カテゴリー: Journal

11月5日

Journal 05.11,2023


今日は恵比寿で田村さんに会った。何年ぶりだろう。早朝から映像の編集をして、その合間に会った。ゆっくりと話したかったけれど、1時間だけお茶をして帰宅した。鈴木理作さんのワークショップで出会った田村さんは、あれから心理学の勉強を何年も続けていたのだそう。「私たち、好きなことが似てますね。」静かに言葉を選んで話してくれる、田村さんの話し方がやっぱり好きだなと思った。

田村さんは先日に大学を卒業して、今はナラティブセラピーの勉強をしてるのだとか。懐かしいし、話したいことが沢山あるのに、今日に限って咳が止まらなかった。また情報交換しましょうと言い、駅前で別れた。ハッセルで写真が撮りたいと言ってたけど、田村さんの写真は好きだから撮ってほしい。

とんぼ帰りで家に帰りまた夜まで映像の編集。終わったのは夜。そこからまた夜遅くまで試験勉強を始めた。なんだかんだと半年以上の時間をかけて作った映像の制作。ようやく終わったと思うと、なんだかとても気分がいい。映像はやっぱり大変な作業。とにかく時間がかかる。スチールとは比べものにならないくらい。だけど、悪いことばっかりじゃない。長い時間向き合っていると、想うことが多いし、考えることも多い。

苦労して育てた子供を扱ってるような感じかもしれない。だから、こうして終わってみて思うことは、やっぱりいい時間だったってこと。声をかけてくれた料理家の角田さんには感謝でいっぱいだ。それに、今回は周ちゃんにも色々と手伝ってもらったことも大きい。昔デザイナーの彼氏と一緒に仕事をした時は二度とやらないと思ったけれど、今回はとても楽しかった。周ちゃんの企画の考え方、進め方、アイデアの出し方、私の色々の汲み取り方、純粋に勉強になったし、仕事ってこうやって楽しむんだなって思った。

さあ、今日からまた思いっきり勉強しよう。あと、写真のポートフォリオも作らなきゃ。前進あるのみ。咳はまたぶり返してる。

寄せ鍋

Journal 04.11,2023

耳鼻科の薬がよく効いてる。日に日に体調がいい。だけど今日も時間がない。映像の編集、勉強、撮影データの現像。あっという間に夜。プールに行くはずだったけど、力尽きて行けなかった。

菊のお浸し

Journal 03.11,2023

誕生日に買った指輪が右手の中指にあることを目で確認する度に気分が少しあがる。昨日、撮影前に青山にできたばかりのsatomiの路面店で買った。

今年もあっという間にまた一つ歳をとってしまうんだろう。離婚を機に自分の人生を大切にしようと決め、毎年誕生日に買い始めた指輪は今年で3つ目。まだ、たったの3つ。

こんなに色々があったのにとも思うけれど、案外すんなり日々は流れてるし、ようやくスタート地点に立てたような気もする。石の上にも3年とゆうけど、地盤はしっかりとしてきた。

周ちゃんがお母さんに貰った菊をお浸しにしてくれた。

鰻重

Journal 02.11,2023


ひとりでワインでも飲もう。いや、けど咳が酷くてそれどころじゃないかな。とにかく仕事へ行こう。そう思って部屋を支度をしてると周ちゃんが部屋をノックした。

「俺はよしみが好きだから、一緒に誕生日を祝いたい。」そう言い放った周ちゃんに抱きしめられたら涙が溢れた。あれ、私って悲しかったんだっけ。胸はさらっとしてるのに、玉葱を切った時みたいに涙が勝手に頬をつたっていく。

「わかった。じゃあ18時に帰る。」「うん。」周ちゃんも私も仕事へ出かけた。我慢してた?いや、そういう感じじゃない。強がってるつもりもない。じゃあどうして泣いたんだろう。

夜は結婚記念日に行った鰻屋へ行った。鰻もそこそこ美味しいけど、この店で一番好きなのは、店の内装とBGMがないこと。高い天井。庭に広がる竹林。調度品はオーナーの趣味なのか、インテリアデザイナーのセンスなのか、古い民藝品が飾ってある。離れにあるトイレのお香の匂いもいい。洒落たスパイスだのハーブだのって匂いじゃなくて、シンプルに白檀の匂い。平日の夜は大体空いていて、今日も貸切状態だった。

昨日までの喧嘩が嘘みたいに、また平穏に戻った私たちは、白ワインを片手に沢山の鰻を食べた。今年の豊富は5つ。前は写真の話をよく聞いてきた周ちゃんだったけれど、最近は心理学の話を聞いてくる。私もだんだんと答えられるようになってきた。

11月1日

Journal 01.11,2023

なんだかやっぱり怒涛の10月を終えて11月。ぜんぜん息つく暇もないし、内科で処方してもらった薬が全然効かずに今日は朝から耳鼻科。先生は「ちょっとまずい」みたいな事を言って、たくさん薬を出してくれた。なんでこんなに忙しい時に体調が悪いんだと思うけれど、この色々は自分で選んだことだし、と、ここ最近はどう楽しむかの方が先決。ここから2月までは多分、本当にきっとやばい。だけど、ここをどうやるかで、大学の卒業も、仕事もかかっているような気がしてる。なんだろう、やばいのにわくわくしてる。

午後から1本撮影で千葉まで行った。久しぶりの乾さん。乾さんは私が結婚してた時に何度かご一緒していたから「きくち」だった私しか知らない。撮影したカレーを食べながら少しまえに転職したマガハの話をしてくれた。それから、「ずっとマガジンハウスの本読んでましたしね。」と言ってた。なんかいい言葉だなと思って聞いていた。私もそう。マガハと言えば、Oliveが一番の愛読書。だけど、マガハだけじゃない。雑誌がどういうわけかとにかく好きだった。毎月、毎月、何冊も買ったし、本屋に立ち読みしにいく時間も好きだった。渋谷のPARCOにあった地下の本屋なんて一時は毎日のように通った。

夜は周ちゃんとプールに行く予定だったけど、スーパー銭湯へ行った。なんとなく、一年の垢を落としたくなって、急遽提案して車で銭湯へ向かった。お風呂からあがってから、ここ数日気まずい周ちゃんに「この感じ、やめない?」と言うと、「頭ではわかってるけど、心が追いつかない」と返ってきた。どうやら私の言い方が悪いと主張しているけど、私にだって十分に言い分はある。けど、喧嘩なんてそんなもんだよなと思って、黙って聞くことにした。

明日は誕生日。誕生日前日にもめたり、もめごとを長引かせたり、面倒な女みたいなことをしないでくれと心の中で呟きながらも、いや、誰かの心のことを勝手に決めつけちゃいけないともう一人の自分が私に言い聞かせた。私は私で周ちゃんは周ちゃんだ。

それに、なんだか話を聞いていると、なるほどなと思うこともあった。周ちゃんは私を責めながら責められるのが苦手なんだと何度も言ってたけど、「私も責められるのは嫌いだし、周ちゃんは今私を責めてるよ。」と言いかけてはやめた。

子供の頃から威圧的な人や強い言葉を使う人が苦手で、そういう人から逃げるように生きてきた。理由はひとつ。小さい頃、散々姉に強く言われてきた。強迫的な言葉や態度、八つ当たり、無視。大好きな姉だったけれど、すごく怖かったのは大人になるまで続いていたし、今でもまだちょっと残っている。結局、その記憶がただ「怖い、怖い」と一人歩きをし続けてるだけなのかもしれない。周ちゃんにすごい剣幕で責められても、心は終始さらっとしていた。睨む周ちゃんから目をそらして気づいた。あ、私って、実を言うと怖い人に慣れてる。だって、数えきれないくらいにそういう経験をしてきてるんだもんなと冷静に考えていた。

帰りの車は黙ることにした。あなたにとっての今は今日しかないけど、私にだって同じ。だから、面倒な誕生日イブも面倒な誕生日も送りたくない。それだけ。私もわがままであなたもわがままなんだよな。けど、誰にとっても、今はハッピーであって欲しい。

10月22日

Journal 22.10,2023

結局、今日も咳であまりよく寝られなかった。「私が那須まで運転するから。」誰かといると、どんどん甘えていく、どんどん女みたいになっていく自分が最近嫌で仕方がなかった。「だって、よしみは昨日寝てないでしょ。薬も飲んでるし。」「大丈夫。」少し強がってるくらいの方が丁度いい。放っておいたって甘え出すのだし。

黒磯でざおーと落ち合って、チャウスでランチをして、私と周ちゃんは買い出しへ向かった。キャンプ場に着いたのは15時過ぎ。

1年ぶりに会ったざおうやガッちゃん、ことはちゃんは、昨年よりも一層に家族って感じだった。だけど、そう思ったら、私や周ちゃんもまた昨年よりずっと家族になってる気がした。

日をまたぐ前に寝袋に入って寝たけれど、結局、咳で寝たんだか寝てないんだかよくわからないままに朝が来て、朝方にひとりで散歩へ出かけた。辺りはまだ薄暗い。朝の空気を吸い込んだからか咳も止まった。まるで何かから開放されたかのように、辺りをどんどん歩き続けた。川へ行き、森林を歩き、また川辺へ。光の方へ。朝の方へとどんどん歩く。

帰りの車で周ちゃんとガッちゃんの話をした。「ガッちゃん。すてきだったね。剪定がおもしろいって話もよかったよね。」ガッちゃんは果物農家で働いてる。毎日畑へ出て、自然の中で働くことは大変なこともあるけど、それが楽しいって。話はいたってシンプルで清々しかった。

「なんか、自分の人生が恥ずかしいとまでは言わないけど、ガッちゃんの生き方とゆうか、。いい仕事だよね。」車を走らせる周ちゃんに言った。「うん。よしみもやってみたい?」「違う。そうゆう話じゃなくて。私もそうゆう人でありたいとゆうか、憧れたっていうか。」周ちゃんが大きく頷いて言った「人はどこかで諦めなきゃいけないんだよね。」「そう。」

周ちゃんは沢山の事を知ってる。博学だ。だけど、それがただ読んだだけの知ってるだけの生きてない言葉なことが多い気がして、そんな風にして食べ物の話をされると、無駄に腹がたつ。口先だけで情報をこねくり回して何が楽しいのだろうかと苛立つ。だけど、今日の言葉は余りにぴたりとはまっていた。

たぶん、周ちゃんは誰よりもずっと早く若い時に諦めることを知ったからかもしれない。家族の事で自分を犠牲にしなきゃいけなかった時間を送った日々がある。その時は、もう自分の人生は終わったと思った。と言ってたけど、今となってはいい経験だったとも言ってる。

私が諦めるようになったのは最近になってだ。離婚して、ああ、私は全てを失ったんだと思ったら、世界を受け入れるしかないのだとという事もわかった。「嫌だ」じゃなくて、そうなんだって。大体はもうどうにも出来ないことで出来ている世界に向かって、自分の思い通りに征服してやろうなんて思いながら生きるのは虚しい。だけど、そんな虚しさを沢山重ねて大人になっていくのだとも思う。夢はいい。だけど、夢は夢で、世界はだから世界だ。

いい時間だった。大切なものや大切にしたいこと、これから諦めていく世界のことを考えたりした。強くなろう。

10月18日

Journal 18.10,2023

咳が止まらない。周ちゃんは早朝に千葉へ向かった。まだ外は真っ暗で、わたしはもう一度ベッドへ潜った。最近は早朝の勉強はしてない。病院の先生に「寝なさい。」と言われたから。頑張ることは簡単だけど、頑張らないっていうのはちょっと難しい。月末まで忙しいのに、睡眠も削れない。完全に板挟み状態。

携帯なんて殆ど見ないのに、今日は一日中、周ちゃんから返ってこないメールを何度もチェックしてうんざりした。全部捨ててやろうかと思ったりもしたし、とにかく心が忙しくて苛々する。ここが東京なら、適当な夜の中に消えたい。公園でもどこでもいいから、冷えたビールを飲んで、全部なかったことにしたい。結婚も今も全部を全ての時間を。知らない人と話して二度と合わない人と笑ってバイバイして、また飲んで。

どうしたらこんなに真面目になってしまったものかと後悔するけど、あのまま適当に生きていたらと思うとゾッとする。気づけば、いい加減になれなくなる日がきて、思っている以上にかちこちになった。だから、せめて男くらいは適当に遊んでおくべきだったのに。滑り込むように結婚して、寂しくて1日中携帯がそばにある日が来るなんて。うざったいし疲れる。嫌な女。ダサい女。

星野源さんを聴きながら日記を書いてる。周ちゃんはまだ帰ってこない。昔、豪くんと一緒に住んでた時によく星野源を聞いてた。豪くんがかせきそーださんの事務所から帰ってくるまで。恵比寿の駅前のマンションで今は下の階に有名な火鍋屋がある。夜になると、よくベランダに座ってタバコを吸った。豪くんのことは朝から晩までとにかく大好きだった。

豪くんと数年前に会った時、どうして会ってくれたんだろうって思ったけれど、きっとちゃんとバイバイを言えなかったからだろう。いい男なのか、そうじゃないのかよくわからないけど、私は豪くんが考えてるほどあの日のことを想ってない。結局、サヨナラなんてそんなもんだし、だから、久しぶりに会おうだなんて言える。

周ちゃんとは恋愛せずに結婚したけど、もし、恋愛してたら結婚してなかったかもしれない。

夕飯

Journal 17.10,2023


周ちゃんとの久しぶりの夕飯。連日、周ちゃんは忙しくて帰りが遅い。昨日はたまたま私がいなかった。”夕飯はもう支度しない。” だの、なんだのって、酷いメールを沢山打ったくせに支度した。周ちゃんは、私も、終始よそよそしかった。「きのう何食べた?見てもいい?」「うん。」珍しくyoutubeなんかを流しながら黙々と食べた。

昨日は殆ど寝てない。寝れなかった。今夜は死んだように寝るかと思ったけど、周ちゃんの寝息が聞こえてもしばらく寝れなかった。少ししてから周ちゃんにくっついて寝た。

周ちゃんが仕事で帰りが遅くなると、このまま帰らないんじゃないかと思う。もしかしたら、女性と飲んでるんじゃないかなんて思う。前の夫は夫で、周ちゃんは周ちゃんだ。全然違うのに、そう思うことをやめられない。夜が長くなると不安になる症候群になってる。だけど、少し前では、もっと遅くまで遊んできてよと思っていた。

それに、。あんなに酷いことを言ったのは私だ。ある日、突然に爆弾を投下する女。よく耳にする話だし、女ってのはわからないよと言われる所以だろう。だけど、女である私も私のことがわからない。

10月14日

Journal 14.10,2023

“18時にラジオキッチンでお願いします。” 角田さんからメールが入ったのは午後。急いで読んでいた参考書をノートにまとめて、車でプールへ出かけた。最後に会ったのは夏の撮影。あれから何度もメールでやりとりをしているせいか、あまり久しぶりな感じがしなかった。

お店まで歩きながら話して、食事をしながら話した。角田さんはカボスサワーを私は冷えた白ワインを数杯おかわりして話は続いた。映像の話だったはずだけど、そもそもやっぱり角田さんとはいつも、物の原型、その物質みたいな話になる。わたしたちの全てはそもそも同じ成分で出来た仮面を被ったなにか。もうその上っ面みたいなのは面倒だし、そんなのはまたコロコロと季節みたいに変わるのだから、あなたの血は何色でそれがどこにどう通ってるのかの話をしましょうよ。みたいに、私には聞こえる。ちょっと変だけど、前の夫との会話に近い。夫としては最悪だったけれど、人間としてはとても魅力的な人だった。それは病気の特性の一つなのだけど、病が進行すると特に脳の回転が早くなったり、異常な動物的な嗅覚を現した。

プールで少し疲れた身体に染み渡るワインと角田さんの声。話を聞きながらぼんやりと思った。アートセラピーについて勉強しようか迷っていたけど、やっぱりやめて良かったって。これをやろうなんて決めるのはやめよう。不安だから答えを直ぐに見つけたくなって、身近なもので着地したがるのは人の性みたいなものなんじゃないか。けど、結局、こんなんじゃないと飽きるのは自分だ。せっかく、少し変わった業界で、角田さんのような素敵な大人に出会えるのだから、安心して泳いだらいいと思う。写真やって心理学やっての曖昧な先のなにかが、周ちゃんのよく言う、そのかけ合わせが面白いって場所にいつか出会える日が来るかもしれない。

帰りがけに角田さんと写真の話を少しした。こないだ撮った写真のことを褒めてくれた。別のライターさんと、いい写真だと話していたと言っていた。とても嬉しかったけれど、それ以上に、その写真や私の写真の撮り方について、ずばりと言い当てていて驚いた。

「私は、角田さんを見てたんです。」思わず言ってしまった。なんて事を言ってしまったんだと思ったけど、本当にそうだった。野菜が好きだ。20年くらいベジタリアンして体を壊すくらいに好きだ。vegan料理家の先生と本を作るくらいに好きだ。けど、畑に行くのは、角田さんを見たいからで、野菜を見に行っているというよりも、料理家の角田さんを追いかけて行った。角田さんが純粋に野菜が好きだと想う姿に胸を打たれたから。

自閉症スペクトラムは、人間的なコミュニケーション、人としての営みを働かせている機能に不具合がある脳の病。症状のひとつに、クレーン行動というのがある。それは、物を取りたい時に大人の手をもち、それをクレーンのように使って、物を取ろうとする行動。そこで見えている世界は、大人の手だけがぬぼっとあるらしく、人としての存在は見えない。手は温度のない、ただの物になる。仕事で料理を撮りまくっていると、時々似たように思うことがあった。皿だけがぬぼっと出てきて、一体これはどこからやってきたのか、誰が作ったのか見えない。ただ、流行ってるとか、人気だとかいうことだけが皿の上で光ってる。

料理写真を撮るのは好きだけど、そういう料理を撮ると寂しい気持ちになる。画面だけが、キマってる写真がどこまで語れるかなんて、正味1ヶ月が限界じゃないか、なんて意地悪く思ったりもする。昔のように、その頁を破いて壁に貼りたいなんて思う写真がすくなくなってしまったのはきっと、写真がただキマってるだけのものになったんじゃないかって。

駅に着くと、少し雨がふり始めていたけど歩いて帰った。楽しくて、少し飲みすぎた。だけど、よかった。まとまらない気持ちを日記に書いても結局まとまらない。四方八方から溢れていくだけ。それでいいや。

明日から忙しくなる。時間がぜんぜんない。

10月9日

Journal 09.10,2023


周ちゃんは祝日だけど出勤。ちょっとありがたい。あれもやらなきゃ、これもやらなきゃと時間に追われてる中での家事は辛い。一人暮らしだった時、こんなに家事って辛かったっけ?と思うくらいに億劫だ。

周ちゃんを車で駅まで送ってから、夜まで勉強した。昨日のこと、吐き出したらスッキリしたというか、自分でもわからない気持ちを肯定してもらって楽になったというか、驚くほどにあっけらかんとしてる。離婚後によく人に言われたけど、落ちるのもすごいけど上がるのも早いって。心はそのギャップにヒリヒリするけれど、物語のひとつのページを閉じたかのように過去の事になってる。

出来ることなら、外国にでも引っ越せたら話が早いんだと思う。そこで写真を撮ってもいいし、撮らなくてもいい。今、全く異なるふたつが私の中に流れてる。今までの世界が嫌いなわけじゃないし、寧ろ大好きだった。だから、寂しかったんだろう。「過去に戻りたい?」周ちゃんの言葉に返答は早かった。「そうは思ってない。」あれは強がりだったのか、いや違う。過去には感謝してるし、大好きな人が沢山いる。それは事実で間違ってない。

とにかく今は前だけを見よう。全部を考え出すとキリがないから、”煩悩”って書いて紙を引き出しに入れた。わからないことは考えない。全部、煩悩のせいにしてしまえ。今までじゃないところへ行こう。やったことがない事をやってみよう。会ったことがない人に会おう。もっともっと勉強しよう。

茄子のラザニア

Journal, 洋食 02.10,2023

周ちゃんの初出勤日。朝はなんだかソワソワしながら送り届けた。今夜はラザニアにしよう。冷凍庫にあった挽肉をキッチンに置いた。

朝の8時、朝陽がカーテンから差し込んで、テコはソファーで気持ちよさそうに寝てる。周ちゃんには申し訳ないけど、1人の朝がなんて最高なんだろうとミルク多めのカフェオレをすすった。ダイニングテーブルで日記を書いて、夕方までレポートをまとめた。明日は朝から撮影。レポートは17時までに出さなきゃいけないけど間に合うんだろうか。

ラザニアのミートソースはいつも通り甘め。砂糖を多めに入れると、少しひつこくなるけどコクがでていい。子供の頃に食べた味になる。

10月1日

Journal 01.10,2023

7月のハードな試験を終えてから駆け抜けるように暑い日々が過ぎ、念願だったバリでは青い海で泳ぎ、ようやくって感じで日常が帰ってきた気がした。ゆるゆるとクラゲのように何色だかどんな形だかわかんないようなままに夏は終わったけど、思ってた以上に人に会ったし、ストレスが溜まっていたんだろう、それなりにダラダラと過ごせた。そして、ホルモン治療に入らなかったことがきっと原因で体調はあまり良くなかった。そして、極め付けは細菌性胃腸炎。免疫力低下のせいで2週間近く苦しんだ。

人生において、こんなに体調が悪いことってあっただろうか。年齢の問題もあるかもしれないけど、生粋の健康オタクの私が、風邪だってまずひかない、昨年の健康診断がオールAだった私が、こんなにまで体調を崩すなんて。だけど、実際には身体のことよりも、前から降ってくる生きづらい日々にノックダウンされたのは心だ。

そして、体調不良の原因の一つが菜食だったからということもショックを受けた。否応なく、20年間続けたベジタリアンをやめた。肉食になったことで子供にピーマンや人参を騙し騙し食べさせるように、どうにかこうにかして肉を食べはじめた。これが思っていた以上に辛い。口にする度にうぇーと心で小さく叫ぶ。身体のためとは分かっていても、思っていないことをするというのはやっぱり苦しい。

今宵も肉をうぇーと思いながら食べていると、どんな話の流れからだったのか、周ちゃんが大学での勉強のことを褒めはじめた。夏は全然ダメだったし、体調も悪くてとにかく苦しかったと伝えると、「40歳を過ぎて大学へ行こうなんて思うだけですごいよ。」「え、思うだけで、勉強は全然できないよ。」「半年前はどうだった?」

半年前は4月。まだ大学に入学してほやほやだった。あの頃は、教科書を1日20頁くらい読まなきゃいけないのに、1頁読むのに1時間かかっていた。専門用語だけじゃない、普段聞いたこともないような日本語が山のようにやってきて、圧倒されっぱなしだった。出来る事と言えば、怯む身体をどうにかこうにか倒れないようにと踏ん張ることくらい。夏までの数ヶ月間の記憶がほとんどない。絶対に逃げない。全身の中でその言葉だけが山びこみたいにこだましていた。

周ちゃんは明日から新しい会社での仕事。学芸員という肩書では無くなるけれど、コミュニケーションデザインとか、アートと暮らし、地域、、。よくわからないけど楽しそうな仕事が始まる。今日一日、何度も「明日の支度しなきゃ。」と言ってた。緊張しているんだろう。周ちゃんのことだ、前日に支度を始めるなんてありえない。

「もっと自分を褒めてあげていいんだよ。」夕飯の最後に周ちゃんが言った言葉だ。周ちゃんは勉強の事となるといつもの1.25倍くらい目が真剣になる。今日もそうだった。それは周ちゃんが苦労してきたからだし、沢山勉強して、イレギュラーな道で学芸員になって、今度はずっとやりたかった仕事に就く。勉強が周ちゃんという人の人生を作ってきたからだろう。好きと消去法だけで生きてきた私とは大違いだ。

どうしてだろう、がむしゃらに走ることは出来るのに、自分を褒めてあげる?そんなの難しい。だけど、褒めてくれる人が隣にいるんだと思うと、今までとは違う感じがした。

頑張りたい。

炒飯

Journal 27.9,2023


「心理学と写真の両立をしようとするから難しいんじゃない。それは、出来ないんじゃなくて、やったことがないからなんだよ。」周ちゃんが作ってくれた炒飯がまだ熱々のままで口の中にいる。「うん、わかってる。そうだよね、そうなんだよね。」周ちゃんに言葉を返した。

「あのね、ちょっと悩みがあって。」昼食の途中で急に悩みを打ち明けた私に、周ちゃんは少し笑を浮かべた。私、悩みたいのかもしれない。言い訳したかったのかもしれない。周ちゃんの言葉もその優しい笑顔も、私の悩みではなくて私が求めてることを叶えてくれたようだった。考えてみれば、そりゃ周ちゃんが笑うわけだ。周ちゃんに「悩みがある。」と打ち明けたのは出会ってから10回や20回じゃきかない。

一昨日に今むに会って、少しだけ褒めてもらって嬉しくなった。だけど、ちょっと情けなくもなった。「よしみちゃんは勉強やっててすごいよ。」って。正直、私はぜんぜんすごくない。ここ最近は、全然上手く進んでない。それに、写真や映像を撮ることと、心理学を勉強することは、頭や心が別のところを使うみたいで、どうしてもどっちかに偏ってしまう。

どっちかが上手く進むと、どっちかは止まる。最近はとくに撮りたいから、勉強ができない。来週もその次の週もレポートがあるのに、制作で忙しくなればなるほどに、参考書を開く時間はなくなっていく。勉強が嫌いじゃない。だけど、頭の中がそれどころじゃなくて、色々が沢山あって、何処かに消えちゃう前に形にしたくて忙しない。撮って、作って、撮って、作っての連続。

だけど、周ちゃんと話していて気づいた。答えはとっくに出てる。ただ、苦しいことから逃げてるだけなんだって。

「写真と心理学が行ったり来たり出来るようになるといいよね。」周ちゃんが言った言葉の通りだ。今、この場所にいることが苦しい。それはどっちつかずで、わからないことだらけだから。

見たいものはずっと先にある。だから、しばらくはずっと苦しんで、だけどそうやって前に進むしかないんだと思った。いつか、きっと、今まで出会えなかった景色を眺める日がくる。

9月17日

Journal 17.9,2023


今日は朝から試験。この試験の後にも沢山試験はあるけど、いくつかの関連する試験の最後。半年以上時間をかけて勉強してきた心理学研究法。体調は少し良くなりつつあるけど、細菌性胃腸炎の治療法は対処療法だそうで、病院の先生が出してくれた薬も整腸剤やら胃薬。身体は強い方じゃないから、その分健康には気を使ってる。だから、昨年の健康診断だってオールAみたいな結果だったのに、最近の体調ときたら、曇り空みたいにぼんやりとしてはっきりしない。病院にかかってからもうすぐ1週間。とはいえ、ふらふらになりながら現場へ向かう日もあったけれど、そのまま駅で倒れて仕事を休んだ。この仕事について初めてだ。どんな日だって撮ってきたのに、何があってもいつだって当たり前の顔をして撮ってきたのに、目の前が一瞬にして真っ暗になって歩けなくなった。

バリから帰ったら色々とやろうと思っていたのに、結局、勉強も思うようにできないままに、トイレとベッドの往復でまた数日が経ち、今日。昨日は少しだけ体調がよかったから、勉強をしたけど、胃の辺りがどうにも気持ちが悪くて集中できない。だけど、夜は久しぶりに人らしい食事をして寝た。試験の出来栄えはまぁまぁ。試験前の数日やバリでも勉強ができなかったけれど、過去の私のお陰でなんとか乗り切った様子。だけど、なんだろう。やっぱり勉強の仕方が下手くそだ。どこまで頑張っていいのかわからない。今回だって、やり過ぎていたから良かったけれど、そもそもそこまで深掘りすることはなかったようだった。

周ちゃんが秋田に帰ってから2日経った。「俺が帰ったら、楽しむんでしょ〜。」「そんなことないよ〜。」あの会話だって、いつもなら、冗談半分、本気半分だ。周ちゃんのいない夜といえば、スーパーに行って色々を買い込み、早い夕方からひとり宴会が始まる。調子に乗ってワインを買うことだってある。だけど、なんだろう。ふと思った。淋しい?いや、違う。

同じ場所にある椅子やテーブルと同じで、周ちゃんだって数日もすればまた帰ってくることを私は知ってる。私だけじゃなくて、この家や梃子だってわかってるかもしれない。そんな風にもう、私達はもう同じパズルの一つと一つみたいになってる。2階へ上がる階段に足をかけた時にふと思った。そして、その先のことはもう考えなかった。

今がいいなら、きっといいんだと思う。絶対に私は私達だなんて言葉を使いたくなかったけれど、もういいや。周ちゃんには、私のひとりの時間を失くしたくないとあれだけひつこくお願いしてたのに、もう完全に殆どはひとりじゃない。1度目の結婚の時はいつも寂しかった。あの寂しさはあの空しさ、ざわつき、混沌とした時間は満たされない事をわかっていても、長い時間、手放すことが出来なかった。それに、それが愛っていうものだと信じていた。

9月1日

Journal 01.9,2023


久しぶりにヨドバシへ行った。私は人生で何個カメラを買うんだろうか。今までそんなこと考えたことなかったけど、不意に思った。今日みたいな季節の変わり目に、気分や勢いで買うことが殆どで、あとさき構わずに買った。おかしいと思うけど、全く後悔していないのもすごいものだ。若い時は、お金がないのにどうにかして買っていた。

好きなことは後悔しないなんて、人間ってほんとによく出来てる。大学に行き始めてから、写真から離れることが寂しい気もした反面、もう嫌な写真を撮らないですむかもしれないとも思ったけど、私が知っている以上に、私って写真が好きなのかもしれない。何度通ったかわからない新宿のヨドバシ。なんだか、すごく嬉しくて楽しかった。

好きと言うと、好きが世界からへる気がして、あまり好きは口に出して言いたくない。勝手にそう決めていたのに、写真を仕事にしてしまってからは、もう好きから逃げられないんだと、苦しいな、やりづらいなって時々窮屈になることもあった。

けど、そうじゃない。私、やっぱり好きなんじゃん。好きだからグチグチ言うんだろう。好きだから傷ついたりもするんだろう。ちまちま言ってる私はうざったい。新しいカメラを買おう。

8月21日

Journal 21.8,2023


久しぶりに飲みすぎたせいか、二日酔い。気持ちが悪くてデスクに向かえない。頭がぼーっとするから勉強は出来なし、手を動かすだけの編集作業だって無理だ。リビングのソファーに転がってバリのホテルを探してた。午後は病院。なんとか重い身体を引きずって向かう。

今日は院長先生だった。こんなに大きな病院の先生だから、さぞかし偉そうな方なのだろうと勝手に想像していたけど、どこかの小さな島で小さな病院でのんびりと何十年と診療を続けていそうな、穏やかなおじいちゃん先生だった。「乳がんもちゃんと検査してね。」と言ってた。

帰って少しだけ勉強して夕方から周ちゃんとプール。帰りにずっと気になっていた町中華に入って、タンメンと餃子を頼んだ。狭くもない広くもない店内で夕方のニュースが鳴っている。耳を傾けると富士山が混雑大変だみたいに言っていた。常連さんが次々に店に入ってきて、「いつもの。」とか、「ビール。」みたいに手短にオーダー。私達の注文も頼んでから10分もしないうちにやってきた。ラーメンは驚くほど熱くて、炒めた野菜はくたくたで、麺はぶよぶよに伸びてる。

私も周ちゃんも綺麗にラーメンを平らげて店を出た。「ぶよぶよだったね。」「うん。」私達の会話もそれ以上でもそれ以下でもなかった。それよりも、そこに住みついている空間の温もりみたいなものが味わえたようで思いのほか気分がよかった。たぶん、周ちゃんも私と同じことを感じていたと思う。

今日からまた色々と頑張ろうと予定を立てていたのに、二日酔いでダウン。何やってんだろうと情けなくもなったけれど、感じたり考えたりすることをシャットダウンするっていうのは悪くなかった。夜は早々に寝た。

8月20日

Journal 20.8,2023


夕方から編集の成田さんとリリさんと東長崎にあるイタリアンで飲んだ。RiCEの東京特集で取材した店だそうで、素敵なお店だった。成田さんの最近の恋の話をつまみにリリさんと私とあれやこれやと勝手なことを言って飲んで食べて、ほどよく酔っ払って、店をすぐ隣にあるMIA MIAにかえて、ドーナツにかぶりつきながら、またワインを飲んだ。リリさんはアマレットが入ったカフェオレを注文。小さな街の日曜日の夜、どこからともなくやってきた若者だとか外人だとかでごった混ぜになった熱気むんむんの店内はのぼせそうだった。私もカフェオレだったなと後悔。

出来るだけ静かな場所を探して逃げ込むようになったのはいつからだろう。成田さんの声が遠くに聞こえたり、見知らぬ男の子と目があったり、全部が懐かしい感じがした。あの人たちは今どこで何をしているんだろう。夜だけしか会わない友達もいたし、名前を知らない友達もいた。今は子供とサザエさんでも見ているんだろうか。バカみたいに真夜中を共にして、泡のように全部消えていった今、かすかな記憶だけが残ってる。どこまで行っても終わりの見えないような長い時間を費やしたはずなのに、死ぬ時には思い出さない気がする。それくらいに少しだけしか残ってない。

リリさんは編集という仕事が自分には合ってないと言ってた。成田さんはこないだ紙面でタイの取材をしてからより一層に海外の仕事を増やしたいと言ってた。二人の対極的な話をそうかそうかって聞いた。自分にいつも正直でまっすぐなリリさんと、どんなことがあってもくじけずに前へ向かおうとする成田さん。それぞれにそれぞれの人生があって、これからはまたそれぞれになっていく。私がもうきっと会わない友人たちも、それぞれにどこかへ向かって行ったように。

久しぶりに会った二人と、久しぶりに飲みすぎたお酒。駅まで迎えに来てくれた周ちゃんは起きて待っていてくれたんだろう。眠そうな顔でハンドルを握る。ああ、変わったんだと思った。私が自分で決めた人生だ。田舎暮らしも、大学生活も。スムーズに感じられないのは、なんだかしっくりこないのは、私が勝手にしたこと。あのまま東京にいたら、ずっと同じでいられたのに。変わるのは孤独で不安で苛々する。

ふたりに会えて良かった。


パンケーキ

Journal 11.8,2023


久しぶりに寝坊した。起きたのは6時過ぎ。昼過ぎまで勉強して午後はプール。夜は柳澤さんのお家へ遊びに行った。うちから車で12分。湖のそばだと聞いていたけど、こんなに近いなんて驚いた。

柳澤さんは周ちゃんのことを「イケメンだ。イケメンだ。」と何度も言ってた。そう、周ちゃんはイケメンだ。絵に描いたようなイケメン。意思のあるしっかりとした眉に、真っ直ぐと見る目。鼻筋は上にすぅっと通り、背も高い。腕や肩にはTシャツの上からでもわかるくらいの丁度いい筋肉がのっている。おまけに肌もツルツルだし、ハゲてもいない。それでいて仕事もできる。出会ったばかりの頃、「女性とは面倒な関係になりたくないので、距離を置いて付き合うようにしてる。」という言葉を聞いたけれど、ああ、モテる人が言うやつ、と思った。

友人、知人に紹介すると、周ちゃんのことを素敵だと皆が口を揃えて言う。だけど、その度にじゃあどうして私だったんだろうと少しだけ胸の辺りがさわっとする。

2人の箸は皿の上でぴたりと止まったまま、民俗学や歴史の話で盛り上がっていた。柳澤さんはとても不思議で素敵なお姉さん。編集者やライターっていう雰囲気じゃない、どちらかと言えば文筆家や漫画家みたい。独特な空気感がある。そして、何だかいつも小さく笑っていて、一緒にいると勝手に空気が和んでいく。ふたりを見ながら柳澤さんが築地で買ってきたというカツオを食べ、ワインをガブガブと飲んだ。遠くで花火が鳴ってる。涼しくて心地のいい部屋。義母のさちこが漬けてくれたというお新香と梅干し。さちこが漬けた胡瓜は義父のけさおが畑で作っているものだそう。美味しくないわけがない。酸っぱい顔をしながら梅干しをつまみワインをまた飲んだ。

私は民俗学も歴史も知らない、だからって他の文化圏にも大して興味がない。恥ずかしくなるほどに色々を知らない。今、流行ってる曲や本や映画だって知らない。私にあるものと言えば、ほとんどが我流で覚えた料理と写真ぐらい。自分のことを蔑むわけじゃないけど、やっぱり周ちゃんが私を選んだ意味がわからない。ひとりポツンとしながら、食事を続けた。末っ子だからか、こう言う時間は嫌いでも好きでもなくて慣れてる。耳だけふたりの場所に参加した。酔っ払う柳澤さんはやっぱり素敵だった。

今夜は飲みすぎたな。周ちゃんはどうして私だったんだろう。自分を嫌うのはもうやめようと決めたけど、少しだけ不甲斐なく感じた。何もない毎日が好きなだけじゃだめなんだろうか。そんなことは誰も言ってないのに、私がそう言ってる。




7月24日

Journal 26.7,2023


昨日、母に貰った花。実家に帰ったら母と父が新婚旅行で行った時のハワイの写真を思い出した。何でだろう。何でかな。

7月25日

Journal 25.7,2023


昼過ぎから腰痛が始まった。痛い、やばいな。周ちゃんに熱が少し上がってきたこと、腰痛が辛いことを伝えると、「今日はやめておこう。」だった。夕方に渋谷植物園のリニューアルのプレスリリースに行く予定がある。けど、。せっかくだしな。周ちゃんもその為に在宅にしてくれたのに。「車で駅まで行ってもいい?」「もちろん。けど、無理しない方がいいよ。」

腰痛は軽くなるどころか時間と共に悪化していった。やばいな。途中、騙し騙し、youtubeで勉強しながら何とか気を紛らわして渋谷へ到着。人でごった返した駅。どんどん開発されていく渋谷だけど、昔も今も、いつまでも完成しない中途半端な感じがむしろ渋谷らしくて好きだなと思った。やっぱり、ここは落ち着く。

こないだライターの柳沢さんが、田舎暮らしが好きだけど、今でも東京に帰りたいと思うことがある。と言ってたのを思い出した。二十歳ごろからここで遊んできた。隣の駅に住んでいた時は歩いて帰ることもよくあった。それは1度目の結婚の時。その10年くらい前、中目黒に住んでいる時はよく自転車でここを走っていた。青と緑を足して割ったような色のお気に入りのビアンキに乗って。

ほっと全身の力が抜けてゆく。植物園まで歩く道のりは誰か友達に会えそうな気がしたし、通り一つだって色々な思い出がある。その昔は黄色のビーチクルーザーに乗っていた。その時はこの通りの先の恵比寿に行く手前の自転車屋で一目惚れして買った。まだ大学生でお金がなかったから、割と安いビーチクルーザーは手が出しやすかったし、少しだけカスタムした。

到着すると編集の浅井さんが迎えてくれた。今日来たのは、浅井さんに誘われたからっていうのが1番の理由だけど、今住んでる場所で土地のことを知りたいと料理家の角田さんと活動を始めたこともある。ここの館長に就任されたアーバンファーマーズの小倉さんに会ったのは、ワールドの仕事で何年も前のこと。あの時はラフォーレの前のビルの屋上でポートレートを撮らせて頂いた。暑い夏の日で前日に畑で熱中症になったと辛そうにしていたのを覚えている。その小倉さんといつも仲良くさせて頂いてる浅井さんが知り合いだなんて、世の中とは面白いもの。

浅井さんが丁寧に隅々まで新しい植物園のことを紹介してくれた。バナナとマンゴーの電磁波から作ったというアンビエントな音楽が流れている瞑想ルーム的な部屋も面白かったし、屋上はお茶の木とビールのホップを育て始めたというのも、嬉しそうに話すその感じが、すごくよかった。私は場所は人だと思ってる。そこで楽しんでる人たちがいるからこそ、その場所へ会いに行きたくなる。だって、渋谷がまさに私にとってそうゆう街だったから。

それからLFCコンポストの代表のたいらさんっていう女性を紹介して頂いた。もちろん、あのバッグ型のコンポストはもうずーっと何年も前から知ってる。コンポストを始めようと思った時に一番初めに気になった商品でもある。最近、我が家では夏で微生物が活性化していることも手伝ってコンポストブームが来てる。生ゴミがどんどん土に返っていく様子は見ていて楽しいし、そこで捨てた野菜から新たに芽がニョキニョキと育っていくのも楽しい。たいらさんには我が家のコンポスト事情の話を少し聞いてもらってアドバイスを頂いた。正直、お会いできて無茶苦茶嬉しかった。想像していたような感じの方ではなくて、ずっとずっと素敵で素朴な女性だった。

コンポストは環境問題のことで3年前に東京のマンションのベランダで始めたけど、今は違う。コンポストの中で循環する世界を目の当たりにできることが楽しいとか、それは生ゴミを処理してくれて、豊かな土を作ってくれて、なんなら新しい野菜の芽まで育ててくれる。環境のためというよりも、今はご褒美と言った方がしっくりくる。ただ、楽しいからやってる。結果、誰かのためにもなってる。たいらさんと話をしていて、大事な事をちゃんと思い出せた気がした。それに、そもそも、環境のためにという理由だけでは中々楽しめないっていうのもある。マスト的な考え方はどうしてか辛くなってしまうから。

結局帰宅したのは20時。もう腰痛は悲鳴を通り過ぎて感覚が半分麻痺してる。あまりの痛みに空腹までもが奪われてしまうくらいに。帰宅してもしばらくは床に転がっていた。しばらくしてからシャワーを浴びた。周ちゃんはせっせと洗濯を取り込んでくれたり、梃子にご飯をあげたりといろいろをやってくれてる。夕飯は周ちゃんが造った天ぷら饂飩。天麩羅は帰りに駅前で買ったもの。生姜をたっぷりすって食べた。食事を済ませて布団へ寝っ転がった。ああ、辛い。どうしたらこんなに痛いんだろうってくらいに痛い。

天井を見ても壁を見ても痛い。携帯を見たって痛いし、”腰痛、緩和” のキーワードでgoogle検索し続けるだけだ。しばらく痛みに打ちしがれながらぼんやりと考えた。外で見る周ちゃん、かっこよかったな。何度かエレベーターや駅で私ぐらいの中年女が何度か周ちゃんを見ているのを見た。「私の夫よ。」なんてことは思わない。周ちゃんは私の物じゃないし、今はたまたま私と一緒にいるだけ。そうじゃない。彼女たちに、わかるよ〜と共感したかった。だって電車で口開けて寝ているのを見ても、なんてまぬけな顔をしているんだろうと放って置いたくらいだもの。周ちゃんは周ちゃんであって、私は私。同じ姓を名乗ってるけれど、他人であり、どこまでいっても自分ではない誰かだ。

家を出ると、周ちゃんはよりいっそうに他人になって、何だかいいなと思った。家にいる周ちゃんも好きだけど、外にいる周ちゃんも結構いい。外にいる周ちゃんが服を着た周ちゃんで家にいる周ちゃんは裸って感じだ。見えない部分があるというのはとってもいい。ひとり勝手に想像してニンマリした。

7月23日

Journal 23.7,2023


千葉から帰宅するとまゆみちゃんから手紙が届いていた。勉強のこと生活のこと、ヨーロッパのどこかの海へ行った話、そこで水がきらきらしていて綺麗だったとか、HUGOにこんな話をしたら、こう言ってたんだよ。とか、日々のことが少しずつ丁寧に書いてあった。何だろう、特別になにってわけじゃないし、小さな日々の話なのだけど、胸がじわじわと温かくなっていく。

もし、私達が文通していなかったら、まゆみちゃんの毎日のことはきっと知れないだろう。インスタの写真は、きっとパリの素敵な街並みや美味しいご飯のことは教えてくれるかも知れない、旅先の綺麗な景色だとか、猫の可愛い姿なんかもきっと見れるだろう。だけど、そうじゃないこと。誰にも言わなくてもいいけど、自分にとっては大事だったり、少しだけ特別なこと。たぶん、思い立って切った前髪ぐらい誰も気づかないようなもの。

海から帰ってきて、海の手紙を読むのはなんだかとてもいい気分だった。今すぐにでもまた海に行きたい。夕飯は母が作ったしらすと焼き鮭の丼。帰りに母が作った色々をどっさりと持たされた。お稲荷さん、春雨サラダ、魚介のアヒージョ、アスパラの肉巻き、サーモンと海老のヨーグルトサラダ、ワカメと胡瓜の酢の物、後は昼に揚げたのだろう天麩羅。

海から帰ってきて、海の手紙を読み、母のご飯を食べる。こんな幸せなことはない。

ピーナッツバター

Journal 12.7,2023


みつきさんを駅まで送って、そのまま周ちゃんとプールへ行った。昨日、今日と3時から勉強してる。ちょっと睡眠不足ぎみだ。リフレッシュのつもりで行ったプールだったけれど、思いの外泳いで、酸欠で頭がズキズキしてる。帰宅して横になると、気付いたら夜だった。

なんだかすごく疲れてる。駅でハグしたみつきさんは、思ったよりも小さかった。さっきバイバイしたばかりだけど、みつきさんにまた会いたい。

夕飯

Journal, 夕飯 05.7,2023

毎日のもの、例えばオムレツの形だとか、そんなことがあまりに愛おしく思えた日だった。

生理が近いのかな、今日は珍しく車に乗るのが怖いと思った。こういう日はなんでも怖い。胸のあたりがざわざわする。「やっぱり電車で行こうかな。」「もう免許とってから、半年乗ってるのだし、技術的に言えば何も問題ないよ。だけど、怖いと思うなら電車で行ってもいいんじゃない?」周ちゃんが言った。免許取り立ての頃は不安に思う日があったけれど、今日みたいな気持ちは久しぶりだ。

どうしよう。迷っているうちに時間だけは勝手にすぎていった。もう出る時間だ。急いで機材を積んで出発した。いつからそれが消えたのかはわからないけれど、車を走らせて10分も経たないうちに今朝いきなりやってきた恐怖はどこかへ去り、いつものように走っていた。畑には少し早く着いた。今日は映像の撮影。

映像を撮り始めたのは2年前。その時の映像を見た角田さんが声をかけてくれた。角田さんは、時々、驚くようなことを言う。知らない時間のことを知っているかのように話しだす。今日もまたそんなことを言ってた。

午後はキッチンでの撮影。和彦さんがいつものように角田さんのお手伝いをしてる。髪がさっぱりしていて夏らしかった。ふたりは時々、喧嘩してるのかな?って思うことがある。かと思えば、楽しそうにふざけあって話していたりする。まだ出会って半年くらいしか経ってないけど、たぶん喧嘩はしてない。じゃれてる。そんなことも少しづつわかってきた。

和彦さんがオムレツを焼いて、角田さんが、あ、いつものねって顔をした。「真帆ちゃん、あぶないよ。」和彦さんが角田さんのことを真帆ちゃんって呼ぶ音がどういうわけか、すごくすきだ。何度か和彦さんが角田さんに言った。角田さんのトウモロコシの切り方を心配してる。

「オムレツ、この形は綺麗じゃないけど、こうゆう綺麗じゃない方が美味しかったりしますよね。」真ん中でぱっかりと割ったオムレツ。私には潔く黄色だけのオムレツは綺麗に見えた。

和彦さんは途中で歯医者に出かけて角田さんとは陽がくれる前まで話した。帰りに渡したいものがあると言い、アロマのスプレーをくれた。

生活がすきだ。本当にだいすきだ。そこだけに存在する会話、風に揺れる洗濯もの、割れたオムレツ、夕方の音が部屋に入ってきて、キッチンは薄暗くなっていく。

綺麗じゃない方が美味しかったりする。その言葉が染み渡るようにわかる。だけど、私にはそれがあまりにも愛おしくて仕方がなかったりもして、ただ嬉しかった。綺麗だった。写真は撮ってない。撮れば良かったと後悔する気持が半分。残りは無理に撮るよりもここにしまっておきたいという気持が半分。

最近、写真からは離れてる。だけど、より近づいてるような気もする。

7月3日

Journal 03.7,2023

腰深く座り、足は裸足で投げ出して座ってる。空いた皿はカレー皿かな、となりにはサラダが入っていただろう器がある。汗のかいたグラスはきっとアイスティーだ。片手には本。ただ、だらしなく思うままに読書にふけていた。

駅の上にある本屋の隣接したカフェで遅い昼食をすませていた中年の女性を見て思った。人生、そんなに頑張らなくたっていいのかもしれない。私もあんな風に全部を投げだしたい。彼女は主婦かな。仕事を休んでいるのかやめたのか、フリーランスなのか、子供はいなそうな感じだ。さっき本屋で立ち読みした益田ミリさんの本を思い出した。まるで本から出てきたみたいな女性だった。

朝一番で行った病院。正直、面倒だった。実際のところ、本当に妊娠したいかもわからない。昨年に流産した時はまた妊娠してみたい、なんて思ったけれど、今の生活を失ってまで本当にしたいのだろうか。今、私が一番に望んでいることはテストに受かることだ。あとはエーゲ海で青をたくさんみたい。青い空、青い海。目に写る世界を青でいっぱいにしたい。

「卵がないのよ。昨年の流産がやっぱり悪かったかな。」耳がタコになるくらい聞いた。とはいえ、まだ数回しか病院には行ってない。だけど、もうその先生の声のトーンに嫌気がさしてる。だけど、周ちゃんにはまだ言ってない。先生のその重い声を聞く度に、「別に大丈夫ですよ。」と喉まで言葉が出てきてやめる。だって、私、別に今のままで十分に幸せなんだけどって。年齢的に卵が少ないことくらいわかるよ。私は羽が生えてないのに空を飛びたいなんて思わない、いたって現実的な性格だから。

朝一番で病院に行ったけど、「診察は午後からです。」冷たくあしらわれて病院を出た。一度家に帰るのも面倒だしと駅前で時間を潰したのが悪かった。好きで始めた勉強も思いの外、不安になることが多い。先週くらいに周ちゃんに聞いた。「勉強、苦しいけど楽しい。こんな勉強ばっかりしてる奥さんでいいのかな。」「人生の夏休みって思ったらいいんじゃない?俺はすごくいいと思う。贅沢な時間だよ。」と周ちゃん。贅沢か。あまり私にはハマらない言葉かもしれない。

ビジネス乗ってハワイ行くとか、ミコノス島でバカンスするとか、そういうのが私の贅沢だ。もしくは、明日地球が吹っ飛ぶんですけど、新宿の伊勢丹でなんでも買ってきてくださいって言われるとか。けど、今の私には伊勢丹に欲しいものはあまりない。帽子好きの母に夏の麦わら帽子を贈ってあげたいくらいかな。

周ちゃんには感謝しかないし、今の私の人生は苦しいとは言っても、私の知ってる苦しみからしたら、遊びみたいなもんだ。だけど、駅前の女性が素敵で羨ましく思った。私、勉強したくて焦ってばかりいる。今の時間でさえ、ここにいないみたいに焦ってる。

頑張りたいとか、手に入れたいものがあるとか、向かいたい場所があるとか、そういうのもいいけど、そうじゃなくてもいい。何かに呪われたように、息をするように勉強ばかりして、一人勝手に苦しんでる毎日を少しだけ投げだしたくなった。今年こそ新婚旅行に行こうと周ちゃんと話してる。勉強が忙しくて行けない気もしたけど、行ってもいい気もした。別にすぐに死ぬつもりはないから新婚旅行なんていつでもいいじゃんとも思う。だけど、私も平日の昼間にダラダラと本屋の前のカフェで本を読むような女になりたいとも思う。

もうここまできたのなら、周ちゃんの言うように贅沢とまでは行かなくとも、これは楽しむ時間なんだ。大学生活は社会からドロップアウトしてるようで後ろめたさもあったけれど、仕事をやめたわけじゃない。何かや誰かにならなくたっていい。

益田ミリさんの新刊を買った。新婚旅行はやっぱりエーゲ海がいい。試験は全部合格したい。

7月2日

Journal 02.7,2023

3時過ぎに起きて勉強して、オンラインで試験。それから、いつもよりゆっくり散歩に出かけて、庭の草いじり。夕方に梃子を美容院に連れて行き、合間に長崎ちゃんぽんを食べにいくことにした。

「あー麦酒のみたい。」「飲んだら?車、オレ運転するよ。」時間は17時前。こんな時間に麦酒だなんて、最高すぎる。「じゃあ、飲む!」

帰宅して風呂に入って8時前には寝てた。すごく疲れた。試験のあとの焼失感、初めての時は魂が抜き取られたみたいになったけど、それも段々と慣れてきた。それに、そうゆうものすべてひっくるめて最近の毎日が結構好きだ。この街もこの家も暮らしもちょっと苦しい勉強も。単調だけど、小さい日々を積み重ねてると感じる。

春に植えたトマトや茄子はあっという間に私の背丈くらいに延びて、次々と実をつけてる。

6月26日

Journal 26.6,2023

昨晩は寝苦しい夜だった。隣で周ちゃんはぐーすか寝ていたけど、枕の横にいる梃子は、はぁはぁと舌をだして熱そうに呼吸していた。時計を見ると時間はまだ夜中の12時。

南西にあるベッドルームの角に出窓が2つある。奥ばった作りは全て白で統一されていて、この家の好きな場所のひとつだ。ベッドルームに朝陽がはいること。これは私の引っ越しの条件だった。白いシーツに、白いカーテン、他の全部も白だけの部屋が朝陽でサーモンピンクに染められていく時間が好きだから。この家を見つけるのは結構大変だったけれど、好きな場所じゃないと暮らしたくないと周ちゃんを困らせただけある。だけど、一つ問題がある。それはベッドルームにクーラーがないこと。

半分融けた梃子とブランケットと一緒に1階の和室で寝ることにした。そして、クーラーの中で梃子と気持ちよく寝るはずだった。昨日、試験勉強をするために3時半にかけた目覚ましが鳴るまでに何度起きたことだろう。クーラーが効きすぎていたのか、どうにも上手く寝れなくて夢に何度もうなされた。

人は記憶を忘却できる。それは失うことを意味してない。自分さえもわからない場所へ失くしてくれるってこと。私の中のどこかへ。ちょっと前に脳の中にある記憶という場所のことについて学んだ。

多分、数日前に二度と連絡をとらないはずだった中目黒の居酒屋の店主から電話があったからかもしれないし、昼に見た是枝監督の怪物っていう映画のせいかもしれない。

「よしみさんきっと好きだから。」と、分福にいるナナコにチケットを渡されて見た万引き家族は酷く感動した。怪物も、きっと似たようなものを受け取りたいと期待していたんだと思う。社会の影に住み着いたどす黒いメッセージを、と。けど、あまり消化されずに、映画は終わった。もしかしたら、脚本が坂本さんだったからかもしれない。酷評をしたいわけじゃなくて、ただ、私の期待が外れただけ。

けれど、描写の美しさや時より不安になるような曖昧な時間は、万引き家族に似た何かを少なからず受けたのは確かで、隠していた筈の記憶が詰め物の下にいる虫歯みたいに小さく疼いた。それに、あの映画は病気が酷くなった頃に一緒に見た映画だ。待ち合わせの時間に来ない夫が電話の向こうで割れるような音で怒っていた。池尻大橋のマンションで、「後で。」と別れたのは2、3時間くらい前のこと。不安は的中した。もうあの頃は無茶苦茶だったから、上映が始まる直前に連絡がとれたけど、とくに驚かなかった。またあの時間が来たんだなって思ったくらい。

「だから、もう作らんでええから。」呆然と立ち尽くす私がいた。

男の大きな声が終わる頃、私の言葉は詰まる。喉に何かを詰め込まれたみたいに、そのまま心までそれが押し込まれたように。私がご飯を作るから悪い。その言葉がどうにも辛かった。どうして、喜んでくれる日があるのに、怒る日もあるのか全然わからなかった。出来る事といえば、気持ちを押し殺すことくらい。それに、作った食事が勿体なく見えて、かわいそうな気がして嫌だった。いや、本当はそれは私のことで、私が可哀想に見えて、けどそんな風に思いたくなかった。

あ、。忘れてた。夢から覚めて一番初めに思ったこと。池尻大橋のマンションに私達はいた。今さっきまで。昔のように冷たくなった食事と朝陽と、癇癪のとまらない元夫。世界から逆行したようなあの時間の中に。

そして、次の瞬間に思ったのは、現実はここだよ。じゃなくて、怖いだった。怖い。肌がひりひりした。それと同時に世界はどんどん過去に侵食されていく。夜はもっと黒くなって、私の温度はその中に飲み込まれていくみたいだ。どうしよう。いや、大丈夫、大丈夫だと思う。けど、不安はどんどん大きくなっていった。椅子に座ったけど、また立って、お茶を入れたけど、口を付けないまま。わからなくてベッドルームへ向かった。

静かに寝る周ちゃんがいる。背中に触れると温かい。とにかく、くっつけるところは全てくっついた。私はここで生きたい。

夕飯

Journal 22.6,2023


帰宅したのは18時過ぎ。今日の撮影は思ったよりもずっと早く終わった。帰りがけに編集の成田さんにタイ土産だというピーラーを頂いた。私は数日前に発売した冬に撮った料理本をあげた。

駅まで周ちゃんが梃子を連れて車で迎えにきてくれて、駅前で買った鯵と鯛の刺身を片手に車に乗った。雨はまだ少し降ってる。車を買ってから生活がぐんと変わった。東京では当たり前のように週に何回もタクシーに乗っていたけど、タクシーはしばらく乗ってない。その代わりに自分で運転をするか、周ちゃんが運転をしてくれる。車を買ってから半年くらい経つけど、まだこれが現実だとは本当は思ってない。ちょっと変な感じがしてる。

夕飯は貰ったピーラーでソムタムを作ろうと麺棒を探すが一向に見つからなかった。その時点で疲れがピークになってきて、きっと乱雑な感じで引き出しを閉めたのかもしれない。閉まる筈の棚からカトラリーがガラガラと大きな音を立てて床に落ちた。「ああ、もう嫌だ。」

最近は、”あ、枯渇した。” っていう瞬間がわかるようになった。それまでなんとか頑張っていても、急に力尽きてしまう。別にストレスが前より溜まったからっていうわけじゃないけど、なんだかそうなった。

「疲れちゃって。もう生姜をすりたくなくて、冷奴はやめた。」食卓におかずを並べながらボソッと周ちゃんに伝えると、「そういう時は僕にお願いして。」と返事が返ってきた。え、。なんだ、そっか。え、そうなんだ。

なんでもひとりでやろうとするのは私の悪い癖だ。そうやって全部を私だけで完結させようとするから苦しくなる。私、なんでもできる。じゃなくて、一緒にやろうって言えばいいだけなんだ。私を苦しめてるのは私。わかってる。

最近の周ちゃんは私の取り扱いに慣れてきている。