ハヤシライス

夕飯 14.12,2021

母に車で駅まで送って貰った時に聞いた。「1月って忙しい?ちょっと紹介したい人がいるんだけど。」「BFだよ。結婚前提に付き合ってる。」「あらまぁ。どこの人?」「北海道出身だよ。」「良かった、関西だけは嫌。」

電車に乗ってから、母に周ちゃんの色々を改めてメールした。表参道でヤスコちゃんと打ち合わせしてから、病院へ。母から着信。あ、気にしてるんだろうな。”病院だから、終わったら電話する。”

「だって、アッちゃんやヤッチャンが兄弟としてよしみを想うのと、ママやパパが想うのは違うのよ。あんな経験しなくていい事なのに、ママとパパは、だから心配なのよ。相手がどんな人であろうと、立派だろうがいい人だろうが、きちんと相手を見たいの。」私が勝手に選んで勝手に不幸になったのに、母は父も、自分達を責めてるように聞こえた。

離婚の話をするのは久しぶりだった。姉とは何度も何十回、何百回としてきたけど、父は何も言わない。兄や母はあの過去を封印してるみたいだった。「ママ、あの人の名前はお願いだから出さないで。」私だけじゃない。私達家族が、あの離婚に今もトラウマを持ってる。家族の全員がきっと関西弁を聞くだけで胸の奥がちくちくと疼くんだと思う。もう二度とあんな出来事は起きる筈ない。もう私を苦しめる人は私達家族の前から去った筈なのに、今も尚、私も家族もあの過去に苦しんでる。

仕事を終えた周ちゃんが夜遅くに来た。母との話を話すかどうか一瞬迷ったけど、話すことにした。周ちゃんはぎゅっと私をハグして背中をさすってた。私達の苦しみを彼は今どう見ているんだろう。肩越しに夜の窓を見ながら目頭が熱くなった。そろそろ声も震えそう。だけど、泣くのをやめた。過去を偽ったり隠したくない。だけど、あの苦しみや恐怖の事は知らなくていい。

12月13日

Journal 13.12,2021

1週間のレジデンスが昨日に終わって、フミエさんは東京へ、山若くんは富山市内へと宿を後にした。私は周ちゃんと観光をしてから帰る事にした。一昨日から右耳がまた聞こえずらくなったけど、周ちゃんに会ったら聞こえるようになっていた。片耳が聞こえなくなると不便が多い。半分が海の中にいるみたいになるから何だかぼんやりするし、単純に誰かの声が聞こえずらくなる。耳が聞こえなくなるのは、ストレスと緊張から血流が悪くなるからだと母が言ってた。母も仕事が忙しいとなるのだそう。だけど、どうして周ちゃんに会っただけでそれが治るんだろう。固まった何かが氷だとかチョコレートが溶けるみたいに世界の半分の音が帰ってきた。出会って一ヶ月。私が思っている以上に私のどこかは周ちゃんを必要としてるのかもしれない。

12月11日

Journal 11.12,2021

夜中に夢にうなされて目が覚めた。元夫との地獄な毎日がリプレイする夢と、子供の頃からよく見る海に溺れる夢。この1年、元夫の名前は一切口に出さなかった。その言葉だけで、全身が凍りついてしまうから。「あの男」「元夫」「彼」みたいに、一切シルエットが見えない言葉で呼んでいたのに、昨晩、ベッドで目を閉じた後、何故か名前が不意に出てきた。「菊地くん」って。きっとそれが悪かったんだと思う。

怖くて目が覚めたけど、その数時間後にやってきた今日はさっさとそれを消してくれた。早朝に三人で海を走って、虹を見た。海から山にかけてかかる大きな虹。あんなに大きな虹は久しぶり。今日はそれぞれが忙しい日。明日のイベントの準備や、私は宿の撮影がある。それから昼過ぎに旧友の谷くんと会う約束もしてる。谷くんと会うのは6、7年ぶり。最後に会ったのは、茨木かどこかでお菓子工場の映像の撮影の時にディレクションをお願いした時。背が低くて派手な顔をした女の子と5年くらい付き合った後に結婚して平塚の方に家を買い、その直後に離婚した。二人に何が起きたかわからないけど、彼女はいつも色々が突然な子だったから、きっと離婚も突然だったんじゃないかなと思った。数カ月後、10年くらい働いていた会社を呆気なくやめて富山へ帰った。彼女の一人でも出来てるといいな。出来てることを願って会った。

「離婚した当初は、明日からどうやって生きていけばいいのかわからなくなってさ。」当時の私は「世界には女なんて一杯いるんだから大丈夫だよ〜。」なんて、どこにでもあるような言葉をかけたけど、離婚をしてからあの言葉がどんなに下らなかったのかわかった。だから、何だか申し訳ない気持ちだったし、少しでも幸せでいてほしいと願ってた。

「嘘でしょ。聞いてないよ。」
薬指のシルバーの指輪を見せる谷くん。ニンマリとしてる。コロナ禍と年下の女性と再婚したのだそう。あの谷くんが?いつもノンビリしてて、ぼんやりしてて、誰にでも優しいけど、なんだか頼りなくて、「優しくしすぎたから逃げられたんだよ。」共通の友人のたろちゃんんが言った言葉を私も頷いてしまったけど、その谷くんが結婚だなんて。

「本当にありがたいよ。すごく感謝してる。それに、今がすごく幸せだよ。」
谷くん、目から涙が溢れそうだった。谷くんってこんなにしっかりしてたっけ?こんなに堂々と幸せについて語るような男だったっけ?今日の谷くんは私が知っている中で1番カッコよかった。身内だけでやったという結婚式の写真を隅々まで見せて貰って、とにかく心から祝福した。

「あのね、私、離婚したんだよ。」
「えー!そうかぁ。よっちゃん大変だって言ってたもんね。」
「うん。でね、結婚するの。」
「えー!!」

次に来る時は旦那さんと新居に泊まりに行くねと約束した。谷くんに会えて良かった。谷くんは自分の事のように私の離婚についても結婚についても話を聞いてくれた。夜は恒例の温泉。今日は氷見の秘湯。日本でも5本の指に入るという秘湯なのだそう。山奥にぽつんとある。今にもお化けが出てきそうな廃墟風の温泉。男湯と女湯は藁一つだけで仕切られていた。フミエさんと今日は湯船に浸かりながら結婚生活について話した。いつもみたいに笑って話してるうちにあっという間にのぼせた。

夕飯は海鮮鍋とささやんが作ってくれたイカリング。あまりに美味しくて、みんなで何度も美味しいを連呼。ささやんはニコニコ嬉しそうだった。可愛いな。山若くんはイカリングを独り占めしたそうだったけど、最後の一つを貰ってすごく喜んでた。夕飯の後、山若くんと二人で口笛のリサイタルショーを皆に披露。笑いすぎてお腹がよじれすぎて盲腸になりそうになったけど、なんであんなに笑ったんだろう。曲は久保田利伸さんのLA・LA・LA LOVE SONG。練習には何時間も費やした。あの曲ってやっぱり名曲だな。

12月10日

Journal 10.12,2021

朝5時過ぎに起きて作業を始めようとテーブルに着くと、山若くんが部屋から出てきた。「おはよう。よしみさん、お風呂に行こうよ!」未だ半分寝てるような顔だった。真っ暗の中、海の遠くに赤オレンジ色の光が燃えるように光ってる。時間は6時を過ぎていたけど、夜の中を車で海岸沿いを真っ直ぐと走った。今向かってるのは海が見える露天風呂のある温泉。

お風呂から帰るとフミエさんがご飯を炊いててくれた。昨日の夕飯の残りのつみれ汁と炊きたてのご飯に卵をかけて卵かけご飯。昨日二人が喫茶店のママと仲良くなって貰ってきたハバネロ味噌も美味しかった。今日も天気が良さそう。これから私とフミエさんはナッチャンと一緒にイベントで使う野菜の収穫をしにヨロさんの畑へ向かう。山若くんは「お皿は僕が洗うからいいよ。」って支度で忙しない私達の為に後片付けをしてくれた。山若くんから出る言葉はたいがい尖ってるけど、山若くんって人の中身には優しさがたっぷり詰まってる。この旅でより一層に山若くんが好きになった。

カメラを二台ぶら下げて撮るのはすごく疲れる。天気が最高だし、畑も最高だけど、案の定酔った。時々、カメラのズシリとした重さだとか、慣れない変な体勢が続くと気持ち悪くなる。撮るのをやめてナッチャンと車の中で休憩した。ナッチャンはあと2週間で赤ちゃんが産まれる。色々と私達の為に動いてくれるけど、なるべく安静をとってる。車の中でイベントへの不安な気持ちとかを少し聞いた。こんなに大きなお腹をして、今に不安が無い方が不思議だと思う。出来るだけ何でもいいから役に立ちたいって思った。

畑の収穫の後はみつおの山へ行った。前回の時はみつおさんに会えなかったけど、今日はみつおさんと近所のお友達が顔を真っ赤にして畑の中の小屋で宴会をしている最中にお会い出来た。同じ日本でこんなに伸び伸びと自由に生きてる方がいるって思うと、都会の日々の中での不意に歪みそうになる出来事に出会っても無かったことに出来そうな気がした。びっくりするくらい大きな白菜とカブを頂いて、疲労が溜まってる私とフミエさんの甘い小麦が食べたいっていうリクエストでナッチャンお薦めの焼き菓子屋さんへ寄って貰って宿へ戻った。

ベッドルームに午後の光が差し込んでる。この時間のこの部屋が好き。午後は陽だまりの中で作業をしよう。いつしかベッドに転がって眠っていた。起きると山若くんが帰ってきたみたいで午前に買ったケーキをフミエさんと食べようとしてる所だった。「ケーキを開けたら起きてきたー!」って二人が笑ってた。私はアラームが鳴ったから起きたんだよって何故か一生懸命に弁明。寝起きのケーキ、すごく美味しかったな。フミエさんは1Fのキッチンへ戻った。私は作業へ戻って、山若くんも仕事を始めた。

“夕焼けが綺麗ですよ〜。” 笹やんからグループラインが入る。「山若くん!夕陽が綺麗だってよ!」カメラを二台持って屋上へ走った。なんて綺麗なんだろう。溜息だけがでた。今頃、みんなこの夕陽を見てるのかな。ナッチャン、フミエさんの顔が浮かんだ。私はこの人達が本当に好きだ。食卓を共にして同じ寝床で暮らしを共にする。宿を営む笹やんとナッチャン。滞在メンバーである料理家のフミエさん、編集者の山若くん、そして私。富山へ来る前は初めてのシェフインレジデンスでの共同生活だとか色々に少し不安だったけど、すっかりと気に入った。いや、どっぷりと愛してる。日常の中にはこんなにも色々な物が詰まってるんだって。

夕焼けが綺麗ですよって、すごく素敵な言葉だな。日々を愛で出した私はきっと東京へ帰ったら寂しさで一杯になるんだと思う。後2日。レジデンスの最終日は周ちゃんが東京からやってくる。

12月9日

Journal 09.12,2021

今日は朝からカタログの撮影。夕方に皆んなで合流して源泉掛け流しの温泉に行った。岩がゴツゴツした温泉。煙がもくもくとしていて、最高に気持ちがいい。いつもの通り私が一番最後に休憩所へ行くと、ぼーっとテレビを見る山若くんは完全に魂が抜かれてしまったみたいな顔だった。

シェフインレジデンス4日目。楽しいばっかりが一日をあっという間に満たしていく。

12月8日

Journal 08.12,2021

朝食は昨日山若君が買ってきてくれたパンと人参の葉っぱのサラダとバナナ。食後にコーヒー。それから、山若君に結婚の報告をした。会って直ぐに話したかったけど、何だかんだと3日経ってしまった。山若くんは周ちゃんと付き合った報告をした時に「そいつはSEXが絶対に変態だから!」と勝手に断言してたけど、その変態男と私は結婚をする。山若くんは思ったより驚いていなかった。「おめでとう。」え?なんで。優しすぎる声のトーンに絶対なにかあるに違いないと少し警戒したけど結局なにも無かった。8時過ぎまでダラダラと3人でお喋りをしてから温泉へ向かった。フミエさんも山若くんも大好きだ。3人で食べる朝食が楽しくて仕方が無い。食卓を囲んでコーヒーを啜ってるだけなのにどうしてこんなに楽しいんだろう。また明日も同じ食卓が囲めるんだと想像するだけで私の隅々が満たされてしまいそうになる。

午後は麹屋さんへ行って、その後にイベントの食材用に豆腐屋さんに行き、定食屋でラーメンとクリームコロッケという高校生が食べるようなランチを食べて、そのまま商店街を歩いた。商店街は半分以上やってない。その中にポツンと大きな魚屋さんがあった。小さくて可愛いお婆ちゃんが店番をしてる。夕飯の魚を見ていると、お婆ちゃんが話しかけてきた。旦那さんを亡くして、息子夫婦と一緒に魚屋を営んでいるのだそう。このビルに一人で住んでいて、ビルの屋上から見る立山連峰の景色を朝一番に見るのがとにかく幸せなんだとか。

温泉から帰って、私とフミエさんは宿のキッチンで笹やんとなっちゃんと四人で味噌びらきを始めた。越中味噌は麹の量が多い。塩分が強く、ベチャッとしたのも特徴。HOUSEHOLDで作った越中味噌以外に、近所の方が信頼してるという坂本麹屋さんのお味噌、なっちゃんがいつも食べてるという味噌、ヨロさんに頂いた3年と10年味噌の食べ比べをした。同じ越中味噌でもそれぞれに特徴がある。まさに研究してる感じで面白かった。

なっちゃんは笹やんが大好き。いつも、「笹やん大好きだよ。」って、みんなの前だって豪快に甘える姿が可愛くて仕方がない。なっちゃんの愛が大きくて、ただ傍観してる私達のハートにまで火がついてしまいそうになる。夕飯の支度をしてる時になっちゃんの知ってる愛の術を教えて欲しいってお願いしてみると、「好きって思った時は言い続けて下さい。」って。好きって言葉は沢山言ったら減っちゃうもんだと思ってた。それに、一杯言ったら勿体無い気もしてた。だけど、言い続けていいんだ。今日から私もそうしよう。なっちゃんは私にとっての愛の先生だから、なっちゃんの言う通りにしよう。周ちゃんが好きだって思ったら、好きだって言おう。愛ってきっとそういうものなのかもしれない。好きは感情なのだからコミュニケーションみたいにキャッチボールしなくてもいいんだ。溢れたら溢れっぱなし、別に止めなくてもいい。拭かなくてもいい。

夕飯は、商店街の何でも屋みたいなお店で買ってきた、べっこう、かぶらずし、魚屋で魚のすり身と頂いた大学芋、柚子の味噌漬け、菊芋の金平、ゆば、ホタルイカの沖漬け、海老と昆布の珍味とご飯とお味噌汁。今日も最高にハッピーな食卓だった。ありがとう。

12月7日

Journal 07.12,2021

今日から雨が続くらしい。朝食はフミエさんが沖縄で買ってきてくれた宗像堂のパン。そのまま食べても美味しいし、焼いても美味しかった。山若くんはスナックへ行くと張り切って出かけ、私とフミエさんはなっちゃんと一緒に車でのろさんの畑へ向かった。野菜を収穫しながら畑を案内してもらって、ご自宅で味噌を味見したりしながら色々な話を聞いた。のろさんは何度も「楽しい。」と言ってた。それに、ふみえさんのファンだったらしく、ふみえさんに会う今日をとても楽しみにしていたのだとか。午後は柿田水産へ行き、そこでも色々とお話を聞き、お父さんが作った味噌汁を頂いた。

何だかすごく疲れた。海がずっと撮りたいのだけど、海を静かに見たいのだけど、中々チャンスがやってこない。あっという間に夜だ。今夜は私とフミエさんと山若くんの三人だけの夕飯。ご飯はなっちゃんが炊いてきてくれた。今日の献立は、田作り、里芋の煮物、ホタルイカの沖漬け、アジのたたき、人参の茎やカブの葉の炒め物、人参の葉っぱのサラダ、なめこのお味噌汁、ご飯、ビール、日本酒。お腹がはちきれそう。

昨晩から周ちゃんのアパートには、数日後にアメリカの家族の所へ行くお母さんが滞在してる。周ちゃんから電話が来たのはお母さんとの夕飯が終わってから。電話を切ったのは12時過ぎ。結構長いこと電話をした。何だかすごく疲れた。ふみえさんと山若くんはとっくに寝てる。

「僕はあなたがどうしたら幸せになれるかをいつも考えてるんだよ?」
「そんな事、私だって考えてるよ。」

何だかアホくさい会話だった。周ちゃんは遠距離恋愛をしていた彼女と2年前に別れた。理由は婚約破棄。愛しているから別れを選んだと聞いたけど、今日は彼女の話をしていたと思う。だから、しばらく黙って聞くしか無かった。着火したのは私。「愛は時として物理的距離が特効薬になるんだよ。」投げた言葉の打ちどころが悪かった。わかってるよ。私だって、愛の為に別れたのだから。絶対に、絶対に離婚なんて選びたくなかったけど、愛していたから別れた。言い方を変えるのなら、私を愛してあげるために別れた。

あれから私は私の事ばかりを考えてる。自分の事をご機嫌にすることで精一杯だ。その一つの方法論として別居婚も考えていたほどだし。だって、まだわからないんだよ。周ちゃんを愛していきたいとは思ってるけれど、どう幸せにしたいかなんてわからない。

バナナトースト

朝食 06.12,2021

昨日、近所の温泉に寄った帰りにコンビニでバナナとチーズ、3枚入りの食パンを買った。フライパンにオリーブオイルを垂らして、食パンを焼いて、バナナのスライス、チーズを2枚乗せて両面を焼く。鍋でお湯を沸かして家から持ってきたほうじ茶を淹れた。

午前は中西くんと笹やんさんとナッチャンとzoomでパンフレットの打ち合わせ。午後はナッチャンと夕飯の買い出し。帰ってからお茶を淹れて、バナナマフィンを食べながら仕事のメールを片付けてると山若くんが石川から車で到着。「よしみさん、お風呂行かない?」ずっと曇っていた空が少し明けてきてる。「少しだけ撮影してくるから待ってて。」カメラを持って屋上へ登って街を撮って、海を撮りに出かけた。あっという間に雲がまた広がってく。ここの天気は気を抜くとすぐに変わってしまう。

今日は街の銭湯へ行く事にした。昨日とは打って変わってガラガラ。どうやらこっちは人気がないみたい。けれど、サウナが空いてて最高。お風呂から上がって着替えてると、今井美樹の昔の曲が流れてる。90年代の曲が何だか気持ちがいい。ああ、最高。ご機嫌で今にも踊り出しそうな気分。

宿に戻るとフミエさんが到着。フミエさんは沖縄出張からそのまま富山へ来た。みんなで鍋の準備を始めた。笹やんさんは魚介を捌くのが得意だとナッチャンに聞いてたけど、中々な手捌きで見惚れてしまう。イカやカワハギ、河豚をどんどんと捌いていく姿が何とも爽快。お腹はもうペコペコ。今夜は氷見の魚の鍋。

ベッドに入ってから、フミエさんに周ちゃんの事を報告した。後、ぞわぞわしてる事も。「わかるー!」結婚前のぞわぞわとか、中年の恋話で大いに盛り上がった。結婚が何なのかもちょっと話した。私の結婚はどうなるんだろう。周ちゃんと今夜は電話しなかった。出会って1ヶ月が経つ。そして、たったの1ヶ月で周ちゃんは私にとって大好きな人になった。1ヶ月前は周ちゃんがこの世界に生きてる事ですら知らなかったのに。

鍋焼き饂飩

郷土料理, Journal 05.12,2021

夕飯は宿の直ぐ側にある三木さんの饂飩屋さんに行った。笹やんさんとナッチャンが行きつけなんだそう。人生一くらいに最高の饂飩屋さんだったな。途中で出してくれたサワラの炙り焼きも、ちょっと飲んでみてと出された日本酒も美味しかった。あとデザートの林檎も食後のウィンナーコーヒーも最高だった。

周ちゃんから妹に結婚の事を話したよと報告が入り、私も兄にLINEしたのが朝の8時。新幹線に乗る頃には周ちゃんの色々を兄に話し終わり、ホッとして座席に座った。あれだけ私の離婚で苦労をかけた兄にどう結婚を切り出していいか迷っていたけど、喜んでくれて本当に良かった。調子に乗って姉にもLINE。”話がある。” メッセージを送ると直ぐに電話が掛かってきた。L.Aは夕方。「何か仕事で大きな事があったんでしょ?」「フランスの仕事が決まってフランスに住むとか?」「絶対に仕事だって事は分かってるんだよ!」私以上に私の事で悲しんだ姉。半径1m以内に男性が近づいてくる事も許さないだろうし、男性不信はもうこの先ずっと払拭出来ないと信じてる。ましてや結婚だなんて。電話を切ってから姉からLINEが入った。”嬉しくて泣いたよ。昨日はニコの友達と飲み明かして二日酔いなんだけど、今日も祝杯する!時間じゃない。ニコも出会って直ぐに結婚しようって言ったもの。カズとは10年一緒だったけど結婚しなかった。よしみが幸せならいいよ。”

夜、周ちゃんと電話して、ずっとモヤモヤした。何だか苛々もした。この気持ちって何だろう。周ちゃんの妹に話して、私の兄や姉に話して、兄とは東京で、姉とは正月にL.Aで会う約束をして、家族に結婚を報告したらぞわぞわしてきた。結婚については二人でずっと話していたのに、何だか結婚という形がどんどん私達の外壁みたいに組み立てられていく感じがして怖くなった。すごく会いたいのに気分が悪い。

電話を切って、ちょっと涙が出た。私、本当に結婚出来るのかな。結婚するのかな。パリのまゆみちゃんからLINEが入る。”オミクロンで帰国が難しいかも。” 悲しくて泣いたって内容だった。だけど、大好きなミュージュシャンの小袋 成彬さんに街で偶然会って、その後にまたレストランで会ってハグして貰ったっていう写真を嬉しそうに送ってくれて、何だか何でだろう気持ちが安らいだ。あ、分かった。私、不安なんだ。過去の結婚と同じ様な事を進めていくうちに、過去が今を邪魔する。元夫との思い出が所々やってきては去っていく。だけど、私が今しているのは周ちゃんとの結婚だ。

周ちゃんに不安だってLINEした。ひつこく周ちゃんには不安が無いのかを聞いた。周ちゃんも本当は不安だって。自分が病気になったり、仕事が出来なくなったりしたらどうしようって不安があるって。だけど、私が不安なのはそうゆうのじゃない。私が不安なのは、お互いを傷つけあってしまったり、優しく出来なくなってしまう日が来ないか。怖いのはそれだけ。もう二度とそんな日を見たくない。絶対に見たくない。

“楽しい事は二人分 悲しい事は半分という先人の教えに学ぼう。” 周ちゃんからのLINE。どうか、お願いだから話して欲しい。周ちゃんは問題があっても自分で解決したいって言うけど、教えて欲しい。私の悲しみですら見つけるのに困難なのに、誰かの苦しみだなんて簡単には見つからない。もう私だって全てを一人で抱えたく無い。だから、教えて欲しい。お互いのそれを半分ずつ交換したい。

色々な何かが、過去も今も未来もが混乱しながら進んでる。だけど、大丈夫。きっと大丈夫。

朝食

朝食 04.12,2021

今日こそ5時に起きよう!そう思って7時。昨晩も1時過ぎまで電話してしまった。急いで納品を終わらせて、新しい機材の準備やテスト作業。合間に支度。あ、機材が一つ足らないじゃん。パソコンに取り込むSSD変換ケーブルが無い。渋谷のビッグカメラに買いに走り、テスト作業を終わらせて、パッキング。今回は映像とスチールで合計3台のカメラを使うことに決めた。何とか色々を終わらせて、テコをリュックにいれて電車に飛び乗った。もう7時だ。眠いしお腹もペコペコ。疲れた。

怒涛な一週間があっという間に過ぎた。周ちゃんからは豊田市のギャラリーに行ったよとメールが入る。明日は朝起きたら次の行き先を決めるのだそう。一応パソコンも持ってきたから月曜日もちゃっかり旅先で仕事をするかもとの事。彼の行動力が本当に好きだなと思う。感情では無くて感覚を大切にしてる。

私も私に飲み込まれないで、前へ前へと前進出来る人になりたい。

汁なし麺

Journal 03.12,2021

出張の準備であっという間に夕方になった。汁なし麺をささっと食べて六本木へ。今日は編集のリリさんとのお仕事。食べ過ぎた。お腹がパンパンに張ってる。

スタジオに入ると沢山の人。あー嫌だな。この人数はキャパシティオーバーだ。前の撮影が押して、少し待ってから撮影が始まった。あっという間に終えて帰宅。帰り道はリリさんとずっとお喋りした。楽しかったな。本当にこういう時間が好き。何だか、最近すごく写真が楽しい。今までも大好きだったけど、もっともっと好きになった。夜の撮影は嫌いだったけど、夜の撮影も好きになった。ぼんやりと今日の余韻に浸りながら帰るのが心地いいって事も覚えた。

時間が私だけのものになったら、私のご機嫌がどんどん増殖していくのがわかる。本当にまた結婚しても大丈夫だろうか。周ちゃんが大好きだけど、家族も欲しいけど、私の時間はきちんと私の側にいてくれるだろうか。無理矢理にかさぶたを剥がすみたいに、治らない傷が日常になるような日は絶対に来ないって言えるのだろうか。

お風呂に入ってベッドルームへ向かう廊下で明日出す予定のゴミ袋を見て変なことを思い出した。私、あの人が部屋にしたオシッコを何回片付けたんだろう。こんな事、周ちゃんが聞いたらどう思うかな。嫌だ。元夫が酔っ払って部屋でオシッコをするのが癖になった時期があった。何度片付けたんだろう。テコの犬用のトイレシートは吸水力があるからよく吸い取ってくれた。嗚咽しながら深夜に一人で片付けて、手を洗って、冷たくなった身体でベッドへ入る。隣でジャケットを着たままの男が酒気を部屋中に撒き散らしながら大きなイビキをかいてる。

彼だって優しいところは沢山あった。だけど、いつからわからなくなっちゃったんだろう。朝起きて、甘えてくる彼にいつも安堵した。この人は変われる。僕は弱いからっていう口癖も彼の努力の様に見えたし、私が出来る事はたった一つ。「君の為に変わる。だから僕を信じて。」と言う彼の言葉を信じる事だけ。

愛っていうのは一体なんなんだろう。信じても叶わないし、頑張れば頑張るほどに孤独になってく。先週の金曜日に久しぶりにカウセリングを受けた。私の近況や変化した色々を聞いたカウンセラーさんがすごく驚いてた。「ラジオをやってるのだけど、良かったらよしみさんの話をしてもいい?」

その日は愛だとか、結婚についての話をした。色々な形があるよね。私のそれは何だろう。「結婚とは、相手も自分も幸せにするものでしょうか。」自信なさげに聞くと、カウンセラーさんが言った。「前にあなたが言ってた事ですね。」お互いを知り続ける。それが対話に繋がる。それには、自分も前を向く事。

周ちゃんといると、周ちゃんといる時間以外も楽しい。仕事も写真も楽しい。褒められたり、応援して貰うのも嬉しい。周ちゃんの仕事の話を聞くのも楽しいし、フィールドワークから帰って、嬉しそうに話す顔を見てるだけで陽だまりの中で全身が緩んじゃうような気持ちになる。だけど、沢山の時間を一緒に過ごしたいけど、私の時間も、写真も仕事も、友達との時間も、限りなく削りたくない。したい事も沢山あるし、デートに使う時間はきっと20%くらいが限界。だから、毎晩一緒に寝れて、朝晩の食卓を囲めたら、十二分に幸せな結婚になると思う。カウンセラーさんが言ってた私の言う結婚はそうゆう事なのかな。一年後、私達はどんな暮らしを送ってるんだろう。

目玉焼き丼

和食 02.12,2021

今日もヨドバシ。ここ数日色々と調べてたけど、結局、機材を一式揃えた。来月のクレジットの請求が恐ろしい。新宿から幡ヶ谷に移動。編集の浅井さんとflowへ行った。私の誕生日に渋谷で偶然会ったのが11月の初め。浅井さんの誕生日も数日後だと知って、蠍座会をしようと約束した。その時、蠍座と蟹座の相性が同じ水同士でいいと言うけど、男女に限っては実際のところそうでもないとか、むしろ牡羊座と相性がいいよって話を聞いた。そして、浅井さんが仲がいい制作会社の男性達は皆、牡羊座との事。「じゃあ、その牡羊座さんを紹介して下さい!」とお願いした。あれから1ヶ月。

「浅井さん。今日はちょっとご報告があります。」「???、結婚するの?」「えー!何で知ってるんですか!!」「えーーーーーー!マジで!!」浅井さんは自分の言った言葉にビックリ仰天して、二人で大笑い。今日は浅井さんに結婚観について色々と聞こうと決めてた。いつも伸び伸びと仕事をしてて、楽しそうで、親切で優しくて、ハードワークをこなしてるけど、家の文句だとか、旦那さんの悪口一つ聞いたことがない。どうしたら、そんなに楽しく結婚も自分の人生も楽しめるのか聞いてみたかった。お金の事、子供の事、仕事の事、色々な話を根掘り葉掘り聞いて、全部綺麗に答えてくれた。

何だかすごくお腹が一杯で満足してる。LINEを開くとメールがたくさん。近所の朋子ちゃんや、カメラマンの渉さんから。「よしみちゃん大丈夫?火事すごかったね。」え?慌てて電話すると、大火事がうちの裏らへんで起きていたとの事。既に消火活動は終わったみたいだけど、気が気がじゃなくなった。それから数十分後、急いで家に飛び帰った。テコ、大丈夫かな。怖がってないかな。電車の中でどんどん不安になっていく。”周ちゃん、うちの裏で家事が起きたの。” LINEを打った。

別に誰にもこの気持ちを言わなくても問題ない。だけど、わざとでもいいから甘えたかった。

夕飯

夕飯 01.12,2021

午前は請求書の作成とか事務作業。午後はヨドバシへ機材を買いに。その帰りに伊勢丹で新年用にhankypankyでパンツを買って、青山で周ちゃんにクリスマスプレゼントを買って、中西君の事務所へ行った。先週、周ちゃんが急にヒバの丸太を買ってくれた。クリスマスは日本にいないから先に渡して置きたいって。丸太を貰ったのは人生で初めて。翌日に立派な丸太が届いた。私は周ちゃんが好きなヤクのセーターにした。出会ってすぐの頃、チベットの方へ行く前って、本物のヤクに会いたいと切望しちゃうよね!って話が盛り上がって、その時の周ちゃんの顔が好きだから。

中西君とは来週の撮影の打ち合わせをして、ちょっとだけ近況報告をして帰宅。中西君に離婚を報告した時、結構親身にメールをくれた。今度ご飯を食べようって約束したけど、あっと言う間に1年くらい経ち、気づいたらまた冬。けど、元気そうで良かった。何となく報告した方がいい気がして「結婚するかも。」って伝えると驚いてた。私は多分恥じらってた。本当は「結婚しようと思うの。」なのに。私って本当にダサい。

夜中に目が覚めて周ちゃんと電話した。今日あった事。私ってダサいよねって話をすると笑ってた。周ちゃんは職場の既婚者の先輩方に色々と指南して貰ってるらしい。多分、私はまた失敗したらどうしようって気持ちが心のどこかにあるんだろう。そんな現実が来たら恥ずかしいって。婚約をして二度目の結婚の準備をしてる。失敗するかもしれないし、しないかもしれない。未来なんて未だ何処にも無いのに。「それってさ、こないだあなたが言ってた季節物じゃない?」周ちゃんが言った。そう、私もそう思った。事実婚か法的結婚なのか未だ決めてないけど、結婚は指輪が手元に来た日にしようって二人で決めてる。

「独身も残り2ヶ月くらいだね。周ちゃんは何か思う?」「独身に全く未練が無いよ。それよりもこれからの事ばっかり考えてる。それに既婚者だって思われた方が楽だよ。」一回目の結婚の時は独身が終わるのをカウントダウンしてた。ああ、人のものになるのか。名前が変わったり、指輪をつけたり。何だか全く違う世界に行ってしまうような気がしてたけど、案外世界は何処までも繋がってた。

この恋もそのうちに愛になる。愛になる前に感じておくことがきっと沢山ある。これは旬だものね。恥ずかしい事じゃない。正々堂々と恋をして、大切な友人達にもちゃんと報告していこう。

夕飯
春菊と若布の味噌汁
卵と納豆
しらすと野菜のペペロンチーノ
カツオのたたきと檸檬醤油
出し忘れたコロッケ

鯖のトマトスパゲッティー

洋食 30.11,2021

来週からの富山出張の準備で朝からバタバタしてる。何だかやる事が沢山。それに、月末だから請求書も出さなきゃ。だけど、とにかく今日は早く寝たい。全くもって矛盾してるけれど、まぁいい。いいのかな。

あっという間に陽が暮れて、予定通り早々に今日を終える準備。20時過ぎにはベッドで本と埋もれた。最高だな。周ちゃんから “ただいま〜。” とLINEが入る。そこから何となく電話を初めて、周ちゃんはご飯を作って、お風呂に入って、日課のぶらさがり健康器にぶらさがって、布団へ入った。私はずっとベッドのまま。今日はどんな仕事した?ランチは何食べた?とか、同僚の結婚生活がパーフェクト過ぎる、後輩が恋愛で悩んでるとか。たわいもない話をずっとずっと。作品とか文章の話になって、私が書いてる日記の話になった。日記は今は読まないでとお願いしてる。読むなら3年後にしてって。色々を話したくないわけじゃないけど、過去の話も少しは伝えてるけれど、もう少し時間が欲しい。

ずっと聞きたかった事を聞いてみた。「周ちゃんを写真に撮ってもいい?」ちょっと驚いて、しばらく言葉の意味を考えてるようだった。ゆっくりと「いいよ。」って。「何でも書いて、何でも撮って、好きなようにやってくれ。それがあなただから。」って。元夫は、僕の事を書かないで、僕の事を写真に撮らないでって口すっぱく言ってた。カメラを向けると顔を背けて、日記を書けば、夫の友人から日記を読んだ事を聞いたと怒られた。知らず知らずの内に縁取られた日々の中で試行錯誤して撮った写真や書いた文章はいつもフレーミングをちょっとずらす様な感じだったのかもしれないな。

電話を切ってから何だか沸々と嬉しさがこみ上げきて、”周ちゃん大好き!” とメールして寝た。減るもんじゃ無い。若い子みたいで恥ずかしい気もしたけど、私がこの想いを吐き出して誰が困る?答えは絶対にNOだと確信してる。いつしか消えて行く今日を今日のうちに思う存分にしたい。

朝食

パン 28.11,2021

半同棲3日目。先週から怖いくらいセックスしてる。「ちょっと多いよね。」周ちゃんが心配そうに言った。「こういうのは季節物だから。そのうち回数は減るし、いいんじゃ無い?だって、旬はその時に食べないと勿体無いじゃん。」私の回答が明答だった様で感心してた。周ちゃんは私の言葉をよく喜んでくれる。その喜びの内訳についてはよくわからないけど、目をキラキラさせてる周ちゃんを見るのは私も嬉しい。私達が出会ったのはマッチングアプリ。私は雑誌の企画で初めて、周ちゃんは同僚に展示の会期準備の忙しい最中に「仕事ばかりして、くさくさしてる場合じゃ無いですよ!」って、登録する事を勧められたのだそう。そして、数日後に私とマッチングした。「プロフィールの文章に惹かれたんだよ。文章にはその人が出てるから。」もう10回以上、そんな話を聞いた。

結局、今日もとにかく話し合った。それに、周ちゃんの同僚に教えてもらったふたり会議っていうアプリで、マネーリテラシー、コミュニケーション、ライフプラン、キャリア、色々な題材を元にずっと話を続けてる。何だか一緒に会社を設立するパートナーみたい。恥ずかしい話も沢山あるけど、経営の為ならば恥じらいよりも真意について話そう!そんな意気込み。何だか初めての体験がとにかく楽しい。

夕方から編集のリリさんの新居へ編集の成田さんと一緒に遊びに行った。ベッドの横に半年前に私が撮ったトウモロコシご飯の写真が飾ってある。リリさんが子供みたいにボロボロと涙を流した日の写真。昨日、彼氏が出来たんだそう。色々と話をしてくれたけど、とても素敵な彼だった。あの失恋があったから結ばれたんじゃ無いか、そんな気がした。女っていい生き物。失恋したって美しく生きちゃうんだよな。成田さんは少し気になってる子の話とか、仕事が忙しいって話しとか、色々を話してた。リリさんが二人が一緒に働いていた編集部の編集長から “リリ子を応援してる”ってメールを先日に戴いたって話をすると、成田さんの目には涙が溢れてた。何だか、そんな成田さんって人間が本当に大好きだって思う。こうして何年も一緒にいて、いつも会う成田さんじゃ無い成田さんを見つけるのが嬉しい。いつもの彼は誰もが認める元気ハツラツとした好青年だけど、こうして食卓を囲んだ時に見えるすごく繊細で、身体のあちこちに持ってる色々な感情に驚く。すごく素敵な光景だった。どうして今日カメラを持ってなかったんだろう。

家に帰ると部屋には誰も居ない。梃子はベッドで寝てる。周ちゃんがいない家は何だかすごく落ち着いた。やっぱり一人で暮らすのが好き。だけど、周ちゃんに会いたい。周ちゃんがもうたっぷりと好きだ。

夕方、家を出る前に周ちゃんに話をした。「私の色々が、例えば男性とハグをするとか、恋をするとか、セックスも。トラウマだった指輪をつけたいって思ったのも全て周ちゃんのお陰。もし、例えば周ちゃんが誰かを好きになる様な事があっても、それはすごく哀しいけど、周ちゃんにはもう十分に感謝してるから。」

この人は一体なんなんだろう、直感で結婚を選ぶなんて。プロポーズをしてくれた周ちゃんを信頼するよりも、まだ出会ったばかりの人に積もる不安だとか、私のトラウマが彼との距離をしばらく狭めてくれなかった。身の回りの友人等にそっと話をしたけど、出会って10日でプロポーズしてくる男に誰もがぶったまげて、心底心配してくれた。私も200%友人の言葉に同意だった。「結婚を決めたのは直感だよ。喫茶店であなたが話していた事が心にすごく響いて、それで、あなたを幸せにしたいって思ったんだよ。」彼の言うところの直感が私の人生を前へ前へと動かしていく。あっという間に巻き込まれてしまった様にも思う。夕方に何であんな事を伝えたのかわからないけど、彼が好きだけど、彼を私の物にしたいとは思いたくない。私の人生を変えてくれた。この現実がここにあるだけで、もう十分。こんなに沢山を貰ってしまって、これ以上の我儘は言えないよ。

朝食
オムレツチーズサンド
ソーセージとバターだけのサンド
カフェオレ
バナナとブルーベリーのスムージー

夕飯

夕飯 27.11,2021

半同棲開始2日目。ランチは周ちゃんの山形時代の友人が西調布の手紙舎のカフェで今週末だけランチを出してるから食べに行こうとなった。店に着くと、たいちくんという爽やかな男性と隣に小さくて可愛らしい女性が挨拶してくれた。二人は夫婦で少し前に結婚したのだそう。周ちゃんは私の事を婚約者ですと紹介したけど、未だ半生みたいな婚約者なのに周ちゃんの旧友にどんな顔をしたらいいんだろう。ちょっと変な気分。

周ちゃんはたいち君に「結婚の先輩として、色々教えて欲しい!」と言った。たいち君は照れながら奥さんとなりそめを話し始めた。”四国の方に勤務していた時に、仕事先の建築事務所で結婚についての話しになったんです。所長が「寝室は別に作って置くのがいいよ。」と若者達にアドバイスをしたのだけど、尊敬してる所長は奥さんと寝てると言う。どういう事だろう??そこから結婚について深く考えるようになって、自分にとってそれが誰なのかを想像してみたら数日後にぱっと今の奥さんの顔が浮かんだんです。それで、翌週に彼女が住む名古屋まで車を走らせて、結婚したいから付き合って欲しいと告白して、二年半後に結婚しました。彼女はすごいんですよ。デンマークに機織りを学びに行ったり、好きな料理を仕事にしたり、自分にはない色々を持っていて。友達としても憧れていたし、尊敬しています。今、三重の古民家で彼女が料理をするカフェを作ってるんですよ。”

何だか可笑しい。人って面白いよな。似たようなって言ったら失礼だけど、たいち君って人が周ちゃんの友達だってよくわかる。周ちゃんはたいち君の話をする時に「彼って本当にいい人過ぎて心配なんだよ!」と言ってたけど、周ちゃんもきっといい人なんだろうと思った。私達は婚約者となったけれど、周ちゃんの事を全然知らない。話は沢山聞いたけど、未だ何百ってあるパーツの一つに過ぎないんだと思う。そこには良いものだけじゃなくって、私とは合わないものもある。結婚して10年経っても初めて出会うようなものもきっとある。こうやって、彼を知るきっかけを世界に見つけるのは何だか楽しかった。

帰りの電車の中で事実婚と法的結婚についての話をした。ちょっと前に名字が変わってアイデンティティーが崩壊した事を話した時に周ちゃんは驚いていた。「僕が名字を変えてもいいよ。」とその時は言ったけど、そういう話じゃ無い。お互いにとっていい形にしたい。事実婚をネットで調べてるけど、もっともっと多面的に知りたい。沢山話し合って考えて決めたい。よくわからないまま、知らないままに、皆がそうだからっていうだけで法的結婚を選んで苦しんだ過去を今でも後悔してる。

夕方から撮影が一本入ってて、仕事に出かけた。北風が強くて寒い。仕事の時の写真ってどうとるんだっけ?昨日辺りから急に不安になった。緊張とかは無いけど、ただわからなかった。私の色々が今まで通りじゃない。いつもの様に撮ればいいんだけど、そのいつもが今の私から居なくなった。きっと失敗は無い筈。だけど、もう知ってる場所には着地しないよね。何処へ降りるかはわからないけど、多分、大丈夫。

夕飯の前に周ちゃんに、今日の撮影が本当は不安だったけど撮れたって報告すると、すごく喜んでた。家に帰って私の写真を見てくれる人がいる。それだけでこんなに嬉しいんだ。今日は何だかすごく気持ちが良かった。こんな風に飛んだ矢の様に撮ったのは久しぶりだったかもしれない。だけど、怖くなかったな。なんか、これってただの妄想なのか、何なのか。意思に近いのかな。帰る場所がある、私の話を聞いてくれる人がいる。それだけで自由に飛べる気がした。元夫を守る為にそんな苦しさから逃れる為に必死に撮ってきた写真はいつしか私だけの写真になって、もしかしたらこれからは、ただ世界を感じるだけの写真になりそうな気もした。何だか怖く無い。すごく、もう怖く無い。透明人間みたいな感じ。当たっても落ちても飛び降りても、私に牛乳をかけたら真っ白になって、ミルキーな匂いがプンプンするだけみたいな。

夕飯
ご飯
色々野菜の味噌汁
鯖の塩焼き
スペアリブと大根の台湾風
豆苗と挽肉の春巻き
糠漬けと赤蕪の酢漬けのお新香

手巻き寿司

Journal 26.11,2021

週末に大好きなNYのジュエリー作家のオーダ会を青山やってると知ったのは数日前。年に数回のオーダ会がこのタイミングだなんて何とも言えない。「見に行ってみる?」と、周ちゃん。結婚が初めての周ちゃん。2回目の私。指輪の前に立って、結婚がどんなものなのかを一緒に話が出来たらいいなって。目の前の景色を彼はどう感じるのかが知りたかった。

1回目の結婚の時は、私は恵比寿のジュエリーショップで指輪を、元夫はギターを結婚指輪の代わりに買った。その数ヶ月後にギターは家から姿を消し、1年後に二つ目の結婚指輪を買う事となった。お酒の色々や結婚を隠す元夫への怒りが爆発した時だった。新宿伊勢丹でSHIHARAの指輪を購入。結局、指輪は1週間で何処かに放置されて、私はその指輪を救済。右手に元夫の指輪を。左手に私の指輪を2つつけた。これが私達の愛の形。全て私が受容れたらいい。そう信じきっていた。

周ちゃんは薬指に色々なデザインの指輪をつけては外してを繰り返してる。学芸員という仕事だし、派手なのは避けたいとの事。黙々と選んでた。「周ちゃん、とりあえず一回ブレイクしない?」ジャイルの最上階のカフェで、私は抹茶ラテを周ちゃんはジンジャーエールを頼んだ。テラス席から見える秋の夕方の空は淡い青とサーモンピンクのグラデーションが重なって、ただのビルでさえ切なく見える。程良く賑わったテラスでは、ワインを傾けるカップルだとか、買い物帰りの女性とか、赤ちゃんを連れた女性が東京の空を見ながら気持ちよさそうにCOREDOビールを飲んでいた。
「周ちゃん、本当にいいの?」
「いいよ。だから買いに来たんじゃない。」
「周ちゃんは死なないよね?」

周ちゃんは私の変な質問にずっと笑ってた。そして、「今日の夕飯は手巻き寿司はどう?」と言った。誕生日に食べたいのは手巻き寿司がいいと聞いた事があった。彼にとって今日は特別な日なのかもな。だけど、そういうの、私は要らない。毎日が普通で、ただただ平凡で安全なだけでいい。今日が特別にならないで欲しい。もう大切なものを失うのは嫌。

「周ちゃん、お店に戻ろう。」指輪は2月半ばに出来上がる。

カレー

カレー 25.11,2021

周ちゃんが来たのは21時半過ぎ。私は後藤さんと青山でバイバイして急いで家路に向かった。後藤さん、可愛かったな。あの無邪気な笑顔を見ると、この笑顔を放っておかない男が世界にどれだけいるんだろうって想像してしまう。そして、私自身もどれだけこの笑顔に救われたんだろう。

今日は周ちゃんの事を報告して、デニムの話をして、年末に後藤さんの彼氏と3人で忘年会をする約束をした。楽しみだな。何だかすごく嬉しい。後藤さんは彼氏って発音がしっくりこないと終始笑いながら話してた。妻となり誰とも恋をしない契約をした筈の私達がまた誰かと恋に落ちる。色々な事をどう表現していいのかわからないのは私も同じ。むず痒い何かは私達の身体をじわじわと温めていく。彼のマサくんはとても素敵な人そう。早く会いたい。

周ちゃんは疲れたって顔をしてた。今日1日よく働いたのだそう。カレーを食べて、お風呂に入ったら、何かがチャージされた用でご機嫌だった。そのまま、今夜も深夜まで話した。どんな話をしたんだろう。大事な話もどうでもいい話も、とにかく楽しかった。明日は指輪を見に行く。

きのこのホイル焼き

和食 24.11,2021

昨晩から周三君は周ちゃんに改名となった。これは本人の希望。親しみのある名前なのだそう。そして、もう一つ。今週末から半同棲を始めてみることになった。とりあえず、押入れを片付けたり、周ちゃんの洋服を入れられるスペースを作った。物事がとんとんと進むってよく言うけど、多分、これはそのとんとんじゃない。私も周ちゃんもとりあえずやってみたい。もし失敗したらその時に考えたらいいよって考え方が一緒なんだと思った。

周ちゃんの家も職場もうちからはすごく遠いい。どんな風に新しい生活が成り立っていくのか想像がつかない。本当に大丈夫なんだろうか。私とテコの家に住人が増えるって言う現実がすごく不思議。ここは私達だけのもので、住み始めた時と同じ様に、この部屋とさよならする日もずっとそうだと思ってた。誰かが住むなんて考えられない。彼は一体この部屋のどこに住み着いていくんだろう。これから、生活がどんどんと新しくなっていく中で、心も身体も例えば撮る写真だってどんどん初めて出会う何かに侵食されていくのだろう。そうやって彼は私の世界に色々な色をつけてゆく。

夕方にポストを開けるとパリのマユミちゃんから手紙が届いてた。そこには、お誕生日おめでとう!って、3週間前の私の誕生日をお祝いしてくれる内容が書いてあった。先日に買っておいたポストカードにこの3週間で起こった事を書いて封筒に入れ今日の日付を書いた。2021年11月24日。もうすぐ今年も終わる。2年前はアルコールを断つと約束した元夫との新婚旅行を終えてこれから新しい生活を立て直そうとした頃だった。1年前は8年間積み上げたものがバリバリと剥がれて落ちて失くなってゆくのを何も出来ずにただ呆然と見てた。そして、大切な夫との離婚の準備を始めた時だった。全く想像もしなかった未来が当たり前の様にやってくる。

朝食

朝食 23.11,2021

「ベランダで食べない?」
テコとベランダで日向ぼっこしてた周三君が言った。白いテーブルクロスをアイロンかけてる時だった。なんだよーせっかくアイロンかけてたのに。朝食と白いテーブルクロスの相性は最高なのにな。渋々とトレイに焼いたベーグルと目玉焼き、スープを持ってベランダへ出た。周三君は半熟の目玉焼き。私は固めの目玉焼き。前の結婚の時は好きじゃない半熟卵を何食わぬ顔をして食べていたけど、そういうのはやめた。それに、フライパンの場所で調整すれば簡単にそれぞれが好きな目玉焼きが作れるという事もここ数日で学んだ。なんて気持ちがいい朝なんだろう。太陽の陽が強くて暑いくらい。

結局、3日間ずっと一緒。昨日も一昨日も、今日もとにかく一杯お喋りした様に思う。何でもかんでも話した。いいずらい話も、聞きずらい話も全部。生活の事、お金や仕事への考え方、妊活や育児にセックス。とにかく色々を話した。周三君が泊まりに来てから、私は緊張してたのか海外旅行でもしない便秘をした。お腹が妊婦みたいにポッコリ大きくなってて嫌だったけど、お腹が張って痛いと言うと、ずっと恥ずかしいお腹を周三君はさすりながらお喋りは続いた。こんな誰にも見せたくない様な姿を好きな男に見せるなんて。すごく変な気分。だけどお腹は安心してる。

今年と来年の話になって、「来年はどんな一年がいい?」って聞くと、「一緒に過ごせる楽しい1年!」と周三君。私は周三君とのビジョンは用意してなかったから、「離婚した1年後に結婚したいという夢を持っていたけど、想像以上にトラウマが酷くて男性を好きになる事すら出来なかったから、繰越で来年の夢となるかな。」と伝えると嬉しそうに笑ってた。未来はわからないけど、結婚に希望を持ってる自分がいるみたい。

時間は15時半を過ぎた。帰る周三君を送るついでに一緒にサミットまで歩いた。別れ際に白昼堂々と夕方の人がごったかえした世田谷通り沿いでハグをする周三君。ああ、この人はこういう男なんだって。何だろう、すごく嬉しい。女の扱い方で大体にどんな男なのか想像してしまうのは、もう本当に自分がいい歳なんだろうって事に気づく。だけど、そんな面倒な自分も全部引っくるめて今日は嬉しい。愛の事は怖くて忘れてたけど、ハグの仕方も、SEXの仕方も、もう十分に思い出した。それにしても疲れた。何だか気持ちが思いっきりに動いて、全力で目一杯にした。新しい色々を受け止めるのは色々が消耗する。不思議な感覚がしてる。多分これは、昔の淡い恋でも、激しいいつかの恋でもなくて、新しい感じの恋だと思う。今日はビールを飲んで早く寝よう。テコと二人っきりのベッドで最高な夜を過ごそう。

焼餃子

中華 22.11,2021

「月曜日は振替休日にしようかな。」結局、周三君は火曜日まで泊まる事になった。「午後に三本打ち合わせがあるから、終わったらスーパーへ行こう。」周三君は、振替休日だと言ってたのにダイニングテーブルでずっと打ち合わせをしてる。私は自分のデスクで納品作業を進めた。少し離れた所に彼が見える。いつもよりもディスプレイにずっと近づいて彼の顔が見えないようにした。

「夕飯に餃子はどう?」満面の笑みで承諾する周三君。彼がよくする子供みたいな素直な反応にいちいち心が踊る。可愛いな。お風呂に入ってビールを飲みながら一緒に餃子を巻いた。何の話をしてたんだろう。よく覚えてないけどずっと楽しかった。周三君は学芸員という仕事をしてる。だけど、そんな話は殆どなくて、22、23才の頃に二丁目のゲイに世の中の酸いも甘いもを教えてもらったとか、アイヌのウポポイの研究での刺青の話だとか、沢山の話を子供を寝かしつける親みたいに優しく話してくれる。だから、いつどこでどんな話をしたか覚えてないくらいに、いつもとにかく楽しい。そうして、何だか覚えてないけど沢山笑った話の中で、私が不意に「そう言えばさ、何か言う事なかったっけ?」って意冗談混じりで聞くと、餃子を手に持ったまま真剣な顔でプロポーズをしてきた。「これは歴史に残るね!」嬉しそうに笑ってる。何だか色々が目まぐるしくてよくわからなかったし、数日前のLINEでのプロポーズの事も話半分にしておこうと思ったけど、この人となら何だか幸せになれそうな気がした。

朝食

朝食 21.11,2021

誰かとの朝食はどれくらいぶりだろう。何だかすごく新鮮だった。

朝起きて、二人分の朝食を作り、食卓を囲み、私は心理学のオンライン講義を、周三君は仕事でもあり、自身のフィールドワークの事で近所の郷土資料館へ出かけた。頭では心待ちにしてた講義が始まる事をワクワクしているのに、講義の大体の時間は恋煩いの様なものに侵された。ダメだ、ちゃんとやらなきゃ!と思っても数秒後にはもくもくと周三君が現れた。

お昼に近所の魚の美味しいお店でランチをして、午後は映画を見た。私は昨晩の夜更かしでずっと眠かったから冒頭の数分で寝た。映画はノマドランド。映像の大場さんが傑作だと教えてくれた映画。

たったの一ヶ月前の今日には世界の何処にも彼はいなかった筈なのに、今日はこの家にいる。時間を重ねれば重ねる程に、素敵な男は好きな男へと変わっていく。

寄せ鍋

和食 20.11,2021

午前は編集の野村さんと仕事。帰ってから急いで支度。もうすぐ周三君が来る。周三君は午前の仕事が終わってからこっちへ来るとの事。14時半を過ぎ、急いで納品データーをまとめてると、写真家の広瀬さんから電話が鳴った。

広瀬さんはうちのお兄ちゃんみたい。歳は3つ上で、何だかずっと慕ってる。特に離婚してからは何でも聞いてくれるし、結婚してた時も「暴力とか良くないから、本当に困ったら相談して。」って、中目黒の飲み屋で言ってくれたのをずっと覚えてる。最後に会ったのは夏で蓮井さんの写真展。「なんかあった?」電話での一声。「何もないですよ。」何かあったのかと思って連絡してくれたらしい。私の声が踊ってたみたいで良かったって。たわいもない話を続けてる中で、先週に彼氏が出来て、プロポーズされたことを打ち明けた。「えー!!」電話越しでもびっくり仰天してるのがわかる。そして、否定するわけじゃなくて、まだ早くない?って心配してた。本当にお兄ちゃんみたいな人。「俺の話だけど、俺は家族でも友人でも与えるっていう事をいつも考えてる。だから、彼が結婚したい、欲しいって、何かを望むのが悪いわけじゃないけど、あなたに彼は何を与えてくれてる?お互いに与え合える関係の人ならいいと思うんだよ。」

正直、周三君からのプロポーズは驚き半分、喜び半分、そこに微分の不安がくっついていた。私の馬鹿さ加減といったら、ほとほと悲しくなる。あれだけ苦しい結婚を体験したのに、急なプロポーズに不安よりも興味や喜びが先立っていた。広瀬さんの言葉がずしっとのしかかった。そんなタイミングで周三君が家に来た。広瀬さんとの電話を切って練り物屋さんへ出かけた。

お喋りをしながら頭の中で “与える” が行ったり来たりしてる。携帯のメモにもさっと書いた。与える。彼は私に何を与えてくれるんだろう。そして私は彼の結婚願望を満たしたら、その次は何を与えられる人になるんだろう。

夕飯は寄せ鍋。夜遅くまで沢山話しをした。沢山、沢山した。
それに、急で不安な気持ちがあるとか、どうして結婚したいのとか、メールでも話していたけど、顔を合わせて沢山の話をした。子供が欲しいか、妊活はどうやって進めたいか、どこに将来住みたいか、セックスは好きか、親の介護はどうするか、不倫したことがあるか。そして、女の人に暴力は振るったことがあるか。一緒に生きていく為に私が不安に思ってる事のすべてを聞いた。「何でも聞いて、全部答えるから。」私達は突然に出会ったから、もしかしたら突然にお別れするかもしれない。だから、彼がいいと言うなら、全部聞こう。

パンとバター

パン 19.11,2021

色々が決まってく。来週にアメリカの家族の所へ行く周三君のお母さんが東京にくるそうで、会うことになった。その次の週末は出張先の富山へ彼が来る。

8年かけて大切に積み上げてきた物が一瞬で失くなったかと思えば、1ヶ月前に存在ですら知らなかった人と数十年後の未来について話し合おうとしてる。

よくわかってない。余計な事は考えない。今日は早く寝よう。

ご飯と味噌汁

和食 18.11,2021

今日はずっとずっとずーっと眠かった。昨晩、夜遅くまで周三君とメールしてたから完全に寝不足。どういうわけか、私の勘違いがきっかけでLINEでプロポーズを受けた。「LINEで言うのもなんだけどさ、僕はこないだから伝えてたよ。」「え?!LINEで言うのはなんだよ。」人生で初めて、正々堂々とプロポーズを受けた。泥酔して部屋に横たわった元夫が小さく折りたたんだ婚姻届をポッケから出したのは6年前のいつか。元夫が弱いから私は好きだったんだなって、今更になって気づいた。私の目を見て言えなかった彼も、それを受け取った私も同じ様に弱かった。

朝にプロジェクトの事で連絡を取ったフミエさんにプロポーズの事を伝えた。何だか頭がぐるぐるしてる。一体どういう事なんだか朝になってあたふたしだす。とりあえずフミエさんに聞いて貰おう。フミエさんもただただ驚いてる。けど、もしこれが現実なら離婚と似てると思った。目の前に用意されたコース料理みたいに、どんどん時間が満たされていく感じ。自分の意思とは別に決められた次がどんどんとやってくる。

午後に打ち合わせでzoomした山若君にも彼の事を話すと、「良かったじゃん。」拍子抜けする返答だった。それに、何だかすごく優しい顔だった。山若君のこんな顔、初めて見たかもしれない。時々、この人の悪意ある発言や行動に本当に悪魔だなぁと笑ってしまうけど、何だかいい光景を見ちゃったなって。だけど、しばらくするといつもの悪魔が「その人、性癖が絶対変だから。」と、根拠の無い発言だけを残した。それに、「来月の富山での撮影はフィルムで好きなように撮ったらいいじゃん」って。「撮ろうみたいの、今回はやめたくて。」って言ったら、「そういうの要らないから」って。「夜は撮れないよ?」って言ったら、「夜は撮らなくていいよ。」って。何だか、すごく嬉しかった。

夜の21時過ぎ。ユウヤ君からの電話。またきっと事務所で飲み放けてて、ふざけて電話してきたのかなって思ったけど、年明けにお願いされていた映像の仕事の話だった。ついでに、来月にドキュメンタリー撮るかもしれないけど不安だって相談をすると、「好きに撮ったらええやん。よしみちゃんの映像いいよ。」って、邦画みたいでいいよって。それで、真面目に男の人の意見を聞いてみようと思ってプロポーズの話をすると、「良かったじゃん。」と一緒に電話の向こうでお酒を注ぐ音がした。だけど、あまりに突然過ぎてまだ正直よくわからないよって今の素直な気持ちを話すと「好きなら好きでええやん!」。ユウヤ君。気づいたら完全に酔っ払ってた。

別に明日の話なんてしなくていい。ただ、今、会いたいのか、好きなのか、一緒にいたいのか、楽しくて仕方ないのか、そんな気持ちがここにあるだけで十分かもしれない。結婚はしてもいいし、しなくてもいい。どっちでもいい。今日に見えてない未来の幸せまで欲しいとは思うほどの余裕はないよ。なんだか、今日だけで十分にご機嫌。

海老のカクテルサラダ

洋食 16.11,2021

朝5時過ぎに起きて、まだ半分寝てる梃子を無理やり起こして電車に乗って実家へ向かった。ああ、怠い。ちょっと気持ち悪い。二日酔いだな。

昨晩、帰宅してから酔っ払った勢いで周三君に聞いてみた。土曜日にちょっと立ち寄った近所の喫茶店でお気に入りの席に座り、私は背の低いグラスに入った白ワインを、周三君はケーキセットを頼んだ。話が楽しくて楽しくて、気づいたら3杯おかわり。私は案の定、酔っ払ってご機嫌となる。保険の契約みたいに私達はカップル成約を交わして、帰り際に子供の話しになって、私は養子に興味がある旨を伝えた。周三君は賛同してくれていたように思う。

あまりに突然の出来事に心のどこかは私の恋が一瞬で終えた事をちょっと寂しく感じてる。駆け引きを楽しみたかった訳じゃなくて、恋を、愛でて、育てたかった。そして、段々と熟していい色合いになってきたら、相手の気持ちはどうであれ、そっと触れただけでも溢れてしまいそうなままに、好きだと言ってやるんだと私のシナリオは大体完成していた。

「どうしていきなり付き合いたいと言ったの?」むずむずして聞けなかったここ数日。酔っぱらいの私が聞いた。周三君からの回答は至ってシンプル。「今だと思ったから。」直感なんだと。熟りきれないままにもぎ取られた私の恋心は、流れ星を見過ごしてしまったような気持ちが一杯のままだ。ずるい。やられた。

母とスーパー銭湯へ行き、お昼は海老のカクテルサラダを山ほど食べて、夕方頃まで二日酔いは続いた。どこからどこまでが夢なのかわからない。

おでん丼

和食 15.11,2021

火曜日はどうしてもスーパー銭湯にママと行きたいから、今日も朝から一人勝手にバタバタした。大慌てで仕事して、昼ごはん食べて、郵便局に手紙を出しに行って、撮影に走る。そして家に帰って仕事して、電車に飛び乗って三茶へ。

今日は西丸会。編集の西丸さんとの集い。編集者、ライター、カメラマンの男性たち。みんないい子。大好きな面子。どうでもいい話を楽しく平和にお喋りして、お酒を飲んで顔を真っ赤にして帰る。それだけの会。今日はちょっと加藤さんがヘビーな話をしてたけど、加藤さんはそういう話が好き。だから、きっと大丈夫。嬉しい夜だったな。ちょっと飲み過ぎた。

おでん

和食 14.11,2021

あっと言う間に週末が終わった。今日の心理学の講座。完全に私はマインドワンダリング状態。始まってから終わるまでずっと周三君と遊んだ昨日の事がぐるぐるとぐるぐるとぐるぐると、目眩を起こしそうなくらいに回転してる。先生の言葉も生徒の言葉も耳を通り過ぎるところまでは見えてるのだけど、勝手に行方不明になって、気づけば昨日を追いかけてる。

途中の休憩時間にキムチご飯を食べたのも悪かった。後半の講義は完全に夢うつつとなった。最後はもうノートを取るのを諦めた。今日は正直言って学んでる所の話じゃない。注目すべきは俄然昨日だと全身が言ってる。周三君はいい人間だと思う。だけど、変わってる。私がよく知ってる病の変ではなくて、竹を割ったような、武士みたいな感じで、今のところ東京では見たことがない。あんな武士。

私が一人勝手にワインを飲み始めたのも悪かったのかもしれない。帰り際にハグをしようと言われて、びっくり仰天した。彼のやる事、為すことに衝撃を受けてる。だけど、結構にまともな発言と行動で、納得がいくから、ああ、そうだね。ってなる。それで、頭は混乱したけどハグをした。ハグってどうやるんだっけ?最後にしたのは元夫の誕生日。「今日は帰る、だから信じて、信じよう」とお互いに誓って、そして、やっぱり本当に帰らなかった。あの嘘が確か最後の嘘。それ以降は、もう怖くて1ミリも彼の全てを信じられなくなってしまったから。あのハグから1年と3ヶ月ぶりのハグ。久しぶりのハグは何だかすごく硬かった。

結婚するまでも、いつも誰かと恋愛していたし、ハグなんて数え切れないくらいにしてきたのにな。ハグってどうやるんだっけ?その人を想いながら抱きしめ合う。何だろう、今の私には空港でするハグか、無事に何処かから生還した時のハグしか思い出せない。私の記憶はどこに行っちゃったんだろう。昨日のハグ、もう一度やり直したい。

キムチチゲ

エスニック 12.11,2021

どうして午後一番で美容院の予約を入れちゃったんだろうと大後悔。朝の納品の激しさに頭が割れそうになる。歩きながら昼ご飯を食べて、急いで電車に飛び乗った。渋谷で降りて、美容院のある青山まで歩く。いつものポストカード屋さんで文通用のカードを買った。胸の奥がじわじわと温かくなるようなカード。スタッキングチェアに座ってる夫婦が椅子の反動でキスをするというイラストが描いてある。パリのマユミちゃんもじわじわしてくれるかな。じわじわとしたままに髪を切って、編集の瞳ちゃんと周さんの展示に行って、ライスプレスの成田さんとお喋りして帰宅。あっという間の一日だった。明日はデート。髪、ちょっと切り過ぎちゃったな。

晩酌

夕飯 12.11,2021

毎日納品マシーンな私。あんなには忙しく無いけど、何だかコロナ前みたい。たったの2年前まで、今とは全く違う生活だった。毎日、毎日、納品してた。忙しくて心が切れっぱなしで、ずっとガソリンが漏れてるまま走って、直ぐにガススタでハイオク満タンにしてまた走る。とりあえず、私が悲鳴をあげたら家庭が崩壊するんじゃないかと恐れて、私の心という物質はこの世に存在出来なかった。

昨晩に見た黒木華さんのドラマでの名言。ずっと鳴り響いてる。「誰にも尽くさない。」完全に痺れた。大好きな人が出来たら是非言いたい。いや、一度は言ってみる。「あなたの事が大好きだけど、私は誰にも尽くさないの。」だけど、もし次に恋人だとか、大切な人が出来たら、私の事を大切にしてくれる人に出会ってしまうような予感がビシビシしてる。それで、私は毎度、カルチャーショックを受けて、「え?何でそんなに優しいの?」って何度もひつこく聞く。「え?ゴミ捨てしてくれるの?」「え?夕飯の買い物してくれるの?」「え?今、大丈夫?って言った?お願い。もう一回だけでいいから言って。」優しさを初めて見た宇宙人みたいに、何度も馬鹿みたいに驚いてしまうんだと思う。っていう妄想をしてる。そんな私の真意はわからないけれど、どうにもこうにも止められない。だって勝手に浮かんできてしまうんだから。

今日はとっても気持ちがよかったな。取材先まで歩いて、帰りも途中の駅から歩いて帰った。梅ヶ丘で大きな大根を一本と、写真家の松村さんに教えて貰った蒟蒻湿布をする為に手作り蒟蒻を買った。楽しみだな、蒟蒻湿布。お腹とか腰とかに温めて貼るだけで一気に色々を吸い取ってくれるのだそう。「すごい効果があるんだよ」と一生懸命に話してた。

そして明日は髪を切る。そんな事でも今日は朝からご機嫌だ。因みに髪を切るのは土曜日にデートをするからではなくて、お気に入りの髪でデートしたら楽しそうだから。いや、絶対に楽しいに決まってる。

晩酌
サミットの鯖の棒ずし
秋鮭の粕汁
小松菜とシラスの檸檬とオリーブオイル和え
いろいろ野菜の醤油麹焼き
大根サラダ
日本酒檸檬サワー