あの男に酷い事をされたって尻尾をふって愛情を振りまく子が癌を患ってるなんて、人生どうかしてる。悔しい。愛情を持って真っ直ぐ生きてる方が損をするなんて、ならば皆んな悪人になって人を騙しまくればいいよね。梃子も私も。

悔しい。今日は久しぶりに猛烈に怒ってる。だから、しみしみのおでんが丁度いい。

目玉焼き

朝食 23.10,2021

朝からすごく寒かった。そして疲れてる。撮影帰りに三茶で今川焼を買って食べた。糖分が身体に染み渡る。何だか頭が今日も破裂しそう。夜は今むが大阪土産と三茶の新しいブルワリーのクラフトビールを何本か持ってきてくれて、寄せ鍋を食べながら仕事の色々や選挙の話をしてバイバイした。とにかくすごく疲れてたけど、いっぱい喋って、いっぱい呑んで、ちょっと心の休息が取れた。ありがとう。

炒り卵ご飯と味噌汁と柿

朝食 21.10,2021

ベッドの中ではパンと決めてたのに、キッチンでお湯を沸かしていたら無性に胡麻油で炒めた少し甘めの炒り卵が食べたくなった。時間は7時過ぎ。なんて平和な朝なんだろう。朝陽も最高だし、寝坊万歳!

息を止める様に仕事を片付けて夕方。ちょっと休憩しよう。お茶を飲んで、ぼーっとすることに決めた。あ、まゆみちゃんに手紙を書こう。書き途中だった手紙を開くと日付は10月10日。嘘でしょ。私の10日間、何処へ。10日前の手紙を読み返すと、超苦しい日に書いた手紙で、梃子が死んじゃう的な事が書いてあった。手術まで数日。梃子は死なないよ。大丈夫。麻酔が切れたら最高に痛いだろうけど、大丈夫。私がついてるから。

来週が過ぎたら、ようやく仕事の色々も落ち着く。梃子の手術をして、一週間もしたら誕生日だ。昨年は近所のしみるさんと今むと下北沢でご飯した。雨の日で、帰宅してからダイニングテーブルの紫陽花を撮ったな。何年も一緒にいた人がいなくて、悲しかった夜。あの家の夜の事を思い出すと苦しくなる。だけど、毎晩がそんな夜だった。

この1年は何だかどうだったのかな。自分でもよくわからない。とにかく生きるしか無いって感じだったのかな。恋の一つや二つしてみたかったけど、想像よりずっと私の全てが傷んでてそれどころじゃなかった。デートをしても気持ち悪くなったし、怖くなったし、好意を抱かれると嫌いになった。何とも難しい。離婚協議を進めてる中で兄が言ってた「アイツはこのままだと逃げ勝ちだよ?」1年前はそういう問題じゃ無いよって思ったけど、今思えば、そうかもねって思う。あの頃の私には裁判する体力はこれっぽちも残って無かったし、誰かが傷つくのを見るのも嫌で、裁判はやらないと懇願し続けた。

次の新しい歳はどんな事が起こるんだろう。来年の今日はどんな気持ちで日記を書いてるんだろう。結婚して1年目から書き始めた日記。あれから6年。長い長い6年だったな。この6年は色々が起きた。全く書けなかった日記も書けるようになったし、料理写真を初めたし、本が読めるようになって、心の病やそういう世界に生きる人の事に詳しくなった。結婚も離婚も経験したし、大切な人が他界して、死ぬ事について沢山考えた。慕ってた友人はいなくなって、新しい友達が増え、梃子とは大の仲良しになった。

10日前より今日はずっといい。だから、きっと来年の今日は今日より良くなってる筈。多分。きっと。じゃないと困る。