5月26日

Journal 27.5,2023


来週の予定だった美容院。夏に向けて大人っぽいボブにでもしてもらおうかと考えていた。だけど、急遽いけなくなったので、今日思い立ってパーマをかけてきた。

なんだか、レポートを出してから、急に寂しくなった。勉強は寂しい。今まで以上に友人とは遊べなくなったし、日記を書く時間も減った。お酒も我慢してる。写真だけは撮ろうと思っているけど、それにしたって孤独だ。

” 寂しい。” パリのまゆみちゃんへの手紙に書いてみた。「孤独なの。」一昨日に周ちゃんにも相談してみた。

好き好んで中年になって大学に行き始めたのは私だ。勉強はとにかく楽しいし、ずっと勉強してる。それと同時に私の過去が、私が持っていたものがどんどん失われていくのも感じてる。

こんな気持ちになりながら勉強したくない。寂しいと感じるのは仕方ないこと。だって自然現象みたいなものだもの。けど、。なんだか不意にずっと同じような髪型してる自分が、変わらない人の性格みたいに見えた。

人は簡単には変われない生き物。生物として命が曝されるくらいな状況にならないと、中々重い腰が上がらないらしく、脳はできるだけ無駄な資源を使わないようにとしてるのだと何かで読んだことがある。生命維持のために。変わりたがらないワタシがいたとしても、変わりたい私はここにいる。そう、ワタシの考えもわかるけれど、私は努めることができる。

全然ちがう想定外の感じにしよう。インスタで髪型を探してみると、クルクルパーマの女の子がでてきた。「今日はどうしますか?」「この髪型にしてください。」

別に誰かにお願いされて私をやってるわけじゃない、どんどん捨てちゃえばいいと思った。帰り道、ショーウィンドウに写るクルクルになった私がいた。なんか別人。けど、いいかも。

料理家の角田さんと新しいプロジェクトが始動してる。ワクワクやドキドキもあるけど、今回のプロジェクトは今までの制作のように興味や、自分が得たい欲望の為のものじゃない。なんだか、試みに近い感じだ。それは、角田さんとの偶然の出会いであったり、その人柄に受けた影響であったり、周ちゃんとの結婚や新しい土地での生活、私が過去に経験した色々とか沢山の理由が含まれている。ただ、気があってとか、盛り上がってやろうとしてることじゃない。

今まで閉ざされた世界ばかりに私の注意が引いていたのは、そういう世界のことが知りたかったからだろう。だけど、たぶん心理学の勉強の影響もきっと大きい。心理学って人の心を知る学問かと思っていたけど、人の事を救うために作られた学問だったから。

やることは今まで通り写真を撮ったり映像を撮ることだけど、矢印が指し示す方向は、より広い場所へ、より多くの人のために向けられ始めてる。角田さんは料理も、料理以外でも、いつもその先に誰かがいる。今の私も同じ気持ちがある。家族や友達にできることは、沢山の人にもできると信じてる。

新しいことを始めよう。

夕飯 25.5,2023


久しぶりのプールへ行くも、なんと休館日。ブツクサ言いながら、OKストアで買い物だけして帰ってきた。「あー!もぅ悔しいから、水着のままお風呂入っていい?」周ちゃんに聞くと、「いいよ。」と笑ってた。少しだけ夕飯の時に喧嘩もしたけど、やっぱり周ちゃんが好きだ。

豆板醤

夕飯 24.5,2023


今日は母の誕生日を祝った。71歳になるのだそう。だけど、どう見たって私よりも元気だ。顔は瓜二つなのに、どうしてこんなに違うんだろう。昨晩に出張から帰ってきたばかりと言ってたけど、綺麗にアップした髪も、黄色のセットアップのスーツも、ピンク色の口紅も、全てはいつも通りで可愛かった。

頼んだコース料理を食べながら、お喋りはずっと続いた。昔は母と上手くいかない時もあったけれど、そういう時間を経て、今があると思うと余計にいいなと思う。母だって、人間で女なんだ。私の母だっていうことは、その中のひとつの側面でしかない。だけど、その上で今でも私のことを娘として家族として愛してくれているのだから、それは当たり前な事ではなくて、母という人間にありがとうだ。

途中で姉からLINEが入った。姉も来たいんだろう。

「あっちゃんはさ、ちょっとまだ心配なのよ。」母が言った。言わんとしてることはわかる。姉は強い。最強だと思う。あんなに強い女、まず見た事がない。だけど、だから、脆い。母曰く、私は母と同じで大丈夫なんだそうだ。それも少しわかる。もし、私が姉のような強さや弱さを持っていたら、きっと、今でも元夫のことで苦しんでいたかもしれない。激しいトラウマの中で苦しみ続けて、それを庇うように何かにがむしゃらになって、そして、。考えただけでも恐ろしい。

“わたし、仕事、やすむ。人生も、ちょっとやすむ。”
ずっと自分は弱い方なのかな、と思っていたけど、離婚でわかった事の一つに、私は案外タフだったって事。離婚時は確かに鬱も患ったし大変だったけれど、ぺっちゃんこに潰されてから亀のスピードで着々と起き上がってきた。そして、ちゃっかり一年後には結婚をし、夢の田舎暮らしまで始めた。あと、念願の免許を取得して車も買った。そりゃ、当時は死ぬほど苦しかったけれど、私がじりじりと這い上がってくる様子を母は静かに見ていたんだろう。最近は、もう野菜やパンが沢山詰まった段ボールも送られてこなくなった。

今年も美味しくできた豆板醤。今度母に持っていってあげよう。

5月23日

Journal 23.5,2023


なんだか、やっぱりまだ疲れてる。

昼は周ちゃんを車でミュージアムへ送った。周ちゃんの打ち合わせが終わるまでタリーズでPCを開いて勉強のスケジュールを立てたり、メールを送ったり、溜まっていた色々を片付けた。あと、美容院の予約と、まつ毛パーマの予約もした。もう女を忘れてしまいそうなくらいに今の私はいろいろと酷い。せめて下着だけでもと思うけれど、あいにくの生理でデカパンを履いてる。いくら体調が悪いからって周ちゃんに愛想をつかされそうだ。

それに、昨日に続いて、まだ泣きたい病は続いてる。朝から雨も降ってる。焼き鳥屋にでも行きたい。こないだ、アキちゃんは時々、焼き鳥屋にひとりで行くっていう話を聞いたけど、本当にあの娘はいい。女って生き物を十分過ぎるくらいに楽しんでる。彼女ほど楽しんでいたら、「残ってるのはロクでもない男ばっかり」なんて、中年女の愚痴も世界から消失するんじゃないか。いい男っていうのは、結構あちこちにいる。焼き鳥屋にだっているのだから。

それに、パリのまゆみちゃんだってそうだ。届いたばかりのまゆみちゃんとHUGOさんの似顔絵、ダイニングテーブルに飾ってるからか、食事をする度に思う。いい女だねって。

私はまゆみちゃんのほんの一部しか知らない。だけど、幾つかの事は知ってる。20代も終わりにさしかかると、東京って街は刺激的な場所ではなくて、ただ流行を繰り返しているだけなんだって事に皆、薄々と気づき始める。私達が出会ったのもそんな頃だった。だからって、東京から出ていく友達は殆どいない中、まゆみちゃんはひとり退屈な東京からパリへと飛んだ。

パリでは何度か引っ越しをしたし、仕事も幾つか変わった。パリはとても素敵な街だ。けれど、それは、いつもまゆみちゃんを幸せにしてくれたわけじゃないことも知ってる。どうにも上手く行かない日だって沢山あっただろうし、寂しい夜の話も聞いたことがある。

定期的に届くカラフルな封筒に入った手紙には、暮らしの中にある小さな幸せの話がいくつも書いてあった。街にお気に入りのカフェを見つけたよ、仲良くなった友達がいい話をしてたの、よしみちゃんのインスタを見て同じご飯を作ったよ。遠いい異国で女がひとり生きていく大変さは、姉からよく聞いてる。日々の小さな小さな幸せは、ポイントカードにスタンプを押していくみたいに一つ、また一つとふえて行き、HUGOさんと出会った日も、きっとスタンプが押されていた。

“今日はデートしたよ。楽しかった。どうなるかはわからないけどね。” と記してあった手紙から1年ちょっと。結婚したのは驚いたけど、私から言わせてもらえば、必然だった。まゆみちゃんと生きるのはきっと楽しいだろう。小さくても、パリの街のあちこちで幸せを見つけてくるから。

幸せって、小さいことの積み重ねな気がする。それに、幸せは特別なことではなくて、日々に埋もれるくらいにありふれたものの方が丁度いい。日々の中で一つずつ丁寧に貯めたものは、そう簡単には無くならないし、増えたら人にもあげられる。

ああ、早く二人に会いたい。まゆみちゃんおめでとう。アイラブユー。

ソース焼きそば

夕飯 22.5,2023


こんなに勉強してないのはどれくらいぶりだろう。全く今日はしてない。色々と片付けをして、周ちゃんを鍼灸に車で送ったりしていたらあっという間に夜になった。帰宅すると、パリのマユミチャンから手紙が届いていた。

マツキヨの駐車場に車を停めて周ちゃんを待っているときもそうだった。泣きたい。無性にそう思った。理由は沢山あるような何もないような。ただ、梅雨みたいな空が心地よくて泣きたかった。

リビングのソファーにあぐらをかいて、大きなカードを広げた。泣くならきっと今。けど、少しだけ涙が目を覆って終わった。私はなんでこんなに我慢してるんだろうか。周ちゃんは体調がいいみたいで、キッチンで焼きそばを作ってくれてる。手紙には愛のことが沢山書いてあって、大好きなマユミチャンがとにかく幸せそうで、泣くには今がもってこいだったはずだ。

L.Aに行って姉の庭で泣きたい。あの家なら私が馬鹿をしても、誰も気に留めない。不意に庭に出てきたヘレナがいても、きっと「YOYOなんで泣いてんの?」って聞かれるだけだ。姉は多分、別の事を思い出して私なんてそっちのけでワイン片手にわんわん泣き出すだろう。きっといつものように、L.Aの夜は天気がいいはずだ。そして、私達は何事もなかったように眠りにつく。

周ちゃんが日常に帰ってきてくれて嬉しい。レポートもぜんぶ出せて嬉しい。嬉しいことだらけなのに、泣きたい。もしかしたら、忙しくて心をどこかに隠していたのかな。よくわからないけど、泣きたい。

5月21日

Journal 21.5,2023

朝にレポートを終わらせて、午後は少しノンビリと過ごした。野菜の植え替えや雑草をぬいたり、数週間手入れできていなかった庭が少しだけ綺麗になって、なんだか日常がまた戻ってきたようで嬉しかった。忙殺されていた日々の中で、あれやこれやと、やらなきゃいけない事の殆どを中身も見ずにしまい込んだ1ヶ月。こうして今日も平和に流れているならば、大して必要なことでは無いのかもしれない。そう考えてみると、生きる上で大切なことはあまりない気もした。

周ちゃんの体調は昨日より今日って感じで、ここ数日でどんどん良くなってきてる。今日はリハビリに外食してみる事にした。家から30分のところにある饂飩屋さん。人が沢山並んでる。どうやらマツコの番組に出てたらしい。こういう店はだいたい美味しくない。周ちゃんに「店を変える?」って聞くと、「せっかくだし、並ぼう。」とのことだった。饂飩は案の定、美味しくなかった。けど、隣の夫婦かカップルが美味しいねって楽しそうに食べてるのを聞いて、なんだか気分は良かった。味っていうのは、複合的なものだから。誰がつくって、何処で食べて、どんな食材で、有名っていうのも最近じゃ味のひとつだ。それが美味しいと思うその人の心が味わってる。

夕飯はモツの野菜炒め。余ったモツは明日焼きそばに入れようってなった。

5月20日

Journal 20.5,2023


昨日あたりから周ちゃんの体調がいい。「少し、リハビリをしよう。」周ちゃんを連れて、ドライブがてら買い物へ出かけた。来週締め切りのレポートが1本残ってる。けど、そんなに難しくない。精神疾患なんちゃらっていう科目。少しくらい出かけたって大丈夫。

昨晩は元夫が夢にでてきた。私は会いたくないと拒絶を続けてたけど、会わなきゃいけないっていう夢だった。どうしていきなり出てきたのか。けど、その夢を見せてるのは私自身だ。今度の課題の教科書では、元夫の病気の事も載ってる。その頁は、読まなくても読んでもスルスルと入ってくる。なんなら加筆もできるくらいに沢山の事を見てきた病のこと。

これ以上は考えるのをやめよう。過去は過去だ。今や過去を未来をぐちゃぐちゃにすると、生きるのが苦しくなる。

手巻き寿司

夕飯 19.5,2023


今日は周ちゃんの誕生日。それから、レポートの提出日。まさかのまさか。こんなにも色々が今日じゃなくたっていいでしょうって思うほどだ。けど、タイミングっていうのは合うように出来ているらしい。最低だな、と思いつつ、そんな人生の仕打ちに呆れながらも出来ることを存分に出し切ったと思う。いや、もう出てこないくらいに絞り切った。

ここ連日の睡眠不足。周ちゃんのケアと両手じゃ抱えきれないくらいの量の課題。「詰め込みすぎたね。」と周ちゃんは言ってたけど、「周ちゃんが倒れるからじゃん。」とは、喉まで出かけたけど言わなかった。だって周ちゃんは目眩がするって言いながらも私の酷いレポートを何度も添削してくれたし、少しでも家事を手伝おうと3/100くらいは手伝ってくれてた。それに、私がこんなにハードな毎日を送ってるのは、そもそも大学なんかに行き始めたからだ。周ちゃんはGWのフィールドワークがハードで倒れただけ。たったのそれだけのこと。

今朝も3時過ぎに起きてレポートの修正。本当に間に合うんだろうか、と何度も何度も頭をよぎった。5本分の誤字脱字チェック、解答用紙の記入をして、次は別の課題の、。ああ、間に合わない。結局、電車の中でもレポートの修正して、大学で提出、トンボ帰りで駅前で夕飯の買い物をして、ケーキ、刺身、花、ワイン。ダッシュで帰宅。今度はウェブで残りのレポートを提出。18:20pm。終わった。けど、息つく暇もなく夕飯の支度。朝ごはんを食べたのは4時か5時。あまりの忙しさに空腹をどこに置いてきたかも覚えてない。テーブルに並んだご飯に周ちゃんは満面の笑み。よかった。

周ちゃん、お誕生日おめでとう。いつもありがとう。

春キャベツと新ニンニクとアンチョビのオイル蒸し

野菜 16.5,2023


昨晩、周ちゃんは夜中まで本を読んでたせいで、熟睡ができずに早朝に起きた。最悪だ。本が読めるようになったのはいいことだけど、私の時間を奪ってるのは周ちゃんなのは確かだ。どうして、こんなに忙しい時期に病気になんてなるの?と怒りたくなるけど、そんなこと言ったらダメだ。だけど、。悪気がないのはわかってるけど、私にも私の時間がある。もう、ずっとずっと走り続けてる。休みたい。心も、ちょっと疲れた。私の辛い気持ちはじゃあ誰が癒してくれるんだろう。朝一番にイライラしながらレポートの続きを書いていたけど、そんなもんはきっとない。私の機嫌は私で直す。あと、深夜まで読書するのはやめてって言えばいいだけ。

まるで私一人だけ最悪みたいになるのは、甘えたい裏返しだ。それに、私を幸せにしてよ。なんてのは、不幸になる元だから、さっさとそんな気持ちは捨てた方がいい。幸せになりたいなら、楽しいことを考える。それに尽きる。周ちゃんがどんなにイケメンだろうと、優しかろうと、この家に白馬に乗った王子様はやってこない。だったら一人暮らしでもして私だけの世界を作って王女様になる方が現実的ってもんだ。

眠い。疲れた。美味しいワインが飲みたい。欲望の渦にぐるぐると渦巻きながら、淡々と今日も勉強を続けてる。あとちょっと。

ハヤシライス

洋食 15.5,2023


今日は久しぶりにダイニングテーブルで一緒に食事をした。けど、やっぱり体調が悪かったみたいで辛そうだった。レポートがうまく言ってない。あと数日なのに、家事も周ちゃんの3食の食事や世話、買い出だし。疲れてる。

夕飯

夕飯 14.5,2023


周ちゃんはおにぎり以外のご飯も食べれるようになってきた。だけど、食事中も目が開けられないみたいで、半分くらい目を閉じてたべてる。そしてずっと会社も休んでる。

おにぎり

和食 13.5,2023


今日もおにぎり三昧だった。ストレスがどんどん溜まっていく。けど、ずっとベッドで寝ている周ちゃんに比べたら、私のストレスなんてワガママみたいなものだ。

あと6日。短いようで長い。

周ちゃんは本当に治るんだろうか。辛い顔ひとつしないですごいなって思う。
昼は有賀さんのスープを作ってみた。少し前に編集の柿本さんが作った本のレシピ。

5月12日

Journal 12.5,2023

テーブルの上の芍薬が気づけば枯れていた。全く気づかなかった。右手の痛みは今日もしくしくと続いてる。周ちゃんは目を開けて食事をすることが出来ないみたいで、おにぎりを作ってる。一日に何回おにぎりをつくるんだろうか。握るたびに手が痛い。一日でも早く良くなってほしい。レポート提出まで一週間を切った。それから、周ちゃんの誕生日までも一週間。

塩レモン寿司

夕飯 11.5,2023


今日も周ちゃんは朝から寝てる。基本的に食事はしないし、トイレへも起きてこない。スープを作ったり、バナナジュースを作ったりと色々してみてるけど、少しだけ飲んで、また死んだように寝てしまう。昨日よりは笑顔が増えたし、顔色もずっと良くなった。だけど、状況はそんなに良くない。目を開けるとぐるぐると見えるもの全てが回るらしく、目は大体閉じてるか、時々少しだけ開ける。

「ああ、まじか。」梃子の美容院へ行く時間に合わせたように窓の外で強い雨の音がした。一瞬、自分の運の悪さに、。とも思ったけれど、そんなこと考えてる時間だって今はもったいない。美容院までの道のりは、狭いうねうねの道路。交差点の入りずらい角。そしてスコールみたいな大雨。まさにイヤの3乗。本当は自転車で行く予定だったけれど、こんな大雨じゃ無理。ダメだ、。考えただけで怖くなる。梃子を抱き抱えて車に飛び乗った。いつもなら「周ちゃん一緒に行こうよ」ってお願いしただろうけど、あんな周ちゃんを連れていくわけにはいかない。大丈夫。きっとなんとかなる。

なんだか気持ちが落ち込んでる。いや、落ち込んでるというか、いっぱいいっぱいだ。3月からこんつめてやってきた勉強は来週、再来週提出のレポートで一旦ゴール。勉強の進みが日に日に遅れてる。ただ私が焦ってるだけなのか、どんどん勉強の難易度が上がってるから進み具合が悪いのか、理由はきっと色々だと思う。それに、昨日は殆ど勉強できなかった。だけど、周ちゃんの所為には絶対にしたくない。ちゃんと計画を立てて、バッファーも十分に作っておいたんだから。私が悪い。それに、勉強が嫌っていうんじゃなくて、時間がどうやったって足りないのが問題だ。ずっとずっと走ってるのに、変わらない景色。途方に暮れかけてる。

そして、ついでと言っちゃなんだけど、右腕がプチ腱鞘炎みたいで痛い。もうイヤでイヤでイヤ。心理研究法も全くわからない。7冊以上の関連本を回し読みしてるけど、一体何なんだろうか。丸めてちぎって放り投げてやりたいくらいだ。

夕方、目を覚ました周ちゃんに少しだけ尋ねてみた。「ちょっと話してもいい?」目をあけると辛いけど、話すことは出来るよと相談に乗ってくれた。「なんか、うまく進まなくて。先生の言ってることが全然わからないんだよ。設問の意味を捉えられないの。」「そうか。それは難しいね。だけどさ、それがテストな以上、必ず答えはあるし、そう決めてやるといいんだよ。」

周ちゃんはすごい。解けなくて悩んで苦しんでいたけど、そうじゃない。問題は出来ないことじゃなくて、どこに向かいたいかだ。出来ないことばかりに気持ちがひっぱられていた。ゴールは必ずある。再来週には全てのレポートも終わってる。というか締め切りが終わってる。答えはあるんだ。あと、時間もない。これも答えの一つだ。

ああ、zaraに行きたい、勉強が出来る人になりたい。

5月10日

Journal 10.5,2023


母から電話。来週の誕生日のことだ。「ママは24か31がいいかな。ずっと仕事が忙しくて、そこしかダメ。」「わかった。予約入れておくから。」誕生日は母が好きな浅草のレストランに行く約束をしてる。母がいつからそこに通ってるのか知らないけど、子供の頃からそのレストランの名前はよく耳にしていた。

「それで、周ちゃんはどう?」「早いねぇ。あっちゃんに聞いたの?」女っていうのはほんとうにすごい。私が離婚した時も殆ど人に会ってないのにあっという間に広まったもんだなと思ったけれど、悪い話ほど光よりも早いスピードで飛んでいく。

母とは周ちゃんの体調のこと、それからとばっちりを受けた父や兄、カイトの体調の話。庭のゴーヤの苗をあげるだの、姉の家の庭になってるロメインレタスがすごいだのって、どうでもいい話をぺちゃくちゃと30分以上話してた。子供の頃はおばさん達のどうでもいい話が長くて退屈で、「もう、明日になっちゃうよ!」って母に本気で怒っていたけれど、自分がいざそのおばさんの年齢になってみると、どうでもいい話っていうのは時間をあっという間にたいらげる。母との電話を切って、しばらく和室で勉強していると2階から周ちゃんが降りてくる足音がした。ガチャン。そのままトイレへ。

めまいは止まったのかな。そう思った瞬間になんだかいつもと違う音がした。あれ、もしかして。直ぐにgoogle mapを開いて総合病院を探した。いや、嘘だよね。いや、嘘なら嘘でいい。母の言葉、本当にならないよね。「よしみを未亡人にしないでよ。」「ママ、それはそれだよ。仕方ないでしょ。けど、若いうちに病気で死なれるのは嫌だな。」周ちゃんのお父さんは脳の病気で亡くなった。周ちゃんも頭痛持ちで、神経質で、いろいろと細かくて優しくて真面目で。そして、数日前の吐き気とめまい。いまは多分。トイレで嘔吐を繰り返してると思う。

数十分して出てきた周ちゃんは洗面所で手や口を洗ってる。「周ちゃん。吐いてたよね。病院、やっぱり行こう。」昨晩、明日は整体へ行こうかなと話してた。前に同じようなことがあった時に整体へ行ったら大分楽になったのだそう。けど、私はあまり賛成じゃない。その整体は周ちゃんの紹介で行ったことがあるけど、結構なヤブだった。悪い先生じゃないのはわかる。けど、背中ぎっくりの私の背中を押していた。背中ぎっくりは背中の筋肉が破れる症状。破れたところを触ったらますます悪化する。

「明日の朝の状況で整体に行くか、脳外科に行くか考えよう。私、車だすからね。」

急いであちこちの病院へ電話をかけた。うちに来るなら紹介状が必要だの、それだけの症状じゃ何科だかわからないだの、感じの悪い電話が続いた。一昨日に行った耳鼻科へもう一度電話するようにと言われ、電話番号を調べると休診日。マジか。周ちゃんはどんどん衰弱していってる。なんか気がないっていうか、存在がどんどん無くなっていくような。どうしよう。

「今から行ってもいいですか?数日前に行った病院が休みで。」「はい。大丈夫ですよ。ぜひお越しください。」

何時間病院にいたんだろう。診察室へ入った周ちゃんは1時間くらい出てこなかった。だけど、きっと大丈夫。診察室の中にいれば、先生がいる。点滴でも打ってるのか、倒れて寝ているのかどちらかだろう。鞄いっぱいに持ってきた参考書を診察室の出口をちらちら見ながら読み続けた。

「熊谷さん?」看護婦の女性に呼ばれて診察室へ入ると目をつぶった周ちゃんがいた。病名は、良性発作性頭位めまい症。名前の通り突発性の病気で原因も不明だが、一度かかると再発率は20%と高確率の病気。今回は脳には異常はないとのことだった。良かった。

帰宅したのは13時を過ぎていた。家を出るときに、朝ご飯を食べていなかったし、空腹でイライラしたら嫌だなと思ってキッチンにあった残り物のご飯を急いでラップで包み鞄に放り込んだ。すっかり忘れてた。具も味もない白いおにぎりは参考書に潰されて底の方でぺっちゃんこになってる。ラップから少しだけはみ出した米がipadの先にベッチャリとついていた。ああ、そうって思っただけで、濡れたティッシュを持ってきて拭いた。こういう時は感情が変になってるのだろう。うんともすんともしない。

午後は午前できなかった分を取り戻そうと急いで勉強を始めたけど、なんだか上手く進まない。今やってるところが難しいからかもしれないし、まだ気が動転しているのかもしれない。それに、今日はいつもなら停められないような地下の狭いギリギリの駐車場に停めたり、慌ててチェンジレバーをパーキングにしないでエンジン切ったり、病院でも先生に沢山の質問をしていた。なんだかなんなんだろう。私じゃないみたいだった。ものすごく慌てていたけど、強くてしっかりもしていた。

焼きそら豆

野菜, Journal 09.5,2023

午後過ぎに周ちゃんがミュージアムから帰ってきた。吐き気とめまいが酷いらしい。夕飯も私がそら豆を口に含む度に美味しいとうるさいから、きっとつられて食べていたのかもしれない。昨日病院で薬を処方してもらってたけど、症状は悪化してる。

カツオ丼

Journal 07.5,2023


周ちゃんが数日ぶりに帰宅した。漁師みたいに灼けた肌。ちょっと別人みたい。帰ってすぐにハグをしたら溶けるみたいにホッとした。だけど、数日間のひとり暮らしはやっぱり最高だった。私が大金持ちだったら、東京かどこかに絶対別邸をつくるだろう。マンションの小さな一室じゃなくて、ちゃんと綺麗に光の入る、ベッドもダブルベッドの別邸を。それは夢のまた夢の話だけど。

午前に納品を終えて、急いで電車に乗って代々木公園へ向かった。夕方前に青山のアップルストアの予約をいれてる。買ったばかりのapple pencilが壊れたからだ。夏みたいな天気の今日。風だけは台風みたいにビュービュー吹いていた。代々木公園、思い出の場所だ。本当にここではよく遊んだ。仕事をサボったり、デートをしたり、写真も沢山撮った。渋谷は私が一番好きな街なのかもしれない。今ほど流行っていなかった奥渋や上原も好きな場所だった。自転車であちこちを走った。朝が来るまで好きなだけ思いきりに遊んだ。クリスマスにデートしたレストラン、ビルの一角にある友達の古着屋、代々木公園の交番前交差点で恋に落ちたこともある。その彼とは宮益坂の交差点で深夜に長いキスをした。

今日は山形からでてきたざおー家族と、昔よく遊んでたメンツが集まって代々木公園でピクニック。みんなそれぞれに家族が出来て、お母さんやお父さんになってたり、立派になっていたりと、話す事が沢山あるような気もしたけど、何から話していいのかわからないような。結局、最近あったような事だけを話した。後は風が強くて、砂埃がいろいろを持っていってしまったように思う。

色々と想うことがあるはずなのに、思い出せないことが沢山ある。だけど、思い出のことよりも、時間は変わったんだってことを考えてた。みんなとは20代の頃に出会ったけれど、今は40代そこそこ。もう、誰も渋谷では遊ばない。

駅前で生カツオを見つけて買って帰った。カツオの叩きを作って、ご飯を炊いて酢飯にしてカツオ丼を作った。久しぶりの周ちゃんとのご飯。私と結婚してくれてありがとう、不意にそう思った。口には出さなかったけど、代わりに周ちゃんが大好きだよと伝えた。

昼間、和美ちゃんが「よしみちゃん、幸せになって本当に良かったね。」って言ってた。今が完全な幸福?とは言えないけど、昔の私と比べたら180度違う世界を生きてる。家は安心で安全な場所に変わった。夫にもう振り回されることはない。寝ないで仕事に行くこともないし、泣きながら仕事へ向かうことも無くなった。撮影中にものすごい数の着信が携帯電話に残ることも無くなった。歯の奥をぐぅっと食いしばらなくなり、代わりによく笑うようになった。

時間はみんなそれぞれに自由に与えられている筈なのに、私はどうしてあんなに苦しい場所にいたんだろう。夫のことを愛していたからだけど、本当にそれだけだったんだろうか。

時々、今でも考えるけど、答えはきっとノー。

晩酌

夕飯 02.5,2023


周ちゃんは土曜日までフィールドワークで帰らない。最高だけど、会いたいなともおもう。

カレー

カレー 30.4,2023


今日は朝から周ちゃんは仕事。私も家で仕事。午前に母からの電話が鳴った。「GWにみんなでご飯でもどう?」とのことだったけど、GWは忙しいからと断った。「どこも混んでるしね、やっちゃん家でバーベキューでもしようかしら。」と言い母は電話を切った。本当は行きたい。だけど、時間がない。

今日も私は相変わらずでイライラしてる。詰まってる仕事や勉強に忙殺されてるからで、どうにもこうにも上手に出来ない私の不甲斐なさにどうしようもない気持ちで一杯だ。なのに、だいたいは周ちゃんにあたってる。甘えたりもしてる。どっちにしろ、いい加減にした方がいいのはたしか。

“私の帽子知らない?” 周ちゃんにLINEを打つと、”ごめん。持って来ちゃった。” と直ぐに返信があった。洗面所で10分もバタバタと帽子を探してたのに、早く言ってよ。急いで梃子に夕飯をあげて支度をしながらまたイライラした。自転車で飛ばしてプールへ向かうと待ち合わせの時間を過ぎても周ちゃんはこない。家事、仕事、勉強、梃子の世話に夕飯の準備。読書する時間もなければ、ネットサーフィンする時間だってない。もう、なんなんなの。なんで私ばっかりこんなに忙しいんだよ。

帽子を受け取るとさっさと更衣室へ向かった。周ちゃんは私がプールへ入ってからしばらくしてやってきた。無視して一人で泳いでると隣のレーンでビート板で泳ぐ周ちゃん。「どうしたの?」「ゴーグル忘れちゃって。」なんなんだよこいつ、。心の中でまた一人イライラした。「私の途中で貸してあげるから。」ただ、無心で泳ぎ続けた。プールの中では水がぐんぐんと前からやってくる。そして私の身体も水みたいに流れていく。

私と周ちゃんは全く違う。背丈も違えば、女と男っていう性別も違う。私はずっと東京にいたし、周ちゃんは東北や九州にいた。だから、付き合う友達の種類も、遊んできた場所だって違う。周ちゃんは4人兄弟の2番目で、私は3人兄弟の末っ子。私は2回目の結婚で、周ちゃんは初めての結婚。

共通点と言えば三つくらい。チベット文化が好きなことと、家族がアメリカにいること、あとは互いに恋愛はしっかりとしてきたこと。私たちがパズルだとしてもそれが一枚になる日は永遠に来ないと思う。私が周ちゃんを好きになったきっかけはカッコいいからで、周ちゃんが私を好きになった理由は直観。そんな二人が結婚した。別に恋に落ちたわけでもなくて、ただ結婚をした。

趣味も好きな映画も音楽だって全然違う。食べ物の話をしたら最悪だ。採れたての美味しい野菜を私はすぐに食べたいけど、周ちゃんは古い野菜から食べようとする。周ちゃんはティーパックひとつで二つのお茶を淹れるし、コーヒーは恐ろしく濃いけど、私はカフェインレスをしてるからコーヒーはお湯みたいに薄いのが好みだし、お茶は香りを楽しみたいから味気のないお茶は嫌い。

向こうの方にプールサイドを歩く周ちゃんがいる。周ちゃんってあんなにマッチョだったっけ。数え切れないくらい周ちゃんの裸をベッドで見ているのに、なんだか胸がドキドキした。

近くで見ると見えないことがある。ディティールが潰れてしまうというか、本当は複雑に色々が詰まってる筈なのにつるりとした表面ひとつみたいになってしまう。好きになればなるほどに、もっともっと近づきたいのに、近づけば近づくほどに触れているはずの周ちゃんは見えなくなっていく。

だけど、周ちゃんは本当は優しい。いつも丁寧で穏やかだ。私のように感情的になることはないし、いつも同じ笑顔で待っていてくれる。順序立てないと進められないとか、なんでも説明書を読むところからとか、全く理解できないようなことも沢山あるけれど、だけど、だから私はこの男が好きだ。好きなのは顔だけじゃない。もっともっと沢山が好きでそれは私がひとつも持っていないものだ。

顔が小さいくせにマッチョな身体も好きだし、辞書みたいになんでも知ってるところも好きだ。植物をすぐに枯らすところは嫌いだけど、梃子の面倒もよく見てくれるし、私が忙しい時は散歩も行ってくれる。帰りが遅い時は魚を焼いて味噌汁も作ってくれる。周ちゃんは鼻炎だからか味が下手くそだけど、味噌汁はすごく美味しい。それに、悲しい話も嬉しい話もいつも同じように聞いてくれる。寝る前にベッドの横に積み上がった難しい本の話をしてくれるのだって好きだ。なのに、どうして見えなくなっちゃうんだろう。

周ちゃんは私と結婚して本当に幸せなんだろうか。幸せにしてあげたいと思っているのに、私は自分の事ばかりを考えてる。忙しいのは周ちゃんの所為じゃない。

夕飯

夕飯 28.4,2023


今日は藤原さんが泊まりにきた。久しぶりにたらふくビールを飲んで夜更かしして子供みたいにはしゃいだ。開いたままの教科書も、GW前に片付けなきゃいけない仕事も、書斎に残ってる。今夜は何も考えない。

日頃の鬱憤が溜まってるわけじゃないけど、ぎゅうぎゅうに色々が詰め込まれた毎日に少し疲れてる。好きでやってることだけど、やめたいとも思わないけど、勉強をするのは、ずーっと戦い続けてるみたいで時々苦しい。ちっちゃいモンスターから大きくて見たくもないような恐ろしい大物モンスターまでやっつけてもやっつけても向かってくる。そういう時に不意に離婚の時のことを思い出す。そうだ、あの長くて苦しい日々のゴールまでの道のりを考えたら、こんなのつま先の先っちょくらいなものだ。全然、ヨユー。

とはいえビールを思い切りに飲んでる私の頭の片隅には結局ずっと√がいた。最後にどうしても解けなかった心理統計学の問題。あれはどうやったら解けるんだろう。

周ちゃんは平日の夜だからか、「宴もたけなわ、。」と何度も口を挟んできた。周ちゃんだけシラフだもの、仕方がない。私が周ちゃんと付き合ったのはイケメンだからっていう理由だけじゃない。お酒を飲まないっていうのもポイントだった。飲酒しない男、最高だ。

「お酒を一緒に飲めないっていやだな〜。」友人達に婚約者がお酒を飲まない話をした時に何度か言われたことがある。昔の私なら激しく同意しただろうけど、1度目の結婚でお酒で最悪になる男を見ちゃったものだから、男とお酒の因果関係には酷く偏見がある。偏見というか、ほとんど妄想かもしれない。出会って1年が経ち、周ちゃんがある日突然に暴力を振るってくるんじゃないか?みたいな疑心を持つことは今では1%も無くなったけれど、外で男の人の大きな声や荒ぶった素振りや酷い酔っ払いに出会うといまだに身体がビクっと過剰に反応してしまう。そして、本能的に「逃げなきゃ。」と胸の鼓動が全身をノックするみたいに小さく叩いてくる。

周ちゃんはやれやれって顔で寝室へ上がった。それから1時間くらいして私達も寝ることにしたけど、本当はもうちょっと飲んでいたかった。

勉強は楽しいけど時間を奪う。友達と遊ぶ時間は完全に犠牲になったし、日記を書く時間だって惜しいと思ってしまう。だけど、IQが中学で止まってる私が世界を知るには沢山の時間がきっと必要なんだということも理解してる。勉強すればする程に山頂は高くなっていくように見えるし、どうしてこんなに勉強するのか正直よくわからないけど、大学を入ったからには卒業したいっていうのも目標だけど、出来るところまでやりたいっていう気持ちが一番強い気がする。

試したい?挑戦?ちょっと違う感じ。もう逃げたくないの方が近い。今の結婚で幸せを感じると、不意に元夫のことを思い出したりもするのもそう。過去の私はひつこく今でもあの日々を後悔してる。だから、もう逃げたくないんだろうか。よくわからないや。

4月25日

Journal 25.4,2023


朝の3時半、目覚ましは20分後に鳴る予定。起きたくない。しばらく目をつぶっていたけど、頭の中だけが混乱しつづけてる。結局、今から逃げたって意味がないことくらいわかってる。30分もしないうちに諦めてベッドから起き上がった。昨晩は周ちゃんにしがみついて寝た。私の苛々や不安を知ってるのか知らないのか、何も言わずに周ちゃんは本を読んでた。

もう生まれてから何度もやってるから知ってる。この不安は悲しい不安だ。信じていたものが失われていくときのもので、人それぞれに色々な悲しみがあると思うけれど、私の場合、信頼が消えていく時にじわじわと深い悲しみがやってくる。

逆に言えば、人を信じることが好きなんだろう。そうして生きることがわたしの生き甲斐なのかもしれない。未だ夜が続く真っ暗な世界の中で教科書を開いて、ぼんやりと考えていた。

携帯を開くと姉からLINEが入っていた。”なんかあった?” 簡単に説明すると、”だから関わるなって言ったじゃん!” と直ぐに返答があった。あっちは前日の15pmくらい。”修行じゃん。ラッキーだね♡” とまたメールが入った。肩の力がどっと抜けていく。

昨日も作業の合間に何度も考えていた。問題はきっと私がこんな気持ちになってしまう性質だってこと。だから、人を信じるのをやめたらいいとか、関係性をいきなりシャットダウンしたらいいって事じゃない。またやっちゃった、。でもいいけど、世の中にはそうゆう人がいるんだ。で終わらさなきゃいけない。

わざわざ友達や周ちゃんに慰めてもらう事でもない。だって、話したらもっと悲しくなるし、怒りだす人もいるだろう。私の見方を増やしたところで、非の有所を探し当てたところで、私の心はどうにもならない。そんな姿形のない幽霊みたいな気持とは戦わなくていい。

それにしても姉は姉らしくて、いつもいい事を言う。だよねって思った。前に進むには、いつまでも哀しんでる場合じゃない。行動するのみ、だ。

夕方に久しぶりに成田さんから電話があった。来週の撮影の話だったけど、成田さんの彼女の話を聞いたりして結局30分近く電話をしていた。恋が忙しくて仕事どころじゃないらしい。本人が悩んでるところ申し訳ないけどかわいくて仕方がなかった。「ムズかしいです〜!」って電話の向こうで悶絶する姿になんだか気付けば気持は明るくなっていた。

さぁ、前へ進もう。辛いこともあれば、いいこともある。私に平穏を取り戻してくれたのは、人を大切にする人たちだった。

トマトと卵の中華炒め

中華 24.4,2023


朝、周ちゃんにきつい事を言ってしまった。原因は周ちゃんじゃない。私の心が疲れていたり、少し忙しいからだ。夜は一緒に餃子でも包もうかと思ったけれど、周ちゃんは仕事から帰るや否や木曜日に藤原さんが泊まりにくるんくるので布団を洗いにランドリーへ出かけた。

沢山話したいことがあるけど、話せなかった。私、何やってんだろう。なんだか周ちゃんが離れていく感じがした。だけど、それは私の所為だ。

ダルバート

カレー 23.4,2023


昨日は久しぶりにナッチャンに会った。那須で仕事の打ち合わせで会った以来だ。今日は朝は仕事と庭の植え替え、午後は選挙へ行ってから近所の喫茶店で周ちゃんと勉強。昨日のお酒が少し残ってる。

前に角田さんが「年齢が過ぎても前へでたがる方もいらっしゃるけど、どうしてなんでしょうね。」って言ってたことを時々思い出す。昨晩はやっぱり飲み過ぎた。ずっとモヤモヤしてることが原因だろう。片手にビールを持ちながら周ちゃんに聞いた。

「どうして自分だけの利益のために必死になっちゃうんだろうね。そういう人っているよね。」「いるよ。そんな人、会社なんて沢山いるよ。」「自分だけ昇進するとか、お金を貰うとか、目の前の目的だけの為に周りを排除?なんて言うんだろう。なんかさ、上手く説明できないんだけど。」「そういう人とは一緒にいたくないかな。」「それ、それだよ。それが答えだよね。」

結局、目の前の何かは手に入ったとしても、「ああ、残念な人。」って人に思われたら、失った信頼を元に戻すことは難しい。もしくは、同じような目線で付き合っていくしかない。この人は私にとって利益があるの?ないの?って。だから、やっぱりそんな面倒な関係なら面倒だし、そもそも楽しくない。

けど、私も若い時はそんな時期があった。数年だけデザイナーをしていた頃のはなし。社長に気に入られたいとか、特別に思われたいとか。あの頃は本当に青臭かった。思い出すだけでもゾッとする。

「けどさ、そういう人って結局、そうするしかない人なんだよ。」
周ちゃんが言った。確かに、青臭い私にはそんな事しか出来なかった。一緒に働いてる人と楽しくやりたいとか、作ったもので誰かを喜ばせたいとか、私のことばっかりで誰かのことを想ってあげる余裕がなかったし、足らない自分を補うことばかりを考えていた。

勝手なものだなと思うけれど、人って他人へまで期待してしまう生き物だ。けど、現実はそうじゃないこともある。その人の想像しない一面を知った時に、あっそう。バイバイ。なんて簡単にはいけなくて、目をつぶってみたり、自分のほっぺをつねってみたり、どうにもならなくて、私が見間違えたんだと問題の矛先を自分に向けてみたりすることだってある。だけど、結局どれにしたって虚しいからであってどうにもなれないまま時間だけが過ぎていく。大人になればなるほど、頭で理解することが増えていく一方で世界は明確な答えを教えてくれなくなった。

私の今日は味の決まらないカレーみたいだ。

春キャベツの春巻き

おかず 19.4,2023

朝、近所で春キャベツを買えたので夜は春キャベツの春巻き。あと、数日前に仕込んでおいた塩豚と新玉ねぎのスープ。冬野菜も楽しかったけれど、春には春野菜の楽しさがある。同じようにやってくる季節だけど、いつも新鮮な気持ちで次の季節を待ってしまう。

引っ越してきてから増えた体重はめっきり変わる気はないみたいだ。「少しくらい太ってた方が何かあった時に安心だよ。」最近、私がよく周ちゃんによく言う言葉。

シーフードスパゲッティ

パスタ 18.4,2023


今夜は、シーフードスパゲッティ、納豆と梅の味噌汁、小松菜の醤油麹和え。今日は忙しくて30分で作れる夕飯っていうのを献立テーマにした。知らなかったけれど、納豆と梅の味噌汁は周ちゃんの好物なんだとか。まだまだ知らないことが沢山ある。

それから、最近の周ちゃんのブームなのか、夜中に携帯のシャッター音で起こされる。勉強のためにより早起きになった私は21時も過ぎるとベッドに入り3秒と経たぬ間に夢の中へ。周ちゃんはそんな私と梃子の寝顔を撮っているらしい。ちょっとだけ嬉しい反面、もう可愛さみたいなものはとっくに何処かへ忘れてきた年齢の身分なゆえに恥じらいの方が勝つ。

思い返せば、前の夫も同じような事をよくやってた。そんなに中年女の寝相は面白いのか。猫のように可愛く眠る友人を旅先で見かける度に心底羨ましく思った。私もあんな風に寝てみたい。こないだなんて寝ながらオナラをしてしまった。男の前で堂々とオナラをするだなんて人生で初めてだ。自分のオナラの音でびっくりして起きたけど直ぐさま寝たフリをした。こういう時の私の頭の回転率は猛烈に早い。だけど未だに恥ずかしくて記憶を抹消しようと努めてる。

今さらだけど、再来月あたり、。勉強が少し落ち着いたらきちんとしようと思う。もうちょっと女性らしくというか、ずっといい感じにしたい。パジャマもGAPのクリスマスバージョンから少し大人っぽいのに変えたい。家でつける矯正下着も買いたい。このままだときっと妻として愛想をつかされそうで危険な気がして。頑張ろう。

お茶漬け

和食, 朝食 15.4,2023


パリからの手紙。今日は淡いピンク色の封筒だった。そして、その中身も同じように淡くて温かくて、ああ、恋。そうだ、恋ってこうこう。からだが3cmくらい地面から浮いちゃう感じ。ふわふわして柔らかくて、まるでそうピンク色の毎日の連続だ。その子はもうすぐ結婚する。結婚までの時間をカウントダウンする中、ふたりだけのふたりの時間が紡がれていく日々のことが書かれていた。

最近は忙しすぎて心が何処かへ行ってしまってる。来月にレポートの提出が4つ。そもそも、レポートなんて大学で書いた覚えがない。だけど、自分で決めたことだから。勉強、仕事、勉強、作品を1日にぎゅっと詰め込み過ぎてる。家事は正直もっと周ちゃんにお願いしたいけど、苛々ばかりが募っていく一方でまだ言い出せない。

勉強を始めてからいい事も沢山ある。より一層に写真が鮮やかに見えるようになった。なんだか写真を始めた頃みたいに。ファインダーを覗くだけで世界が少し特別に見える。何かが起こるような何かを見つけられるような。それこそ恋みたいなものかもしれない。

長い事撮ってるんだから、もっと巧妙に考えながらやった方がいいとも思うのだけど、目の前にある光景に深く呼吸をして息を吐くように、スゥー。ハァー。って、最近は写真を撮ることが気持ちが良くて仕方がない。

筍の刺身

和食 13.4,2023

なんだか沖縄での私は我儘のカタマリみたいで、そのまま丸めて那覇空港のゴミ箱にでも捨ててしまいたいくらいだった。昨晩に帰宅し、数日ぶりの家でいつもの私のことをようやく思い出した。周ちゃんは優しくて賢い。とにかく今まで長い時間勉強してきたのだから、頭が辞書みたいになっててもいいじゃないか。それって結構すごい事だし、野良犬みたいにアカデミックとは正反対の場所で生息してきた私と合わなくて当たり前だ。そんな事にいちいち噛み付いてる私はただのバカ。

なんでもかんでも頭の辞書を開く周ちゃんと、目や耳や手で触れた話をする私。きっと辞書には八角が入っていると書いてあったんだろう。だけど、食べてみたらわかるじゃん。これは八角じゃなくて醤油と砂糖だけしか使ってない。「これはやっぱり八角がしっかり際立っているね。」周ちゃんは当たり前のようにトンチンカンな話をする。日常ならまぁいっかと聞き流せることも、四六時中、隣でそんな話をされると我慢ならなくなる。

だけど、私だって周ちゃんからしたらトンチンカン女だろう。「この本何言ってるかわかんないんだけど、なんで急にここでこの言葉使うわけ?」飛行機の中で大学の参考書を開きブツクサ文句を言ってると綺麗に答えてくれた。結局、私の読み間違え。「この前の文章を見ると、この前の数行に説明があるね。これはね、この章では何をしたらいいのかっていう目的について語ってくれてるんだよ。」「え。そうなんだ。そうか、いきなり出て来た言葉じゃなくて、それが大事なんですって言ってくれてたんだね。」周ちゃんからしたら、読めばわかるじゃんって話だ。けど、そんな事は絶対に言わない。

きっと私には一人の時間が必要なんだと思う。朝から晩まで数日間もずっと一緒にいると、どうやら隣にいる周ちゃんは私の一部のようになってしまうようだ。思い通りにいかない取ってつけたような私となった周ちゃんを膝にできたカサブタみたいにとってやろうと、気になって気になって引っ掻いてしまう。こんな事をしてたら嫌われてしまうんじゃないか。海沿いの道路を走りながら何度も考えた。

「周ちゃんって好きな人いる?」ベッドで本を読む周ちゃんの横で目をつぶりながら聞いた。前にも聞いたことがある質問。だけど毎回周ちゃんの答えは同じだ。けげんな顔をしてる。その度に私は一体何が聞きたいんだろうと思う。もしかして、心のどこかで前の婚約者のことを今でも想っていて欲しいとでも思っているんだろうか。

周ちゃんを好きになればなるほどに私は我儘になってゆき、私の妄想の中だけで生きている周ちゃんの婚約者だった女性のことを考えてみたりと私はしょうもない事をし始める。不幸になるのは簡単だけど、幸せになっていくのは人を不安にさせる。

たぶん、ずっと一緒にいたいんだと思う。

夕飯は朝どれの筍を下処理して刺身にした。周ちゃんの知り合いに頂いた大分のカトレア醤油で食べた。「懐かしいなぁ。」周ちゃんは何度もそう言ってた。

アスパラとトマトとモッツレラのスパゲッティー

パスタ 01.4,2023


午後から角田さんと三鷹のマルシェへ行った。今日の約束は少し前に会って話したいと言われていたことだ。年始に私の撮った映像を見て感動したと熱々の湯気がこちらまで届くようなメールをいただいた。尊敬する角田さんからの突然の連絡に正直すごく驚いたけど、なにかの間違いかもと冷静に現実から目を背けたりして、ただ、ありがとうございます。とだけ返した。だから、会って話したいというのは、夢の話だろうと勝手に決めていた。

角田さんは変わってる。本人も「私は変わってるんです。」とよく言うけど、本当にその言葉の通り。同じような人に会ったことがない。一緒にいると驚くようなことばかりを言いだすし、かと思えば人への愛情が深くて胸を打たれてみたり。料理を生業にしているけど、どんなことよりも先ず人を大切にする姿や、そうして物の本質を嗅ぎ分ける嗅覚みたいなものが抜群に長けてるような、それが何かはハッキリとはわからないけれど、たぶん生物的なセンスとゆうか、不思議な魅力がある。

今日は角田さんの知り合いのお店をいくつか回り最近私が夢中になってる青梅野菜の、のらぼう菜の話なんかをした。それから近くの喫茶店へ入って色々な話をした。

「言葉でなんて説明していいのかわからないんですけど。」私よりも年上で、ずっとずっとキャリアがあって、立派な仕事を沢山してきてる角田さんは、偉ぶることもないし、お姉さんみたいな感じで話すこともないし、本当に素直にわからなくて、その言葉が見つからないけど伝えたいと一生懸命に言葉を探していた。そんな様子を見ているとじわじわと目頭が熱くなっていった。

前に男のカップルと一緒によく彼らの家で食卓を共にしていた時があった。あの時間が私は大好きだった。男なのか女でもないような、同じ液体の中にいるスープみたいに流動的に流れてゆく。同胞感に臆することなく、おのおの流されながらもぺちゃくちゃと話し続ける。みんな同じじゃん。そんな気持ちが心地がいいし安心だし、恋人とベッドの中で柔らかい毛布に包まれているような。だけど恋人の前みたいに女になる必要もない。久しぶりのあの感覚に似ていた。

「あの時は離婚直後で、なんというか、食べなきゃというか生きなきゃって。とにかくもう怖いことから逃げちゃいけないって。そう思って映像を撮り始めたんです。」

頼んだアイスコーヒーを一気に飲んで話を続けた。私があの日々の中で大変だったことは日記に書いてるくらいで姉以外の誰かには話してない。ほんの2年前の話だけど、まだ毎日が怖くて仕方がなかったし、生きてるんだか死んでるんだかもよくわからなかった。身体の感覚が半分麻痺しているような毎日の中で撮り続けた。

角田さんに私のことは殆ど言ってない。だけど、生きなきゃと必死になっていた私のことを、水に洗われる紫蘇や、フライパンの上で回るスパゲッティの映像から、とにかくそう感じたのだとか。

今の自分の気持ちが全くよくわからない。だけど、帰り道に角田さんの背中を見ていたらなんだかすごくハグしたくなった。

春の夜風が冷たくて清々しい。角田さんといると明るいきもちになる。