カテゴリー: Journal

シーフードグラタン

Journal 09.3,2022

編集のミオちゃんにメール。”19日、後藤さんが来るのだけどミオちゃんも来ない?” 引越しが再来週に決まった事も報告した。”怖くない?誰にも会えなくなって疎外されないといいんだけど。” “うん。結構怖いよ。” “シティーガールだもんね。” ミオちゃんこそ生粋のシティーガールだ。私はまだ千葉を挟んでるけど、ミオチャンは生まれも育ちも亀戸。私が東京の学校に行き始めた時に錦糸町や立石に住んでる友達によく冗談を言われた。「よしみはどこの山から来てるの?」って。本当は怖いよ。”すっごい田舎なんだよ。本当に大丈夫かな。もしダメだったら東京にマンション借りようと思ってる。”誰しもが「慣れるよ!大丈夫だよ!」と、かけてくれる言葉により一層と不安が積もっていく中で、ミオチャンの言葉になんだかとてもほっとした。

今夜はグラタン。先週末に器の和田さんで買ったスリップウェアのグラタン皿をおろした。火の通りが丁度良い塩梅の深さ。いつもちょっとだけ焼き加減が気になってたグラタン。お皿ってすごい。味が変わるんだな。可愛し、美味しくなるなんて、何だか得した気分。

ホワイトソース
バター80g
小麦粉 80g
牛乳 800g 温める

フライパンにバターを溶かして、小麦粉を入れてヘラで水分がなくなるまで混ぜる。牛乳を少しずつ、少しずつ、入れてはホイッパーでよくかき混ぜる。少しずつ少しずつ。なめらかなソースになるまで。

3月6日

Journal 06.3,2022

家の採寸に行った。所沢の駅を降りると遠くに山が見える。どこかの地方に来たみたい。頬を抜けてく冷たい風に少しドキドキした。小学校を上がってからずっと東京生活。学校も遊びも恋をするのも東京。東京生活が長すぎるようにも感じていたし、東京からいい加減でた方がいい気もしてた。だけど、この街を本当に好きになれるのかな。

不動産屋さんの車で新しい家まで向かう。田舎だな。駅を離れると小さい商店だとか美容院、後は家ばかり。この道を私はどんな想いで歩くんだろう。不安が募る。もう後ずさりは出来ないんだな。新しい生活は楽しみだけど、それが素敵かどうかも検討がまだつかない。何だか心がどこに行ったらいいのか迷ってるみたい。

周ちゃんは自転車で東所沢の家へ帰宅して、私は電車で世田谷へ帰った。来週にリビングのライトとカーテンを見に行こうと約束をした。後、周ちゃんのお母さんに初めて会う。

チューリップ

Journal 24.2,2022

昨日の夕方、三茶で魚屋に寄ったついでにチューリップを2本買って帰った。「こないだ古物市で買った花瓶、難しいんだよね。」「たしかに難しそうだね。あの花瓶自体がチューリップみたいだもんね。」周ちゃんが言った。一昨日に白のチューリップを3本買って活けてみたけど何だか変。う〜ん。あと2本くらい加えたら可愛くなるかな。夜見た時は何だかしっくりこなかったけど、朝になったらいい感じだった。うん。素敵。

今日は所沢へ内見に行く。せっかく所沢まで行くのだし、色々物件見たいねって話ていたけど条件に合う物件がひとつしか無かった。週末に何か見つかるかな。たぶん。所沢に向かう電車で周ちゃんが呑気に「多摩湖でも見に行こうよ。」と言った。行かないって思った。たぶん朝に私がGoogle Mapでたまたま多摩湖を見て大騒ぎしたからだろう。風も強いし、さくっと家を見定めて帰宅したい。私達の条件は段々と固まってきたから話は早い。正確には私の条件。周ちゃん曰く生活を大切にしてみたいからよしみの意向に添いたいのだそう。私の条件、ただの我儘じゃないかな。一軒家、広いキッチン、庭、朝陽の入るベッドルーム、それぞれが南向きの書斎、ウォシュレット、光の入るバスルーム、外見が可愛、駐車場付、自然が近くにある、最寄り駅は大きな駅。そしてペット可。そんな物件どこに?だけど、私の言い分は割と正当だと思う点もある。だってせっかく引っ越すのに好きじゃない場所でなんて暮らしたくない。それに、周ちゃんは大好きだけど、あなたとなら何処でも生きていけるみたいな女にはもうなりたくない。私の好きを私の人生から失いたくない。

内見した家の近くにはヨーロッパのどこかみたいな風景の多摩湖がある。ここは昭和の時代に軽井沢みたいな避暑地にしようとしたのだとか。不動産の方が案内してくれた車の中でも聞いた。「高級住宅街だった名残がこの辺りにはあります。」住宅街のちょっと入ったところ。外観、白くて可愛。吹き抜け良し。リビング広い。システムキッチン良し。風呂暗くて悲しい。部屋は全部明るい。二階の角部屋は最高に可愛。内窓と出窓がバッチシ。昭和モダンな雰囲気が最高に好み。不動産に戻って見積書を頂いて店を出た。遅い朝ごはんからもう5時間は経ってる。さっきからずっと周ちゃんとお腹空いたねって目で話してる。不動産を出て、斜め向かいにあった餃子の王将に駆け込んだ。私は餃子ライスとビールを、周ちゃんはあんかけラーメンと餃子のセットを頼んだ。「とりあえず食べよう!」周ちゃんが言った。お皿の中を綺麗に完食して店を出て不動産で申込書を書いて帰宅した。全部があっという間だった。

結局話し合いは殆どしてない。私なんてビールを意気よい良く呑んじゃってレモンサワーまで頼んだからほろ酔い。そう、キュレーター仲間の高橋くん家も近かった。余りに偶然でちょっと怖いくらい。周ちゃんはそんな偶然も嬉しかったんだろうな。明日から月曜日だから今日はそれぞれの家に帰る事にした。帰宅してご飯にキムチをのせたものと朝の残りのほうれん草の味噌汁を温めて食べてお風呂に入って直ぐに寝ベッドへ。周ちゃんも疲れて早くに寝たのだそう。婚約から結婚、そして引っ越し。とにかく忙しかった。何だかほっとしてる。

行きの電車、あっという間に周ちゃんの肩で寝落ちしてた。気持ちよかった。すごく気持ちよかった。ただ触れてるだけで全身や色々がそこに上手に落ちていくのがわかった。段々とだけど私は梃子みたいに周ちゃんになついてきてる。一度失った背中がある。もうそんなものは私には必要ないと思ったけど同じ様にまた温もりを感じてる。もう二度と失いたくないと恐れちゃいけないんだ、またいつか失くなる日が来るのだから大切にしなきゃと毎日毎日ひつこく言い聞かせよう。大切にしたい。すごく。

塩辛

Journal 22.2,2022

独身最後の日、いつもと同じように晩酌をした。今日は朝から渋谷のオーレで富山で昨年末に行ったシェフインレジデンスの打ち合わせ。料理家のフミエさんと編集の山若君。この三人での会話が本当に好き。ずっとケタケタ笑ってるフミエさんと、ボケてばっかりの山若くんに、突っ込んでばっかりの私。あっという間に時間ばかりが経ってしまう。話し合いはさくっと決まって、9月にZINEの北陸行商をしよう、そして温泉巡りをしようとなった。想像するだけでワクワクする。山の中にある混浴に入る為に買うトレッキング用のブーツ、水着、とノートに書いた。それから青山に移動して中華料理店のふーみんで久しぶりにデザイナーの中西君とランチしながらお喋りしたり、夕方にパリで瞳ちゃんとワインを飲んだり、中々いい日だった。空もずっと青くて夜まで気持ちがいい。

帰って家探しのことで周ちゃんとちょっと喧嘩っぽくなった。こんな感じで明日籍を入れるってどうなだろう。けど、私が家への拘りが強いのが原因なのはわかってる。周ちゃんは何だか疲れてる感じだった。1時間くらい家の話をだらだらとし、電話を切った。5分後にやっぱり顔を見て話そうとテレビ電話で掛け直した。「怒ってるよね。」「怒ってないよ。」家の話はやめて、別の色々な話をした。話の流れで私の悩みについても話した。ずっとずっと昔から纏わりついて離れてくれない問題。

「大好きな人、例えば周ちゃんとか、ふみえさんとか、身近にいる人、。本当に大好きで、大好きで、自分との境がバランス崩しちゃって、好きが自分を飛び越えちゃって、時々、、私をコントロール出来なくなるの。それで、傷つけたり我儘を言ったり、自分だかなんだかが混同しちゃって。だから、すごく練習してるんだけど。ゴメンね。」周ちゃんが何て想うかなんて考えずに打ち明けた。私の問題は対象への愛が過ぎると、普段なら優しく出来るような事も、想いやれるような事もぐちゃぐちゃになってしまう。周ちゃんはただでさえ彫りが深くて吸い込まれそうに茶色い瞳をきらきらさせていた。「いや、本当によしみを愛しているよ。初めから思っていたけど、伝えてるけど、よしみのそうゆう所が好きなんだよ。そうやっていつも色々を考えてる。」想像つかないような回答だった。人を困らせてしまう最悪な私の問題について話したのに、何だかすごく嬉しそうな周ちゃんに複雑な気分しかない。私は深刻に悩んでいるし、それがきっと原因のひとつになって離れた友人もいる。今話したのは、私が困ってる生きづらさの話だったのに。

私の悩みは解決はしていないけど、何だかあっという間に救われた。今だけかもしれないけど、この先、悲観的にならないで私を救えそうな気がした。時間は深夜の1時前、3時間くらい話たのかな。今日もよく話した。家の事は一旦保留となったけど、楽しかった。もう寝よう。

温野菜

Journal 19.2,2022

今日は朝一で周ちゃんと三茶の病院へ行く約束をしてる。3時半に目が覚めて、色々な事を考えた。新しい家の事、結婚の事、子供の事。気づいたら7時も終わる頃。急いで支度をしていたら周ちゃんが家にやってきた。昨晩は気分悪く電話を切った。周ちゃんは何も悪くないし、心配してくれてたのに、とにかくうんざりだった。家が決まらなかったのは別に誰も悪くないし、お互いの所為だと言えばそれぞれが悪かった。周ちゃんを責めないし、私自身も責めたくない。だけど、気持ちは伝えたいと思って、家の事も、子供の事も、今の気持ちを伝えたら、ただ電話をしてきた。何も言わずに、ただたわいも無い話だけを。わかる。それが優しさなのはわかった。だけど、全然嬉しく思えなかった。

「パンを持ってきたよ。朝ごはん食べた?」出発まで後10分なのに、何を言ってるんだろう。ちょっとイライラした。世田谷線に乗って三茶へ向かう。仕事の話をした。少し気持ちが楽になる。お互いに違う島の話をするっていい。それだけで離れられる気がした。周ちゃんが嫌いな訳じゃなくて、周ちゃんに甘えている自分が気持ち悪い。病院を出てモスバーガーでランチをしようとなった。「正直、私は子供が欲しいかよくわかってない。」「うん。俺も子供がいる生活もいいし、いない生活もいいなと思ってる。兄弟に子供がいるから、もう母も満足しているだろうし。だけど、子供を作っておけば良かったみたいな話も聞くから、後悔しないようにしないと。」私が嫌いな話をした。よく子供を持たなかった人が後になって後悔するからという話。それって本当にそうなんだろうか?ってよく思う。「周ちゃん、その話をよくする人いるけど、それって私嫌い。だってさ、子供がいない分、楽しい事いっぱいしてるでしょ。結局、どっちを選ぼうが楽しい筈だし、どっちを選んだって後悔するかもしれない。要は今が楽しければ、過去を後悔なんてしないよね。私は全く後悔してないよ。子供を若いうちに産んでおけば良かったなんて全く思わない。だって、子供がいたら出来ないことを今まで楽しんできたし。」

私はまだイライラしてる。午後はフミエさんの味噌作りに行った。フミエさんや瞳ちゃんに会ってすごく落ち着いた。それに、フミエさんの料理がやっぱり好きだなと思った。今日は味噌作りだけど、料理家というフミエさんが大好き。私とは正反対の星に住んでる。ただ、なんだか元気になれる。フミエさんは周ちゃんに豆をあげてた。氷見で会った時に2人はキッチンで豆の話で盛り上がっていた。心配はしてなかったけど、こんなにすんなりとフミエさんと仲良しになるなんてと驚いた。

家路に着いて、新しい椅子が届くから周ちゃんは留守番を、私はサミットへ行った。今夜は無水鍋で温野菜と豚キムチ、あとは豆腐とアボガドの醤油麹のせ、納豆とめかぶ、釜揚げしらすと大根おろし、ご飯。簡単に作れるものにした。周ちゃんはいつも野菜を切ってくれる。残りの調理を私がする。その間にそれぞれがお風呂に入る。これがルーティン。席についてワインをぐいっと飲んで聞いた。「私って我儘だよね。周ちゃんの過去の彼女で最低な我儘ってなに?」周ちゃんの過去の最低我儘話は、それは我儘ではなくて、心の病だと思った。本人は病だとは言わなかったし、それが何処まで愛だと思うかって難しいよねって話してたけれど、「それは、多分病だよ。」ってハッキリと言った。もうワインも何杯も呑んでいたから、言った。私もそうだけど、病院へ行って知った事。「周りの人、家族とか、恋人とか、そういう人が手に負えないってなったら病だと思われます。今日は旦那さんの事で困って病院へ来られたんですよね。」心療内科で精神保健福祉士の方に元夫の相談をしていた時に言われた。周ちゃんが彼女と別れた理由は我儘だったそう。その我儘は何を言ってるのかも不明で、真面目に対峙しようとしたけど、どんどんとエスカレートしていったのだとか。元夫がおかしいのは気づいていたけど、普通の時もあったし、友達だっているし、病気じゃ無い。ただちょっと調子が悪いだけ。だけど、違かった。私の我慢が彼の病を病じゃなくしていた。病気ってある日突然なるものじゃ無い。普通の人がなる。病気でも友達だっているし、仕事も出来たりもする。結構簡単に心の病は転がってるらしかった。普通に歩いて、普通に何かを食べて、普通にその辺に座ってる。別にそんなに特別な事じゃ無いんだってわかった。

昔の彼女の我儘話から、恋愛がいつも歪んでしまう私の友人の話、周ちゃんが過去に職場で上司の女性に振り回されて大変だった話、どうしてか人を傷つけてしまう女の話になった。話しているうちに、話を聞いているうちに、なんだかすごく周ちゃんが可哀想に思えてきた。どうして周ちゃんはいつも優しいんだろうって思っていたし、周ちゃんが嫌な顔をしているのを見たことがない。顔から表情が消えるのは何度か見たことがあるけれど、今朝もそう。それ以外はいつも優しい。いつも優しい。何だかな、何やってんだろう。私がイライラするから、今日も周ちゃんは優しかったんだ。帰りに先日仕事で腰をやっちゃったんだと話してた。キッチンで腰を抑えてるのを見て気づいた。今日ずっと痛かったんだ。

この人は我慢をする人だ。私が告白された時に「あなたには幸せになって貰いたいって思ったんだ。」って話をしていて、一体、この人は何言ってんだろう?って思ったけれど、わかった。周ちゃんは幸せになりたいんだ。

私に出会う前に別れた婚約者の話を聞いたことがあった。何だか淋しそうに見えた。きちんと愛し合っていたんだろうと感じたけど、周ちゃんは彼女の悪口なんて一つも言ってないけど、それは平等そうじゃなかった。私には私が抱える問題があるように、周ちゃんにも私の知れない問題を抱えてる。だけど、隣にいるのならば、我慢しないでと言ってもしちゃうんだろうけれど、我慢しなくてもいいのかもしれないって少しでも気づいて貰えたらいいなって思う。

周ちゃんが優しいのと、我慢してるのを感じるって事を伝えた。堂々と話すのは可哀想かなと思ったけれど、私が思っただけだからと軽く話した。周ちゃんは皿を洗いながら何も言わずに聞いてた。「周ちゃん、毎週日曜日は私の悪口を一つ言う日にしよう。人の悪口を言ってはいけないとか、笑顔でいなさいとか、人には優しくとかあるけど、そうじゃない時があっても良くて、嫌な顔したり、嫌な事を言ってもいいんだよ。」周ちゃんは考えてる。「えー!うーん。確かに。しないかな。」「人には良いところも悪いところもあるし、周ちゃんが気分が悪かろうが、嫌な顔をしようが、それと周ちゃんの良さはイコールしないよ。まずは、人の悪いところを探す練習をしよう。やり過ぎたら、ストップかけるから。」「えー。」

いつも笑っていないで欲しい。そんな事したら、いつか何かが切れちゃうと思う。怒ったり、苛々したり、八つ当たりしたりしていい。毎度は困るけれど、適度にやって貰わないと隣にいる私もきっとおかしくなる。晴れてばかりの毎日は心が枯れてしまう。

拉麺

Journal 06.2,2022

昨日は鉄輪温泉に泊まった。昔ながらの湯治場の雰囲気が色濃く残る町並み。宿泊した柳屋も元々は湯治場だった場所をリノベーションして作った宿。宿について直ぐにお風呂につかった。静かなお風呂は一番風呂だった。水面に西陽がキラキラと反射してる。湯と光の中に溶けてゆく身体。このままどんどん身体を委ねたらどうなるんだろう。気持ち良すぎてちょっと怖くなった。

部屋に帰って寝ていた周ちゃんとSEXをした。確か今朝もした。仲居さんが朝食の支度で部屋に入ってきて慌てて寝てるフリをした。付き合って3ヶ月。20代の恋人達のようにしてるSEX。何だか少しくすぐったい感じもする。これはいつまで続くんだろうか。当たり前のようにきっと失くなっていくのだろうけど、それはいつなんだろう。一回めの結婚は元夫がわたしに嘘をつき始めるまでセックスレスにはならなかったけれど、回数が減っていく度に何だか女がどんどん剥がれていく様な気持ちになった。身体が性欲を強く欲しているわけではないのに焦りや不安を感じて、挨拶みたいにする軽いキスやハグだけがどうにか女であることを日常に繋ぎ止めてくれていた気がする。

朝食を食べ、少し街を散策した後に、日本で三泉に入ると言う火口にある塚原温泉へ車で向かった。強い温泉は長く入ると効能が強くて疲れると聞いたことがある。この塚原温泉も長く入らないようにと注意書きがしてあった。周ちゃんに聞いたところ、酸性が強いのでピーリング効果があって、産毛が溶けるのだとか。雪がちらついてる中、火口を見に山を登った。「あの煙の下にマグマがあるんだよ。」周ちゃんが言った。綺麗な石が落ちていて二つ拾うと周ちゃんも一つ拾った。周ちゃんは同じ事をする癖がある。私がやると周ちゃんもする。その逆はあまり無い。

火口から降りてお風呂のある場所へと戻った。掘っ建て小屋の中にある家族風呂。大きな窓からは鬱蒼とした山が見える。薄い雲が速いスピードで通り過ぎて、大きな窓から強い日差しが出たり入ったりしてる。風呂場の中にある影と窓から入る光が交わろうとしない。いい影だし、いい光。洋服を脱いで、アクセサリーを外してお風呂へ入った。2人入ると丁度いいサイズの木のお風呂。強い酸性で顔がピリピリしてる。ああ、写真が撮りたいな。周ちゃんとお喋りしながら何度も思った。この旅で何度も思った。今、撮ったらいい感じの写真が撮れそう。何度もカメラを取りに行こうかと考えたけど、結局、脱衣所のカメラを手にしたのはお風呂から出てから。やっぱり撮れなかった。

本当のところ、ずっとじれったい。撮りたいのに上手く撮れない。ああ、今って思うけれど、どうやってカメラを周ちゃんに向けていいのかわからなくなる。「今撮ってもいい?」たまに声をかけて撮ったりもするけど、声をかけると緊張して写真なんてどうでもよくなってしまう。フィルム代だってバカにならないし、心がどんどん沈んで撮るのをやめたくなったりもするけど、やめない。こうやって撮れないを繰り返していくうちに、きっと撮れる日が来るから。

別府空港に着いたのは18時半過ぎ。カボスの絵が描いてある缶チューハイを飲んでる人を何人か見かけて無性に飲みたくなる。「周ちゃん、カボスサワー飲んでもいい?」「もちろん。」ベンチに座ってカボスサワーをグビグビと飲んだ。すっかりひとりでご機嫌にお喋りしてる私がいる。私が笑うと、周ちゃんが笑った。周ちゃんはお酒が苦手だから飲んでない。だけど一緒になって陽気になってる。今日、2軒目の掛け流しの旅館の風呂が水風呂で私が子供みたいに拗ねて、そして貝みたいに閉じた。初めは優しく声を掛けてくれていたけれど、その後、周ちゃんも静かに運転をしていた。やっぱり周ちゃんは同じ事をする癖があるみたい。

チーズトースト

パン, Journal 28.1,2022

「チーズのみ、マヨチーズ、バターチーズ、どれにする?」「バターチーズ!」周ちゃんはバターが好き。それはやっぱり北海道生まれな気もしてる。朝食は私が作って、周ちゃんはバナナジュースを作る。それから洗い物は周ちゃん。なんとなくそんなルールがいつもになってきた。急いで朝食を済ませて支度をする。今日は近所の友達に聞いたブライズチェックの日。三茶にある不妊治療専門の病院へ向かった。正直、本当に子供が欲しいのか未だわからない。家族が欲しいっていう憧れはあるし、産んでみたいとも思ってる。病院は一番の予約だったけれど、沢山の人がひっきりなしに出入りしてた。年齢も様々。男の人も数人見かけた。

看護師さんの話を聞いて、先生との面談。「年齢的に時間がありません。急ぎましょう。」よく聞いていた話だった。最近、生理の調子がちょっとおかしい事と、少し遅れてる話をした。「このまま妊娠してたらいいですね!一週間来なかったら妊娠してるかもしれません。」先生がにこりと笑った。優しい先生だな。不思議な気持ちがする。私、本当に妊娠してたらどうなるんだろう?

お昼はシバカリーワラでカレーを食べ、歩いて帰宅した。今日は穏やかで気持ちがいい。「周ちゃん、先生がさ、一週間生理こなかったら妊娠してるかもしれませんねって言ってたんだけど、何だかすごく不思議じゃない?先生でもわからないんだって思ったよ。」周ちゃんはちょっと嬉しそうな顔をしてた。子供が欲しいんだろうな。いや、正確には子供が欲しかったのかもな。私にプロポーズした時に、私は年齢的にも子供は産めないかもしれないからもっと若い人にした方がいいよみたいな話をした。そしたら、子供はどちらでもいいって言ってた。出会って短い間だけど、子供に話しかけたり、遊んだりしているのを見かけたことがある。街で目が合えば、にこりと微笑んだりしてる。

私はどうなのかな。離婚してから急に子供に興味を持ち始めたけれど、私の生活に子供が入ってきたらどうなっちゃうんだろうか。帰り道に色々と話したけれど、結局実際やってみないとわからない。案外楽しいかもしれないし、よく耳にするように大変かもしれない。考えたって仕方ないよねって。

帰宅してお互いに仕事をする予定だったけれど、ソファーで周ちゃんの首元にもたれかかったまま寝てしまった。1時間半くらい寝てた。周ちゃんはその格好のまま仕事をしてたらしい。周ちゃんって人がどんどん好きになるけど、私がどんどん我儘になっていきそうで怖い。

味噌汁とごま油

Journal 25.1,2022

10月にパリのマユミちゃんに書いた手紙が戻ってきた。一通目は10月10日、病院から梃子の癌宣告を受けた日で “酷く落ち込んでるけど負けないみたいな事が書いてあった。二通目は10月21日、梃子の手術の事についてと、最近自分の周りで恋の朗報が多くあってすごく嬉しい。私には何も無いけどね!と書いてあった。書いていた時の気持ちをよく覚えてる。あの頃の私はまだ多分怖かった。前向きな言葉の裏側には未だトラウマの影が潜んでる。とっくに日常が戻っていたと自覚していたけど、またあの人が世界を壊すんじゃないかとビクビクしていたのかもしれない。

手紙を記した10日後くらい、周ちゃんに出会った。そして来月に結婚する。本当に世界はわからない。2021年の10月の私がありありとここにあるけれど、全く違う今を当たり前の様に生きてる今もここにある。身体はきちんと今日迄を吸ったり吐いたりして一枚の皮で繋がっているけど、心はあちこちに破片の様に散らばって交わろうとしない。すごく変。だけど、静か。

夜、周ちゃんに電話した。まとまりの無い話を沢山した様に思う。仕事の話も少しだけした。とにかくワガママに話した。トラウマを過去にしたのは紛れもなく周ちゃんのお陰だ。たまたま遭ったとしても、タイプだったからだとしても、彼の魅力に惹かれたとしても、意味があるのか無いのか、運命なんてものはよくわからないけれど、明るく生きる為にすごく必要な人だったと思う。

「俺も一人で生きるって思ってたからなぁ。半年前、まさかこんな事になるなんて想像もしてなかったよ。仕事して、週末はフィールドワークしてって。一人で生きていけたから。」

仕事の後に、編集の柳瀬さんにさくらももこさんの本を借りた。タイトルはやきそば うえだ。表紙は焼きそばのイラスト。食べたい。周ちゃんはお好み焼きが得意らしい。焼きそばも上手そうだな。

麺線

Journal 13.1,2022

朝の9時30分。世田谷通り沿いの動物病院へテコと走る。2分遅れて到着。病院はいつもより混んでる。少し待たされ採血。そしてさらに30分、先生に呼ばれて診察室へ入った。「テコちゃん、完治です。」先生の笑顔、初めて見たよ。良かった。本当に良かった。直ぐに周ちゃん、母、姉に連絡して、たまたまラインしてた兄にも報告。”癌、完治したよ!”

帰って急いで納品を済ませる。冷蔵庫には何も無い。う〜ん。あ、素麺と卵がある。麺線にしよう。昨年、台湾人の友人ハルさんに教えて貰った麺線。胡麻油で生姜を炒めて、その油で目玉焼を焼き、茹でた麺を炒める。生姜の香りが移った胡麻油が最高に美味しい。ペロッと平らげてしまう。

美味しかったな。

キムチチゲ

Journal 08.1,2022

4月の頭に引っ越す事に決めた。不動産への解約通知の退去理由の箇所に “結婚” と書いた。この部屋を見に来てくれた人に伝えてくれるといいな。結婚を理由に退去することを寿退去と言うらしく縁起が良いのだそう。そして、その部屋に住んだ人もまた婚期が早まるのだとか。独身の友人にうちに住まないかとLINEをしてみたけど、ひとりでこの家に住むのは難しいって。確かに。ベランダが広すぎるかもね。家賃も優しくない。ひとりでこの空間を持て余してしまったら、それは虚しさになる。今となっては大好きな部屋だけど、とにかく私も怖かった。いきなり家族が崩壊したからって、簡単にその場所を捨てられない。8年かけて大事に大事に築いてきたものがあの家にはあった。家中のあちこち、キッチンにもリビングにも首都高が遠くに見えるベランダにだってしっかりとあった。それに、夏の終わりから体調を崩してカメラを持つことも大変になっていたし、そもそもコロナで仕事も殆ど失くなった。私があの家を出なくてもいい理由は十分に揃っていた。こんな自分がテコを育てて、これから本当にここで生きていけるのか。半分ゾンビみたいになってる自分が16万っていう家賃をどう払っていったらいいのか全く検討もつかなかった。ただ、ここで幸せを望むしかなかったんだと思う。

周ちゃんと電話でこれからの色々を決めた。子供はわからないけど、とりあえずブライダルチェックを受ける予約をした。今、私達に共通して言える事は、とにかく新しいそれが楽しい。その先の事はたぶん殆ど考えてない。不妊治療の助成金を調べる事だって楽しい。それに、不妊治療だと申請するだけでブライダルチェック がタダで受けられるのだと言う。世の中知らない事がまだまだ沢山ある。結婚の色々、アメリカでは当たり前のように行われてるプリマリタルカウンセリングについてもお互いに本を読んで勉強して感想会なんてしてる。これは大学院の時によくゼミでやったんだよねって、周ちゃんが楽しそうに話してた。司会進行は周ちゃんで本の時系列に沿って、個人的な意見と一般的な意見を一緒に考えてみる。こんな体験は初めて。元夫の時は結婚をする時にお金の事も、未来の事も、子供の事も、何も話さなかった。何となく同棲をしている時から色々が決まっていって、気づいたら私がひとりで全てをやってた。きっと彼はつまらなかったろう。私がどんどんひとりで色々をやってしまう事が不甲斐なかっただろう。いつも私に甘えてばかりいるのはそんな理由だったのかもしれない。私が一つでも不安を投げ出したら拾ってくれたのかな。今となってはもうわからない。

2回目の結婚。知ってることも沢山あるけど、初めてのことも沢山ある。その初めては、とにかく楽しいって感じていること。こないだ皆んなでキムチを漬けたのだけどそういう楽しさに似てる。同じ場所で一緒に作ってる感じ。

1月1日

Journal 01.1,2022

午前に実家から帰って色々と作業を終わらせる。結局、年賀状は未だ大晦日に途中でやめたままに家を出る。隣駅の友人宅でおせちを食べる約束をしてる。だらだらとおせちと一緒にビールを飲んだ。帰りは今むと途中まで一緒。「本当に良かったね。おめでとう。」別れ際に今むが言った。

周ちゃんとの結婚の事を今日初めて近所の子達に伝えた。昨年、私が大変だった時に、たわいも無い何でも無いような時間を一緒に過ごしてくれた友人。今むは「何してる?」結婚していないし、彼女もいないし、昼でも夜でも気軽に誘える友達のひとりだった。一番最後に会ったのは、鎌倉に海を見に行った時だったかな。私達は海友達でもある。お互いに夏でも冬でもひとりで海に行ってしまうくらいに海が好き。私の報告を聞いて、みんな驚いてた。だけど喜んでた。近所の友人に過去の色々を話してない。誰も特に聞いてこないし、話したくなかったから話さなかった。離婚が決まってからの1年。すごく世話になったと思う。日常を沢山くれた友達。ありがとう。寂しいね。そんな話をして帰宅した。今むは来月にみどり荘で展示をするのだそう。もしかしたら、東京で会うのはそれが最後になるかもしれない。

夜は周ちゃんと電話。二日ぶりの周ちゃん。ちょっと時間があくだけで新鮮な気持ちになる。ああ、この人が周ちゃんだってまじまじと画面に映る周ちゃんを見てしまう。今日はベガスへ行くのだそう。明日はL.Aで私の姉と会う。

12月31日

Journal 31.12,2021

仕事、大掃除、年賀状。朝から息をつく暇なく家を走り回ってる。ガトーショコラが食べたい。ずっしりしたやつをアメリカンコーヒーと。近所の神社に今年の御守を返しに行って、来年の御守を買った。来年は勝と書かれた御守にした。ゲッターズ飯田さんの占いで私は来年は欲しい物全部を取りにいく年なんだそう。えー!そんなに要らないよ。一つで十分〜って思ったけど、遠慮は不運、禁物!みたいな事も書いてあったので、ではでは勝ち戦を楽しもうと、勝にした。だけど、何に勝つのだろうか。どんな勝利にせよ、圧勝して、敗者にお見事!と言われる様な誰もが清々しい気持ちになる勝利を納めたい。誰も不幸にならない勝利がいい。

年賀状に夢中になっていたら出発の時間。慌ててコートを羽織ってテコを鞄に入れて駅まで走る。電車は目の前で去って行った。千葉に着いたのは18時。母が改札まで迎えに来てくれた。あれから一切連絡しなかったから、ちょっとだけ久しぶりの母。周ちゃんとの結婚は反対!って怒ってたけど、どうやらこの2週間くらいで大分落ち着いたらしい。気分の上がり下がりが極端に早いのは母譲りかもしれない。母はケロッとしてた。蟹を食べて、麦酒を飲んで、おせちを食べて。最高な大晦日。父はいつも通り何も聞いてこない。ひたすら飲んでる。「ママとパパは会うのいつでも大丈夫だから。」「わかった。」やっぱりもう母の中では済んだ事らしい。とりあえず良かった。

食後にケーキを食べてお茶を飲んで布団に入った。カウントダウンはしない。お腹が一杯で眠いから。わざわざ頑張って起きていなくても、目が覚めたら勝手に新年がやってきてくれるもの。そんな楽な事はない。有り難くお布団の中で眠りについた。申し分ないくらいの最高な大晦日。

寝る前に布団の中で手帳を開いてみる。この1年の毎日がぎっしりと詰まっていた。春くらいまでは、日々、今日は何とか乗り越えられた、とか。今日はトラウマがきつい、とか。詳細に日々が記されてる。初めは300%苦しかったけど、ちょっとずつ、ほんとにちょっとずつ、その割合が変化してる。大丈夫。とか、無理をしない。きっと大丈夫な日が来る。と、祈りみたいな言葉も手帳のあちこちに転がっていた。嫌な事や離れたい人についてもよく書かれていて、過去の私みたいな考えや生き方をする友人と距離をとるように努めてる様だった。それは、相手がどうではなくて、写し鏡の様に見えるみたいで、とにかく苦しんでいた。果てしなく長かった1年をあっという間に読み切る。さぁ、今年は終わりだ。寝よう。

来年はしたい事が沢山ある。ようやく走れるようになっていつでもどこまでも行けそうなくらいピンピンに心身共に元気。まず、心理学を大学とかで勉強してみたい。それに、写真集も出したい。好きな先生の料理本の写真も撮りたい。映像もどんどん撮りたいし、昨年ちょこっとやってみた映像監督だとか、フォトディレクションも堂々とやってみたい。周ちゃんにそっくりな男の子を産んでみたいし、免許を取って白のジムニーをブイブイ乗り回したい。新居は今よりもずっと素敵な家じゃなきゃ嫌だし、横浜小宝の蒸し器を買ってマーラーカオを作りたいし、料理家の有元さんの揚げ物用のお鍋で揚げ物上手にもなりたい。日記も毎日ちゃんと続けたいし、書くような仕事もやってみたい。そして、お尻もキュッと可愛い感じに上げたい。夢を見るのは自由で楽しい!どんどん楽しんで行こう。

今年は沢山の人にお世話になった。家族だけじゃない、友人も仕事仲間も先輩も。有難い。有難う。新年はどんどんお礼をしていこうと思う。私に出来るお礼ってなんだろう。クッキーでも焼いて会う度に配る事かな。新年の抱負は勝ち戦とお礼にしよう!

チーズバナナバターパンケーキ

Journal 30.12,2021

朝食はパンケーキ。バタバタと食事をして、仕事。あっという間に昼が過ぎて出かける時間。今日は後藤さんと後藤さんの彼のマサくんと忘年会。忘年会の前に後藤さん家の近所にある銭湯に今年最後のサウナに入りに行った。年末は1年を振り返ってゆっくりと過ごしたかったけど、全然そんな時間が無い。錦糸町の街を歩きながら何だか頬を通る風に思い出した。ああ、昨年の今頃はすごく怖かったな。離婚届を出したのは12月4日。もう元夫はいないのに、だからもう酷い事も起きない筈なのに、毎日の何処かがひんやりとし続けた日々。あの背筋が凍る感じや、胸のざわつき。久しぶりに思い出した。私はきっとこれからまた色々を忘れる。何だか周ちゃんに沢山の我儘を言ってしまいそうな気がした。この生活がやってくるまでは本当に長い道のりだったけれど、今が始まったらあたり一面は今一色になる。忘れない方がいい。これから新しい日々がどんどん温かい場所になっても、周ちゃんへの感謝を忘れないようにしよう。

それに、結婚はするけど、他人のままにしておきたい。一つになりたいじゃなくて、側にいてくれたら嬉しい。そんな関係でいたい。上手くいくか分からないけれど、私は今のままで彼とは交わりたく無い。もう誰かを傷つけることも傷つけられることも、同じ鍋の中でごった混ぜになって不味い何かになる必要なんてない気がしてる。大切にしたい。だから、別々でいい。

後藤さんの家に着いたのは17時過ぎ。後藤さんは色々とご飯を作って待っててくれた。私はキムチと焼プリンを作って、後は蒲鉾を持って行った。乾杯はビール。目を見合わせて笑った。かける言葉が多すぎるから、お互いに笑うしか無かったんだと思う。エベレスト登頂から帰還した有志みたいに生きてる今に歓喜。そんな感じだった。生きてて良かった。本当に良かった。私達は生きてる。あんなに酷い事があっても、今は笑ってる。

マサくんはお父さんが交通事故に遭って今日は来れなくなったけど、オンラインで参加。何だか面白い感じの忘年会。後藤さんが1時間並んで買ってくれたというマグロとキムチの和え物は絶品だった。ワインも2本目。結構飲んでる。後藤さんは顔が真っ赤でマサくんに飲み過ぎだって笑われてた。幸せだな。本当に幸せ。ああ酔っ払ったな。

帰ってお風呂を出たところで周ちゃんと電話した。周ちゃんは今日からまたロードトリップが始まるんだそう。後藤さんにデニムを4本貰ったことや、プリンを焼いたこと、新年会は4人でしたいとか、はしゃいで話してたと思う。今日、後藤さんと過ごせて良かった。明日で今年が終わる。長い長い1年がようやく終わる。何だか今日は言葉が出て来ない。どんな気持ちがするのかも上手にわからない。ただ、嬉しい。

ラーメン

Journal 26.12,2021

朝から代々木上原のカフェでヤスコチャンとプロダクトのスチールとムービーの撮影。終わって直ぐに浅草橋で編集成田さんと撮影。そしてお茶をしながら恋の話を散々して帰宅。成田さんにモテ期到来中。というわけで周ちゃんのトレンディなキスの仕方について伝授した。既に時間は20時を過ぎてる。仕事が日に日に溜まっていって繰越が繰越を呼んでる。まずい。だけど今日も楽しかったな。周ちゃんからデンバーに向かうと連絡が入った。

ホタテとねぎのドリア

Journal 25.12,2021

思いの外今日は二日酔いじゃなかった。23時半を過ぎる頃、もうすぐワインを飲みきりそうな所でハッとしてやめたのがきっと良かった。今日は昼くらいまでベッドにへばりついていようと決めてる。午後過ぎからまた仕事。だから、それまでは200%私の時間だ。何だか最近予定が詰まって良くない。楽しいのはいい事だけど、もっと暇でないと困る。最近、歩く速度が早い。人に当たる回数も増えたような。ちょっと時間の見直しが必要かな。暇を増やさなきゃ。忙しさは大事なものを見失ってしまうから危ない危ない。

今朝は周ちゃんとは電話はしなかった。代わりに夜のマンハッタンを歩いてる映像が送られてきた。周ちゃんの兄ちゃんはマンハッタンに住んでて、何か事業をしているらしい。奥さんは国連の何かで働いてると聞いた。どんな生活なんだろうか。周ちゃんと兄ちゃんは似てるらしいけど、兄ちゃんの写真をLINEで見た時に余りにイケメンで目が飛び出ちゃうかと思った。周ちゃんをトレンディーにした感じの兄ちゃん。私の携帯にしっかりと写真を保存してる。今夜は3人でディナーへ行くと言ってた。いいな。NYでトレンディーな兄ちゃんとディナー。私もむちゃくちゃお洒落してくっついて行きたい。想像するだけで鼻血が出そう。

今日は周ちゃんからは連絡が無い。何だかちょっとだけ寂しい。おかしなもので、一人が楽しくて大満喫しているのに、ふと寂しくなったりもする。24時間のうち3時間くらいかな。ふと思い出す。生身の周ちゃんに会えるのは来年の先の事。今日は氷見で撮影したフィルムの現像が上がってきた。その中に数カット周ちゃんが写ってた。コンタクトシートをデスクに貼ってみる。気分が上がるな。兄ちゃんのファンだけど、周ちゃんの方が100倍好き。昨日、LINEで周ちゃんが “会えなくて切ないね。” みたいな事を言ってて、切ないっていつの時代の感情だよ!って思ったけれど、今夜は晩酌していないからかな。私にも切なさがやってきたかもしれない。

帰ってきてとは思わない。私が行きたい。

朝食

Journal 22.12,2021

ご飯を二杯お代わりしてから、周ちゃんは成田へ向かった。久しぶりに家に一人でいる。一人でいる時間が最高に好き。この家も最高に好き。梃子との生活も最高に好き。勿論、周ちゃんも最高に好きだけど、ここでの暮らしが大好きだ。またしばらく一人暮らしが始まる。寂しさ半分、嬉しさ半分。

夜中に姉と電話した。母の “結婚は反対!” この件について話したかった。「私も正直心配はあるよ。何でそんなに結婚を焦るの?って思った。だけど、二人で決めたことで、よしみがいいと思うならいいんじゃない。ママは無視していいよ。それに、よしみが恋愛が出来た事にあっぱれじゃんってママに言ったよ。いいじゃん!いい事だよ!!だから堂々としていいんだよ。」

2時間くらいずっと話してた。離婚して半年を過ぎた頃から、段々と日常が戻ってきた。1年経った今は最高に幸せで、多分、人生で一番楽しいかもしれない。そんな時に周ちゃんに出会った。だから、そう。姉が言うように堂々としていい。離婚した事も全く後悔してないし、恥じても無い。母を悲しませたくないとも思うけれど、母が望むのは私の幸せであって、母の希望を聞く事じゃない。私は私の人生を生きればいい。この家に引っ越して来て、どんなに不安だったか。怖くて怖くて堪らなかった。世田谷通りを走るバンを見るだけで胸がバクバクして、夜中に玄関の外で物音がするだけで元夫が来たんじゃ無いかと背筋が凍った。未だに深夜のタクシーのドアを閉める音がすると、毎晩聞いていたあの音だったなと思い出すけど、もう怖く無い。少しずつ少しずつだった。母は知らない。私の色々を知ってる様で、周ちゃんに出会うまでどれだけ長い道のりだったのか、この1年がまるで10年くらいの道のりだった事なんて知らない。ただ街角で遭って恋に落ちた様な出会いじゃ無い。私は周ちゃんが好きだけど、それ以上に周ちゃんに出会えた事で世界が変わったことが彼との結婚に繋がってると思う。周ちゃんは私の人生に必要な人。

やっぱり私達のタイミングで結婚しよう。私の幸せは私が決めたい。

朝食
ご飯
豆腐ときのこのお味噌汁
めかぶ
ロースハムとマヨ
昆布のナンプラー佃煮
納豆卵
梅干しとキムチ
柚子の味噌漬と柚子胡椒

晩酌

Journal 21.12,2021

朝はフミエさんの料理を撮りにアトリエへ。今日は野菜のちらし寿司。最高に美味しかったな。お土産に立派な柚子を戴いた。そのまま急いで帰宅して別の機材を持って人形町へ。今日の現場は編集成田さんと一緒。周ちゃんはアメリカにいる家族と今回のアメリカ旅行の打ち合わせをしてから、PCRを受ける為に神保町へ向かった。

撮影が終わってから近くで周ちゃんとお茶をしようとなった。朝、写真を撮りながらフミエさんに聞いてみた。「あの、母に結婚の事を言ったら、まだ早い。反対って言われちゃって。父も。もし、フミエさんならどうしますか?」「えー!!意外だったね!だけど、親心を想うとちょっとわかるな。だけど、私なら強行突破かな!」フミエさんらしい明答だった。もし、うちの姉だったとしても、完全に強行突破だろう。何なら取っ組み合いの喧嘩をして、啖呵切って出て行く姿がありありと想像出来る。だけど、私には出来ない。「周ちゃんに言った?」「周ちゃんには言えません。だって婚約破棄の事があるから。もし言ったら、明日からのアメリカがずっとどんよりですよ。」「私なら話すかな。だって二人の問題だし。これから結婚するんだもの!」

私が私の人生を苦しめたのは元夫ではなくて私自身だと思ってる。助けてと言えない代わりに、私なら出来ると、どんどん地獄に向かって自らの足で降りて行った。心療内科の先生に何度も言われた。「どうして助けを求めなかったんですか?」警察にも言われた。「彼の事じゃなくて、あなたの話をして下さい。」私は苦しいとか、悲しいとか、私が辛いから助けて欲しいと言えなかった。「フミエさん。私、周ちゃんに親のこと、言おうと思います!」

周ちゃんが近代美術館の民芸展の図録を見ながら嬉しそうに話をしてる。だけど、殆どが耳に入ってこない。言おうかな、いや今日はやっぱりやめようかな。アメリカへ行って数日してからがいいかな。どうしよう。いや、言おう。いや、やめよう。学芸員という仕事はお喋りっていうお仕事な気もしてる。とにかく楽しそうに図録とのお喋りが止まらない周ちゃん。私は皿の横にある添え物みたい。時間だけが勝手に過ぎていく。

「周ちゃん。あの、ちょっと話したい事があって。哀しまないで聞いて。」1時間くらいかけて話した。両親が結婚に対してネガティブである事や、思っている以上に離婚のトラウマの中にいた事。それが周ちゃんとは関係がないけど、私達の未来に関係してしまう事。それから、本当は不安だったけどふみえさんのお陰で話せた事、それから、私が何でも一人で解決する人生はもう終わりにしたいって事も。後、何だか反対された現実に腹立たしい気持ちもあって、とても今の私は苛々している事も話した。「私は周ちゃんと絶対に結婚すると決めたし、絶対に何があっても悲しませないから。周ちゃんを私は幸せにするから。マジで。」自分でも驚く位に闘争心に燃えていた。「よしみが逆境に強いとは聞いてたけど、これなんだね。何だか凄く驚いたよ!あなたって人は。」目を丸くして感心してる。ほんの数日前まで、結婚がどうか順調に出来ますようにと願うような気持ちだったけれど、今となっては祈るとかじゃない。結婚に対するどうにも出来なかったべったりとした不安は怒りが綺麗さっぱりと吹っ飛ばしてしまった。周ちゃんは想像しているよりもずっと哀しんで無い。私の不安がったり怒ったりしながら話すヘンテコな感情の様を見ながら、何だかどっしりとそこに座って耳を傾けてくれている感じだった。「話してくれて有難う。」嬉しそうに言った。

店を出るともう夜。駅まで一緒に歩いて、さっき撮影の後に成田さんに聞いた先日の恋の話をした。朝方に飲んだ帰り道、恋が始まりそうな予感の中で気になっている女の子と手を繋ぐ。聞いてるだけでキュンキュンする話だった。どうやって手を繋いだのかを成田さんに聞いた通りに教えると、ニンマリしてた。そして地下鉄へ降りる出口でハグとキスをして、私は電車で世田谷の我が家へ、周ちゃんは自転車で所沢まで帰って行った。21時を過ぎる頃、ビールを飲みながら湯豆腐をつついてる時だった。周ちゃんからのLINEが入る。”家の鍵がない。よしみの持ってる鍵は家にある?” いつも入れてるスヌーピーの財布の中を覗いた。「え!!周ちゃん、ないよ。」直ぐに電話した。二つある筈の鍵が同時に失くなっちゃうなんて。「それから、実は自転車で転んじゃって。血が出てる。」「どこから?」「顔とか。」

電話をしながら周ちゃんはドラッグストアへ行き、絆創膏を買った。店員に「大丈夫ですか?」と聞かれてる音がする。結構に擦りむいているんだろう。想像するだけで心配が膨らんでいった。「幸いパスポート一式はここにある。最悪このまま行くよ。」

何だか凄く申し訳ない気持ちで一杯だ。何度か思った。半同棲を初めてから、お互いにお互いの生活が乱れて来ている。それは新しい生活の始まりだから仕方無いと言えばそうだけど、もう少し時間も距離もゆとりを持てば良かった。周ちゃんは私が知っている以上に真面目で、びっくりするくらい抜けてる所がある。私の様に塩梅で加減する事が出来ない。まっしぐらに私との新しい生活や新しい色々に没頭してたんだろう。自転車で顔から転んで、家の鍵を二つ無くして、明日からアメリカ。だけど、私が恐れてるよりもずっと彼は生きる力のある男な気がした。大丈夫。命さえあれば、アメリカでもどこでも行ける。私がする事は心配じゃなくって信じる事かもしれない。もう心配は過去に捨てよう。前の結婚はいい加減にしてくれって程に心配ばかりが毎日やってきたけど、もう私には心配はご無用。

晩酌
湯豆腐
フミエさんに戴いた柚子で作ったポン酢
栗原はるみさんのハルミダレ
サミットで買ったレバーの惣菜

湯葉鍋

Journal 17.12,2021

朝一番に鎌倉で撮影を終えて、午後はマリンバ奏者の千田くんのポートレートの撮影で渋谷へ。千田くんに会うのは2年ぶりくらい。嬉しいな。

千田くんは絵描きの野村さんに紹介して貰ってから仲良くなったけど、高校の親友ユウキの音楽学校の後輩だったという何とも縁を感じる出合いだった。久しぶりの千田くんは驚く程にスリム。「よしみさん、僕が痩せた理由知ってましたっけ?」千田くんは2年前、とんでもない彼氏に振られた失恋で20kg痩せたとの事。そのハードな哀しい失恋話をピザまんを食べながら聞いた。痩せすぎて病院を3軒回ったけど、結局ただの恋煩いだったのだそう。私は離婚と結婚の報告をした。「ああ、旦那さんと大変って言ってましたもんね。」全く覚えてない。コロナ前は平和だと思ってたけど、大変だったらしい。最近、たぶん、また記憶が消えていってる。あの頃の事を前の様にぱっと思い出せない。全く違う今日が過去の上にどんどん積み重なってゆくみたい。ずっとずっと下の方にあるから見えない。

久しぶりに色々とお喋りして、写真を撮って、マリンバを演奏して貰って、演奏させて貰って、何だかすごく楽しかった。

夜は藤原さんと藤原さんの彼氏のしんちゃん、周ちゃんの4人で湯葉鍋をした。村上美術のゆうやくんは仕事のトラブルか何かで来れなかった。しんちゃんには、ちょっと前に鎮座ドープネスさんの映像を撮らせて貰った時に大変お世話になった。改めて食卓を共にしてすっかりしんちゃんのファンになってしまった。しんちゃんは少し年上で昔俳優をやってたのだそう。その名残なのか、言葉だとか表情が独特。藤原さんの家族の食卓の事をあの食卓は眩しくてって話してたのがとても印象的で素敵な表現で何だかぐっと心に響いた。

二人は少しづつ、少しづつ、長い時間をかけて一緒に生きていく為の形を作ってる。何だか私と周ちゃんは本当にこれでいいのかなって不安になった。藤原さんは、私達の事を昔からの付き合いみたいで、出会ったばかりとは思えないって言ってたけど、嬉しいようなそうでも無いようなよくわからない気持ち。

周ちゃんは私を大切にしようとしてる。私もそうだけど、私達はどうして結婚するんだろう。理由は好きだからだとしても、好きだけど離婚した男もいた。ならば、私達はどうして一緒に生きたいんだろう。事実婚にするか、法的な結婚にするのか迷ってる。結婚って何なんだろう。どうして籍を入れたり入れなかったり、愛だけをただささやかに誓い合うだけじゃ駄目なんだろうか。ややこしい事をしてまで何を私達は望めばいいんだろう。

ハムエッグ

Journal 16.12,2021

朝から撮影だった。今日の現場は編集のアキチャンと一緒。一ヶ月ちょっと前、撮影が終わってランチをしてる時にアキチャンに気になる人がいるけど、まだちょっと誰かと恋をするのが怖い事を話した。「全然大丈夫だよ。」アキチャンのあの時の明るい表情をよく覚えてる。

友人だとか、誰か身の回りにいる大切な人の声は、時々大きく背中を押してくれる。アキチャンに結婚を報告すると喜んでくれた。

帰宅して周ちゃんにアキチャンの話をすると笑ってた。どうしてそんな話になったのかわからないけれど、もし、まだ過去に苦しんでるのなら力になりたいって言ってた。周ちゃんはもう過去に苦しむ事は無いんだろうか。聞いてもきっと未来の話しかしてくれないのはわかってる。だから、探らない。私も今だとか未来の話がしたい。

ちゃんちゃん焼き

Journal 15.12,2021

東京に帰ってから、また片耳が聞こえなくなった。だけど、周ちゃんが家に来てから、今朝も、耳からはいつもと同じ音が聞こえてる。そして、不思議なもので、一緒にいたいという気持ちは、いつしか離れたくないに変わってきている。

午前はデスクワークをして、午後に一本撮影があった。帰りの電車で編集の子から、彼氏がモラハラかもしれないんですって話を聞いた。モラハラ。私も、法的に言えばモラハラだった。妻の務めは、女の努めは、私に一択の人生を強いた。「俺はどっちでもいいから、離婚するかどうか好きにして。」久しぶりに帰宅した元夫からの言葉。そして、私達の最後。

「黙って。俺の好きにさせて。」どんなに酷い事があっても、彼の欲望は絶対的となり、それがミュージシャンとしての生き方として彼は肯定されてた。友人やファンが待ってるのだから、とにかく黙って。よく理由がわからなかったけど、私はただ家で帰りを待って、食事を作っていただけなのに、虐げられて行った。「言い返せないんです。」編集の子の言葉が全身を駆け巡る。わかる。正確に言うなら、言い返せさせてくれないんだよね。どんなに訴えても、そんな現実が間違ってる事がわかっていても、私の声は世界から当たり前の様に掻き消されていった。そして、それが愛だと愛だと愛だと、毎日の様に全身に纏わりついてきたら、いつしかそれが愛になってしまう。たった二人の出来事が私達の世界を作っていく。なぜだか、どうしてだか全然わからないのだけど、心に鋭利なものを当たり前の様に刺し続けられてるのに、自分が悪者になってる。そうして、言えなくなってゆく。全てが必然だった。

周ちゃんと食べる食卓は安心する。買い物にいき、何時間もかけて作った食事を、犬の食事の様に10分も経たずに貪られた皿の残りをつつくような事はもう無い。街でどんな女とすれ違ったら振り返るかなんて、どうでもいい話をしながら鍋の中をずっとつついていられる。

夕飯はちゃんちゃん焼だった。

12月13日

Journal 13.12,2021

1週間のレジデンスが昨日に終わって、フミエさんは東京へ、山若くんは富山市内へと宿を後にした。私は周ちゃんと観光をしてから帰る事にした。一昨日から右耳がまた聞こえずらくなったけど、周ちゃんに会ったら聞こえるようになっていた。片耳が聞こえなくなると不便が多い。半分が海の中にいるみたいになるから何だかぼんやりするし、単純に誰かの声が聞こえずらくなる。耳が聞こえなくなるのは、ストレスと緊張から血流が悪くなるからだと母が言ってた。母も仕事が忙しいとなるのだそう。だけど、どうして周ちゃんに会っただけでそれが治るんだろう。固まった何かが氷だとかチョコレートが溶けるみたいに世界の半分の音が帰ってきた。出会って一ヶ月。私が思っている以上に私のどこかは周ちゃんを必要としてるのかもしれない。

12月11日

Journal 11.12,2021

夜中に夢にうなされて目が覚めた。元夫との地獄な毎日がリプレイする夢と、子供の頃からよく見る海に溺れる夢。この1年、元夫の名前は一切口に出さなかった。その言葉だけで、全身が凍りついてしまうから。「あの男」「元夫」「彼」みたいに、一切シルエットが見えない言葉で呼んでいたのに、昨晩、ベッドで目を閉じた後、何故か名前が不意に出てきた。「菊地くん」って。きっとそれが悪かったんだと思う。

怖くて目が覚めたけど、その数時間後にやってきた今日はさっさとそれを消してくれた。早朝に三人で海を走って、虹を見た。海から山にかけてかかる大きな虹。あんなに大きな虹は久しぶり。今日はそれぞれが忙しい日。明日のイベントの準備や、私は宿の撮影がある。それから昼過ぎに旧友の谷くんと会う約束もしてる。谷くんと会うのは6、7年ぶり。最後に会ったのは、茨木かどこかでお菓子工場の映像の撮影の時にディレクションをお願いした時。背が低くて派手な顔をした女の子と5年くらい付き合った後に結婚して平塚の方に家を買い、その直後に離婚した。二人に何が起きたかわからないけど、彼女はいつも色々が突然な子だったから、きっと離婚も突然だったんじゃないかなと思った。数カ月後、10年くらい働いていた会社を呆気なくやめて富山へ帰った。彼女の一人でも出来てるといいな。出来てることを願って会った。

「離婚した当初は、明日からどうやって生きていけばいいのかわからなくなってさ。」当時の私は「世界には女なんて一杯いるんだから大丈夫だよ〜。」なんて、どこにでもあるような言葉をかけたけど、離婚をしてからあの言葉がどんなに下らなかったのかわかった。だから、何だか申し訳ない気持ちだったし、少しでも幸せでいてほしいと願ってた。

「嘘でしょ。聞いてないよ。」
薬指のシルバーの指輪を見せる谷くん。ニンマリとしてる。コロナ禍と年下の女性と再婚したのだそう。あの谷くんが?いつもノンビリしてて、ぼんやりしてて、誰にでも優しいけど、なんだか頼りなくて、「優しくしすぎたから逃げられたんだよ。」共通の友人のたろちゃんんが言った言葉を私も頷いてしまったけど、その谷くんが結婚だなんて。

「本当にありがたいよ。すごく感謝してる。それに、今がすごく幸せだよ。」
谷くん、目から涙が溢れそうだった。谷くんってこんなにしっかりしてたっけ?こんなに堂々と幸せについて語るような男だったっけ?今日の谷くんは私が知っている中で1番カッコよかった。身内だけでやったという結婚式の写真を隅々まで見せて貰って、とにかく心から祝福した。

「あのね、私、離婚したんだよ。」
「えー!そうかぁ。よっちゃん大変だって言ってたもんね。」
「うん。でね、結婚するの。」
「えー!!」

次に来る時は旦那さんと新居に泊まりに行くねと約束した。谷くんに会えて良かった。谷くんは自分の事のように私の離婚についても結婚についても話を聞いてくれた。夜は恒例の温泉。今日は氷見の秘湯。日本でも5本の指に入るという秘湯なのだそう。山奥にぽつんとある。今にもお化けが出てきそうな廃墟風の温泉。男湯と女湯は藁一つだけで仕切られていた。フミエさんと今日は湯船に浸かりながら結婚生活について話した。いつもみたいに笑って話してるうちにあっという間にのぼせた。

夕飯は海鮮鍋とささやんが作ってくれたイカリング。あまりに美味しくて、みんなで何度も美味しいを連呼。ささやんはニコニコ嬉しそうだった。可愛いな。山若くんはイカリングを独り占めしたそうだったけど、最後の一つを貰ってすごく喜んでた。夕飯の後、山若くんと二人で口笛のリサイタルショーを皆に披露。笑いすぎてお腹がよじれすぎて盲腸になりそうになったけど、なんであんなに笑ったんだろう。曲は久保田利伸さんのLA・LA・LA LOVE SONG。練習には何時間も費やした。あの曲ってやっぱり名曲だな。

12月10日

Journal 10.12,2021

朝5時過ぎに起きて作業を始めようとテーブルに着くと、山若くんが部屋から出てきた。「おはよう。よしみさん、お風呂に行こうよ!」未だ半分寝てるような顔だった。真っ暗の中、海の遠くに赤オレンジ色の光が燃えるように光ってる。時間は6時を過ぎていたけど、夜の中を車で海岸沿いを真っ直ぐと走った。今向かってるのは海が見える露天風呂のある温泉。

お風呂から帰るとフミエさんがご飯を炊いててくれた。昨日の夕飯の残りのつみれ汁と炊きたてのご飯に卵をかけて卵かけご飯。昨日二人が喫茶店のママと仲良くなって貰ってきたハバネロ味噌も美味しかった。今日も天気が良さそう。これから私とフミエさんはナッチャンと一緒にイベントで使う野菜の収穫をしにヨロさんの畑へ向かう。山若くんは「お皿は僕が洗うからいいよ。」って支度で忙しない私達の為に後片付けをしてくれた。山若くんから出る言葉はたいがい尖ってるけど、山若くんって人の中身には優しさがたっぷり詰まってる。この旅でより一層に山若くんが好きになった。

カメラを二台ぶら下げて撮るのはすごく疲れる。天気が最高だし、畑も最高だけど、案の定酔った。時々、カメラのズシリとした重さだとか、慣れない変な体勢が続くと気持ち悪くなる。撮るのをやめてナッチャンと車の中で休憩した。ナッチャンはあと2週間で赤ちゃんが産まれる。色々と私達の為に動いてくれるけど、なるべく安静をとってる。車の中でイベントへの不安な気持ちとかを少し聞いた。こんなに大きなお腹をして、今に不安が無い方が不思議だと思う。出来るだけ何でもいいから役に立ちたいって思った。

畑の収穫の後はみつおの山へ行った。前回の時はみつおさんに会えなかったけど、今日はみつおさんと近所のお友達が顔を真っ赤にして畑の中の小屋で宴会をしている最中にお会い出来た。同じ日本でこんなに伸び伸びと自由に生きてる方がいるって思うと、都会の日々の中での不意に歪みそうになる出来事に出会っても無かったことに出来そうな気がした。びっくりするくらい大きな白菜とカブを頂いて、疲労が溜まってる私とフミエさんの甘い小麦が食べたいっていうリクエストでナッチャンお薦めの焼き菓子屋さんへ寄って貰って宿へ戻った。

ベッドルームに午後の光が差し込んでる。この時間のこの部屋が好き。午後は陽だまりの中で作業をしよう。いつしかベッドに転がって眠っていた。起きると山若くんが帰ってきたみたいで午前に買ったケーキをフミエさんと食べようとしてる所だった。「ケーキを開けたら起きてきたー!」って二人が笑ってた。私はアラームが鳴ったから起きたんだよって何故か一生懸命に弁明。寝起きのケーキ、すごく美味しかったな。フミエさんは1Fのキッチンへ戻った。私は作業へ戻って、山若くんも仕事を始めた。

“夕焼けが綺麗ですよ〜。” 笹やんからグループラインが入る。「山若くん!夕陽が綺麗だってよ!」カメラを二台持って屋上へ走った。なんて綺麗なんだろう。溜息だけがでた。今頃、みんなこの夕陽を見てるのかな。ナッチャン、フミエさんの顔が浮かんだ。私はこの人達が本当に好きだ。食卓を共にして同じ寝床で暮らしを共にする。宿を営む笹やんとナッチャン。滞在メンバーである料理家のフミエさん、編集者の山若くん、そして私。富山へ来る前は初めてのシェフインレジデンスでの共同生活だとか色々に少し不安だったけど、すっかりと気に入った。いや、どっぷりと愛してる。日常の中にはこんなにも色々な物が詰まってるんだって。

夕焼けが綺麗ですよって、すごく素敵な言葉だな。日々を愛で出した私はきっと東京へ帰ったら寂しさで一杯になるんだと思う。後2日。レジデンスの最終日は周ちゃんが東京からやってくる。

12月9日

Journal 09.12,2021

今日は朝からカタログの撮影。夕方に皆んなで合流して源泉掛け流しの温泉に行った。岩がゴツゴツした温泉。煙がもくもくとしていて、最高に気持ちがいい。いつもの通り私が一番最後に休憩所へ行くと、ぼーっとテレビを見る山若くんは完全に魂が抜かれてしまったみたいな顔だった。

シェフインレジデンス4日目。楽しいばっかりが一日をあっという間に満たしていく。

12月8日

Journal 08.12,2021

朝食は昨日山若君が買ってきてくれたパンと人参の葉っぱのサラダとバナナ。食後にコーヒー。それから、山若君に結婚の報告をした。会って直ぐに話したかったけど、何だかんだと3日経ってしまった。山若くんは周ちゃんと付き合った報告をした時に「そいつはSEXが絶対に変態だから!」と勝手に断言してたけど、その変態男と私は結婚をする。山若くんは思ったより驚いていなかった。「おめでとう。」え?なんで。優しすぎる声のトーンに絶対なにかあるに違いないと少し警戒したけど結局なにも無かった。8時過ぎまでダラダラと3人でお喋りをしてから温泉へ向かった。フミエさんも山若くんも大好きだ。3人で食べる朝食が楽しくて仕方が無い。食卓を囲んでコーヒーを啜ってるだけなのにどうしてこんなに楽しいんだろう。また明日も同じ食卓が囲めるんだと想像するだけで私の隅々が満たされてしまいそうになる。

午後は麹屋さんへ行って、その後にイベントの食材用に豆腐屋さんに行き、定食屋でラーメンとクリームコロッケという高校生が食べるようなランチを食べて、そのまま商店街を歩いた。商店街は半分以上やってない。その中にポツンと大きな魚屋さんがあった。小さくて可愛いお婆ちゃんが店番をしてる。夕飯の魚を見ていると、お婆ちゃんが話しかけてきた。旦那さんを亡くして、息子夫婦と一緒に魚屋を営んでいるのだそう。このビルに一人で住んでいて、ビルの屋上から見る立山連峰の景色を朝一番に見るのがとにかく幸せなんだとか。

温泉から帰って、私とフミエさんは宿のキッチンで笹やんとなっちゃんと四人で味噌びらきを始めた。越中味噌は麹の量が多い。塩分が強く、ベチャッとしたのも特徴。HOUSEHOLDで作った越中味噌以外に、近所の方が信頼してるという坂本麹屋さんのお味噌、なっちゃんがいつも食べてるという味噌、ヨロさんに頂いた3年と10年味噌の食べ比べをした。同じ越中味噌でもそれぞれに特徴がある。まさに研究してる感じで面白かった。

なっちゃんは笹やんが大好き。いつも、「笹やん大好きだよ。」って、みんなの前だって豪快に甘える姿が可愛くて仕方がない。なっちゃんの愛が大きくて、ただ傍観してる私達のハートにまで火がついてしまいそうになる。夕飯の支度をしてる時になっちゃんの知ってる愛の術を教えて欲しいってお願いしてみると、「好きって思った時は言い続けて下さい。」って。好きって言葉は沢山言ったら減っちゃうもんだと思ってた。それに、一杯言ったら勿体無い気もしてた。だけど、言い続けていいんだ。今日から私もそうしよう。なっちゃんは私にとっての愛の先生だから、なっちゃんの言う通りにしよう。周ちゃんが好きだって思ったら、好きだって言おう。愛ってきっとそういうものなのかもしれない。好きは感情なのだからコミュニケーションみたいにキャッチボールしなくてもいいんだ。溢れたら溢れっぱなし、別に止めなくてもいい。拭かなくてもいい。

夕飯は、商店街の何でも屋みたいなお店で買ってきた、べっこう、かぶらずし、魚屋で魚のすり身と頂いた大学芋、柚子の味噌漬け、菊芋の金平、ゆば、ホタルイカの沖漬け、海老と昆布の珍味とご飯とお味噌汁。今日も最高にハッピーな食卓だった。ありがとう。

12月7日

Journal 07.12,2021

今日から雨が続くらしい。朝食はフミエさんが沖縄で買ってきてくれた宗像堂のパン。そのまま食べても美味しいし、焼いても美味しかった。山若くんはスナックへ行くと張り切って出かけ、私とフミエさんはなっちゃんと一緒に車でのろさんの畑へ向かった。野菜を収穫しながら畑を案内してもらって、ご自宅で味噌を味見したりしながら色々な話を聞いた。のろさんは何度も「楽しい。」と言ってた。それに、ふみえさんのファンだったらしく、ふみえさんに会う今日をとても楽しみにしていたのだとか。午後は柿田水産へ行き、そこでも色々とお話を聞き、お父さんが作った味噌汁を頂いた。

何だかすごく疲れた。海がずっと撮りたいのだけど、海を静かに見たいのだけど、中々チャンスがやってこない。あっという間に夜だ。今夜は私とフミエさんと山若くんの三人だけの夕飯。ご飯はなっちゃんが炊いてきてくれた。今日の献立は、田作り、里芋の煮物、ホタルイカの沖漬け、アジのたたき、人参の茎やカブの葉の炒め物、人参の葉っぱのサラダ、なめこのお味噌汁、ご飯、ビール、日本酒。お腹がはちきれそう。

昨晩から周ちゃんのアパートには、数日後にアメリカの家族の所へ行くお母さんが滞在してる。周ちゃんから電話が来たのはお母さんとの夕飯が終わってから。電話を切ったのは12時過ぎ。結構長いこと電話をした。何だかすごく疲れた。ふみえさんと山若くんはとっくに寝てる。

「僕はあなたがどうしたら幸せになれるかをいつも考えてるんだよ?」
「そんな事、私だって考えてるよ。」

何だかアホくさい会話だった。周ちゃんは遠距離恋愛をしていた彼女と2年前に別れた。理由は婚約破棄。愛しているから別れを選んだと聞いたけど、今日は彼女の話をしていたと思う。だから、しばらく黙って聞くしか無かった。着火したのは私。「愛は時として物理的距離が特効薬になるんだよ。」投げた言葉の打ちどころが悪かった。わかってるよ。私だって、愛の為に別れたのだから。絶対に、絶対に離婚なんて選びたくなかったけど、愛していたから別れた。言い方を変えるのなら、私を愛してあげるために別れた。

あれから私は私の事ばかりを考えてる。自分の事をご機嫌にすることで精一杯だ。その一つの方法論として別居婚も考えていたほどだし。だって、まだわからないんだよ。周ちゃんを愛していきたいとは思ってるけれど、どう幸せにしたいかなんてわからない。

鍋焼き饂飩

郷土料理, Journal 05.12,2021

夕飯は宿の直ぐ側にある三木さんの饂飩屋さんに行った。笹やんさんとナッチャンが行きつけなんだそう。人生一くらいに最高の饂飩屋さんだったな。途中で出してくれたサワラの炙り焼きも、ちょっと飲んでみてと出された日本酒も美味しかった。あとデザートの林檎も食後のウィンナーコーヒーも最高だった。

周ちゃんから妹に結婚の事を話したよと報告が入り、私も兄にLINEしたのが朝の8時。新幹線に乗る頃には周ちゃんの色々を兄に話し終わり、ホッとして座席に座った。あれだけ私の離婚で苦労をかけた兄にどう結婚を切り出していいか迷っていたけど、喜んでくれて本当に良かった。調子に乗って姉にもLINE。”話がある。” メッセージを送ると直ぐに電話が掛かってきた。L.Aは夕方。「何か仕事で大きな事があったんでしょ?」「フランスの仕事が決まってフランスに住むとか?」「絶対に仕事だって事は分かってるんだよ!」私以上に私の事で悲しんだ姉。半径1m以内に男性が近づいてくる事も許さないだろうし、男性不信はもうこの先ずっと払拭出来ないと信じてる。ましてや結婚だなんて。電話を切ってから姉からLINEが入った。”嬉しくて泣いたよ。昨日はニコの友達と飲み明かして二日酔いなんだけど、今日も祝杯する!時間じゃない。ニコも出会って直ぐに結婚しようって言ったもの。カズとは10年一緒だったけど結婚しなかった。よしみが幸せならいいよ。”

夜、周ちゃんと電話して、ずっとモヤモヤした。何だか苛々もした。この気持ちって何だろう。周ちゃんの妹に話して、私の兄や姉に話して、兄とは東京で、姉とは正月にL.Aで会う約束をして、家族に結婚を報告したらぞわぞわしてきた。結婚については二人でずっと話していたのに、何だか結婚という形がどんどん私達の外壁みたいに組み立てられていく感じがして怖くなった。すごく会いたいのに気分が悪い。

電話を切って、ちょっと涙が出た。私、本当に結婚出来るのかな。結婚するのかな。パリのまゆみちゃんからLINEが入る。”オミクロンで帰国が難しいかも。” 悲しくて泣いたって内容だった。だけど、大好きなミュージュシャンの小袋 成彬さんに街で偶然会って、その後にまたレストランで会ってハグして貰ったっていう写真を嬉しそうに送ってくれて、何だか何でだろう気持ちが安らいだ。あ、分かった。私、不安なんだ。過去の結婚と同じ様な事を進めていくうちに、過去が今を邪魔する。元夫との思い出が所々やってきては去っていく。だけど、私が今しているのは周ちゃんとの結婚だ。

周ちゃんに不安だってLINEした。ひつこく周ちゃんには不安が無いのかを聞いた。周ちゃんも本当は不安だって。自分が病気になったり、仕事が出来なくなったりしたらどうしようって不安があるって。だけど、私が不安なのはそうゆうのじゃない。私が不安なのは、お互いを傷つけあってしまったり、優しく出来なくなってしまう日が来ないか。怖いのはそれだけ。もう二度とそんな日を見たくない。絶対に見たくない。

“楽しい事は二人分 悲しい事は半分という先人の教えに学ぼう。” 周ちゃんからのLINE。どうか、お願いだから話して欲しい。周ちゃんは問題があっても自分で解決したいって言うけど、教えて欲しい。私の悲しみですら見つけるのに困難なのに、誰かの苦しみだなんて簡単には見つからない。もう私だって全てを一人で抱えたく無い。だから、教えて欲しい。お互いのそれを半分ずつ交換したい。

色々な何かが、過去も今も未来もが混乱しながら進んでる。だけど、大丈夫。きっと大丈夫。

汁なし麺

Journal 03.12,2021

出張の準備であっという間に夕方になった。汁なし麺をささっと食べて六本木へ。今日は編集のリリさんとのお仕事。食べ過ぎた。お腹がパンパンに張ってる。

スタジオに入ると沢山の人。あー嫌だな。この人数はキャパシティオーバーだ。前の撮影が押して、少し待ってから撮影が始まった。あっという間に終えて帰宅。帰り道はリリさんとずっとお喋りした。楽しかったな。本当にこういう時間が好き。何だか、最近すごく写真が楽しい。今までも大好きだったけど、もっともっと好きになった。夜の撮影は嫌いだったけど、夜の撮影も好きになった。ぼんやりと今日の余韻に浸りながら帰るのが心地いいって事も覚えた。

時間が私だけのものになったら、私のご機嫌がどんどん増殖していくのがわかる。本当にまた結婚しても大丈夫だろうか。周ちゃんが大好きだけど、家族も欲しいけど、私の時間はきちんと私の側にいてくれるだろうか。無理矢理にかさぶたを剥がすみたいに、治らない傷が日常になるような日は絶対に来ないって言えるのだろうか。

お風呂に入ってベッドルームへ向かう廊下で明日出す予定のゴミ袋を見て変なことを思い出した。私、あの人が部屋にしたオシッコを何回片付けたんだろう。こんな事、周ちゃんが聞いたらどう思うかな。嫌だ。元夫が酔っ払って部屋でオシッコをするのが癖になった時期があった。何度片付けたんだろう。テコの犬用のトイレシートは吸水力があるからよく吸い取ってくれた。嗚咽しながら深夜に一人で片付けて、手を洗って、冷たくなった身体でベッドへ入る。隣でジャケットを着たままの男が酒気を部屋中に撒き散らしながら大きなイビキをかいてる。

彼だって優しいところは沢山あった。だけど、いつからわからなくなっちゃったんだろう。朝起きて、甘えてくる彼にいつも安堵した。この人は変われる。僕は弱いからっていう口癖も彼の努力の様に見えたし、私が出来る事はたった一つ。「君の為に変わる。だから僕を信じて。」と言う彼の言葉を信じる事だけ。

愛っていうのは一体なんなんだろう。信じても叶わないし、頑張れば頑張るほどに孤独になってく。先週の金曜日に久しぶりにカウセリングを受けた。私の近況や変化した色々を聞いたカウンセラーさんがすごく驚いてた。「ラジオをやってるのだけど、良かったらよしみさんの話をしてもいい?」

その日は愛だとか、結婚についての話をした。色々な形があるよね。私のそれは何だろう。「結婚とは、相手も自分も幸せにするものでしょうか。」自信なさげに聞くと、カウンセラーさんが言った。「前にあなたが言ってた事ですね。」お互いを知り続ける。それが対話に繋がる。それには、自分も前を向く事。

周ちゃんといると、周ちゃんといる時間以外も楽しい。仕事も写真も楽しい。褒められたり、応援して貰うのも嬉しい。周ちゃんの仕事の話を聞くのも楽しいし、フィールドワークから帰って、嬉しそうに話す顔を見てるだけで陽だまりの中で全身が緩んじゃうような気持ちになる。だけど、沢山の時間を一緒に過ごしたいけど、私の時間も、写真も仕事も、友達との時間も、限りなく削りたくない。したい事も沢山あるし、デートに使う時間はきっと20%くらいが限界。だから、毎晩一緒に寝れて、朝晩の食卓を囲めたら、十二分に幸せな結婚になると思う。カウンセラーさんが言ってた私の言う結婚はそうゆう事なのかな。一年後、私達はどんな暮らしを送ってるんだろう。

手巻き寿司

Journal 26.11,2021

週末に大好きなNYのジュエリー作家のオーダ会を青山やってると知ったのは数日前。年に数回のオーダ会がこのタイミングだなんて何とも言えない。「見に行ってみる?」と、周ちゃん。結婚が初めての周ちゃん。2回目の私。指輪の前に立って、結婚がどんなものなのかを一緒に話が出来たらいいなって。目の前の景色を彼はどう感じるのかが知りたかった。

1回目の結婚の時は、私は恵比寿のジュエリーショップで指輪を、元夫はギターを結婚指輪の代わりに買った。その数ヶ月後にギターは家から姿を消し、1年後に二つ目の結婚指輪を買う事となった。お酒の色々や結婚を隠す元夫への怒りが爆発した時だった。新宿伊勢丹でSHIHARAの指輪を購入。結局、指輪は1週間で何処かに放置されて、私はその指輪を救済。右手に元夫の指輪を。左手に私の指輪を2つつけた。これが私達の愛の形。全て私が受容れたらいい。そう信じきっていた。

周ちゃんは薬指に色々なデザインの指輪をつけては外してを繰り返してる。学芸員という仕事だし、派手なのは避けたいとの事。黙々と選んでた。「周ちゃん、とりあえず一回ブレイクしない?」ジャイルの最上階のカフェで、私は抹茶ラテを周ちゃんはジンジャーエールを頼んだ。テラス席から見える秋の夕方の空は淡い青とサーモンピンクのグラデーションが重なって、ただのビルでさえ切なく見える。程良く賑わったテラスでは、ワインを傾けるカップルだとか、買い物帰りの女性とか、赤ちゃんを連れた女性が東京の空を見ながら気持ちよさそうにCOREDOビールを飲んでいた。
「周ちゃん、本当にいいの?」
「いいよ。だから買いに来たんじゃない。」
「周ちゃんは死なないよね?」

周ちゃんは私の変な質問にずっと笑ってた。そして、「今日の夕飯は手巻き寿司はどう?」と言った。誕生日に食べたいのは手巻き寿司がいいと聞いた事があった。彼にとって今日は特別な日なのかもな。だけど、そういうの、私は要らない。毎日が普通で、ただただ平凡で安全なだけでいい。今日が特別にならないで欲しい。もう大切なものを失うのは嫌。

「周ちゃん、お店に戻ろう。」指輪は2月半ばに出来上がる。

芋煮

Journal 18.10,2021

朝の5時からバタバタとやってたのが、もう夜。今日は流石に疲れがどんと来て、いつもの乗り過ごしも中々な酷さ。夕方、気づいたら中野のホームに停留中の車内でハッとした。ここ何処?って。水曜日は近所のみっちゃんと夕飯。それまで頑張ろう。最近、私の周りで幸せな話が多くてニヤニヤしてる。何だかじわじわと嬉しさがこみ上げてくる。

今日は寝よう。色々がぱんぱんて頭が破裂しそう。梃子の手術日も決まった。頑張るとかじゃなくって、色々やるしかないよね。