台湾から帰国し、いつものように、スーパー銭湯で旅の疲れを流し、車で実家に向かった。母が一人で住むには大き過ぎる私達が育った家に帰るのはやっぱり虚しかった。
大学院の合格通知は、新宿に向かう電車の中で知った。10月のどこかの土曜日。各駅停車の電車に揺られながら少しだけ泣いた。それから、ゆっくりと突然の朗報を味わう時間などなく、翌日に母を迎えに行き札幌へ向かった。ウニ?食べたかな、よく覚えてない。そして、帰国してまた直ぐに台湾へ飛んだ。心身共にくたくたになりながら、旅の途中で風邪を引き、ぶるぶると震え、激しい喉の痛みを癒すために3年分くらいの飴を舐めたと思う。
慌ただしく過ごした1週間を終えて実家に着いたの水曜日の夜。母に風邪をうつすといけないからと、用だけ済ませ、ラグビー部の大学生でも食べるようなナポリタンが大盛りに盛られた皿を母から受け取り、後部座席に乗せたナポリタンと一緒に帰路についた。最近、実家に車で帰るようになってから、母はタッパでなく、皿だとか、トレイにおかずがのった状態で食事を持たせてくれる。
二日目のカレーや二日目の味噌汁と同じ。二日目のナポリタンっていうものは、どうしてこんなにも美味しいのだろうか。少しケチャップが強めなのは、伯父さんの喫茶店で鍛えあげたからだ。翌朝、泥みたいな体で食べるナポリタンは、今日も生き生きと愛を奏でてるみたいに見えた。
多分、今のところ、母ほどに料理を好きな人は知らないし、この歳になっても思う。一生かけたってかないっこないって。だけど、母のような人になりたいと思い続けるのは、終わらない果てしない私の夢でもある。
人のために頑張ること、想いやること、小さなことでもやり続けることで、次第に大きな愛になる。母の料理は私にとって愛そのもの。近所の人だけじゃない、母の友人も、姉や兄の友人も母のご飯が好きだし、そして私たち家族も大好きだ。母がしていることは祖母と同じ。ただ、今できる精一杯の愛を送り続けること。愛しているよ。大丈夫だよ。大好きよ。今日もたくさんを味わって。
なんだか、怒涛の2週間だったな。
はぁ、疲れた。そして、ようやく日常がはじまる。