
結局のところ、ただの夏風邪はコロナだった。初コロナ。もう、今や誰がなってもおかしくないと言うけれど、結構頑張ってからないようにしてたコロナ。これだけ当たり前になってるコロナだけど、いざ自分がかかるとなると、小さくショックを受ける。
勿論、発症元は周ちゃん。出張で貰ってきたんだろう。金曜日から土曜日の朝にかけて、急に容態がおかしくなってきて、寝起きの周ちゃんに直ぐに病院へ連れて言って欲しいと頼んだ。喉の激痛で、耳や肩、身体全身の神経がおかしくなりそうだった。この時点で周ちゃんは既に発症から5日経過していて、体調も良さそうだった。
あれだけ、仕事を休んでってお願いしたのに、出張から深夜帰って直ぐに実家の用事、そして夜中に帰宅して朝から仕事。そんな事を続けていたら身体を壊さないわけがない。高校生の頃から野菜ジュース飲むような健康オタクのわたしが、食べ物だけじゃなくて睡眠時間にだってうるさい私が、どうしてこんなに苦しんでるのに、家族のことを考えずに好き勝手やる周ちゃんは飄々と仕事してるんだろう。なんだか、妊娠の時のことを思い出す。この人は、というか男性はなんだろうか。自分は大丈夫だから、と颯爽と出かけていく姿は苛立ちしかない。心配そうな顔をして「早く帰る。」と言い、冷蔵庫の中が空っぽなことも忘れて遅くに帰ってくる。そして、脂っこいラーメンをどんとだされって、そういえば、優しさって何だっけって。油がだらっと浮いた茶色い液体の表面を見ながらなんどもなんども考えた。なんなら、もうあの時から味覚はどこかへ行ってくれたら良かったのかもしれない。
周ちゃんへの苛立ちは一向に消えないけれど、それに反して、私の身体は刻々と回復していった。まだ完全とは言えないけど、もう「辛かったな」と過去のことのように振り返れるくらいに。
夜はたぶん、気持ちの行場をなくしたんだと思う。ひたすらYouTubeを見続けた。アメリカンゴッズタレントという番組。小さな少女たちが、震える身体を震える声を捨てて、ステージの中央にただポツンと立ち、腹の底から心の声を、すべてを界に向かってさらけだす。圧倒されっぱなしで、気づいたら泣いてた。周ちゃんの事なんて、どうだっていいや。そんな事よりも、私も強く生きたい。朦朧としながら、ベッドに転がりながら、見続けた。




























