パンケーキ

Journal 12.3,2022

今日は引っ越しの片付け。男の人がいるとこんなに楽なんだ。引っ越し、あの人は何もしないでいつもどおりの毎日を過ごしてた。いつも何回も全部ひとりで手配して荷造りして運んで。おかげで、男がいなくてもどんなに重たい家具でも運べるし、業者にまけてもらって無理言ったり、業者みたいに色々を手配して、何でも全部ひとりでやれるようになった。「これ、よく組み立てたね。これ、よく運んだね。」周ちゃんが驚く度に過去の私が喜んだ。

ありがたいな。人生で何回引っ越しをしたんだろう。両手じゃ全然足りないくらいしたけど、今日は人生で一番楽で楽しい荷造りだった。

ひっぱりうどん

郷土料理, 即席ごはん 11.3,2022

タクシーが全然進まない。初めて運転手さんの名前が書いたカードに優良運転手というマークがついてるのを見た。全然優良じゃないじゃん。朝の環七と目黒通りのセット。どうしてこの道を選んだんだろう、もう20分も遅刻してる。到着すると久しぶりに代表の小池さんがいた。4年ぶりくらいに会ったかもしれない。最近逗子に引っ越したそうで、シティー派だと思ってた小池さんが一気に田舎へ。その暮らしは一体どんな風に田舎の場所へ収まっているのか聞いた。「埼玉のそっちの方も楽しそうですよね。情報交換しましょうよ。」流石だな。小池さんは農家さんと少しずつ仲良くなってるのだそう。私にそんなこと出来るかな。撮影が終わったのは昼過ぎ。お腹はぺこぺこ。だけど写真を撮っていると調子がいい気がする。忙しくて胃がキリキリしてたけれど、少し落ち着いた。

赤坂へ移動して駅前にあるエクシオールカフェでランチ。1時間くらいぼんやりして日記を書く。気持ちがいい午後。風がもう春だって言ってる。来週の撮影の打ち合わせをしに事務所へ。打ち合わせのついでに結婚の報告をするとCDの堀江さんは「えー!!!!」ってテレビみたいな反応。「本当に大丈夫なの?」とか、「いや、すごい決断だよ。」とか、色々な言葉を言ってた。堀江さんも二年前に再婚。昨年の秋、撮影帰りに家の付近まで車で送ってもらった時に堀江さんの離婚が大変なものだった事を始めて聞いて、私も少しだけ元夫のお酒や病気の話をして、また話しましょうねって約束した。それから一気に結婚となったから、理解が追いつかないのもわかる。それに私の離婚や結婚に想ったり感じることも多いんだろうなと思った。

松陰神社の駅を降りると、夕陽がびっくりするくらいに大きい。綺麗だな。自転車を降りて写真を撮ってるおばちゃん。夕陽が綺麗だねって話ている親子。多くの人が線路の向こうに光る夕陽を見てた。この街が本当に好き。大好きだ。さ、帰ろう。梃子が待ってる。

夜に打ち合わせを一本終えてしばらくすると周ちゃんがやってきた。「お帰りなさい。」「ただいま〜。」一緒にお風呂に入りながら今日の話をした。そして、夕飯のひっぱりうどんをひっぱりながらまた色々な話をした。

今あるものが好きだなと思う。この街も仕事も周りにいる人も。新しい場所での今とは全然違う暮らしは世界をどう変えていくんだろう。

3月10日

Journal 10.3,2022

引っ越しまで2週間。想像以上に色々がまずかった。仕事も引っ越しの準備も、なんだか引かない波みたいに押し寄せてきてばかりで既に溺れそう。どうしよう。

周ちゃんのお母さんはずっと笑ってた。15時に丸の内のアフタヌーンティーで待ち合わせ。小柄でふくよかなお母さん。私と同じ籍の人らしい。「初めまして、熊谷です。」お母さんの言葉に私も熊谷なんだけどな、と不思議な気持ちになった。お母さんってどこのお母さんも可愛いのかな。うちの母も可愛いけど、周ちゃんのお母さんも可愛い。ずっと笑ってる。お財布から周ちゃんと妹の写真が出てきてテーブルに並べ始めた。「こんなのどうしたの?母さん、恥ずかしいよ。」周ちゃんが困った顔で言った。一枚は私に見えないように隠して、一枚は「見せて見せて」とうるさい私に渡した。お母さんはにこにこ笑ってる。親になるっていいな。何だか少し羨ましかった。

お母さんは周ちゃんの子供の時や兄弟の話を始めた。事業が忙しかった時にお父さんの案で天井から紐で哺乳瓶を垂らしてお兄さんが自分でミルクを飲むように躾けた話は一番面白かった。「自分で飲みたい時に飲めるし良かったわよ。」って。なんてナイスアイデアなんだろうと関心すると、周ちゃんは「それ、今なら虐待になるからね!」と困った顔。「アメリカなんて直ぐに虐待ってなるから大変よ。」とお母さん。あっという間に一時間が経って私はカーテンを作りにウニコへ。周ちゃんとお母さんは仕事の打ち合わせで千葉へ出かけた。

「カーテンの見積はこちらです。」渡された見積書を開いてみる。え?!10万!!予算、6万くらいだったんだけどな。どうしよう。カーテンの候補は2つ。ひとつは、価格も見た目もスタンダードなカーテン。もう一つは、天然素材のリトアニアコットンのカーテン。まだらなグレーがなんとも素敵で明るい。だけど、10万。”周ちゃん。グレーの10万だって。どうしよう?” “うーん。” しばらくLINEのメッセージを交換した。帰って仕事もしたいし、電気とネットの電話もこれから来るし、明日も朝5時起きで仕事。時間と選択に迫られてイライラした。 “どうする?!” “迷うけど、気に入った方にしたいよね。” “うん!他の予算を調整しよう。オーダーしてくる!” “明るい方が素敵だったよね!!”すごくいいなって思った。素敵な方を選ぶ。そうだったな。

一つだけ前の家から持ってきたもので捨てないと決めたものがあった。「スーちゃん。ずっと丸いテーブルが欲しいって言ってたよね。好きな方を買った方がいいよ。」離婚する11ヶ月前。まだ元夫の病気もしっかり始まっていなければ、私達が夫婦だった時のこと。彼が言った言葉が好きだった。ダイニングテーブルの買い替えで、私が家計を気にしてそれなりの方のビンテージのテーブルを提案した時だった。もう何年もデンマークのビンテージの丸いテーブルが欲しかった。その3ヶ月前に行った北欧への新婚旅行でも、やっぱりデンマークの家具を揃えたいと相談していた。

あの頃の匂いがするものは皿一枚残らず捨てた。だけど、丸いテーブルは捨てない方がいい気がした。全てを否定しちゃいけないことくらいわかってる。嫌いになる方が楽なことも。だけど、全てを塗りつぶしたら私も消えて無くなる。悪いものだけじゃなくて、良いものも貰ってるのだから。彼に出会えて良かったなんて口が裂けても言えないし、あんな恐怖は二度と経験したくない。だけど、残そうと思った。

カーテンが届くのは25日。

シーフードグラタン

Journal 09.3,2022

編集のミオちゃんにメール。”19日、後藤さんが来るのだけどミオちゃんも来ない?” 引越しが再来週に決まった事も報告した。”怖くない?誰にも会えなくなって疎外されないといいんだけど。” “うん。結構怖いよ。” “シティーガールだもんね。” ミオちゃんこそ生粋のシティーガールだ。私はまだ千葉を挟んでるけど、ミオチャンは生まれも育ちも亀戸。私が東京の学校に行き始めた時に錦糸町や立石に住んでる友達によく冗談を言われた。「よしみはどこの山から来てるの?」って。本当は怖いよ。”すっごい田舎なんだよ。本当に大丈夫かな。もしダメだったら東京にマンション借りようと思ってる。”誰しもが「慣れるよ!大丈夫だよ!」と、かけてくれる言葉により一層と不安が積もっていく中で、ミオチャンの言葉になんだかとてもほっとした。

今夜はグラタン。先週末に器の和田さんで買ったスリップウェアのグラタン皿をおろした。火の通りが丁度良い塩梅の深さ。いつもちょっとだけ焼き加減が気になってたグラタン。お皿ってすごい。味が変わるんだな。可愛し、美味しくなるなんて、何だか得した気分。

ホワイトソース
バター80g
小麦粉 80g
牛乳 800g 温める

フライパンにバターを溶かして、小麦粉を入れてヘラで水分がなくなるまで混ぜる。牛乳を少しずつ、少しずつ、入れてはホイッパーでよくかき混ぜる。少しずつ少しずつ。なめらかなソースになるまで。

おでん

和食 08.3,2022

今夜はおでん。世田谷通り沿いにある練り物やの、や亀やに早い時間に買い出しに行った。もう一つ数百メートル先によね屋とゆうのがあるけど、どうゆうわけか私が行く日は閉まってる。だから今日も、や亀や。今日のおでんはいつもより少し丁寧に仕込んだ。おかずにルッコラのサラダと蛸と揚げなすのピリ辛和え、ホタテと豆苗の中華炒めを作る。近所のヘアメイクのみっちゃん。自称美術家でプロデューサーの今む。この3人の晩餐会も楽しいご近所会として定着してきた矢先に私の引越し。あと5年くらいは続けたかった。最近あったどうでもいい話とか、ちょっとしたニュースとか、みっちゃんの彼氏の悪口を聞いて、今むのすっとぼけた話をきいて、笑って夜が更ける。そうして私がそろそろ眠いとなり解散。結構、好きな夜だった。今日だって、本当に最高な夜だった。

「私はワンシーズンに2回行くよ。」みっちゃんが言った。「疲れてるの?俺は半年に1回かな。」と今む。「シーズンに1回は来てよ。季節のものを食べたり、餃子を巻こうよ。お願いだから遊びに来てよ。」友達が食卓を明るくしてくれた。帰る人が帰らなくなって、作った料理も捨てる一方で、食卓を照らすライトの外側が真っ暗になった頃、友人達がやってきてくれた。心から感謝してる。ただの飲み友達だった今むも、アシスタント友達だったみっちゃんも、いつしか親戚みたいな感じになった。すごく寂しい夜も、すごく虚しい夜も、彼等がいたから食卓だけは何とか灯を灯してくれてたように思う。そうして食べて、笑って、また明日がやってくる。そんな繰り返しを、とにかく続けて続けて今日がやってきた。どん底だってとにかく食べまくって、どんどん痩せていく身体があっても胃袋をパンパンにしてやった。もし、私みたいにどん底に落ちちゃった誰かを見つけたら、まずうちの食卓に来てって言おう。私が彼らに救ってもらったように、この食卓で誰かの胃袋を一瞬でもいいから一杯にしてあげたい。お腹が減ったらまた来てほしい。いつしかそれが血や肉や明日への希望に変わるはず。

寂しい。すごく寂しい。東京を離れたくない。
ちょっと泣きそうな夜だった。

和風クリームシチュー

洋食 07.3,2022

朝に納品を済ませて、午後は病院。ブライダルチェックを気軽に受けに行った筈だったのにいつの間にか不妊治療みたいな検査が始まっていた1ヶ月ちょっと。ようやく終わると思うとすごく嬉しかった。私が嫌なのは先生が嫌いだったこと。病院で決められてる小さなメモ帳みたいなノートを忘れると先生はイラっとした感じになるし、子供が欲しいのか迷ってるのに「急ぎましょう!」ばっかりだし、結局フーナーテストというセックスのタイミングをはかるものをやってみたけど検査自体失敗に終わったそうだし、お金もかかるし、毎度会う度に先生はうーんって感じで深刻に渋い顔をしているし、何だかとにかく楽しくない病院だった。注射が下手くそな年配の看護師のおばちゃんは「まぁまぁ年齢の事はあるけど、この感じなら大丈夫よ。」そんな掛け声の方がずっと気分が良かった。ああ、ようやく終わった。

「先生が嫌だったよ。」周ちゃんにぽろっとこぼすと、「まぁ、先生も色々と言われるだろうし、ちょっと過剰に慎重になるんじゃないかな。」って。けど、「あの先生といると私はどんどん不安な気持ちになるよ。」って伝えたら黙った。結局、身体を触られて、注射したり、何かよくわからない検査をするのは私自身だ。先生がリスクヘッジの為にあの感じだったとしても、正直私には関係がない。だって不安ばかりが募る一方で、全然楽しくなかったから。「ああいう場所だからね。」って周ちゃんは言ったけれど、ああいう場所とはどういう事だ!赤ちゃんが欲しいと思う気持ちは別にネガティブでも何でもないし、毎回どんよりした気持ちで受ける必要だってない。病院で不妊治療をする事がネガティブだと受け止めるのは、本人ではなく周りだなんておかしな話。そういう勝手な想像は嫌いだ。世の中は全てが自分の思い通りになんていくわけがないのだし、ただそれだけの事で幸福と不幸のどちらかにカテゴライズするなんて、無性に腹がたって怒った。周ちゃんは申し訳なさそうに「そうだね。」って言った。周ちゃんはいつも私がどんなに怒っても怒らない。

「周ちゃん、周ちゃんってどうして怒らないの?」
私は奴隷だった時代が長かった。家族は悪くないと決めてる。誰にも言えない苦しい奴隷時代があった。大人になり家を出て、結婚してから再来した別の奴隷ライフを受け入れたのと、過去の私は密接に関係してるのを知ってる。私は奴隷になる許容をしっかりと持ち備えていたから。

「前にもちょっと話したけど、。中学校の時に暴力とかイジメがあったんだよね。怒ったこともあったけど、怒ると想像以上に自分へのダメージも大きくて、そのうちに怒れなくなったんだよ、、。」しばらく周ちゃんは話し続けた。川底にあるヘドロみたいに触れられないものを救ってはその中をやみくもに探してるみたい。私には何も見えないよ。なんて言葉をかけていいのかわからなかったけど、周ちゃんは私に訴え続けてた。その痛みがどんな痛みなのか全く想像がつかなかった。

「周ちゃん、私は離婚してから怒るようになったんだよ。ずっと怖い人が苦手だったし、怒れなかったよ。ずっと言えなくて我慢してた。」だから。だからもう私は我慢しない。不当な扱いを受けたり、酷い事をされたり、なんだか本当は悲しくても、辛くても、苦しくても、それでも私さえ我慢すれば世界が回るならいいなんて事はない。私でも私以外でも同じ。そんな事しなくたって世界はよく回れる。自分も誰かも犠牲にしたくない。そんな現実はもう見たくない。絶対に見たくない。

夜だけがどんどん更けていく。「だから、俺はよしみを尊敬してるんだよ。何だか愛の告白みたいになってるね。よしみはいつだって今に向き合おうとしてる。俺もそうなりたいけど、だから、すごく尊敬してるんだよ。」なんだろう。周ちゃんの言葉がすんなりと聞こえてこない。

病院にちょっと早く着いて、近くのファミマに保険の引き落としで寄った。自動ドアが開いてファミマのチャイムが鳴る。あ、あれ。怖い。一瞬でそこは違う場所になった。元夫が最悪だった時間が一瞬でやってきた。すごく久しぶり。全身が硬直してる。あ、多分あれだ。昨日、引越しの荷物をまとめてる時に元夫の写真を見つけたからだ。ああ、やっちゃった。吐き気なのか目眩なのか、悪寒、圧迫、動悸。それを説明するのにピタリとハマる言葉が見つからない。とにかく曖昧に怖いとしか言えない。ここに居るだけなのに凄くどうしようもなく怖くなる。直ぐに思った。大丈夫だし、今は違う。ああ、あの過去は本当に苦しかったんだ。苦しみが完全に過去から来たんだってわかった。うん、もうあの場所じゃない。あれから、中目黒も祐天寺も行かなくなった。行きたい店があっても行かない。もう行かない。それでいい。怖いから行かない。

周ちゃんが怒れなくなった過去。怒れない。それでいいと思う。一生そのままでいいんじゃないかな。今日を生きるために見つけた答えがそれならそれが一番いい。逃げたいなら逃げて、見たくないなら目をつぶって、それで怖いとか苦しみが減るのなら、今日が今が笑えているのなら、最高だと思う。よくやった。それって、十分に強く生きているって事なんじゃ無いかなと思う。生きている事の望みって、お金でも愛でも頑張る事でもなくて、ただ今を安心して生きていられるかなんじゃないかな。周ちゃんはもう2度と怒らなくていい。私は怒りたいから怒ってるだけ。それぞれのやり方で今を安心して生きたらいいよ。

3月6日

Journal 06.3,2022

家の採寸に行った。所沢の駅を降りると遠くに山が見える。どこかの地方に来たみたい。頬を抜けてく冷たい風に少しドキドキした。小学校を上がってからずっと東京生活。学校も遊びも恋をするのも東京。東京生活が長すぎるようにも感じていたし、東京からいい加減でた方がいい気もしてた。だけど、この街を本当に好きになれるのかな。

不動産屋さんの車で新しい家まで向かう。田舎だな。駅を離れると小さい商店だとか美容院、後は家ばかり。この道を私はどんな想いで歩くんだろう。不安が募る。もう後ずさりは出来ないんだな。新しい生活は楽しみだけど、それが素敵かどうかも検討がまだつかない。何だか心がどこに行ったらいいのか迷ってるみたい。

周ちゃんは自転車で東所沢の家へ帰宅して、私は電車で世田谷へ帰った。来週にリビングのライトとカーテンを見に行こうと約束をした。後、周ちゃんのお母さんに初めて会う。

朝食

朝食 05.3,2022

朝の7時。梃子の病院へ走った。多分、最後の病院。開院と同時に入った病院は珈琲の匂いがした。いい匂い。待合室で朝の天気予報が流れてる。「最高気温は18度です。桜の開花が進むでしょう。」春らしい服を着たアナウンサーが話していた。未だ今週の疲れが全身に纏わりついてるけれど、何だか心が弾んでる。どうやら世界にはあっという間にまた春が来ようとしてるみたい。

帰ると周ちゃんがバナナジュースを作ってくれていた。「今日は18度だって!」「そうなんだ!天気が気持ちがいいものね。」病院で珈琲の香りがいい匂いだったと話すと、珈琲を入れてくれた。周ちゃんの淹れたお茶は苦い。だけど、珈琲はすごく丁度いい。私好みのデカフェのアメリカン。いつもいいバランス。お腹が満たされてベッドに横になるとあっという間に1時。周ちゃんも疲れてた様だった。こんな風に時間を無駄づかいしてしまうような土曜日って最高に好き。

午後は豪徳寺の器の和田さんに行きがてらカレーでも食べようとなった。初めてデートしたのは豪徳寺のold nepal。私が昔に行ったインドのLeh。鳥葬が見たくてチベットが色濃く残ると言われてる北インドへ旅をした。周ちゃんもチベットに興味がある。数年前にアーティストとフィールドワークの一環でネパールを旅した時にダルバートを知ったのだそう。そんな話から一緒にダルバートを食べようとなった。あの日レストランで何を話したか覚えてない。カレーを食べた後に和田さんへ行って、周ちゃんは和田さんと箕の話をしてた。それから豪徳寺で招き猫を買って、喫茶店を2軒ハシゴした。2軒目、上町のアンジェリーナのお気に入りの窓側の席で「僕と付き合ってくれませんか。それが難しいなら親友になって欲しい。」って不思議な告白をされて、すごく驚いたままに「はい。」って返事をした。帰り道に手を繋いだけれど、どうやって手って繋ぐのか忘れちゃって、私の手はまるでバービー人形みたいに温度のない感じだった気がする。何だかすごくすごく変な日だった。

当たり前のように私の夫になった周ちゃん。どこからがそうでどこからが違くなったのかその境目がよくわからないけれど、今は当たり前になってる。和田さんで買い物をして、オオゼキでシャケとかハーゲンダッツを買って帰宅。old nepalがランチ終了だったから不意に入ったブッダというネパールとインドカレーのお店で大盛りのカレーとお代わり無料のナンを2枚。驚くほど食べた。どうして今日はあんなに欲張ったんだろう。帰宅してから腹痛が酷くなってリビングでうずくまる。私が欲張ったのが悪いと文句ばっかり言ってると周ちゃんは笑ってた。しばらくするとキッチンで夕飯のちゃんちゃん焼きを作ってくれた。遠くに周ちゃんの足だけが見える。そんな時間だけがしばらく続いた。もう5時間も経ってるのにずっと痛い。本当に痛い。胃薬を飲んでも痛い。ずっと痛いのだけど、熱々のちゃんちゃん焼きは最高に美味しかった。

夕飯

夕飯 04.3,2022

朝から撮影。現場までのタクシーの中で色々な事を考えた。やめよう、今は考えないようにしよう。今日も長丁場。女性が多い現場。女っていうのは様々で可愛。男だって可愛くて胸をくすぐられるような事があるけれど、男のそれとは全然質が違う。あの人は美しいというのが大概にして女性を指すのと、花を美しいと言うのが同じ美しいという言葉を使うのには納得がいく。だって女性は華やかでそれぞれで、なんだかとっても鮮やか。だから見ていて目が楽しい。

3日前にした母へのメール。「家が決まったよ。戸建。賃貸だよ。免許取ろうと思って。」しばらくしてから返答。「えー信じらんない。パパも何考えてるんだかって言ってる。」1日は少し落ち込んだけれど、相変わらず未だに箱入り娘にさせたいんだろうか。家の外壁に突っ込んだ事故から10年。もう運転をさせたくないんだろう。呆れた。まぁいい。勝手に言って。私には周ちゃんがいるし関係ない。だけど、どうなんだろう。それでいいんだろうか。1度目の結婚を思い出した。あの時もそうだった。私には夫がいるからいい。それって、またアンバランスのあれじゃないか。そう、もしかして、私はもうどっぷりと心を預け用としてる。私の人生は私のものなのにひとりではなくふたりでバランスをとろうとしてる。どんなに愛したり、どんなに大切だとしても、嫌だ。絶対に嫌だ。嫌な筈なのに結婚の約束を交わしたら当たり前のようにまた同じ事をしようとしていた。嫌だ。あんな結婚は2度としたくない。どうしたら、どうすれば私はこれからもひとりでいられるんだろう。

あっという間に撮影を終えて帰宅。目が疲れすぎて吐き気がする。今夜は鍋と残り物のおかずをいくつか。夕飯を食べながら周ちゃんの仕事の話を聞いた。珍しく少し怒ってるようだった。3日ぶりに会う周ちゃん。嬉しい。

麻婆春雨

中華 01.3,2022

午前はデスクワーク。午後は近所のしみるさんと今むの展示を見にみどり荘へ。久しぶりのみどり荘。知り合いが何人か働いてる。ちょっと会えたら嬉しいなと思ったけれど、仕事中だろうし展示だけ見ることにした。

3Fのギャラリーからは小学校か何かの青いプールが見える。空も青い。もうすぐ春なんだな。風が温かくてわくわくした。今むはまた髪が伸びてた。会うたびに髪が伸びてく。何だかんだと世話になってる気がする。ただの遊び友達、彼女もいないし誘いやすい。ひとりで食べるには何だか勿体無いような料理を作った夜なんかに食卓を囲んでビールを飲んだりもした。

結構いい絵だった。毎晩飲み歩いてると聞いていたけれど、ちゃんと描いたんだなって感じで驚いた。誰かが頑張ってる姿は嬉しい。何だか自分のことのように嬉しくなる。展示をすると高揚する気持ちばかりが先行してしまうけれど、心は思っている以上に疲れる。「よく頑張った!!」先生や親みたいに褒めて帰ってきた。

しみるさんとバイバイして、Appleで修理に出してたノートパソコンを引き取りに行き、青山で予約してた夏のワンピースを取りに行った。久しぶりに青山ブックセンターへ寄ってみる。今日は全部をぐるりと回ろう。高校生の時によくよくやってた。図書館だとか、大型本屋をぐるりと回る。興味のあった心理学のコーナーもよく通った。見知らぬ言葉が沢山あって、すごくドキドキしたのを覚えてる。やっぱりもっと勉強したいな。

写真を撮る事や写真の仕事は大好きだけど、それだけで私の時間を埋めたいとは思わなくなった。それに、派手できらびやかで忙しなく移り変わる場所よりも自分の周りにある世界の方がずっと魅力的に見える。年齢関係なく友達なんてまさに面白いの宝庫だし、夫となった周ちゃんもまるで地球外生命体みたいに未知の生き物。本だって料理だって一生かけても終わらないくらいの量がまだまだ待ってる。

ずらりと遠くまで並ぶ本を前にもっと写真以外の事をやってみようと思った。人生なんてあっという間に終わっちゃうんだから、今だって昨年の春に亡くなった石井ちゃんが毎日にやってきては後悔を繰り返してるくらい。もっともっと話しておけば良かった。もっともっと遊んでおけば良かった。友達になってくれてありがとう、いつも優しくしてくれてありがとう。かけられなかった言葉でさえ沢山ある。後悔したってもう遅い。過去はただの過去になっちゃうみたいに、未来だってきっとただの未来なんじゃないか。だから、やってみよう。過去も未来も要らない。今が丁度よく好きかどうかでいいんじゃないか。

麻婆春雨 [栗原はるみさんのレシピ]
春雨 100g 熱湯で2、3分茹でて水気を切っておく
合挽肉 200g
長ネギ1/2、にんにく・生姜1片 みじん切り
—–
紹興酒 大さじ1
豆板醤 大さじ1
——
顆粒鶏がらスープ 小さじ1をカップ1の湯で溶いたもの
醤油 大さじ3
砂糖小さじ1
—–
花椒 砕いたもの、ごま油 適量

フライパンにみじん切りにした長ねぎなどを炒め、肉を入れて炒め、豆板醤を入れて炒めてから、紹興酒を入れる。鶏がらスープ、醤油、砂糖を入れて煮立ったら、春雨を入れて煮汁がすくなるなるまで少し煮る。仕上げにゴマ油を花椒を振る。

鍋

夕飯 28.2,2022

昼過ぎに動物病院から電話があった。「先日の腫瘍の件なのですが。」心はもう決まってた。ただ信じてるだけだったけれど、もう梃子は癌にはならない。そう決めてたから心は全く動揺してなかった。まさかって想いもこれっぽっちだって無かった。なんだかいつしか私って女は大概のことでは驚かなくなったし、昔のように頑張るのをやめたら強くなった気がする。母と周ちゃんに直ぐに連絡した。”梃子は癌じゃ無かったよ!”

夕方に朗報が入った。2年前に大失恋したゲイの友人に年下の恋人ができたのだとか。何だかすごく嬉しい。先週に籍を入れたことを報告して、きゃっきゃと話した。年末に会った時は大分痩せてた。今の人生を淡々と頑張ってる姿を見て、どうか幸せになって欲しいと小さく願ってバイバイしたけど、年を越して呆気なく彼氏が出来た。人生ってわからないもんだな。うきうきした夜を過ごしていたらデザイナーの藤原さんが結婚するよって話を村上美術のゆうや君から聞いた。私は藤原さんが大好きだけど、藤原さんの彼氏のしんちゃんのファンでもある。何だかハッピーが掛け算してしまって嬉しくて堪らない。あんなに素敵なカップル、私の人生でお見かけした事がない。藤原さんは笑い上戸でしんちゃんは口数が少ないのに優しくて面白い。嬉しい、本当に嬉しい。嬉しすぎる。

2月最後の日。ハッピーが溢れている1日だった。今夜は久しぶりに寄せ鍋をした。

スクランブルエッグ

朝食 27.2,2022

「スクランブルエッグ作るよ。」料理が私だけのものじゃなくなる日がくるなんて想像もしてなかった。朝陽の中で周ちゃんがキッチンに立ってる。男の人がキッチンに立つ姿って素敵だな。

「卵は何個?」「3個。」「わかった。」梃子が周ちゃんの足元に座ってる。美味しそうな匂いでもするのかな。私は昨日失敗したカレーの話を打ち明けて、豆乳で割ってスープにする事にした。何だかいい感じのスープが出来た。今日は新しい家の家具を見に行く。嬉しいな。

もう東京を出るまでは引っ越さない。たったの一年前に誓ったこと。東京は出るけど案外簡単に引っ越しを決めた。私は人生で何台ベッドを買ったんだろう。想像するだけでゾッとする。幸いこの家に越してきた時に買ったベッドは新しい家に持って行く事に決めた。後、ソファーも。恵比寿にあるパシフィックファニチャーで買った2シータのソファー。27万くらい。購入したのは8月の暑い日だった。毎日がくたくたで、姉にソファーを買った事を報告して、姉からは”いいじゃん”ってメールが返ってきた。あの頃の姉はいつもなんでも喜んで褒めてくれた。届いたのは11月。まもなく離婚した。どんな生活が待っているのか誰も知らない空白の時間に作られたソファー。今でも何だか宙に浮いてるような気がしていたし、新しい家には入らなそうだったから手放そうかなと考えていたけど持って行く事にした。周ちゃんはソファーが好きみたいだった。正確にはソファーとゆう場所に周ちゃんを囲んで暖を取るように私や梃子が集まるのが好きみたいだった。周ちゃんがソファーでする嬉しそうな顔だとか、そうゆう場所を大切にしたいってゆう気持ちが素敵だなと思う。「とりあえずソファーは持って行こう。」周ちゃんに言った。

誰かと住むっていうのは、こうして自分の意思が働かないものがどんどん家の中に点在していく。だけど、意外と心地よかったり、愛らしい日々を奏でてくれたりする。これは悲しいことだなんてもう思わないけれど、いつか失くなるものをまた私は作ろうとしてる。

ポークカレー

カレー 26.2,2022

週末だけど今日は周ちゃんには会わない。色々が溜まっているし、ひとりの時間が猛烈に欠けてる。このままだと、一ヶ月後にはカスカスで砂漠になってしまう。「週末はやりたい事があるから別々に過ごしたい。」金曜日に周ちゃんに言った。だけど、夜に新しい家の家財道具の打ち合わせをしたいとお願いした。

今日の全てが私の時間だと思うと最高。花粉の所為で外には出れないけれど、ベッドでデスクで思う存分に過ごした。時々、携帯をチェック。周ちゃん、何してるんだろう。天気がいいから自転車でフィールドワークにでも出てるんだろうな。うん、私は私の事をしよう。夕方に打ち合わせの時間を聞いても返答がない。あれ、おかしいな。もう19時を過ぎた。どうしたんだろう、いつもなら直ぐにメールがあるのにな。お風呂に入って、少し心配になってくる。もしかして自転車で事故を起こして死んじゃったとか?ああ、ダメだ。まただ。トラウマ全開だ。過去の痛みがあちこちに根付いたままだ。元夫は何度も何度も酷いことをしてきたけれど、周ちゃんは別の人間。それなのに今に過去の恐怖を重ねようとしてしまう。同じように私はまた不安になろうとしてるけれど、そんな必要は無いよ。もう大丈夫。大丈夫。

20時頃、周ちゃんからメールがあった。”今日は展示で都内をあちこちと回っていたよ。今は六本木。” じゃあ、うちに泊まったらとなった。一昨日に会ったばかりなのに心が弾む。私の夕飯はカレー。先週オオゼキで買った豚バラで周ちゃんにと漬けておいた塩豚。勿体無いからとカレーにしたけど、塩気の所為でしょっぱくなってしまった。美味しいけどしょっぱい。何とも悲しい感じ。だからそっと蓋をして、周ちゃんには少しだけ残った塩豚を茹でて、後は小松菜の中華炒め、昨日商店街で買ったクリームコロッケ、残りの豆のサラダ、ボイルしたブロッコリーとマヨ、豆腐と白菜の味噌汁を作った。何だか嬉しい。カレーが隠れていてもいい。空の冷蔵庫をひっくり返してご飯を作ってるだけなのに楽しい。梃子みたいにはしゃいだ。

私の時間が失くなる事をずっと恐れていたけれど、今でも私の時間が大事だけれど、どうにかそれを守りながら片手間でもいいから周ちゃんに会いたいと思うようになってきた。結婚して数日。後数週間の別居生活。少しそわそわしてる。大好きなひとり暮らし。新しい生活。心はどちらも欲してる。

チューリップ

Journal 24.2,2022

昨日の夕方、三茶で魚屋に寄ったついでにチューリップを2本買って帰った。「こないだ古物市で買った花瓶、難しいんだよね。」「たしかに難しそうだね。あの花瓶自体がチューリップみたいだもんね。」周ちゃんが言った。一昨日に白のチューリップを3本買って活けてみたけど何だか変。う〜ん。あと2本くらい加えたら可愛くなるかな。夜見た時は何だかしっくりこなかったけど、朝になったらいい感じだった。うん。素敵。

今日は所沢へ内見に行く。せっかく所沢まで行くのだし、色々物件見たいねって話ていたけど条件に合う物件がひとつしか無かった。週末に何か見つかるかな。たぶん。所沢に向かう電車で周ちゃんが呑気に「多摩湖でも見に行こうよ。」と言った。行かないって思った。たぶん朝に私がGoogle Mapでたまたま多摩湖を見て大騒ぎしたからだろう。風も強いし、さくっと家を見定めて帰宅したい。私達の条件は段々と固まってきたから話は早い。正確には私の条件。周ちゃん曰く生活を大切にしてみたいからよしみの意向に添いたいのだそう。私の条件、ただの我儘じゃないかな。一軒家、広いキッチン、庭、朝陽の入るベッドルーム、それぞれが南向きの書斎、ウォシュレット、光の入るバスルーム、外見が可愛、駐車場付、自然が近くにある、最寄り駅は大きな駅。そしてペット可。そんな物件どこに?だけど、私の言い分は割と正当だと思う点もある。だってせっかく引っ越すのに好きじゃない場所でなんて暮らしたくない。それに、周ちゃんは大好きだけど、あなたとなら何処でも生きていけるみたいな女にはもうなりたくない。私の好きを私の人生から失いたくない。

内見した家の近くにはヨーロッパのどこかみたいな風景の多摩湖がある。ここは昭和の時代に軽井沢みたいな避暑地にしようとしたのだとか。不動産の方が案内してくれた車の中でも聞いた。「高級住宅街だった名残がこの辺りにはあります。」住宅街のちょっと入ったところ。外観、白くて可愛。吹き抜け良し。リビング広い。システムキッチン良し。風呂暗くて悲しい。部屋は全部明るい。二階の角部屋は最高に可愛。内窓と出窓がバッチシ。昭和モダンな雰囲気が最高に好み。不動産に戻って見積書を頂いて店を出た。遅い朝ごはんからもう5時間は経ってる。さっきからずっと周ちゃんとお腹空いたねって目で話してる。不動産を出て、斜め向かいにあった餃子の王将に駆け込んだ。私は餃子ライスとビールを、周ちゃんはあんかけラーメンと餃子のセットを頼んだ。「とりあえず食べよう!」周ちゃんが言った。お皿の中を綺麗に完食して店を出て不動産で申込書を書いて帰宅した。全部があっという間だった。

結局話し合いは殆どしてない。私なんてビールを意気よい良く呑んじゃってレモンサワーまで頼んだからほろ酔い。そう、キュレーター仲間の高橋くん家も近かった。余りに偶然でちょっと怖いくらい。周ちゃんはそんな偶然も嬉しかったんだろうな。明日から月曜日だから今日はそれぞれの家に帰る事にした。帰宅してご飯にキムチをのせたものと朝の残りのほうれん草の味噌汁を温めて食べてお風呂に入って直ぐに寝ベッドへ。周ちゃんも疲れて早くに寝たのだそう。婚約から結婚、そして引っ越し。とにかく忙しかった。何だかほっとしてる。

行きの電車、あっという間に周ちゃんの肩で寝落ちしてた。気持ちよかった。すごく気持ちよかった。ただ触れてるだけで全身や色々がそこに上手に落ちていくのがわかった。段々とだけど私は梃子みたいに周ちゃんになついてきてる。一度失った背中がある。もうそんなものは私には必要ないと思ったけど同じ様にまた温もりを感じてる。もう二度と失いたくないと恐れちゃいけないんだ、またいつか失くなる日が来るのだから大切にしなきゃと毎日毎日ひつこく言い聞かせよう。大切にしたい。すごく。

手巻き寿司

和食 23.2,2022

最近の癖で今日も早く目が覚めた。時間はまだ5時前。目をつぶっても何だか寝れない。出かける前に色々とやりたい事がある。もう起きようかな。なんだか少し緊張してる。ただ指輪を取りに行って役所に婚姻届を出すだけなのに。

待ち合わせは11時に表参道ヒルズ。トイレに寄って化粧を直したから3分くらい遅れた。ちょっと変な気分。ワクワクしてるっていうか、何だかそわそわに近くて、だけど平然を装ってる感じ。指輪は想像通りでとっても可愛かった。周ちゃんの指を通ってゆく指輪をじっと見た。軽い感じで「いいね。」って声をかけた。やっぱり何だかそわそわは止まらない。

店を出て、明治神宮に参拝へ行く前にジャイロでお茶でもしていこうとなった。チャイのグラスを握る周ちゃんの指に指輪がある。変な感じ。”あの人、既婚者なんだ。そりゃイケメンでいい男そうだもの。早くに誰かに取られてるよね。” いい男を見つけた時に言うフレーズが頭をよぎる。周ちゃんも既婚者の仲間入りなんだ。何だか変な感じ。

周ちゃんは指輪が気になるようで、手をかざしたり、手を裏表返してみたり、指輪をしきりに見ていた。可愛いな。嬉しいんだろうな。本当に周ちゃんって可愛い。可愛すぎる。私は、あ、久しぶりって思ってしまった。この指にする指輪は1年ちょっとぶり。嬉しいような、ああ妻にまたなるのかというずしりとした重みがかかるような気も少し。ただ、もう意気込んでない。幸せになるぞ〜とか、頑張っていい家庭を作る!とか、そうゆうのは無い。全然実感はわかないけど、あっという間に周ちゃんと結婚をした。

夕飯
手巻き寿司
タコとワカメの酢の物
イカの塩辛
長芋のイカスミ炒め
ウドの味噌マヨ和え
ズッキーニとシラスのペペロンチーノ
納豆
酢飯
ほうれん草とお揚げの味噌汁

塩辛

Journal 22.2,2022

独身最後の日、いつもと同じように晩酌をした。今日は朝から渋谷のオーレで富山で昨年末に行ったシェフインレジデンスの打ち合わせ。料理家のフミエさんと編集の山若君。この三人での会話が本当に好き。ずっとケタケタ笑ってるフミエさんと、ボケてばっかりの山若くんに、突っ込んでばっかりの私。あっという間に時間ばかりが経ってしまう。話し合いはさくっと決まって、9月にZINEの北陸行商をしよう、そして温泉巡りをしようとなった。想像するだけでワクワクする。山の中にある混浴に入る為に買うトレッキング用のブーツ、水着、とノートに書いた。それから青山に移動して中華料理店のふーみんで久しぶりにデザイナーの中西君とランチしながらお喋りしたり、夕方にパリで瞳ちゃんとワインを飲んだり、中々いい日だった。空もずっと青くて夜まで気持ちがいい。

帰って家探しのことで周ちゃんとちょっと喧嘩っぽくなった。こんな感じで明日籍を入れるってどうなだろう。けど、私が家への拘りが強いのが原因なのはわかってる。周ちゃんは何だか疲れてる感じだった。1時間くらい家の話をだらだらとし、電話を切った。5分後にやっぱり顔を見て話そうとテレビ電話で掛け直した。「怒ってるよね。」「怒ってないよ。」家の話はやめて、別の色々な話をした。話の流れで私の悩みについても話した。ずっとずっと昔から纏わりついて離れてくれない問題。

「大好きな人、例えば周ちゃんとか、ふみえさんとか、身近にいる人、。本当に大好きで、大好きで、自分との境がバランス崩しちゃって、好きが自分を飛び越えちゃって、時々、、私をコントロール出来なくなるの。それで、傷つけたり我儘を言ったり、自分だかなんだかが混同しちゃって。だから、すごく練習してるんだけど。ゴメンね。」周ちゃんが何て想うかなんて考えずに打ち明けた。私の問題は対象への愛が過ぎると、普段なら優しく出来るような事も、想いやれるような事もぐちゃぐちゃになってしまう。周ちゃんはただでさえ彫りが深くて吸い込まれそうに茶色い瞳をきらきらさせていた。「いや、本当によしみを愛しているよ。初めから思っていたけど、伝えてるけど、よしみのそうゆう所が好きなんだよ。そうやっていつも色々を考えてる。」想像つかないような回答だった。人を困らせてしまう最悪な私の問題について話したのに、何だかすごく嬉しそうな周ちゃんに複雑な気分しかない。私は深刻に悩んでいるし、それがきっと原因のひとつになって離れた友人もいる。今話したのは、私が困ってる生きづらさの話だったのに。

私の悩みは解決はしていないけど、何だかあっという間に救われた。今だけかもしれないけど、この先、悲観的にならないで私を救えそうな気がした。時間は深夜の1時前、3時間くらい話たのかな。今日もよく話した。家の事は一旦保留となったけど、楽しかった。もう寝よう。

春菊と豚肉のワンタン

中華 21.2,2022

朝から撮影。久しぶりに会った編集の野村さんに籍を入れる事を報告した。付き合った当初、数日前にプロポーズされたと話したら「えー!?」って、酷く驚いてたけど、あれから3ヶ月。また結婚するなんてすごいと言ってた。そうだよね、そう思う。だけど、私は強いタイプじゃない。捨てられない思い出以外は捨てる。昔の彼氏に貰ったバッグを今でも当たり前のように持てるほど上手に強く生きていける女じゃない。「どうして?」って聞かれて、「修行です。」って答えた。修行って言葉が一番しっくり来る。苦しみや色々を総括してやりがいがあるって意味で結婚生活は楽しいと言えても、結婚は楽しいものじゃない。ただの楽しさで言ったら彼氏の方がずっと楽しい。

明日は何をしよう。独身最後の日。朝から打ち合わせ、Appleでパソコンの修理、中西くんとギャランティーの清算とランチ、その後は瞳ちゃんと買い物。予定が結構詰まってる。ダイニングテーブルの花も買いたいし、夜に乾燥させてるスルメイカを塩辛にしなくちゃいけない。夜はいつもの様にひとりで晩酌をして、酔っ払いながら梃子と色々な色々な話をしたい。

温野菜

Journal 19.2,2022

今日は朝一で周ちゃんと三茶の病院へ行く約束をしてる。3時半に目が覚めて、色々な事を考えた。新しい家の事、結婚の事、子供の事。気づいたら7時も終わる頃。急いで支度をしていたら周ちゃんが家にやってきた。昨晩は気分悪く電話を切った。周ちゃんは何も悪くないし、心配してくれてたのに、とにかくうんざりだった。家が決まらなかったのは別に誰も悪くないし、お互いの所為だと言えばそれぞれが悪かった。周ちゃんを責めないし、私自身も責めたくない。だけど、気持ちは伝えたいと思って、家の事も、子供の事も、今の気持ちを伝えたら、ただ電話をしてきた。何も言わずに、ただたわいも無い話だけを。わかる。それが優しさなのはわかった。だけど、全然嬉しく思えなかった。

「パンを持ってきたよ。朝ごはん食べた?」出発まで後10分なのに、何を言ってるんだろう。ちょっとイライラした。世田谷線に乗って三茶へ向かう。仕事の話をした。少し気持ちが楽になる。お互いに違う島の話をするっていい。それだけで離れられる気がした。周ちゃんが嫌いな訳じゃなくて、周ちゃんに甘えている自分が気持ち悪い。病院を出てモスバーガーでランチをしようとなった。「正直、私は子供が欲しいかよくわかってない。」「うん。俺も子供がいる生活もいいし、いない生活もいいなと思ってる。兄弟に子供がいるから、もう母も満足しているだろうし。だけど、子供を作っておけば良かったみたいな話も聞くから、後悔しないようにしないと。」私が嫌いな話をした。よく子供を持たなかった人が後になって後悔するからという話。それって本当にそうなんだろうか?ってよく思う。「周ちゃん、その話をよくする人いるけど、それって私嫌い。だってさ、子供がいない分、楽しい事いっぱいしてるでしょ。結局、どっちを選ぼうが楽しい筈だし、どっちを選んだって後悔するかもしれない。要は今が楽しければ、過去を後悔なんてしないよね。私は全く後悔してないよ。子供を若いうちに産んでおけば良かったなんて全く思わない。だって、子供がいたら出来ないことを今まで楽しんできたし。」

私はまだイライラしてる。午後はフミエさんの味噌作りに行った。フミエさんや瞳ちゃんに会ってすごく落ち着いた。それに、フミエさんの料理がやっぱり好きだなと思った。今日は味噌作りだけど、料理家というフミエさんが大好き。私とは正反対の星に住んでる。ただ、なんだか元気になれる。フミエさんは周ちゃんに豆をあげてた。氷見で会った時に2人はキッチンで豆の話で盛り上がっていた。心配はしてなかったけど、こんなにすんなりとフミエさんと仲良しになるなんてと驚いた。

家路に着いて、新しい椅子が届くから周ちゃんは留守番を、私はサミットへ行った。今夜は無水鍋で温野菜と豚キムチ、あとは豆腐とアボガドの醤油麹のせ、納豆とめかぶ、釜揚げしらすと大根おろし、ご飯。簡単に作れるものにした。周ちゃんはいつも野菜を切ってくれる。残りの調理を私がする。その間にそれぞれがお風呂に入る。これがルーティン。席についてワインをぐいっと飲んで聞いた。「私って我儘だよね。周ちゃんの過去の彼女で最低な我儘ってなに?」周ちゃんの過去の最低我儘話は、それは我儘ではなくて、心の病だと思った。本人は病だとは言わなかったし、それが何処まで愛だと思うかって難しいよねって話してたけれど、「それは、多分病だよ。」ってハッキリと言った。もうワインも何杯も呑んでいたから、言った。私もそうだけど、病院へ行って知った事。「周りの人、家族とか、恋人とか、そういう人が手に負えないってなったら病だと思われます。今日は旦那さんの事で困って病院へ来られたんですよね。」心療内科で精神保健福祉士の方に元夫の相談をしていた時に言われた。周ちゃんが彼女と別れた理由は我儘だったそう。その我儘は何を言ってるのかも不明で、真面目に対峙しようとしたけど、どんどんとエスカレートしていったのだとか。元夫がおかしいのは気づいていたけど、普通の時もあったし、友達だっているし、病気じゃ無い。ただちょっと調子が悪いだけ。だけど、違かった。私の我慢が彼の病を病じゃなくしていた。病気ってある日突然なるものじゃ無い。普通の人がなる。病気でも友達だっているし、仕事も出来たりもする。結構簡単に心の病は転がってるらしかった。普通に歩いて、普通に何かを食べて、普通にその辺に座ってる。別にそんなに特別な事じゃ無いんだってわかった。

昔の彼女の我儘話から、恋愛がいつも歪んでしまう私の友人の話、周ちゃんが過去に職場で上司の女性に振り回されて大変だった話、どうしてか人を傷つけてしまう女の話になった。話しているうちに、話を聞いているうちに、なんだかすごく周ちゃんが可哀想に思えてきた。どうして周ちゃんはいつも優しいんだろうって思っていたし、周ちゃんが嫌な顔をしているのを見たことがない。顔から表情が消えるのは何度か見たことがあるけれど、今朝もそう。それ以外はいつも優しい。いつも優しい。何だかな、何やってんだろう。私がイライラするから、今日も周ちゃんは優しかったんだ。帰りに先日仕事で腰をやっちゃったんだと話してた。キッチンで腰を抑えてるのを見て気づいた。今日ずっと痛かったんだ。

この人は我慢をする人だ。私が告白された時に「あなたには幸せになって貰いたいって思ったんだ。」って話をしていて、一体、この人は何言ってんだろう?って思ったけれど、わかった。周ちゃんは幸せになりたいんだ。

私に出会う前に別れた婚約者の話を聞いたことがあった。何だか淋しそうに見えた。きちんと愛し合っていたんだろうと感じたけど、周ちゃんは彼女の悪口なんて一つも言ってないけど、それは平等そうじゃなかった。私には私が抱える問題があるように、周ちゃんにも私の知れない問題を抱えてる。だけど、隣にいるのならば、我慢しないでと言ってもしちゃうんだろうけれど、我慢しなくてもいいのかもしれないって少しでも気づいて貰えたらいいなって思う。

周ちゃんが優しいのと、我慢してるのを感じるって事を伝えた。堂々と話すのは可哀想かなと思ったけれど、私が思っただけだからと軽く話した。周ちゃんは皿を洗いながら何も言わずに聞いてた。「周ちゃん、毎週日曜日は私の悪口を一つ言う日にしよう。人の悪口を言ってはいけないとか、笑顔でいなさいとか、人には優しくとかあるけど、そうじゃない時があっても良くて、嫌な顔したり、嫌な事を言ってもいいんだよ。」周ちゃんは考えてる。「えー!うーん。確かに。しないかな。」「人には良いところも悪いところもあるし、周ちゃんが気分が悪かろうが、嫌な顔をしようが、それと周ちゃんの良さはイコールしないよ。まずは、人の悪いところを探す練習をしよう。やり過ぎたら、ストップかけるから。」「えー。」

いつも笑っていないで欲しい。そんな事したら、いつか何かが切れちゃうと思う。怒ったり、苛々したり、八つ当たりしたりしていい。毎度は困るけれど、適度にやって貰わないと隣にいる私もきっとおかしくなる。晴れてばかりの毎日は心が枯れてしまう。

マヨネーズ

夕飯 18.2,2022

朝のいつだったか覚えてない。多分、タクシーに機材を詰め込んで走り出した時だった気がしてる。世田谷区を越えたあたりであちこちにメールをしまくってすっかり車酔いをした。アパマンショップからのメール。”お申し込みの物件は別の方の申し込みが入り募集を取り下げていました。” このメールの所為。絶対に決まらないと思ってた。ああ、やっちゃった。遅かった。周ちゃんが所沢の地元の不動産でも紹介してくれた物件だったし客寄せの物件じゃない。こんな田舎の物件がサクッと決まるなんて。直ぐに申し込めるよう、色々と手配して、週末の予定も調整して、他の仲介業者との相見積も取り始めていた。

正直、久しぶりにすごく落ち込んだ。午前の撮影は楽しかったから、ぐっと写真を撮ったけど、午後になって機材を置きに家に戻った時には何だか途方に暮れてた。そうしたら、色々がどんどん放出してくる。私、埼玉に200パーセント魅力を感じて来なかった人生なのに埼玉に住もうと試みてる。そもそも所沢だとか全然知らないし、周ちゃんが居るって事しか見えてない。それに週末に籍を入れようとしたら天気が悪いとか言ってるし、それに赤ちゃんが欲しいかよくまだわかってないのに、見知らぬ男に股を開いて検査を続けて、なんだか偉そうなことを毎週言われてる。仕事は楽しい。それだけが救いなのに、埼玉なんかに住んだら、どうなっちゃうんだろうか。色々なストレスや不安が一気に放出しながら、撮影したケーキをムシャムシャと食べた。周ちゃんに言いたいことは山ほどある。だけど、それは甘えになる。私が望んでした我慢だ。それに、物件については周ちゃんは2週間も前から私に打診してた。私の判断ミスだ。正直、この問題のポテンシャルは低い。私程度のミスだから、きっとやる気さえあればどうにかなると思う。だけど、要は初めて胸が高まった物件だったからこそ喪失感が半端ない。思い入れがあった今の家を出る。簡単な判断じゃない。ようやく安全な場所での暮らしを見つけて、梃子と毎日が楽しくなってきた矢先にまた引っ越すなんて。

午後の撮影を終えて帰ってから、家の中で大きな声で吠えてみた。「もう嫌だー!!」ちょっとスッキリ。「梃子じゃないからね。ばかばかばかー!!!」梃子に先に謝ってから大声で叫んでみる。それから3度くらい、トイレで、キッチンで、玄関で叫んでみた。ご近所さんはちょっと驚いて笑ってるだろうと思う。「ヤダヤダヤダーーーー!!」何だか情けない感じの叫びで我ながら中々のパンチ力の無さだなと虚しくなる。夕方から入ってた打ち合わせが月曜日に延期したのは本当にラッキーだった。お風呂に入ってビールを飲みながら仕事のメールを返した。ブロッコリーを湯でてマヨネーズで食べる。最高だな。マヨネーズ大好き。兄は病気になるんじゃないかって程にマヨネーズを愛していたけど、私は嗜好品としてマヨネーズを楽しんでる。ありがとうマヨネーズ。今日も大好き。

ワインに手を出し始めた頃、ようやく周ちゃんからメールが入る。心の中で遅いよって思った。もう既にマヨネーズもブロッコリーもビールもワインも私を結構なところまで満たしてくれてる。さっきサミットで買ったアボガドに醤油麹をかけたものをつまみ始めて、キハダマグロの血っぽい味も、俄然私を満たし始めてる。結局のところ、私はもう甘えたくない。良好な甘えはいいけど、ただ目の前の不幸を愛している人の所為にするような甘えはお門違い過ぎる。そうゆう女、過去の私も含めて結構知ってる。男が何かを叶えてくれると信じてる感じの、幸福を人任せにしてしまう女。素直で真面目で優しい子が多いのだけど、残念ながら違う。男は性として男になっただけで神様じゃない。女と同じように頑張って生きてる。愛しているのと自分が幸せになるのは違うベクトルで進んでるのに、そこを履き違えると過去の私のように大変なことになってしまう。幸せになりたいと愛を信じたその先には想像しないような不幸が待っていたから。

だから、周ちゃんの私への気遣いが遅くてもいい。どうぞ、ごゆっくり。それと愛とは別物。私の幸せは私のご機嫌は私が取る。ああ、悔しい。今日は呑みまくって、明日酒気ぷんぷんで朝一番の病院へ行こう。結婚も愛している男も私を幸せにしてくれるものじゃ無い。寧ろひとりの方がずっと余計な事を考えないで済むし、幸せへの道は早い気がしてる。

一回休もう。気持ちが落ち着かなくて嫌だ。上手になんてこなさなくていい、それよりもちゃんとやりたいだけ。私の気持ちをもう置き去りにしたくない。来週は瞳ちゃんと青山で買い物しようと約束をしてる。たっぷりと私を甘やかそうと思う。友達って最高にラブリー。

夕飯

夕飯 17.2,2022

今日は夕方にロケハンに行くだけ。最高。急ぎの仕事は一つもなし。後は来週にやればいい。いつも通り6時前に起きたけど、ベッドの中でぼーっとした。朝陽が部屋中に入ってきて気持ちがいい。本を読もう。手に取ったのは江國香織さんの本。周ちゃん家の本棚からいつだったかに借りてきた。朝から不倫の話はどうかなと思ったけれど、気持ちよく読んだ。家庭を持つ男の人と不倫する独身女性の話。正直もう好きじゃないし、過去に愛はあったかもしれないけど、もうとっくに呆れていたし、そんな自分が多分好きじゃない。だから、悲しみもなく別れて新しい暮らしを始める。そういう話だった。いい話だった。

何と無く面倒だったり、億劫だったり、初めてで少し怖かったり、そういう事を離婚してからは敢えてやろうとなった。役所に納税証明書を取りに行くのもそのうちの一つ。今日は空が青い。すごく青い。こんな日に籍を入れられたらいいのになって思いながら役所に向かう。税務署か。何も悪いことをしてないけど、何だか怖い。世田谷警察に行った時もそうだった。まるで隠し事でもしているかのような気分になる。あちこちとたらい回しにされながらも無事に納税書を受け取って帰宅。昼食はご飯を炊いて、昨晩の残り物を簡単に食べた。夕方にロケハンが一本入ってる。帰りにワインでも飲んで帰ろうかな。

結局、思ったより帰りが遅くなって家路についた。それにしても今日は寒い。明日の準備をして早々に寝よう。寝る前に周ちゃんに電話した。今朝、見つけた100平米の家のこと。先週見つけた家に決めていた筈だったのだけど、段々と違う気がしてきた。周ちゃんの職場には近いけれど、駅までの道があまり好きじゃない。田舎だから東京の様に歩道が少ないのは仕方ない事だろうけど、あの道を梃子とは歩きたくない。それに、陽当たりは最高だったけれど、北に一つ、南に一つある書斎をどう部屋割りするかでもめた。「全部が南向きの部屋なんて無理でしょうよ!うちみたいなマンションじゃないと難しいよ。」私が文句を言った。私は北向きの部屋なら引っ越したくない。わざわざ田舎へ引っ越して、北向きの部屋になるなんて嫌だ。そして、今週になって思い出した。私100平米の家に住むのが夢だったんだ。引っ越すなら今の家より素敵じゃなきゃ嫌。これが第一条件だった。すっかり、色々な条件に惑わされて大事な事を忘れていた。仕方ないよね。だって、どこかで折り合いつけなきゃ。何度も周ちゃんにそう言ったけれど、周ちゃんにとって、ふたりにとって良かろうと思っていたけど、私ひとりだったら絶対に住まない様な家に住もうとしてた。危ない、危ない。それは折り合いじゃなくて、我慢だ。危うくまたやっちゃうとこだった。

「あの家、すごくない?」「お風呂、お洒落だね。」「そうなんだよー!あの家リフォームした人洒落てるよね。」古い家だけど、所々に洒落っ気が散りばめられてる。部屋の数はちょっと多すぎるけれど、キャッチボール出来そうなくらい広い庭がいい。木々が緑緑しくて、こういう庭の家に住みたかった。だけど、ペットについては申し込み後に交渉なのだそう。なんか面倒。そんな話の流れで、幾つか他の物件も内見へ行こうとなった。「そういえばあの階段が可愛い家にも行こう。」周ちゃんが何度も推していた家があった。駅から徒歩26分。それだけで、恐怖!と思って選択肢から外していた物件。条件を細かく見ると結構いい。夢の100平米。そして、全部屋南向き。家の場所をgooglemapで探してみると、緑がいっぱいの場所で何だかトトロが出てきそう!後ろに森、横に畑。通りにも緑が沢山ある。めいとさつきが歩いていそう。「周ちゃん!ここトトロみたいだね。すっごく素敵。ここがいい!」「そうだよ!!牛沼っていう土地はトトロにも出てくる。トトロの舞台となっている場所なんだよ。」周ちゃんから猫バスの絵が送られてきた。猫バスの額には牛沼と書かれてる。ほんとだ。「ここ、参道だね。」「え?」「古くからある大きな神社があるんだけど、この家は参道にある。」「えー!!」参道に住めるんだ。それに、引っ越すならこれくらいの田舎がいい。「周ちゃんここにしよう!!」家探しをして初めて胸が高鳴ってる。私の第一条件、今の家より素敵な事はこれで完全にパス。周ちゃんの条件で半ば諦めていた川の近くである事もすんなりとパスした。家から歩いてすぐの所にトトロに出てきそうな川がある。春になると桜並木になるのだそう。

「周ちゃん。今度、トトロ一緒に見ようよ!」

黒糖パンの卵サンドウィッチ

パン 16.2,2022

何だか今日はよく寝た。夢は見なかった。周ちゃんもよく寝てた。梃子が朝ごはんを食べて、ベッドに遊びに戻るまで周ちゃんは起きてこなかった。「穏やかだね。」昨日から周ちゃんが何度か言う言葉。本当にそうだなって思う。周ちゃんがアメリカから帰ってから、結婚の準備や色々でなんだかんだと忙しかった。早く春を越えて暑い夏のど真ん中に行きたい。Tシャツの周ちゃんと西瓜だとか、素麺をすすりたい。新しい家の庭で花火をしたり、今年もゴーヤカーテンを立派に育てて、その中で梃子と日向ぼっこしたい。

だけど、一旦は落ち着いたけれど、まだ家も決まってなければ、引っ越しもこれから。部屋を作るのは好きだけど、それ以外も沢山やることがある。パスポートなんて、コロナで海外に行けなくなったから1回目の結婚の名前のままだ。これってどう申請するんだろう。考えるだけで憂鬱。

“指輪できたって。” 午後に周ちゃんからLINEが入った。いよいよ、結婚するんだ。日取りは指輪を取りに行く日。天気がいい日がいいなって返答した。飄々と返したけれど、正直まだ寝起きみたいに視界はぼんやりとしてる。本当にこれが現実なのか、よくわかってない。とにかく、結婚しよう。そして結婚したらとりあえず30日間くらい、ただ食べてただ寝る生活がしたい。生きることだけに集中したい。

ナスの油みそ

おかず, 夕飯 15.2,2022

先週までの怒涛の忙しさが終わって、ようやくいつもの日常が戻ってきた。ここ数日、悪夢を見る。これで3度目。2度目の夢はしっかりと覚えてる。元夫にまたお酒を与えてしまった男、元夫に会社を作った男が、あの夜みたいに私を責めていた。酒の席で見かけると、昼間とは違って饒舌に女性を否定する様な言葉を時々聞いた。九州出身だから仕方ないんだろうと当時色々がまだ無知だった私も同じ様に彼を差別した。「もっと菊地君を立ててあげないと。」妻でしょ。黙ってなよ。夫がどんなに酷いことをしようと女は立てないと。いつもの様に悪酔いして喚きだした元夫が私の頭を叩き始めた時に彼は笑っていた。女に暴力を振るうのはやめなよ、じゃなくて、女って面倒。そんな眼差しで私を嘲笑う様な感じだった。元夫からも何度も聞いた。「シガキがさ、スーちゃんが俺を立てないから悪いって言ってるよ。」妻なんだから、夫を立てなよ。何度も何度も聞いた。目の前に酷い現実が起きてるのに、今日もまた夫は私に嘘をついて、仕事もしないでお酒を飲んで、泥酔して、暴れて、怒って、喚いて。いつもお金が無い。いつも何処で何してるのかわからない。帰ってこない。音楽の為だと言うけど、今日もお酒くさいよ?毎晩、打ち合わせだと言うけど、仕事もしてないのに夜中に誰と打ち合わせしてるの?携帯に入ってきた女からのメールは誰?約束はいつも次の瞬間から消えていって、それなのに、それだけど、どうやったら夫を立てたらいいんだろう。夫を信じたいのに信じることが出来ないのは本当に私の所為なんだろうか。私がそう思えないから悪くて、もしくはそう思う様に努めることが妻の役目なんだろうか。食卓に料理を並べて待っているだけなのに、暗闇がじりじりと私を詰めて詰めてもう崖っぷちなのに、もうこれ以上は下がれないのに詰めてくる様な毎日だった。

夢の中でまたあの男に責められていた。だから、あなたが悪いよね。堂々と傷つけてくる夫がいても、それは男だから、それは才能だから仕方ないでしょ。じゃあ、世界ではそうだったとしても、私の痛みはどうしたらいいんだろう。暗闇がじりじりと焼き付けてくる。あの感覚を全身で思い出す。

今週末か来週末に籍を入れる。もしかしたら、結婚、怖いのかもしれない。どんどん病に侵されていく元夫と、取り巻く世界。あんな場所には2度と行かない。だけど、記憶が私を襲い続けてる。周ちゃんとの未来は楽しみなのに、結婚が私を引き止めてる。

なすの油みそ / 土井善晴さんのレシピを少しアレンジ
なす 大2本 1cm幅の輪切り
青紫蘇 大量 荒く切る
赤唐辛子 1本
砂糖 大さじ1.5程
味噌 大さじ1.5程
水 大さじ2〜3、冬なすの場合に水分量を足す為
サラダ油 大さじ3程


油でなすと赤唐辛子を炒めて、そこに調味料を足して(必要があれば水を足す)全体になじませてから、火を止めて紫蘇を入れて混ぜ合わせる。

ワンタンスープ

中華 13.2,2022

昨晩は周ちゃんのキュレーター仲間の高橋くんに婚姻届の保証人の欄にサインして貰った。高橋くんが周ちゃんにアプリやってみなよ~って言わなかったら、超硬派な周ちゃんには一生会えなかったと思う。高橋くんに初めて会った時、アプリ市場には中々見ない周ちゃんという男を参入させたと誇らしげに話ていた。高橋くんはバツイチ。離婚の理由を軽く聞いたけど、簡単じゃなかった。多分、私と似たような話だと思う。その悪夢がどこまで進行しているのかは本人にしかわからない。いつか高橋くんが楽になる日が来たら、うちの食卓で高橋くんの好物なんかを食べながら聞かせて欲しいなと思った。

今日は病院の後にもう一つの保証人の欄を埋めて貰う為に後藤さんのお宅にお邪魔する。週末だからなんとなくお土産のチーズケーキは4つにした。もしかしたら、後藤さんの彼氏のまさくんもいるかもしれない。「周ちゃん、後藤さん家は家じゃないからね!プレスルームだから。」家までの道のりで何度も伝えた。

周ちゃんとまさくんは一度ミュージアムで会ってる。今日で2度目だからなのか会うなり色々と話し始めた。私と後藤さんはコーヒーをすすりながらチーズケーキを食べ、その会話の中から抜け出すようにソファーへと向かった。婚姻届を開くといつもの様に後藤さんはニコニコと笑ってる。達筆な字ですらすらとサインして、今朝2時間も探したのだという印鑑を押した。「人生、何が起きるかわからないね。」私だけに聞こえるような小さい声で言った。「ほんとですね。」私も小さな声で返した。17年ぶりくらいに再会した後藤さん。1回目の結婚で私達夫婦がもう手に負えないくらい最悪になってしまった時、直ぐに私の家に駆けつけてくれて、ただそっと寄り添ってくれた。こんなことってあるもんだ。もう二度と会わないかもしれなかった遠いい昔にお世話になった先輩が今の私を救ってくれた。大切なのは勿論今だけれど、人生は今日だけを見なくてもいい気がした。振り返ると、長く果てし無く続いた今日までの道のりには沢山の人の顔が見える。もう会わなくても、会えなくなったとしても、ずっと大切にしよう。今日さえ幸せならいい。今日一緒にいる人が幸せならいい。そんな事でもないのかもしれない。

怒涛の週末だった。結婚の準備、産婦人科、家探し。家に帰って、しばらく周ちゃんとソファーで話をした。ふたりともすごく疲れてる。

残りのワンタンで春雨スープ

中華 13.2,2022

とにかく疲れた。朝から天気が悪いけれど、なんだか有難い。残りのワンタンをさっと巻いて、春雨、ねぎと一緒に湯にかけて、鶏ガラスープ、オイスターソース、黒酢で少し酸っぱいスープを作った。食べる直前にラー油をかける。夜は気づいたら寝てた。

トマトとしらすとモッツアレラのスパゲッティー

洋食 10.2,2022

午前は仕事をして、昼から病院へ。今日は排卵しているか検査するのだそう。「左の子宮から排卵していて、卵子が11mmです。」先生が言った、何だかすごく変な気分。生理は毎月くる当たり前のものになったけれど、どうやら排卵してるらしいとか、排卵痛があるとか、何となくわかってる事もあったけれど、一度もそれを見たことがない。下腹部の奥が痛むことがあっても、触れたこともないし、大体の形はイラストで見た事があるけど、よくわからなかった。卵子が11mm。カウンセリングを受けていた時、シンガポール在住のカウンセラーさんは卵子の事をエッグと言ってた。その時は何だか違和感を感じたけど、卵なんだ。毎月私のお腹に卵。知ってたけど、知らなかった。卵。やっぱり変な気分。

生理、めんどくさ。生理、要らない。生理痛辛い。PMS最悪。その裏側で卵がいた。卵。会ったことがないけど、お疲れさんって思った。こんな言い方は正しくない気がしてるけれど、女の体は毎月卵を出して、子供を産もうとしてるんだ。それなのに、全然違うこと、仕事だとか、恋だとか、全然別のことに翻弄されて必死になって生きてる。SEXをする時はコンドームをつけて避妊して、卵はそのまま流れてなくなっていく。春が来て夏が来て、食べて排泄して、産まれて成長して死んで、私達は自然の流れに沿って生きてるけど、当たり前の様に卵を捨てることは自然なのかどうか、ちょっとよくわからなくなった。だからって子供を産まなきゃいけないとか、産むべきだとは全く思わない。

周ちゃんが不動産を回って物件を送ってくれた。どれも全くときめかない。私も探してるけど、見つからない。何だか申し訳ない気持ち。だけど、お金出してときめかない家に住みたくない。一緒にはいたいけど、だからってあなたとなら何処でも幸せとは、もう言いたくない。

夏にはどこかの街で冷たい素麺を一緒にすすっている筈。大丈夫、きっと見つかる。

餃子とご飯

中華 09.2,2022

調子が悪い。ご飯はよく食べてるけれど、ちょっとイライラしたり、小さい事が気になったり。周ちゃんに会いたいけど、そうでも無かったりもする。ひとりだけの毎日が恋しい。もう脱げない何かを纏ってるみたいな感じがする。それは暖かいのだけど、今日みたいな日は要らない。今でも、多分、1時間後の今も周ちゃんが大好きなのだけれど、その想いの中にいる私が、何だか何だろう。煩わしく思う。

もやしラーメン

中華 08.2,2022

朝から撮影。朝はちょっと寝坊して5時半に目が覚めた。家を出るまでに資料にもう一度目を通しておきたい。梃子の散歩は10分くらいで早々にすませた。「テコ、ごめんね。今日は帰ろう。」家を出たと思ったらあっという間に夜になって、スタジオからの帰り道、タクシーでぼんやりと窓の外を見ながら帰路に着いた。今日はもやしラーメンにしよう。周ちゃんに会いたいな。家にいたらいいのに。

お風呂に入ってビールをあける。時間は20時ちょっと前。お腹が空いたな。ラーメンを作り始めた。もう2月か。何だか今さらだけど、最近また驚いてる。指輪を買ったのが11月の終わりの方。出会って2週間くらいだった。2月に出来る指輪を楽しみに待っていたけど、勝手に時間がやってきたような気もする。指輪を取りに行く日に結婚しようって決めてる。未だお店からは連絡がない。本当に私達は結婚するのだろうか。今月に私は本当に熊谷という姓になるのだろうか。

高山なおみさんの餃子

中華 07.2,2022

久しぶりの我が家。何を食べよう。うーん、餃子にしよう。キャベツの餃子は久しぶりだ。今日は夕方に卵管造影検査というのをした。きちんと精子が子宮の中を通って卵巣に到達するかっていう検査らしい。片方の卵管の通りが怪しいらしくすごく痛かった。「痛かったら言って下さいね。」「先生!痛いです。」何度か言った。

寝る前に周ちゃんとビデオ電話をして、今日の検査の話をした。病院で貰った手帳を見せて細かく説明すると真剣に聞いていた。やっぱり周ちゃんは子供が欲しいんだろう。私の身体は今のところ年齢的な問題はあるけれど、致命的な問題は無さそうな感じだった。片方の卵管の通りが良く無いかもしれないと先生に言われても別にショックじゃなかった。まぁ、そんな事もあるでしょうと思ったし、それで赤ちゃんが出来なかったとしても仕方ないよねって他人事のように先生からの診断もあっさりと聞いていた。私にとっては特別に悲しい話じゃ無い。だってもういい歳だし、今までも赤ちゃんは希望してこなかったから何一つおかしい話じゃ無い。

もし気になることがあるとするなら、周ちゃんが子供を望んでいた場合にその期待に添えないことくらい。だけど、そんな事では落ち込んだり自分を責めたりはしたくない。だってそれは私のオプションだから、もう既にフル装備してる。特別美人でもないし、お金だって必要な分しかないし、社会性も欠けてるし、直ぐに落ち込むし、誰かを嫌いになってしまう日だってある。完璧ではないけれど完全なひとりの人間だもの。


高山なおみさんの餃子
豚ひき肉 150g
キャベツ 1/8 みじん切り
ニラ 1/2束 みじん切り
ニンニク 1片 みじん切り
ごま油 大さじ1
酒 大さじ1
醤油 小さじ1/2
オイスターソース 小さじ1
餃子の皮

拉麺

Journal 06.2,2022

昨日は鉄輪温泉に泊まった。昔ながらの湯治場の雰囲気が色濃く残る町並み。宿泊した柳屋も元々は湯治場だった場所をリノベーションして作った宿。宿について直ぐにお風呂につかった。静かなお風呂は一番風呂だった。水面に西陽がキラキラと反射してる。湯と光の中に溶けてゆく身体。このままどんどん身体を委ねたらどうなるんだろう。気持ち良すぎてちょっと怖くなった。

部屋に帰って寝ていた周ちゃんとSEXをした。確か今朝もした。仲居さんが朝食の支度で部屋に入ってきて慌てて寝てるフリをした。付き合って3ヶ月。20代の恋人達のようにしてるSEX。何だか少しくすぐったい感じもする。これはいつまで続くんだろうか。当たり前のようにきっと失くなっていくのだろうけど、それはいつなんだろう。一回めの結婚は元夫がわたしに嘘をつき始めるまでセックスレスにはならなかったけれど、回数が減っていく度に何だか女がどんどん剥がれていく様な気持ちになった。身体が性欲を強く欲しているわけではないのに焦りや不安を感じて、挨拶みたいにする軽いキスやハグだけがどうにか女であることを日常に繋ぎ止めてくれていた気がする。

朝食を食べ、少し街を散策した後に、日本で三泉に入ると言う火口にある塚原温泉へ車で向かった。強い温泉は長く入ると効能が強くて疲れると聞いたことがある。この塚原温泉も長く入らないようにと注意書きがしてあった。周ちゃんに聞いたところ、酸性が強いのでピーリング効果があって、産毛が溶けるのだとか。雪がちらついてる中、火口を見に山を登った。「あの煙の下にマグマがあるんだよ。」周ちゃんが言った。綺麗な石が落ちていて二つ拾うと周ちゃんも一つ拾った。周ちゃんは同じ事をする癖がある。私がやると周ちゃんもする。その逆はあまり無い。

火口から降りてお風呂のある場所へと戻った。掘っ建て小屋の中にある家族風呂。大きな窓からは鬱蒼とした山が見える。薄い雲が速いスピードで通り過ぎて、大きな窓から強い日差しが出たり入ったりしてる。風呂場の中にある影と窓から入る光が交わろうとしない。いい影だし、いい光。洋服を脱いで、アクセサリーを外してお風呂へ入った。2人入ると丁度いいサイズの木のお風呂。強い酸性で顔がピリピリしてる。ああ、写真が撮りたいな。周ちゃんとお喋りしながら何度も思った。この旅で何度も思った。今、撮ったらいい感じの写真が撮れそう。何度もカメラを取りに行こうかと考えたけど、結局、脱衣所のカメラを手にしたのはお風呂から出てから。やっぱり撮れなかった。

本当のところ、ずっとじれったい。撮りたいのに上手く撮れない。ああ、今って思うけれど、どうやってカメラを周ちゃんに向けていいのかわからなくなる。「今撮ってもいい?」たまに声をかけて撮ったりもするけど、声をかけると緊張して写真なんてどうでもよくなってしまう。フィルム代だってバカにならないし、心がどんどん沈んで撮るのをやめたくなったりもするけど、やめない。こうやって撮れないを繰り返していくうちに、きっと撮れる日が来るから。

別府空港に着いたのは18時半過ぎ。カボスの絵が描いてある缶チューハイを飲んでる人を何人か見かけて無性に飲みたくなる。「周ちゃん、カボスサワー飲んでもいい?」「もちろん。」ベンチに座ってカボスサワーをグビグビと飲んだ。すっかりひとりでご機嫌にお喋りしてる私がいる。私が笑うと、周ちゃんが笑った。周ちゃんはお酒が苦手だから飲んでない。だけど一緒になって陽気になってる。今日、2軒目の掛け流しの旅館の風呂が水風呂で私が子供みたいに拗ねて、そして貝みたいに閉じた。初めは優しく声を掛けてくれていたけれど、その後、周ちゃんも静かに運転をしていた。やっぱり周ちゃんは同じ事をする癖があるみたい。