焼き筍

夕飯 13.4,2022

朝は少し寝坊した。本当は4時半に起きて仕事をしようと思ってたけど、起きたのは6時過ぎ。少し書斎で片付けごとをしてまたベッドへ戻った。寝起きの周ちゃんとセックスをしてまた普通の私達の朝がやってきた。今日も暑そうだな。ベッドルームや吹き抜けの階段が光で充満してる。一昨日に買ったコッペパンで卵サンドを作って、お茶をポットに入れて周ちゃんと梃子の散歩へ出た。

何であんな事で喧嘩みたいになっちゃったのかわからないけれど、私の言うそれと、周ちゃんの言うそれは交れなかった。だってさ、絶対に。なんて当たり前のような話をしても、それは私だけの世界の見方であって、それが100%正しかったとしても、それは私にとって正しいとしていること。ほんの小さな事でも一瞬で大きな溝なのか壁なのかが私達に果てしなく遠いいような距離を作った。かける言葉ひとつひとつが胡散臭く聞こえてしまったり、どうしたらまた元に戻れるのか途方に暮れていたけど、もしかしたら周ちゃんもそうだったのかもしれない。昨晩の夜中に周ちゃんの背中を見てすごく寂しくなった。少し意地を張っている自分がいそうな気もしていたし、そんなプライドは誰のためにもならないことくらいわかってた。

裏山で気に入っている場所がある。そこは森の中に木のテーブルと椅子があって、小さな広場のようになってる。そこに腰掛けて朝食を始めた。ウグイスだとか鳥の声が気持ちがいい。そのうちに梃子と周ちゃん、私も追いかけっこをして、散々走って、家路に着いた。

“筍、買っていくね。” 仕事に出た周ちゃんから写真と一緒にメールが送られてきた。ミュージアムの近くの畑で採れたのだそう。じゃあ、今日は春キャベツの春巻きにしようかな。19時前、床屋に寄って髪がさっぱりした周ちゃんが帰ってきた。手には菜の花を持ってる。「おみやげだよ。」「どうしたの?」「拾ってきたよ。」そのまま、本棚の隣にある黒い花瓶に花をさして二階に上がった。菜の花、綺麗だな。周ちゃんって可愛いな。筍を切って糠でアク抜きを始めた。「周ちゃん、筍はどうやって食べる?」「刺身もいいし、焼きもいいよね。」

夕飯は春キャベツの春巻き、蕪のサラダ、豚の角煮、葱とワカメの味噌汁、納豆、ご飯。筍は焼き筍にして食べた。周ちゃんが春巻きを美味しい美味しいって何度も言ってた。こっちに引っ越してきて変わった事の一つに、近所で採れる野菜がとにかく美味しい。そして私達はきっと仲直りをした。

うどん

Journal 12.4,2022

夜寝た時は良かった。朝起きた時も。6時を過ぎた頃、書斎で作業をしてると周ちゃんが「あ!」と言って起きる音がした。そのまま直ぐに外にでてバタバタとなにかを始めた。もしかして外の倉庫にしまってる引っ越しの段ボールをまとめてるのかな。私も一緒にやるって言ったのにな。昨日の件で申し訳なく感じたのか全部一人でやるって寝る前に言ってた。結構な量の段ボール。まさか一人で捨てたりしないよね。しばらく様子をうかがっていたけれど一向に家に入ってこない。慌てて服を着て1階に降りていこうとすると、周ちゃんが玄関から戻ってきた。「段ボールやってた?」「うん。捨ててきたよ。」「私もやるって言ったのに。」難しい。

朝ごはんもぎこちなく食べた。周ちゃんに話しかけても棒読みのセリフみたいな言葉だけが返ってくる。難しい。私の言葉で言うならば、もう私は怒ってないし、周ちゃんも悪く無い。問題は解決したからいいんじゃないかな。いや、それは私の問題についてなだけだ。周ちゃんにとってはそうじゃない。傷跡みたいなものが周ちゃんを踏み潰してしまってぺっちゃんこに、周ちゃんっていう色々が一枚の影のようになってしまった。私が出かける時に玄関ではいつものようにハグをした。「大好きだよ。」周ちゃんはいつもとは違う言葉を言った。私は「いってきます。」とだけ言った。別に深い意味はなかったけど、後から思い返すと同じように返しておくべきだったと後悔した。

出先でも梃子の写真を送ってくれたり、メールだとかはいつもみたいだった。帰宅して顔を見ると、またぺっちゃんこの周ちゃん。私の顔見ると思い出すのかな。だけど、私は怒ってない。周ちゃんの部屋へ行って少しだけ話してみたけど周ちゃんは未だぺっちゃんこ。何が悪いんだろう。難しい。だけど、私の見え方で話しちゃいけない。いけない。いけない。「私、どうして欲しかった?どう振る舞って欲しかった?」結局、ぎこちないままに話は終わった。

明日は周ちゃんの好きなものを作ろうと思う。傷つけてしまったのなら、もう傷つけたく無い。だけど、私の気持ちだって大事。私は私達のために変わった方がいい。

ハヤシライス

夕飯 11.4,2022

今日は納品作業。夕方早い時間から夕飯の支度を始めた。明日は昼前から撮影、まだ慣れない移動の為にも早く寝たい。今夜は周ちゃんが好きな豆のスープを作った。キャベツ、セロリのみじん切りに手羽元と青大豆をコトコトと煮たスープ。味はコンソメ、塩、ローリエを1枚。

19時にフミエさんと山若君と打ち合わせが入ってる。その前にお風呂に入って、と色々の準備を進める。周ちゃんが18時過ぎに帰宅。「私、明日早いからね。」「ちょっと部屋の片付けをするよ〜。」部屋にこもった周ちゃん。打ち合わせが終わった事を周ちゃんに伝える。「お風呂入ろうかな〜。」なんでわざわざいま?「さっとシャワーに浴びるね〜。」中々出てこない周ちゃん。ざぶんと湯船に浸かる音がした。「周ちゃん、いつでる?」「もう出ます〜」何だかイライラが爆発しそう。明日は11時から都内で撮影だけど、家を出るのは8時半。その前に色々とやりたい事もあるからいつも通り5時には起きたい。早く夕飯だとか色々の準備をしたのにな。それに昨日から早い事は伝えてる。怒らない、怒らない。いや、食事の前に伝えようかな。「お風呂頂きました〜。」一旦、爆発寸前の私をマンホールに閉じ込めて食事だけを済ませた。押し込められた私の心は何も感じないようにと努めてる。だからか言葉は殆ど出てこなかったし、ハヤシライスも殆ど噛まずに平らげた。食事を終えて適当に寂しい会話をしてベッドに横たわった。

読みかけの本を読み切って、部屋の片付けに戻った周ちゃんに声をかけた。周ちゃんは私が怒ってる事も、その理由も、少しの会話で察していた。「ごめん。俺が悪かったよ。」ぎこちないままに、一緒にベッドへ行って寝た。私一人が怒っただけの事だけど、初めての喧嘩かもしれない。周ちゃんはひたすら謝っていた。私は気持を伝えたかっただけで、周ちゃんが悪いとは思ってない。ただ、私の仕事が田舎へ引っ越す事で大変になる事を理解して欲しかっただけ。今までと殆ど変わらない生活をする周ちゃんはいいよ。私は東京の真ん中から埼玉の端っこに引っ越したのだから、ここでの生活が順調そうに見えたとしても、まだ不安は沢山残ってる。

固めの目玉焼き

朝食 10.4,2022

朝一番に起きるのは私。その後、梃子が7時くらいに起きてきて、梃子が二度寝をしにベッドへ戻った時に周ちゃんを起こしてくるのがいつもの朝。今日も。書斎で日記を書いていると梃子が部屋に入ってきた。「てっちゃんお早う。」今日はこのまま抱きかかえていよう。日曜日だし周ちゃんはたまには寝坊した方がいい。朝食は目玉焼きご飯と残り物のおかず、納豆、キャベツと揚げ麩の味噌汁。今日は初めて畳の部屋で食事をした。テーブルは買ったばかりのちゃぶ台。私が数ヶ月にわたり周ちゃんにプレゼンし続けて口説き落としたテーブル。中々、高価な買い物だったからか、ずしりと新しい生活に根をおろしたような気持になった。

昼頃から庭の土おこしを始めた。周ちゃんはポカリスエットのCMにでも出てきそうな清潔感たっぷりのTシャツ姿で大きなスコップで汗をたらしながら土を掘りおこしてる。私はその脇で掘りおこした土の根や雑草をとり続けた。今日の庭仕事は土を整備し、昨日買った金木犀の木、ミモザの木、トマト、胡瓜、茄子の野菜の苗、それから、私がマンションのベランダで育てたハーブや月桂樹の木、巨大アロエを植えること。暑い初夏みたいな午後はどんどん過ぎていった。玄関横に前の人が育てていたらしいミントの香りがする木を見つけて林檎箱に植え替えたりもした。途中で周ちゃんがコンビニで買ってきてくれたシロクマアイスを食べたり、アールグレイのアイスティーをいれて飲んだ。ああ、暑い。時間は16時前、ようやく色々が片付いて遅い昼食に素麺を茹でて食べた。冷やし素麺は今年初めて。氷を沢山入れて冷え冷えにした。

ああ、土いじりって気持ちがいい。だけどちょっとまた熱中症気味。身体が重い。夕飯を食べながら高橋くんの話になった。「昨日は楽しかった?」「うん。高橋くんの3箇条、楽しかったね。よしみがメンターみたいだったよ。」「楽しかったね。けどさ、1つ目については心の叫びに聞こえたよ。」「うん。俺も。聞いてて辛かったよ。優しさというより、痛みにきこえちゃってさ。」「うん。私も。だけどいいと思う。こうやって人は自分の人生を選んでいくんだよ。」

人生って平等だなって思う。地獄みたいな日々を過ごしていた時期は世界を恨んだりもしたけど、選んだのは私だったと今となっては自覚してる。まさか愛した男に酷い事をされるなんて想像はしなかったけれど、あんなに酷くなる前に逃げる選択は十分に出来た。言葉を変えるなら、いなくなる選択肢は愛する選択と平等に持ち備えていた。世界中の人が平等とは思わないけど、私の人生においては平等に出来てる。幸せにも不幸にもなれる。しっかりと今日まで選んできた。だから、高橋くんが優しい人を求めるのは、もう愛した人に傷つけられたくないと切望するのは、高橋くんのこれからの人生の希望であり道筋になる。次に会う人は優しいだと思う。大丈夫。「1つ目は中々見つけられないよね。」って高橋くんは言ったけれど、「自分を信じれば大丈夫だよ。」って伝えた。優しい高橋くんは、優しい人に出会う。もし優しくない人に出会ったとしても、もう愛さないと思う。

野菜炒め

和食, 夕飯 09.4,2022

私はいつも通り5時頃、周ちゃんは7時前に起きた。今日はキュレーター仲間の高橋君と千葉のサボテンの聖地、グランカクタスという店に行く。そのついでにジョイフル本田で庭の土や植物を色々買おうとなってる。ふたりでパジャマのまま庭に出た。周ちゃんが小さなスコップで土を掘り起こす。テコは朝陽の中で庭のあちこちを徘徊してる。気持ちのいい朝。何処に何を育てようか光の中で話した。

高橋君は周ちゃんより少し年下。毎回思うけれど、少年みたい。昆虫博士みたいな緑色のジャケットに白いパンツ、大きな大きな白いトートバッグを持って現れた。「おはよう〜。」二人はしばらくの間、東北の美術館での仕事の話やキュレーターの誰かの話をしてた。まったくちんぷんかんぷんな話。時々、アーティストの奈良美智さんとか、建築家の青木淳さんとか、私でも知ってるような単語が聞こえた。毎日の中にいると忘れてしまうけれど、周ちゃんは学芸員だったんだ。芸術に関する膨大な知識とそれと出会ってきた沢山の経験や世界。私が知ってる周ちゃんの一体どこにそれが隠れているんだろう。私達は同じくらいの年数を生きてきてるのに。何だか少し情けなくなった。私は今まで一体なにをやってたんだろう。恋だとか旅だとか写真、そんな事しかやってない。いや、それしかやってない。

千葉あたりを走る頃には高橋君と私の離婚の話になった。高橋くんは結末みたいなものから話始めた。「あの傷はずっと塞がらなくて、体の一部が失くなったみたいな感じなんだよ。」高橋君の言葉にうんうんと何度も何度も頷く。それぞれの別々の結婚や離婚があったとしても、その痛みはもう私を突き刺したりはしなくても、同じ場所で同じ景色を見ているような気持ちになった。周ちゃんはただ前を見て運転していた。私は私の話を上手く伝えられたかわからなかったけれど、出来る限りの言葉や想いを伝えた。そうしてしばらく離婚やパートナーの話をしていたけど、高橋君が少しでも前に進んだり、少しでも傷が癒えてくれるなら、何時間でも何度でもこの話を続けたいと思った。

それから、高橋君の次の恋をどうするか3人で話した。私は周ちゃんを見つけた時にパートナーに求める3か条なるものを自分の中で決めていた。「高橋君、パートナーに求める3か条って何?」「え〜3つ?足らないよ〜。」「駄目。3つに決めて。」「うーん。まず1つに優しい人かな。それってただ優しいんじゃなくて、例えば身内の人が病になって、だけど自分は仕事が忙しくて調子が良くて、そんな時に仕事はいつだってまた出来るからと諦めて、人の看病に専念出来るような心から優しい人かな。」「そうなんだ〜。じゃあ1つ目は優しい人ね。」「次は自立かな。仕事も生活も自立してる人。家事代行とかする人が悪いってわけじゃないし、忙しい女性が料理をしないで外食ばかりっていうのが悪いってわけじゃないけど、一緒に料理したり、掃除したりしたい。だから、自立してる人がいい。」「なるほどね。けど高橋君、それは自立っていうより生活の価値観じゃないかな。世の中に料理をしない女性は沢山いるよ。働いてる女性には多いものだよ。だけど、それって悪い事じゃなくて、料理を楽しみたい人かそうじゃないかなだけじゃないかな。どちらも経済的には自立してる。だから、高橋君は生活を楽しむ事が人生の中で大事で、その楽しみを一緒に出来る人がいいって事じゃない?だから、価値観だと思うな。」「確かに〜。」「じゃあ、3つ目は?」「知的な人かな〜。話せる人っていうのかな。こうやって色々な話が出来る人がいい。」「高橋君、外的要素はゼロ?心が良ければ、ものすごく派手な服装で髪はピンクで、結構ふくよかな子でも大丈夫?」「うーん。すっごく話が合う子がいたんだけど、どうしても好きにはならなかったんだよね。」「それってさ、高橋君が心だけじゃなくて、女性に外的、性的要素を求めてるって事だよね。例えば、可愛いとか、胸が大きいとか、肌が白いとか、そこに高橋君が恋に落ちるポイントがあるんだよ。」「確かに。じゃあショートの子かな。けど、誰でもいいってわけじゃなくってショートが似合う子がいいんだよね。」「ショートが似合う子がいいってよく男の子は言うけど、それって結局ショートの似合う可愛い子だよね。」周ちゃんと高橋君がわっと笑った。「3つ目は知的じゃなくて、ショートにしよう。」「えー難しいよ。」「ダメだよ。自分の100%理想なんていないよ。それに、性的要素は入れた方がいいよ。後は、大丈夫。相手を知る上でわかっていくものだから。」

私が周ちゃんに出会った時に掲げていた3ヶ条。明るい、身長が175cm以上、セックスがうまい。まず、未来に明るい人が良かった。どんなに苦しい事があっても、どうしようもない事が起きても、生きる事に希望を持てる人は生きる事が上手になる。明るい人は明るくなりたいから、明るく灯そうと努めるその光が周りを温かくもしてくれる。後は性的要素が2つ。だって、性的要素がなければ、動物だとか、友達だとかで事足りる。背の高い男が私はカッコよく見える。あとはセックスが上手ければ、男と女である事を楽しめるし、言葉では通じない事も身体を通してコミュニケーションがとれる。想いなんてものは共有しなくていい。心は私の男の中にそれぞれポツンと置いてあるものだから。それよりも一緒に楽しむことが出来れば、勝手に色々は上手に転がっていくものだと信じてる。私の経験上の話。

高橋君はレアなサボテンを3つ。周ちゃんは色と形が絶妙なサボテンを一つ。あと家に舞茸みたいなピンク色のサボテンを買った。帰宅したのは20時過ぎ。疲れた。暑いサボテンのハウスの中で4時間くらいボテンと格闘したから軽く熱中症気味。夕飯は簡単に野菜炒めにした。ジョイフルで買った金木犀や野菜の苗。明日は庭いじり。楽しみだな。

スクランブルエッグ

朝食 08.4,2022

朝食は周ちゃんのスクランブルエッグ。今日は少し甘め。午前に色々を終えて、午後は周ちゃんと約束してたミュージアムにカレーを食べに行った。今日は天気がとびきりいい。新しい自転車に乗って一緒にミュージアムまで走った。周ちゃんはカジュアルなスーツスタイルに黒いリュックを背負ってる。桜並木の中で桜の花が散ってゆく。なんて綺麗なんだろう。だけど目も花も花粉で痒くてたまらないし、マスクの下では私のニヤニヤが止まらない。好きな男のスーツスタイル、私の大好きなものの一つ。

周ちゃんは鯖のココナッツカレーを、私は定番のスパイスカレーにした。大きなローテブルにソファーが並んだ席に向かい合わせに座った。この食堂は一般の方も社員の方も食事が出来る場所らしく、ランチミーティングをしている人や、ミュージアムに遊びに来た感じの人がちらほら食事をしていた。カレーを食べる周ちゃん。紺色のブレザーに、紺色のパンツ。シャツは薄いグレー。髪はいつもの天才作家のようなボサボサ頭じゃなくて、ちゃんとセットされてる。薄いフレームの黒縁のメガネ。姿勢がいい周ちゃん。爽やかさが溢れてる。ああ、かっこいい。こんな男をレストランで見かけたら3秒で恋に落ちちゃうよ。カレー半分、周ちゃん半分のランチタイム。至福だった。「どうしたの?」ニヤニヤが止まらない私に周ちゃんが言った。「いいよ。すごくいいよ。周ちゃん。」私の回答はまるでエロカメラマン。

少しオフィスを案内して貰ってコーヒーを飲んでバイバイした。駅前で爪の手入れを2年ぶりくらいにして、西武のGUでパジャマを買って、OKストアーでこないだ買って美味しかった会長おすすめの鯖を買って帰った。GUのパジャマを着るとなぜか周ちゃんが喜ぶからもう一着買った。楽しい爽やかな金曜日。

トマトのチキン煮込み

洋食 07.4,2022

今朝は梃子の散歩で周ちゃんと水の神様が祀られてる神社へ行った。鬱蒼とした森の中にある神社。少し高台にあって、風が吹くと木々が揃って揺れて遠く街が見えた。周ちゃんはずっと神社の説明をしてる。梃子はこっちに来てから森を少し怖がってるけど知らない場所を歩くのが楽しそうな感じもする。周ちゃん曰く、この辺り一体は宮崎駿さんが愛した土地なのだそうだけど、確かにあの漫画の中の何処かにトリップしたみたいな気分。

この街に引っ越してきてから、なんだかちょっと優しくなった気がする。通り過ぎる人も、スーパーで会う人も東京とはちょっと違う。よく田舎へ行くと穏やかになるっていうけど、心が変わったというよりも、単純に広大な土地を目の当たりにして、まぁいっかみたいな気持ちになるだけのように思えた。世田谷のぎゅうぎゅうと街に押し込められた感じも好きだったけれど、人がいない田舎では人がいることが有り難く見えるような。

夕ご飯はトマトのチキン煮込み、セロリとモッツアレラのサラダ、人参のサブジ、塩豚とネギの炒め物、すじこ、青大豆のご飯、味噌汁を作った。周ちゃんはトマトのチキン煮込みが気に入ったみたいでパクパク嬉しそうに食べてる。21時ちょっと前、周ちゃんの電話が鳴った。「あ、やしろさんだ。ごめんね、ちょっと出るね。」「お久しぶりです〜。」途中途中、やしろさんの声が携帯から漏れて聞こえた。どうやら大分にいるのだけど、この時間でも行ける温泉を探してるようだった。「実は、結婚しまして。」「えー急展開だね!」話は続いた。「電話、ごめんね。仲のいいフォトグラファーの方だよ。福岡に住んでて、建築専門で撮ってる。」周ちゃんの笑顔がいつもよりも1.5倍増ですごく嬉しそう。少し年が上のやしろさんとは、大分の芸術祭の時にひょんな事で仲良くなってから、家に泊まりに行ったりと仲良くして貰っていたのだそう。

そうだよな。なんだか全然気づかなかった。周ちゃんも急にこの数ヶ月で人生が変わったんだ。


キャベツ餃子

お気に入り, 中華 05.4,2022

5時にセットした目覚ましが鳴る前にベッドを出た。今日は東京の家の引き渡し。その前に粗大ゴミを8時までに捨てなきゃいけない。着替えて簡単にメイクをしてポットにオーツミルクのカフェオレを作った。やっぱり、特急列車で行こう。20分くらいしか変わらないけど新幹線みたいに指定席でゆったりと座れるから楽しい。コーヒーを飲みながら本を読もう。家を出る間際に周ちゃんと梃子が起きてきた。「ごめんね。起こしちゃったね。」「大丈夫だよ。気をつけてね。」

2週間ぶりの我が家。ガランとして何もない。寂しくなって胸がぎゅっとした。いい家だったな。ベランダはテントが3つか4つはれるくらいに大きくて、全部が南向きの窓で1日中明るい部屋だった。お風呂は西側だからよく夕陽の中でお風呂に入ったし、キッチンが大きくて料理を思う存分に出来た。角部屋だから梃子がどんなに騒いでも誰にも怒られないし、松陰神社の駅前なのにいつも静かで鳥の声が毎朝聞こえるのが好きだった。あと、神社にもよく梃子とお参りに行った。ここでの暮らしが何よりも好きだった。不動産屋さんが来るまで1時間。朝ごはんを食べに家を出る。ずっとずっと昔にデザイナーの大西さんと打ち合わせで行った世田谷通りのカフェコロラド。10年ぶりくらいに入ったけど、今でも愛煙家の溜まり場だった。煙草の匂いは嫌いだけどなんだか居心地がいい。マスターの元気な朝の挨拶もいいし、メニュー裏に手書きで書いてある裏メニューっていうのも良かった。常連さん同士がコーヒーをすすりながらお喋りしてる、東京っぽいこなれた朝だった。

渋谷の蔦屋で仕事用の資料の本を探して、睫毛パーマをかけて、渋谷スクランブルでベージュのパンツを買った。13時にミオちゃんとストリームで待ち合わせをしてる。「よしみちゃん田舎もんづらしないでよ。つい最近まで東京いたじゃん。」ミオちゃんはいつも色々な髪の色をしているけど、20年ぶりくらいに黒髪にしたのだそう。何だか少し大人っぽく見えた。「新しい生活はどう?」「田舎だよ。すっごく。裏に山とかあるから。」私のスローライフから、ミオちゃんの最近の仕事や戦争の話や知り合いが亡くなってしまった話、いつ海外に住むとか色々な話をした。ミオちゃんは仕事だから時間が無いって言ってたけど、店を出たのは16時前。体調悪くて胃が痛いと殆ど食べなかったミオちゃんのフォーはまるで食品サンプルみたいになってた。「これからヨドバシに行って、新しく買った自転車を取りに行ってから帰るよ。」「長い道のりだね。」「すっごく長いよ。」「じゃあねミオちゃん。また東京くるね!」「田舎もんづらしないでよ!」私の埼玉ライフ。友達と気軽に会えないのは寂しいけど、もしかしたらそんなに悪くないかもしれない。東京は住む街じゃなくて通う街。好きな人に会いに行く場所になった。

今日の夕飯は餃子。本人は言わないけど、どうやら周ちゃんは街中華の餃子の方が好みっぽい。何度か色々な餃子を作って気づいた。キャベツ、ニラ、ねぎ、豚ひき肉を合わせてよく混ぜて、オイスターソース、醤油、ごま油多め、鶏ガラスープの素を入れて冷蔵庫で30分。大判餃子の皮にしっかりと具材を入れて羽根つき餃子にして出来上がり。餃子、美味しかったな。

キャベツ餃子
キャベツ 1/4、みじん切り
ねぎ 1/2本、みじん切り
ニラ 半束、みじん切り
豚ひき肉 200g
ごま油 3回しくらい
オイスターソース 大さじ1
鶏ガラスープの素 小さじ1
醤油 大さじ1/2


中華風餡掛け野菜炒め

中華 03.4,2022

朝から雨。すごく寒い。午前に私の部屋の中古の無印の棚が来て、周ちゃんの部屋の天道木工の座椅子とニトリの本棚がきた。周ちゃんの部屋はきっと本で埋め尽くされるんだろうな。想像するだけでワクワクした。引っ越しから2週間ちょっと、ようやく仕事部屋のダンボールが全てが空になった。ああ、すっきり。それにしても、私には荷物がなかった。印画紙、額、プリント、ネガ。ダンボールを開けるとそんなものしかなかった。もっとないもんかね。だけど、確かに引っ越しをする度に沢山を捨ててきたようにも思う。ちょっと寂しいような、だけど、大事なものってそんなに多く無いような気もした。

ダンボールから昨年の夏に編集のりりさんに借りたノルウェイの森が出て来た。一緒に引っ越してきたんだ。りりさんに本の内容を少し聞いた時に今は読めないなと思って棚に置いた。そうして秋を冬を越していつのまにか春になった。引っ越しの片付けも落ち着いてきたし、そろそろまた読書の時間を作ろう。「周ちゃんみたいに私も寝る前に本を読もうと思って。」ベッドルームにノルウェイの森を持って行った。周ちゃんは最近すごく難しそうな植物の本を読んでる。タイトルだけでも頭を抱えてしまいそうだからそれがどんな本なのかは聞かない。「リリさんに借りて、ずっと読めなくて。」「俺も持ってるから大丈夫だよ。」「そういうんじゃなくて。リリさんが貸してくれた本を読みたいんだよ。」「うん。じゃあ、一緒に読もう。」周ちゃんは本を声に出して読み始めた。「1ページずつ読もう。」周ちゃんって人は変な人だなと思う。変すぎてもう呆れて感心すらしてる。朗読しようだなんて、人生で初めて男に言われた。変な気分しかないよ。

人生初めての好きな人との朗読。思ったよりも良かった。それに、声に出して読んでみるとなんだか主人公の心が言葉がしっかりと聞こえてくるような気がした。交互に朗読を続けて第1章を終えるとどうにも切なくなってしまい本を閉じて抱き合って寝た。カップルになると2人だけのまぬけな出来事が起こっていくなと思うのだけど、今夜は正にまぬけだった。とてもまぬけな夜で周ちゃんがまた好きになった。

目玉焼きご飯

朝食 02.4,2022

朝食は目玉焼きを焼いてご飯にのせた。周ちゃんは出会った頃は半熟派だったけど、最近は私のしっかり両面焼きにはまってるらしい。今日は駅前のビッグカメラで赤い自転車を買った。紺色にするか迷ったけど、店内で赤い自転車をまたいで試乗する私に「よしみは赤が似合うよ。」って言った笑顔の周ちゃんが良かったから赤にした。ハンドルもタイヤも赤。埼玉の田舎を走る赤い自転車。ちょっと恥かしい気もしたけど、まぁいっか。

ちゃんちゃん焼き

夕飯 01.4,2022

8時にスタジオ入り。終わったのは16時過ぎ。楽しかった。すごくへとへとだけど、いい現場だったな。急いでタクシーに乗って新宿の駅に向かった。特急列車が丁度のタイミングで発車。あ〜あ、乗り過ごした。次の電車に乗ろう。席について窓の外を眺める。夕陽が綺麗。建物の間を光が通り抜けては列車の中に入ってきた。LINEを開くと編集の成田さんから “明日大場さんの展示ご一緒しませんか?” 行きたいけど明日はダメだ。もし東京ならサクッと出かけられるのにな。成田さん、会いたかったな。大場さんも。

駅を出てスーパーの入り口で仕事帰りの周ちゃんと待ち合わせ。「よしみ、お疲れ様〜」駆け寄ってくる周ちゃん。「夕飯何にしよう?」「ちゃんちゃん焼きなら作るよ。」「うん、、。」お昼のカレー弁当があまりに美味しくって完食した所為で午後からずっとお腹が痛かった。さっぱりしたものがいいな。疲労や腹痛、荷物の重さに色々がぎりぎり。食事を作って貰えるだけで有難い事なのになんだかずっと私の機嫌はよくない。レジで会計を済ませてエスカレーターに乗り前にいる周ちゃんの腕に不意に手を伸ばした。洋服の上から触れる周ちゃんの腕。一瞬で胸の辺りがじんわりと温かくなった。もう2度と愛する人を世界から失いたくない。だから、十分に私を満たさないでと強く望むけれど、これから段々とそうなっていくんだろうと思った。

夕飯のちゃんちゃん焼き。今日も美味しかった。

3月31日

Journal 31.3,2022

支度をしてると5時半に周ちゃんと梃子も起きて来た。今日は朝から撮影。埼玉へ引っ越して初めての撮影。前日にタクシーの予約が出来なくて周ちゃんがすごく心配してた。私も凄く不安。東京でさえ朝のラッシュ時にかかる仕事は移動に少し緊張するのに早朝の埼玉からの移動。大丈夫なんだろうか。1日通しての撮影。体力だってすごく使う。色々な不安だけが積もる。周ちゃんはキッチンに立っていつものバナナジュースと、チーズトーストを焼いてくれた。「行って来ます。」「行ってらっしゃい。」家の側のバス停まで送ってくれた周ちゃんは今日もかっこいい。

なんだか落ち着かない朝。本当はひとりで居たい。撮影の香盤の確認、どんな風に撮るか、天気やライティングのこと。周ちゃんが私の為にと色々をやってくれるのは有難いけれど、何だか余計に不安になった。勝手なのはわかってる。しばらく新しい生活が慣れるまでには時間がかかるんだろうな。この不具合に苛々したり不安になったりを繰り返しながら収まっていくんだと思う。人の温度を感じながら暮すのは丁度いいお風呂みたいで心地よいけれどひとりで築いてきた時間を手放したくない。これは私がおばあちゃんになってもずっと側に置いて一緒に生きて生きたいもの。

撮影が終わったのは18時半頃。ホテルの部屋に入って水を一口飲んだら胃がきゅうっとした。すごく疲れた。だけど、いい撮影だったな。いいチーム。いい写真が撮れるのも楽しいけど、いいチームであることがとにかく楽しいし嬉しい。wifiを繋ぐと直ぐに藤原さんからLINE電話がかかってきた。話の内容は来月の福島出張の撮影がキャンセルになったとのことだった。メールで伝えるのは申し訳ないから電話したかったとの事。仕事の話を終えて、私の新しい暮らしや、藤原さんの6月の結婚の話をして電話を切った。仕事のキャンセルは残念だったけど、電話、嬉しかったな。

ホテルの近くのプロントでホタテと菜の花の醤油バタースパゲッティーとレモンサワーを頼んだ。隣のサラリーマンは株の話をしてる。勧誘かな。帰って大浴場で汗を流してから周ちゃんに電話。少し長く話しをした。本当に身勝手。ひとりでいたいって思ったり、疲れて弱ったら彼の温もりを感じたいって電話したり。なんだか少しもやもやした。こういうのはもうきっと好きじゃない。1度目の結婚では、幸せになるっていうのは家の外壁みたいなものをもっともっと高くより高く積み重ねていくことだと信じてた。そうして家族だけの愛や、家族だけの秘密はどんどんと守られていったけれど、その高く積み上がった塀は私達を幸せにするどころか私をどんどんと結婚の中に孤立させるものとなった。もう間違えたくない。新しい結婚は新しい生き方を見つける糧にしたい。これからどんな形になるのか今はわからないけれど、そこで得た色々を周ちゃんにあげれたらいい。家族や友達、仕事仲間にだってあげたい。つい数週間前まで生活していた東京の夜。何だかアーバンだったな。

手巻き寿司

夕飯 30.3,2022

5時過ぎに起きて裏山に散歩に出た。忙しなさに気持ちが少しざわざわしそうだったから朝の空気で頭を空っぽにしたかった。帰宅して直ぐに仕事に取り掛かる。やってもやっても忙しさばかりが追いかけてくる。バタバタと朝食や昼食を済ませて気づいたら夕方。撮影で使う造花を駅前に買いに走った。本当は夕方に引っ越し疲れを癒しに近くの温泉へ行こうと周ちゃんは1日リモートに切り替えて時間を調整してくれてたけど結局私の仕事が終わらないままに夕方も過ぎようとしていた。「今夜はお刺身にしよう。」「簡単な手巻きにしよっか?支度は俺がやるから。」周ちゃんが言った。息をつく暇もなく駅から帰宅してまた仕事。首だとか色々がぎゅっとしてて痛い。お風呂にざぶんと入った。ああ、時間がない。まだ明日の準備が残ってるのにもう夜。リビングを開けると綺麗に準備された食卓がでーんって感じでいた。しばらくの間食卓を遠くから眺めてみる。綺麗。周ちゃん、ありがとう。

カレー

カレー 29.3,2022

夕飯にカレーを作った。久しぶりのカレー。「今夜はカレーだよ。」聞いた周ちゃんの嬉しそうな顔を鮮明に覚えてる。可愛かったな。カレーであんな顔するんだ。

ラーメン

中華 28.3,2022

午前に食卓のライトが届いた。とにかく探したライト。ルイスポールセンAJロイヤルの旧型。高価な買い物だから2ヶ月散々考えて迷って決めた。仕事帰りの周ちゃんが電球を買ってきてくれて早速光を見てみる。「いいね。すごくいい光。」部屋についてるスポットライトがずっと嫌で使いたく無いって話してたけど、これでもう使わなくていい。AJロイヤルにはペンダントライトの傘の中に電球が4つ。光量が強い。食卓にスポットの様に当たる光。そこから部屋の角に向かって伸びていく溢れていく光。だから、リビングから続く畳の部屋には、ちゃぶ台用にダウンライトを置けばいいし、途中に一つフロアライトがあれば、そこで少し光の強弱、光と陰が山と谷の様に自然に生まれる。いつもの様に真剣に光の波について手振り身振りを交えながら周ちゃんにプレゼンした。周ちゃんは嬉しそうだった。最近気づいたのだけど、多分、周ちゃんはプレゼンの内容よりも、私が真剣に伝えてる感じが好きな気がしてる。

話が下手くそな癖に力説する私を見て、周ちゃんは部屋から色々を持ってきて本棚や出窓に色々をディスプレイしてくれた。自分の文化人類学の研究の為に買い集めた色々、日本のあちこちの箕、パキスタンで使用されてる山羊のミルクを温める器、信州の方のすいとんをすくう網。「リビングは食卓が主役となる場所だから、食に関するものを飾ってみたよ。」「もうちょっと部屋から持ってくるね。」何だかすごく楽しそうな周ちゃん。まるで小学生。

ソファーに座って部屋を眺めてみる。新しすぎる家の中でぽんと浮いたような存在だった私達だったけれど、少しずつ少しずつ馴染んでいくような気がした。こうやって家になっていくんだな。1年後、2年後とどんどん色を成していくこの家が楽しみだなと思う。今夜はこないだ役所で買ったラーメンと温野菜サラダ。温野菜はフミエさんの所で買ったお味噌とマヨネーズで食べた。

こてっちゃん

夕飯 27.3,2022

朝からレンタカーを借りてリサイクルショップと八王子のMICHIO OKAMOTO WEARHOUSEヘ。ここに来るのは何年ぶりだろう。近くにのむらさんとミッチーの家がある。男と男のカップルの食卓を撮るっていう作品を作っていた時に通っていた八王子の街。MICHIOヘはキナリノの相田さんとのお仕事で店の2Fで営んでる菓子屋の撮影で行った。懐かしい。

「本棚を探してるんです。」紹介して貰ったデンマークビンテージの背丈が1m程の棚。すごく素敵。値段を聞くとミチオさんが出てきた。「この棚はいいんですよ。珍しいですよ。」確かに、デンマークビンテージで小ぶりの棚を見かける事はあまりない。ただ、日本に入ってきていないだけなのかなと思っていたけど、作っている数自体も少なく希少なのだそう。「少しマニアックな話をしてもいいですか?」ミチオさんから次から次へと出てくる面白そうな予感がぷんぷんする話が続いた。棚をつなぎ合わせてる木の拘りや、背面に使ってる木の柄について。例えば無印のように繋ぎ合わせた木では見れない木そのもの柄や、樹齢、木を贅沢に使えた時代の話。何十年も前に丁寧に人の手で作られた家具。私達が所沢から来た事を言うと、隣町の東村山にある宮崎駿さんのご自宅の近くに子供の頃に住んでいたそうで、そこから西所沢のnegomboカレーの話になって「メニューには無いんですけど、山田くんの野菜カレーは本当に美味しいですよ。」って。negomboはRiCEの撮影でもう何年も前に編集の成田さんと撮影に行った店。夏の暑い日だったような気がする。駅で待ち合わせして、喫茶店で少し打ち合わせしてから向かった。ポークビンダルーを撮って、私は肉が苦手なのを知ってか成田さんは撮ったカレーをもりもりとひとりで食べてくれた。あれが所沢だったんだ。まさかその街に住むなんて。人生って本当にわからないもの。

家の色々を買いに寄ったホームセンターとリサイクルショップ。疲れたけど楽しかった。リサイクルショップでは新品のオーブンレンジ1万と無印の扇風機を3000円くらいで購入。中々な破格。こんな買い物の仕方があるんだ。人の動きが激しい東京こそ家具や家電のリユースをもっと活用出来るようになればいいのに。リサイクルショップで買ったオーブンレンジを車まで運ぶ周ちゃん。有り難いな。長いこと何でもひとりでやってきたせいか、なんだか申し訳ない気持ちになったり、かよわい女になったような気分でそわそわした。

今日は外で見る周ちゃんをお腹いっぱいに見た。ひょいっと重い荷物を運ぶ周ちゃん。リサイクルショップのどこにいてもすぐに見つかる背の高い周ちゃん。メガネをかけて運転する周ちゃんもなかなか良かった。耳にかかる少し茶色い髪や筋肉が程よくついた腕が色っぽくて堪らない。ホームセンターで工具を真剣に探してる周ちゃんもいい。あ、イケメン。ホームセンターで遠くにイケた男を発掘気分。あっちこっちでニヤニヤしてる私を見かけては「何かいい事あった?」何度も聞いてくる周ちゃん。「なんもないよ。」と同じ言葉を何度も返した。

帰りの車中で周ちゃんに聞いた。「無性にこてっちゃんが食べたくなる日ってあるよね?」「うん、あるある。」夕飯はこてっちゃんと春巻。

ワンタン

中華 26.3,2022

朝から晩まで今日も片付け。天気は台風みたいで風が強かった。梃子の散歩の途中で周ちゃんがミモザをとってくれた。背が高い男はいい。

3月25日

外の食事 25.3,2022

周ちゃんは朝一番で東京の本社へ自転車で向かった。私はデスク仕事と今日も片付け。朝の梃子の散歩は今日も新しいコースにした。周ちゃんがいないからか梃子が山を怖がってるみたいで途中何度も歩くのを拒む。山の周りに大きな家がいくつか見えた。どれもこれも個性的で素敵。見てるだけで楽しいな。

帰宅して少しデスクに向かう。時間は午前10時頃。さっき朝食をとったばかりなのに何だかお腹が空いた。昨晩の夕飯の残り物、周ちゃんが作ったお好み焼きを冷蔵庫から出して一口だけ。「昔、貧乏だった時によく作ってて、今でも時々作るんだよ。」家に行った時にお好み焼きのソースを見つけて聞いた。「今度作って!」あれから数ヶ月、ようやく願いが叶った。材料はシンプル。小麦粉、卵、キャベツ、豚肉、チーズ、ソース、鰹節。私が食べたお好み焼きの中で一番美味しかった。仮にも一度は関西人と結婚した筈だったんだけどな。その人と食べたのはソースがベッタリとした濃い味のお好み焼きでビールで喉を流し込むにはピッタリだけど、熱々の中味に関しては美味しいのか美味しくないのかよくわからなかった。周ちゃんのお好み焼きはソースとマヨネーズは少し。一見重そうだけど、ふわっとしてて野菜も沢山入ってる感じが美味しい。すごくシンプルで何枚も食べれる感じ。周ちゃんに残して置く筈だったのに気づいたらペロッと食べてた。ああ、どうしよう。けど、甘くてすっごく美味しかったな。

午後は駅前の無印に買い出しと役所へ転入届と色々の手続きをしに行った。初めて駅まで歩いてみた。google mapだと20分。途中何度か迷って到着。買い物を済ませて役所へ。周ちゃんは遅刻してやってきた。私がきっと怖い顔をしてたんだろう。「よしみ、ごめん!書類の確認の電話があって。」初めてあんな真剣な顔を見た。私が不機嫌だったのは17時に終わる役所で、私は世帯主である周ちゃんが来ないと手銃きが出来なかったから。周ちゃんと違って私には手続きする色々が待っていた。

女性が結婚を機に名前を変える事がどれだけ大変なのかって事を敢えて何度も伝えてる。マイナンバーカード、国民健康保険、クレジット、銀行、生命保険。大変なのは手続きの話だけじゃない、もう一つの何かを作るって事。そして作ったからにはそれを担い責任を持つ事も意味してる。新しい姓に私の全てを預けるつもりは無くても、もう一つの熊谷って名前の私が始まる事は多くの犠牲をこれから払っていく事にもなる。編プロを営んでる北井くんが ”四つの顔を持つ女!” とフェイスブックのメッセンジャーで冗談交じりに投げてきたけど、確かにそうだねって思った。また同じリスクを伴う結婚を選んだのは私が馬鹿だからじゃない。法律の制度として生活しやすくする為に受け入れる事に決めただけ。生活は人生を作っていると思うし、生活を大切にしたいから、そうした方がいいと考えて決めた。

5分くらい気持ちが落ち着かなかったから黙ってた。別に怒ってない。だけど、無理に話さなくてもいいや。話したくなったら話そう。不意に何かを聞いたら周ちゃんが閉じてた口を開けた。「クラフトビール買ってきたんだよ。」ミュージアムで今だけ売ってるビールを買ってきてくれたのだそう。可愛いパッケージ。川越の街並みがパステルカラーで描かれたCOEDOビール。原材料を見ると柚子の表記。美味しそう。昨日も出先でクラフトビールを買ってきてくれた。夕飯の支度でバタバタしてたけど、今更ながら嬉しい事だなって思った。周ちゃんは家じゃない何処かで私を思い出してくれたんだ。これ一緒に食べたいな。これ似合うかな。これ見たら喜ぶかな。遠くにいる愛する人を想像する時間は楽しいし、想う事はどうしてなのか幸せな気分になる。

昨年に通ってたオンラインの心理学のコースで学んでいたセルフコンパッション。アメリカの心理学者クリスティーンネフの本で読んで興味を持ったことの一つ。人間は愛情は注ぐ事で幸福を受け取れる。相手に注いだ筈の愛情が自分を癒し幸せにしていく。生活の中でも覚えのある行為だと思う。誰かを想う事は幸せ。人間って生き物はよく出来てる。私の解釈だと、自分で作った愛を自らも食べて生きていけるらしい。だから、夫でも恋人でも家族、友達、仕事仲間、沢山、愛を交換すればする程に愛はこの身体や誰かの血や肉をも共に作ってゆく。だから、わたしはあなたを愛してるのだから愛を頂戴。じゃなくて、愛してて幸せだし、愛してくれてありがとうなんじゃないかなと思ってる。

夕飯は役所の前にあった満州餃子という中華屋さんで私は餃子定食とビールを、周ちゃんはうま煮ラーメンを食べた。美味しかったな。今日もありがとう。

バタートースト

朝食 24.3,2022

今日も1日中片付け。午後に一本打ち合わせ。今日はトトロの森の方へ散歩へ行った。なんだか毎朝の散歩が楽しい。

餃子

中華 23.3,2022

「何だか凄く疲れたから、今日は力になるものを食べよう。」そんな話を昼食時にして夜は餃子になった。周ちゃんは午後からミュージアムへ出かけた。朝から一日中片付け。疲れたな。梃子がトイレに慣れなくて朝と晩に散歩へ出た。

夕飯
ご飯
ワカメの味噌汁
うるめの酢味噌和え
焼き餃子
ピーマン入り麻婆春雨
納豆

引っ越し蕎麦

和食 22.3,2022

引っ越し屋さんが来たのは14時過ぎ。片付けが終わったのは13時50分。本当にギリギリだった。どうにかこうにか終わった。周ちゃんは昨晩に展示の撤収があって遅く帰宅したのだそう。低気圧の所為でしんどいって言ってた。先週末にうちの片付けを手伝ってくれたから、周ちゃんの片付けも朝から忙しそうだった。

東京を出たのは18時頃。何とか荷物は全てトラックに乗ったみたい。朝から降ってたみぞれ混じりの雨も止んでた。テコをカバンに入れて電車に乗った。何だか心がここに失いみたい。大好きだった部屋にお別れすらしてない。とにかく疲れた。

改札を出ると東京よりも冷たい風。全身がひんやりとして少し不安になった。本当にここで暮らしていけるんだろうか。真っ暗な海みたいに遠くの景色は何も見えない。タクシーに乗って新しい家まで向かう。何処に向かってるのかこの道が合ってるのかもわからない夜をただ走り続けた。降りると背がすらりとした男性が小さい荷物をトラックから運んでる。「よしみ!」周ちゃんだ。荷物を持ったまま駆け寄ってきた。「お疲れ様〜。」ぎゅっとハグをした。周ちゃんといるとアメリカにいる気分になる。姉の所で生活してる時みたいにハグは挨拶になる。それから全部が終わったのは21時過ぎ。へとへとだ。心底衰弱しきってる。とりあえずお風呂へ入ろう。身体の芯まで冷え切った身体を温めよう。慣れないお風呂に湯を溜めて一緒に入った。お腹空いたな。くらくらする。

お風呂から出て、蕎麦を茹でて、後は簡単なおかずを準備した。鯖缶インドカレー味というのにパクチーを乗せたものと、納豆と、ブロッコリーを茹でたもの。蕎麦は練り梅を乗せて梅そばにした。今日は何も考えられない。動物みたいにお腹だけを満たしてベッドへ入った。

鯖寿司

夕飯 21.3,2022

東京最後の日。ここ数日、友人にバイバイを言う度に寂しさが増していく一方で同時に次が始まっている気配に少しうきうきしてる。梃子は10時に商店街のペットサロンでいつもと同じカットをしてスッキリして帰宅。引っ越しの片付けを途中で終えて私も青山のサロンへ。編集の槙尾さんに紹介してもらってずっと行きたかったところ。東京最後の日にいつもと違う事をしたかった。ずっと伸ばしていた長い髪を昨年の秋、周ちゃんに出会う数日前に思い立ってショートにした。近所の美容師をしてるタマちゃんに教えてもらった女性の美容師さんに数ヶ月切ってもらっていたけど、何だか男の人に切ってもらいたくなって予約をした。

髪を切るのはいい。すごくスッキリするし、気分がいい。素敵な美容師さんだった。帰り道に槙尾さんに御礼のメッセージを送ると、興奮した感じの返答。私もそう思う。人生1のベストオブショートで賞。いつもと違う感じの自分でちょっと驚いた。東京最後の夜にぴったりな気分の良さ。渋谷まで歩いて田園都市線に乗って三茶で降りた。世田谷線に向かう途中で近所のタマちゃんに声をかけられた。「よしみちゃん?」後ろ姿がタマちゃんっぽいなぁって思って歩いてたけど、時間も早いし。だけど本当にタマちゃんだった。今日は早退したのだそう。タマちゃんとは離婚する直前に一緒に伊勢神宮へ行った。あの旅はすごく楽しかった。心身共に元気な今ならあの3倍は楽しめると思うけれど、あの時の精一杯ですごく楽しかった。一泊二日。一緒にお風呂に入って一緒に寝て一緒に参拝した。世界は夫婦だけだと思い込んでいた私に世界は広くて楽しくて優しくて温かいって事をみんなが教えてくれた旅。タマちゃん、旦那のADのしみるさん。しみるさんの後輩の芸術家の今む。

今日会えるなんて凄いな。計らったみたいに会えた。

帰りにサミットで鯖寿司を買った。片付けをして、お風呂に入って、ビール。Tverで大豆だとわ子がやってる。久しぶりだな。第一話だった。とわ子が田中さん、佐藤さん、中村さんって、三人の元夫の名前で呼ばれてるシーンを見て何だか可笑しくなった。編集の槙尾さんは私の事をきくちさんって言う。昼に掛かってきた引越し屋は菅原さんって言ってた。さっき髪を切ってもらったサロンでは熊谷さんって呼ばれて、タマちゃんはよしみちゃんって言う。離婚した時のアイデンティティの崩壊の酷さと言ったらそりゃ無かったけれど、もうどこにも所属しないって決めたら何だかとわ子の飄々としてる感じがすんなりとわかる気がした。

「明日天気悪いんだってね。」明日の引っ越しを心配したタマちゃんが世田谷線の中で言った。「うん。そうだね。けど、家に着けばいいよ。」そう、何だか最近どうでもいい。晴れてる方がずっといいけど、人生なんてそんなもんだ。何かに依存しなければ、大体何でも似たようなもの。菊地でも菅原でも熊谷でもよしみでも、私はいつだって私。誰かの何かになろうとするから苦しくなるだけであって、私でいれば何も困ることはない。失うのは辛いけど、変わるのも怖いけど、私があればどうにかなる。どうにだってなる。

今日タマちゃんに会えて良かった。

卵かけごはん

和食, 朝食 20.3,2022

朝からちょっと二日酔い。やっぱり飲みすぎた。ぼんやりしたまま引っ越しの片付けを始めた。合間に大学のオンライン説明会を受けて、最後の納品を二つ終えた。ようやく終わった。これで引っ越しの準備を気兼ねなく出来る。

午後はみっちゃんと線路沿いにあるクレープを食べに行く約束をしてる。「一回食べてみたいよね!」って話てから引っ越し前滑り込みのクレープ。結局、最初で最後のクレープ。二人揃ってバナナチョコクレープを頼んだ。クレープ屋の脇にあるテーブルでクレープを食べながらみっちゃんの彼氏の話を聞いた。こんな午後も今日で最後か。

それから商店街のベンチでコーヒーを飲んだ。みっちゃんの運気の話になってゲッターズさんの占いだと金の時計なのだそう。金の時計は12年に一度の運気の良さで仕事運と結婚運がいいとMOREのウェブに書いてあった。そのまま本屋へ行きみっちゃんはゲッターズさんの本を買った。周ちゃんも金の時計。私は金のインディアン。金の時計と金のインディアンは相性がすごくいい、結婚も仕事も相乗効果のような感じだとか。それに私は7年間の闇が明けると書いてあったけど結婚生活と同棲を合わせて8年。あれは闇だったんだろうか。闇だなんて言ったら笑い話。例えるならば炎が燃えたぎる地獄。じりじりと熱くて熱くてたまらなかったな。

みっちゃんに譲ると約束してたうちにある無印の棚をみっちゃん家に運んでバイバイした。「GWくらいに行くよ。」「埼玉で待ってるね!」楽しかったな。帰って夜まで片付けを続けた。

手巻き寿司

夕飯 19.3,2022

早朝に起きて納品作業。段々と目処が見えてきた。胸をほっと撫で下ろす。良かった。これなら終われそう。午後に散歩がてらオオゼキへ刺身と海苔を買いに行った。1年ちょっと前、この家に越してきて最初の来客は後藤さん。引っ越してから2週間くらいだった気がする。とりあえずで付けておいたサイズの異なるカーテンだとか生活がまだ馴染んでいない頃に遊びに来てくれた。今思い返せば、住んだ当初は怖かった。夜が来る度にドアの外の足に耳を傾け、夜中にマンションの前でタクシーから降りる誰かの音を聞いては心臓がバクバクした。それから1ヶ月後くらい、警察から最後の電話があって、もう新しい場所へ引っ越しましたと伝えて、何だかそこから少し落ち着いたように思う。夫から避難したのは事実だけど、別に夫の暴力から逃げてたわけじゃない。病の事を説明するのは難しい。だけど、警察にはそう映ってるみたいだった。引っ越して直ぐ、3ヶ月の経過観察も含めて通ってた心療内科を卒業し、体重もあっという間に元に戻っていった。この家に来てからは悪い事は何一つとして起こらなかったように思う。記憶は何度も私を襲い続けてたけれど、現実は温かく見守ってくれてたいた。”最初と最後に行かなきゃね。” 引っ越しが決まってから来た後藤さんからのメッセージ。何だかすごく嬉しかったな。そうして、引っ越しまであと3日。外は雨が急に降り出してる。傘を持った後藤さんが沢山のビールとスパークリングと苺を持っていつもの笑顔で遊びに来てくれた。

引っ越しの片付けも仕事もあったから今日は手巻き寿司。菜花の辛子和えと、蓮根のナンプラー炒め、なめこと揚げ麩の味噌汁を作った。乾杯をして、海苔を手に持った後藤さん。未だ食べてないのに「手巻き寿司楽しい〜。」って子供みたいに目をきらきらさせてる。ミオちゃんはよく後藤さんの事を「ゴッサンは、直ぐに人を信じちゃうから悪い男に引っかかるんだよ〜。」って冗談で言うけど、そりゃ悪そうな男も付いてきちゃうくらいその無邪気さが魅力的ってことだと思う。また一緒に手巻き寿司をしたいな。嬉しそうな顔が可愛かった。

私が東京を離れるのが寂しい寂しいって言うと、「この家で色々とひとりで生活を始めたから、そうゆうのもあるんでしょ。」って後藤さんが言った。そう、元夫との暮らしを捨て、新しい場所で暮らし始めたのはこの家が起点。菊地だった私を捨てて、家具を新しく買い直して、少しずつ少しずつ生活を整えてきた。夏になる頃には殺風景だった大きなベランダも植物園みたいになった。中でも夏のゴーヤカーテンの下で日向ぼっこするのがとびきり好きだった。ここからまた始まったんだ。沢山の思い出がある。東京で暮らして一番好きな家、一番好きな暮らしだったな。

後藤さん今日もありがとう。私の生活ありがとう。

おかゆ

和食 18.3,2022

夜中に目が覚めた。週末中に今抱えてる仕事は終わるんだろうか。ずっと緊張状態で何だか不安になってきた。頭がぐるぐると予定のあっちこっちを行き来してる。昨日ワタルさんとちょっとお茶したのが束の間のオアシスだったな。あと数日で引っ越しなのに胃もストレスで痛いし朝からずっとたまご粥。友達にだって全然会えてない。1ヶ月も前から引っ越しの準備をしてるのにな、東京生活最後のんびり楽しみたかった。椅子に張り付いたように朝から晩まで納品作業。本当に疲れた。明日の夜は後藤さんが来る。2月の頭に婚姻届にサインしてもらった以来。絶対に仕事も引っ越しの準備も終わらせなきゃ。心がどこにあるのかわからないくらいに忙しい。夜に変な夢を見てるけど朝になると覚えてない日が続いてる。

3月17日

Journal 17.3,2022

朝から西東京で撮影。急いで帰宅、素麺をさっと茹でて適当に食べて急いで役所へ。引っ越しシーズンだからか人でごった返してる。氏名変更の手続き、転出届を出して、税務署に行って納税地の変更届を出して、来月の日割りの家賃を入れて、郵便局で転居届を出して、八百屋でブロッコリーを買った。”終わったよー!” 近所に住むワタルさんにLINEした。”じゃあ、あのころで。” あのころは商店街にあるコーヒー専門の喫茶店。松陰神社には小洒落たカフェがいくつかあるけど、あまりそういう店には行かない。満場一致で待ち合わせはあのころになった。ワタルさんにはこの街を離れる前に結婚の報告を会って伝えたかったから、引っ越しの数日前ギリギリセーフで会えて本当に良かった。ワタルさんは苦そうなコーヒーを、私はカフェラテを頼んだ。「ワタルさん、ちょっと報告があって、私、結婚したの。」「えー!?早いねぇ。嬉しいよ。俺はよしみさんが結婚してくれて本当に嬉しいよ。」どうしてそんなに喜んでくれてるのかわからなかったけど、何だかそんなワタルさんを見て、私もすごく嬉しかった。

仕事の話とか、共通の友人の話、いつも教えてもらうワタルさんのライフハックの話を聞いた。あとはよく覚えてないけど色々話した。それから、私が周ちゃんと駅前でハグしてたのをサミットの帰り道に奥さんと見かけたらしくて、その話がすごく可笑しくて、声をあげて一緒に笑った。

「一人暮らしって最高じゃない?」「うん。こないだ久しぶりに塩釜に出張で行ってさ、最高だったよ。」「別に相手が嫌とか全然そんなんじゃないんだけど、一人暮らしって最高だよね。」「酒飲んでソファーで寝ても、ソファーで寝てたでしょって目で見られないで済むしね。」「一人暮らし、私大好きなんだよ。」「わかるわ〜。」喫茶店を出てスーパーまでの道のり、一人暮らしがどれだけ最高かって話をしてバイバイした。「次は埼玉でね!」

帰って夜まで仕事。今日も朝が早かったから神経がピリピリしてる。もう限界って所でお風呂に入った。湯船に浸かりながら周ちゃんに電話すると、周ちゃんも帰宅した所だった。こう会えない日々が続くのも悪くない。今日役所で貰った不動産へ提出する住民票の写しを写メで送ると「なんか、ぐっときたよ〜。」って。私の名前が熊谷になってる住民票。何度見ても誰のこと何だかさっぱりな感じ。「この人誰って感じだよね。」「あはは。」周ちゃんはちょっと嬉しそうだった。ご飯を食べてベッドへ寝転がって電話。ビデオ通話にしてみる。相変わらずのイケメン周ちゃん。今日文化庁に行った帰りに近くの喫茶店で大きなソフトクリームが乗ったコーヒーゼリーを食べたと写真を送ってくれた。喫茶店でイケメンがソフトクリームが乗ったコーヒーゼリー。もうワードを聞いてるだけで鼻血が出そう。そんな男を街角で見かけたら私どうなっちゃうんだろう。え、一体どんな風に周ちゃんはそのソフトクリームを食べたのかな。「周ちゃん、ソフトクリーム付きのコーヒーゼリーどんな風に食べたの?」「えー夜遅いけど佐藤君が持ってきたハーゲンダッツ食べようかな。」冷蔵庫からハーゲンダッツを持ってきて食べ始めた。なんで急にハーゲンダッツを食べ始めたんだろう。アイスクリームの食べ方なんて聞いてないよ。イケた男が喫茶店でソフトクリームをどんな風に愛でているのかを聞きたかっただけ。周ちゃんってやっぱり変わってる。学芸員やってるくらいだから相当に変わってると思う。キュレーターの高橋君からは歩く人類学者って言われてるくらい。だけど、そういう類の変わってるとはまた違う、何と表現したらいいのか。まぁ、美味しそうに食べてるからいいか。そんな周ちゃんを見てると私も気分が良くなるし。

明日も5時起き。もう寝よう。

3月16日

Journal 16.3,2022

朝からスタジオ撮影。疲れた。顔馴染みのメンバーだけど、疲れた。集中力が途切れるのと同時に自分の中の何かが磨耗していくのがわかる。時間より少し押して撮影が終わると編集の成田さんからの電話。恵比寿駅の前で数分立ち話をした。胃がキリキリする。一昨日くらいから忙しなさが背中に触れてくる度に痛みが増してゆく。嫌だなって思いながら話を続けた。

帰宅してソファーに倒れこむ。ああ、あっという間に今日も終わった。家具のやりとりも、家の契約のやりとりも、納品や仕事のメールも返さなきゃ。頭がぐるぐるとしている中で梃子を抱きしめとりあえず抱擁。「遅くなってゴメンね。散歩へ行こうね。」朝が早かったので今日の散歩は夕方。町内を小さく回って帰宅。夕方、成田さんと話した電話のことを所々思い返しては少し悲しくなる。メールをしようか迷ったけどやめた。

こないだ周ちゃんが寝る前にベッドで話てたことが今でも気になってる。「従兄弟の大学生が大学に行きたくないって、それで部屋に閉じこもってるみたいで。友達が嫌なんだそう。死にたいみたいなことも言ってるみたい。うちの親が色々と相談を受けてるみたいなんだけどさ、世界はもっともっと広いんだよ!って言ってあげたいんだよ。そんなに苦しむことはないよって。俺も大変な時期があったけれど、世界に出たら違かった。それを知って欲しいよ!!」真っ直ぐに私の目を見て語る周ちゃん。言ってる事はよくわかる。だけど、多分、それはもう苦しく無い人が言う言葉な気がする。

誰もが手がつけられないような苦しみってある。未来なんて事は考えられないくらいの地獄へどんどんと堕ちていく。今が苦しすぎて、痛すぎて、自分が持ってる力の全てがそれを救済するために使っているから心はずっと忙しくて、誰も知らない未来のこと、言うなら架空のファンタジーかもしれない何かを信じて大丈夫だなんて気分に浸れる余裕なんて無いくらいに苦しい。その強烈な今の痛みは本人にしかわからないし、その痛みの行く末だって誰にもわからない。人は幸せになるように出来てると信じてるけれど、そうじゃなくなる場合もある。だから、やっぱり今の話がいい。誰かの苦しみを知ることは難しいけど、ただ寄り添って信じてあげるとか、側にいて背中をさすってあげるみたいに、未来の話をするより手の温もりを衰弱していく身体を一瞬でも温めてあげた方がずっと今を幸せに出来るんじゃ無いかな。今の続きが未来なのだから。

心療内科に通ってた時に先生に言われた言葉を疲労が溜まってイライラした時なんかに時々思い出す。今日もちょっと思い出した。「心の水が枯渇してるんですよ。」過度なストレスがかさんでいくと、心の潤いがどんどん失っていく。そりゃ、それだけのストレスがかかっているのだから仕方ないことなのだそう。それで底にある岩が露わになっているようなもので、普段なら我慢できないような事もちょっとした事で何かが岩に当たる度に敏感に反応してしまう。苛々したり泣いたり怒ったり。それは別になんてことはなくて、そうゆうこと。枯渇してるだけ。

苦しいのは嫌だけど、苦しむことは悪く無いんじゃないかな。ああ、今日も果てしなく疲れた。朋子ちゃんがくれたお花が綺麗。ただとにかく綺麗。

ニコラス精養堂のエクレア

お菓子 14.3,2022

今日から引っ越しまで一週間。仕事も引越しの片付けも色々がぎゅうぎゅう状態で少し緊張してる。気温は22度、まるで初夏みたい。朝から黙々と仕事を進める。夕方頃に近所の朋子ちゃんからLINE。”よしみちゃん、おうちいる?” それから数十分後。玄関のドアを開けると、朋子ちゃんと子供達が花束を持って立ってた。朋子ちゃんのお花は本当に可愛い。そんな言い方しか出来ないけど、なんだかすごく可愛い。花の仕事をしてる朋子ちゃん。たぶん10年ちょっとの付き合いかな。昔は時々一緒に飲んでは朋子ちゃんはいつも顔を真っ赤にして帰宅していたのに、あっという間に子供が出来てお母さんになった。この街に引っ越してきてから肉屋でバッタリあったりもした。商店街のお気に入りの花屋は朋子ちゃんが教えてくれて、クリスマスが来る頃に朋子ちゃんのリースを本人には言わずにTHIS_で買ったりもした。明日のランチの約束が仕事で駄目になったけれど、ちょっとでも会えて嬉しかった。

お花と一緒にニコラス精養堂のエクレアも持ってきてくれた。時々パンは買いにいくけど、エクレアは初めて。なんて可愛んだろう。ささやかなプレゼントっていいな。朋子ちゃんって一緒にいるとなんだかいいなって思うことが昔からあった。特別な感じじゃなくて、自然に何だか思うこと。そして、今日もいいなって思った。

サミットの寿司

夕飯 13.3,2022

二日間朝から晩まで引っ越しの片付け。周ちゃんは結局、明日の早朝に所沢へ帰る事となった。もう今日は疲れたから寿司にしよう!サミットに寿司とお酒を買いに行って、冷蔵庫にあるもので夕飯。スーパーのお寿司だって食卓に上がれば楽しい。どうしてこんなに楽しいんだろうって思うけれど、楽しい。じゃんけんで先攻後攻を決めた。いつも周ちゃんが勝つけど今日は私が買った。「イカ!」「じゃあホタテ!」。