
雪が溶けるように、少しずつ少しずつ何かが消えていく気がした。そして隠れてた何かが見えてくる気がしてる。出張続きで身体がずっと重かったけど、ようやく普通の毎日になってきた。やっぱり心と身体は繋がってる。身体が辛い時は心も一緒にダウンするみたい。人間って本当に単純。
料理家のみなくち先生のところで買ったフライパン。すごく可愛い。ガチャガチャとすぎて行く時間を失った毎日がなかなか慣れない反面、道具をじんわりと愛でるような時間が出来た事が嬉しい。

雪が溶けるように、少しずつ少しずつ何かが消えていく気がした。そして隠れてた何かが見えてくる気がしてる。出張続きで身体がずっと重かったけど、ようやく普通の毎日になってきた。やっぱり心と身体は繋がってる。身体が辛い時は心も一緒にダウンするみたい。人間って本当に単純。
料理家のみなくち先生のところで買ったフライパン。すごく可愛い。ガチャガチャとすぎて行く時間を失った毎日がなかなか慣れない反面、道具をじんわりと愛でるような時間が出来た事が嬉しい。

「『わたしを選んでくれる人』企画のタイトル、よしみさん、日記が面白いから企画の日記も書いて。」編集の山若くんからメッセンジャーが入る。変なタイトルに思わず声を出して笑った。山若くんが編集長を務めてる雑誌の企画で始める事となったマッチングアプリ。これは誰かを騙すわけじゃなくて、自分の持つ世界を失くして生きてみるっていう企画らしい。多分。
「とりあえずKWに会ってきて。」「わかった。」仕事柄、知らない人に会うのは慣れてるから全然問題なし。会うくらい朝飯前。KWさんはいい人そう。ラクダに乗ってる写真をプロフィールに選ぶセンスがいい。それに蓮沼くんの音楽が好きな所もちょっといい。あと、離婚も経験してる。私が一番知りたいのはそこ。さよならを選んだ男の気持ちが知りたい。だけど、今回の企画の趣旨とズレちゃうから私はそういう事を詮索しちゃいけない。詮索したら私探しみたいになってしまうから。
昨晩にパリのまゆみちゃんとメッセンジャーでお喋りした。結婚って何?みたいな話。一度くらい子供を産んでみたいし、いいパートナーとフェアな結婚生活を送ってみたい。だから、自立しよっていう所で話は片付いたけど、そもそもフェアな夫婦関係ってなんだろう。よくわからない。私が大変だった時期に一番側で支えてくれた友人は、私が離婚届を出す前夜に電話があったきり話をしてない。毎日の様に連絡をくれてたけど、朝から晩まで側にいてくれたけど、もう何ヶ月も連絡は無い。友人は私の夫の事をいつも可哀想って言った。「病気ですごく辛いんだよ、だからあなたは耐えて。」って。友人の夫も病を持っていた。
最近、一つだけ希望を見つけたかも。私は離婚を後悔してる事に気づいた。もっともっと早くに逃げれば良かったんだ。私が逃げたら私達はフェアになれたんじゃないかって。私が逃げたら辛いから逃げたら彼は気づけたかもしれない。彼は病気だったからこそ、私は耐えちゃいけなかった。私を助けようとしてくれた友人の事が大好きだったし、心優しい子でとても感謝してるけれど、耐える選択が彼女にとっての未来でも私にとっての希望にはなれなかった。私はきっとフェアになりたかったんだと思う。誰が可哀想かなんて事はどうでもいい。妻や夫の役割なんてものも要らない。ただ、一人の人間として、悲しいとか辛いって、彼に言いたかったんだと思う。
わたしを選んでくれる人はどういうつもりで私を選ぶんだろう。嘘は書かないようにしてるけど、プロフィールは殆ど載せてない。少しの情報を妄想して私に興味を抱く誰か。まるでおみくじ。企画を受け入れたものの、恋愛を全身が拒否してる。星の王子様と恋に落ちるみたいに一生来ないその日を待望してるみたい。だって、本の世界の人だから。同じベッドで肌が触れる日は永遠に来ない。まず、私の頭をトンカチで割って中身を全部だして、そこに甘い綿飴でも詰めたらいいのかも。
この企画、きっと適任。流石、山若くん。
だって、私は甘い夢だけを見たいから。

花屋へ行こうと商店街を歩いてたら向こうから朋子ちゃんがベビーカーを押して歩いてきた。「おはよう!」近所で朝から友達と会うって何だか嬉しい。パン屋の前で昆布の佃煮の作り方と、蜂蜜屋の前の花屋の話をしてバイバイした。そのまま朋子ちゃんが教えてくれた商店街の入り口の方にある花屋に行って、桜の枝とチューリップを4本買った。そのまま上町のオオゼキに野菜と魚を買いに行き、帰りに大根を買いにサミットへ寄る。レジで並んでると、りょーこちゃんからのメール。昨晩は帰宅が遅かった。お風呂上がりにビールを一缶飲んだら何だかとってもりょーこちゃんと話したくなってメールをした。深夜12時過ぎ。最近の事、何だか湖にいるみたいな毎日だって事を伝えた。静かでしーんとしてるって。りょーこちゃんからのLINEが何通か携帯を鳴らしてる。昨晩はお腹が痛くて寝ちゃって、私の最近の気持ちがわかるよって書いてあった。
“人と会いたくないとき、湖みたいにしんと冷たく静かなとき、あっていいと思う。きっと大事な時間だと思う。”
この子はどうして、どうしたら、こんなにも私にいつもフィットしてくれるんだろう。エコバッグいっぱいの食材と大根と花束を抱えてスーパーを出た。冬空、綺麗だな。青い空がすごく気持ちがいい。誰かにわかってるよ。って言って貰えると嬉しい。だけど、それが誰でもいいわけじゃない。今の自分がよくわからないけど、独りはとても寂しいけど、独りでいたい。
何だかすごくほっとした。
アニスの煮物を作ろう。今日は黒糖を使おう。

今日は夜に撮影が入ってるから、午後に少し昼寝をする事にした。ベッドでLINEニュースを開くと、AAAっていうグループだった方が女性に暴力をふるって活動自粛をした。そして、一年ぶりに再復活するタイミングで、ファンから賛否両論の声が上がってるというニュースだった。
嫌な事を思い出した。夫だった人のファンから、何度か私を非難するメールが届いた事があった。お酒が最悪になった時期、夫が帰らない夜中に私は独り深酒をして夫の事をSNSで哀しみを吐露した。ずっとずっと隠していた事を。そして夫のツィッターで夫が誰とどんな女と遊んでるのか知ろうとした。本当に馬鹿な事をやってしまった。翌朝に何通か、夫のファンだと名乗る女性達から、私が最低な事をしてるみたいなメッセージが入って、1ヶ月過ぎてもそのメールは届いた。男が女に暴力をふるい、夫という立場の人間が働かずに毎晩朝まで飲み歩く事は、女と遊び歩く事は、私にメッセージを送った女性達の生き方として、正しい事だったんだろうか。こんな事を今思い出したって仕方ないのだけど、急にまたあの時の記憶が蘇る。崖から落とされたような気持ちだった。私は間違った事をした。それに、とにかく辛かった。私が感じた事を強烈に覚えてる。この人達は、私に死ねって言ってるのかな。本気でそう聞こえるメッセージだった。
半年以上前の事なのに未だに鮮明。夫だった男がもし今でも有名だったら、私達を救ってくれる人はいたのかな。あの時に変な事を思った。私が死ねば、夫の酒を誰かが止めてくれるんじゃ無いかって。
あの時の私はどうかしてた。だけど、人の声に耳を塞ぐ事が出来なくて。だけど、私を救ってくれたのは友人。友人の声。その日のこともよく覚えてる。夏の暑い日にキッチンでしくしくと泣き続けた。
思い出を封印したい。だけど、似たようなニュースを開く度に時々思い出すんだろうな。仕方ない。道に落ちたタバコの吸い殻を見過ごすみたいに、次の瞬間にはもう忘れるしか無い。何も感じちゃいけない。

久しぶりの我が家。出張続きの泥のように重い身体を引きずって実家に預けていた梃子と帰宅。家のドアを開けるのが何だかとっても嬉しかった。荷物を片付けて、恵比寿に撮影へ向かう。
今日は何だかちょっと気分がいい。身体はへとへとだけど、気持ちがいい。前の取材がおしてて、アーティストの入りが遅れた。ライターの古川さんとたわいもない話をして待つ。撮影が終わったのは8時前。撮影時間は予定よりずっとおしたけど、古川さんとお喋り出来て良かったな。
渋谷からバスで帰る事にする。だけど、これはいつも後悔する。昨年に住んでた駅を通らなきゃ行けないから。いつも乗った後に後悔するけど、今日も後悔したけど、今日はみうらじゅんさんのyoutubeに夢中だった。見たく無い通りはずっとyoutubeの画面を見てた。梃子がお腹を空かせて待ってるから、早く帰らなきゃ!バス停から家は直ぐだけど、小走りで帰る。私、この街が本当に好きだな。家の直ぐ側に路面電車が走っていて、天気のいい日にベランダで植物に水やりをしていると、踏切の音が聞こえてくる。誰かが暮らしている音が聞こえるみたいで、小さな街で生活をしてる事に何だかとっても嬉しくなる。3階にある私の部屋を見上げた。
「梃子ただいまー!」部屋のドアを開けると、リビングでさっきまで寝ていた梃子がしっぽをふってる。暖かい部屋、準備しておいた夕飯も待ってる。梃子が嬉しそうにベッドルームへ走って行った。私も梃子もベッドルームがとにかく好き。ベッドしか無い部屋。お気に入りのコアラマットレスが部屋を占領してる。ワイングラスを置いた直ぐ脇でジャンプしても倒れないCMのマットレス。私はこのベッドに助けられた。このベッドのお陰で世界から消えずに済んだ。重力からも逃れて世界の下へ沈んでいこうとする私の全てを全身全力で受け止めてくれたベッド。真っ白な大小サイズ違いの枕が4つ。真っ白な大きな毛布と羽布団。一人にしては少し大き過ぎるけど、奮発して買った。とにかく生きながらえる為にベッドだけは譲れなかった。梃子とベッドで少し遊んでから、キッチンへ行く。梃子にご飯をあげて、お風呂へ入った。この家のお風呂は少し古いけれど、窓があって、そんなに大きくないバスタブが実家みたいで、とても気に入ってる。今夜は疲労回復ってパッケージに書いてある入浴剤にした。緑色の湯船に浸かって、「最高ー!」って叫んだ。
夕飯は野菜たっぷりの鍋。風呂から上がってビールを飲みながら支度する。外食続きで野菜不足だった干からびた身体に染み渡る野菜。「ああ、最高!」家に帰ってきて、何度、最高ー!って叫んだんだろう。ベッドルームでお風呂でキッチンで、あちこちで「最高!!」と叫んだと思う。この街に引っ越してきて本当に良かった。この家が本当に好き。
「いい事の次は悪い事が来る事は世の中の常なので、先回りして嫌な事があったらラッキー!って言わないと。もの凄くいい目に合いたい人は、もの凄く悪い事に合う事は決定ですから、嫌な事がある人生が嫌だって人はそこそこの人生を努めなきゃですよね。これはルールですからね。なので、自分がどういう風に生きたいか考えないと。」バスの中で聞いてたyoutubeでみうらじゅんさんが話してた事。可笑しかったな。
今夜は久しぶりに私のベッドで寝れる。嬉しい。

目を開いたらいつも、新しい。そうしよう。何だか、ホテルで目覚めた時にそう決めた。疲れたら目をつぶろう。そして開いたらまたスタート。

出張で数日間、家を空けてた。
久しぶりの我が家、明日からの出張で梃子はずっと千葉に預けてる。家の中がとにかく静か。いつもの私がやってる独り言は、独り言じゃなくって梃子と話してたんだって気づいた。独りで話すのが何だか寂しくなった。私の声が壁に跳ね返ってくるみたい。
旅に出ると、気持ちが私から離れるのに今回は離れてくれなかった。山口県はとても自然豊かで、沢山素敵な場所や人を訪ねた。同行したライターの船橋さんとも色々お喋りして楽しかったし、ご飯も美味しかったし、新しい何かに触れる度に心が弾んだ。だけど、私はいつになったら楽になれるのかな。ゴールの無いゴールに向かって、急ぐことも無く淡々と歩いているみたいって、山道を揺られて走る車の中で何度も何度も思った。
「もう本当にいや。」
最近、私の心の口癖になってる。頑張ろう、とはもう何だか思えない。頑張っても変わらないから。逃げてもいいから、辛くてもいいから、弱くてもいいからあの場所にいても良かったんじゃないか。前に進む意味がよくわからない。進む事は出来るし、どうして進まなきゃいけないのかもわかってる。離婚して180度、世界が変わった。本当に良かったんだろうか。生活も友達も私がやろうとしてる事も私自身も変わった。山若くんに頼まれてるマッチングアプリも相変わらず、プラスチックな気分で続けてる。どういうつもりでこの人は私に「ご飯作って欲しいです。」ってメールしてるんだろう。会った事も声を聞いた事も無い。気持ち悪い。返信するのをやめた。
ポストにパリに住むまゆみちゃんから手紙が届いてた。まゆみちゃんの字を初めて見た。こういう字を書くんだ。彼女の筆跡は私の知らない一面でちょっとびっくりした。いつもクールだし、このコロナの中でもフランスで一人堂々と生きてる女の子だ。だけど、今日はずっとずっと子供に見えて、可愛いって思った。
冒頭に、2020年12月31日の夜に書いてるって記してあった。カードにぎっしり詰まった言葉は、まるで私へのラブレターみたいに感じて何だかすごく嬉しい。初めて会った日の事が書いてある。うふふって私が笑うのが良かったんだそう。2021年はうふふって笑ってね、って。私は自分がガハハって笑うのかと思ってたけど、うふふって笑うんだ。彼女が見ている世界は優しい。どうか、私はその場所にいれますようにって思った。カードは土に埋めると植物が生えてくるとフランス語のイラスト付きで書いてあったけど、しばらく側に置いておこうと思う。大事にしたい。
もう何も失いたく無い。誰も、誰かも、知らない人でも、もう哀しい世界は見たくない。溜息みたいに出てくるこの世の果てみたいな気持ち。こんなのはよく無いから、これが出る度に違う言葉を吐き出そうかなって考えてる。全然関係の無い言葉。「hello」とか。「would you like something to drink?」とか。心が拍子抜けしちゃような全然違う何か。
今日はちょっとだけ泣いてから寝よう。明日は朝一で羽田空港。こないだは、ターミナル間違えちゃったから、明日は間違えないようにしよう。

昨日、上原にある永井さんの事務所にお邪魔した。写真を見てもらったり、永井さんの新しいプロジェクトのお話しを聞いたり、たわいも無い事をお喋りしたり。
人って、それぞれだなって。当たり前なのだけど、何年経っても何度会っても変わらない。穏やかな人、静かな人、楽しそうにしている人、真面目な人、真っ直ぐな人、優しい言葉を使う人、強い言葉を使う人、不安そうにしてる人、直ぐに怒る人、いつも誰かの話ばかりする人、自慢する人。永井さんは夢を叶える人。遊ぶみたいに夢を叶える。
考えてみたら、そうだ。永井さんの周りで哀しんでる人を見たことが無い。誰か困ってる人がいたら「哀しんでないで、僕らと遊ぼうよ!」って仲間にいれてくれる感じ。そういえば、15年くらい前に永井さんと仲良しメンバー5人くらいで一緒に幕張に写真を撮りに行ったな。人と写真を撮りに行ったのは、あれが最初で最後だったと思う。楽しかったな。
永井さんの家には8年飼ってる猫がいて、こないだ写真が3000枚もある事に気づいたんだそう。絶対にペットロスになるって言ってた。写真って辛いよねって話をした。写真って記憶を忘れさせてくれない。いいんだけど、時々すごく辛い。写真をやってない人が羨ましくなる。

いつもは白菜の餃子だけど、明日から出張だし冷蔵庫に残ってるキャベツで餃子を作る事にした。それに、昨日はお酒を我慢したから、今日は麦酒を気持ちよく飲もうって決めてたので絶対に餃子一択。作りながら、和え物をつまんで麦酒。餃子を巻きながら麦酒。私の餃子はたねに、ごま油をたっぷり入れるので黒酢だけで食べる。

「マッチングアプリして!」
編集の山若君から相談を受けたのは、小豆島のレストランで。あれから数ヶ月、本当にマッチングアプリをする事になった。私は私じゃなくなって、誰かと出会う。そういう企画。
何だか抵抗あるなっていう気持ちと、どんな世界なんだろうっていう興味。だけど、いいよって返事したからにはやろう。勇気を出して登録。写真が苦手だから、私の顔写真が携帯の中には殆ど無い。昨年に伊勢神宮に行った時の写真を思い出した。友達とのライングループからダウンロードして登録。
「自分じゃない人になって欲しい。」そういうオーダーだったけど、そもそも、今の私は自分が誰なのかわからない。ついこないだまで、私は別の姓をなのって、死んだら入る墓は大阪だったのに、今はまた別の名前だ。マイナンバーカードは、次の更新まで新しくならないみたいで、大きく表示されてるのは今の私の名前じゃない。備考みたいな箇所に米粒より小さな文字で、今の名前が書いてある。きっとあと6年間、マイナンバーカードを出す度に、私の名前は違うんですって備考欄の本当の名前の事を説明しなきゃいけない。だけど、一体、本当の私ってなんなんだろう。
午後、山若君と駒沢のスノーショベリングに中村さんに会いに行った。「マッチングアプリで誰かになって、と言われても、今の私は空気みたいなもんだから、既にもう誰だかわかんない。」って、二人に言った。だけど、その意味が理解出来ないって言われた。そりゃそうだと思う。私だって今の自分がわからないんだもの。上手く説明出来ないよ。
「今の私を例えるなら、理科室の端っこにある人体模型。半分出てて、ヒリヒリするでしょ。不安でしょ。半分無いよね。」中村さんは、それいいねー!って喜んでたけど、結局、二人には理解されないまま話は終えた。
マッチングアプリでメッセージが来る人との私との会話もよくわからない。私は誰と対話してるんだろう。よくわからない見えないメッセージのやりとりを続けてる。

さくらももこさんの本を昨晩に読み終えた。最後のストーリーは、カッとなって、頭をぶってしまったクラスメートの話。その時の微妙な気持ちが綴ってあった。今でも彼を殴った感覚が残ってるって。掴めない朝陽みたいな温かい何かが心に残ったまま、本を閉じて寝た。
自分にしかわからない感覚とか、言葉では上手に説明出来ない事とか、沢山の整理のつかない記憶が自分の中にある。その曖昧な部分を大切にしたい。苦しい事や哀しい事は忘れてしまいたくなるけれど、それは今日の自分を作ってるんだって。
最近、友達が変わった。
曖昧な部分を放棄しない人が好きになった。

「今夜は仕事が遅いから、電話できるよ。」元気が無い姉が気になって、夕方にメールした。いつもは私が早く寝ちゃうから、時差の関係で中々夜は電話出来なかった。
23時ちょっと前。帰宅して、缶ビールとポテチを食べてたら、姉からのLINE電話が鳴る。今日撮ったデーターをPCにダウンロードしたり、少しレタッチしたり、麦酒を呑んだりして、お風呂に入って、歯を磨いて、お喋りはずっと尽きないままにベッドに潜った。そこからしばらく話は続いた。
ジェニファーロペスとか、ケイティーペリーとか、著名な女性が苦難を乗り越えたドラマをまとめた番組のyoutubeが一昨日にメールで送られてきた。
「見た?」
「見たけど、悲しそうな事しかわからない。」
「単語を拾えばわかるでしょ。」
「早すぎてわからないし、とりあえず悲しそうな事はわかったから。」
姉は最近になって気付いた事があるんだそう。
「皆が同じ事を言ってて、すごくわかるんだよね。絶望的な瞬間が来て、その時に一人ぼっちになって、孤独になって、恐怖の中に落ちてしまったって。ケイティーはコンサートの直前に夫から “離婚しよう” ってメールが入ったんだよ。ジェニファーは、家庭環境があまり良くなくて、子供頃から自分の居場所を探し続けて2度離婚を経験した。彼女達は、自ら一人ぼっちを選んだ事で、人生を変える事が出来たって。孤独はあまりに恐怖だった。だけど、行動を起こした。簡単じゃなかったって。自分の道を見つけるまで本当に苦しくて、大変だったって。お金や名誉があったから出来たんじゃ無い。皆と同じ様に孤独は恐怖なんだよ。だけど、そこに立ち向かった。だからね、悲しまないで。よしみは強かったよ。強さが無いと、選べない事なんだよ。」
急にそんな話を言われて、声が詰まって目が熱くなった。本当にそうなのかな。
妻だから、経済的に心配だから、子供がいるから、家族だから、もういい歳だから。自分の周りで、そういう声を沢山聞いてきた。その気持ちがとってもわかるし、納得してた。それが答えだって思ってた。私もそうだったから。
もしかして、夫を、彼を好きだから離れたくないと言わなかったのは怖かったの?一人になる事が不安だっていう気持ちが潜んでたのかな。怖い。私と同じ、怖かったの?
姉の友人のアッコちゃんが日本への移住を決めた。コロナで半年くらい日本に帰国してた。アッコちゃんは、20年前に姉とはモデル仲間として知り合った。数年後にL.Aに移り住んでチャイニーズアメリカンと結婚した。こないだ、四人の子供達と旦那さんと家族会議をしたんだそう。「ママは日本に住みたい。ここがママが暮らす場所だってわかった。だから、ママはこのまま日本に残りたい。皆んなはアメリカに帰ってもいいし、日本にいてもいい。だけど、どうしてもママとアメリカで暮らしたいって言うなら考える。」アッコちゃんにとって家族はとっても大切な存在。本当にいつも仲良しな家族。だけど、家族の前に、彼女は自分の選択を尊重したんだそう。
「私達には出来ない選択だよ。だけどさ、もう変えよう。自分にいつだって選択肢を与えないといけないよ。」
「実はさ、私、一回、キッチンで包丁を握ってる時に、このまま殺したら楽になれるかなって頭をよぎった事があるんだよね。」私の打ち明けた小さな秘密に、姉は大爆笑した。
「わかるー!私も、凶器そうな物を家に見つけては、これで殺せるかな。って考えた事あるよ。こりゃ一発でダメだなぁとか。」
「実は、もう一つあって。もう本当に耐えられなかった時、彼は病気だから怒っちゃいけないって友達に止められてた時、勿論、暴力なんて絶対にふるえないし、とにかく私は耐え続けなきゃいけなかった。どんな事をされても。病気が最悪だった大地獄の時期の事。夜中に泥酔して帰宅した彼のリュックが玄関に転がってて、そのリュックにはPCが入ってて、リュックを手に取って足元に何度も何度も真っ暗闇の中で落とした事があるよ。PC壊れてしまえって思って。今、考えると相当にイっちゃってるよ。」
姉は声をあげて笑ってる。
「相当やばいね!だけどさ、そこまで自分を追い込んで耐えないで良かったんだよ。逃げたら良かったんだよ。ずっとずっと早くに逃げるべきだった。自分が選んだ事。もう、これからは楽に生きようよ!」
私達は似てる。全然違うけど、似てる。夢中になったり、頑張りすぎて、誰かの為に自分を見失う事がある。なんだかすっごくスッキリした。夜中の2時。むちゃくちゃ笑い続けた。
楽でいよう。
ぐーたらしたり、頑張らないとかじゃない。不安を放置したり、今から目をそらす事でもない。楽しい方を選ぶ。自分が楽かどうかって事。もし、傷つけられたら許さないでいい。だけど、心に負った傷が、同じ様に誰かを傷つけない為に、そこから離れる勇気を持つ事も大切かもしれない。笑うだけが人生じゃない。だけど、笑う為の決断はできる。
東京で一緒に住みたいって姉が言った。
私の家には、デンマーク製の丸いテーブルに椅子が三つ。もう一つ欲しい椅子があって、それを買ったら、私と姉家族と一緒に食卓を囲める。ちょっと値段が高い椅子。欲しいな。今日はマグロ丼。三茶に破格な八百屋があって、その前にいい魚屋があって、先ず人がごったがえした中で野菜を買って、次にゆっくりと魚を買う。とっても楽しいコース。美味そうな若芽と、立派な鮭を2枚、夕飯用にネギトロを買って帰った。
当たり前の事なんて無い。
「マックのドライブスルーに並んでる時に悲しい事があった。」姉からLINEが入った。
「ドラッグや酒を買って欲しく無いから、浮浪者にはお金はあげないけど、食べ物を渡すようにしてるの。それで、好きなものを頼んでって言ったら、彼は小さなハンバーガーセット一つだけ頼んだ。話を聞いたら、41才で、もう家族とは4年会ってないって。何台もの車に邪魔だから、どけって言われてて、車で戻って声をかけたの。それに、今日、ヘレナの学校の仲が良かった用務員のおじさんがコロナで亡くなった。今日は辛い。」
「いい事したんだから、気を落とさないで。」って伝えると、「当たり前の事をしただけ。」って。それに、「最初は彼がいるのを知ってたのに、直ぐに声をかけてあげられない自分がいて、何だか情けない」って。
当たり前に人を傷つける人がいるように、当たり前に人の為に思い遣れるわけじゃない。「その行動は、今日、その人を生かす食事となったんだよ。悲しまないで。」ってLINEした。
丁度、昨晩にベッドで考えてた。
どんな事をしようが、人に酷い事をしようが、人は幸せに生きれる。考えても仕方ないんだけど、行き場の無い何かが夜中に留まった。人を殴っても、人を裏切っても、今、楽しく笑って酒と女と遊んでると考えると、寝れなかった。きっと夜が悪い。いい加減にして欲しい。こんな事を考えてる私がいやになる。
どうして、姉は辛かったんだろう。どうして、姉が傷つかなきゃいけないんだろう。世界って間違ってる。当たり前の優しさなんて無いのに。少し泣いてから、もう一通LINEした。「私は神様を呪ってるよ。」
「うん。けど、きっと、それは違うと思う。」
うん、わかってる。

2年前、ミッチーが作ってくれたアニスの煮物を思い出した。家中がアニスの匂いたっぷりで、とっても贅沢な時間だったな。何月だったか忘れたけど、寒くて暗い夜だった。
ミッチーの料理は彼氏の野村さんの為の料理。二人は男。二人は普通のどこにでもいる様な仲良しのカップル。時々、三人で食卓を囲んでいると、この皿を独り占めしたい!って夢中になって食べてしまう事があった。あまりに美味しくって、あまりに羨ましくって、全部を私の物にしたいって。アニスの煮物も夢中になった内の一つ。
サミットで大根が1本138円。特価だった。
浅漬けを作って、下の方は買ってきた手羽元と一緒に何となくストゥブ鍋に入れて煮る事にした。お風呂に入って、チューハイをあける。ことこと煮込んでる。醤油とみりんを入れて、黒酢を入れよう。あ、アニスの煮物にしよう!
続いて、アニス、甜菜糖を入れる。しばらく、ことこと。部屋中がアニスと醤油の匂い。美味しい。匂いを嗅ぎながら、ビールを開けた。全然飲むつもりは無かったのに、匂いが美味しすぎて止まらない。美味しい。匂いが美味しい。美味しくって飲んじゃう。お酒は3杯で止めて、いよいよ炊きたての米と一緒に食べる事にした。
夜中まで美味しい匂いは続く。部屋を出ては入っては、何度も美味しかった。
楽しい日と楽しくない時間が交互にやってくる。小さい事で落ち込むかと思えば、小さい事で驚くほど嬉しくなったりする。とにかく、目の前の道を行くしかない。ダッシュしたり、止まったり、ゆっくり歩いたと思ったら急いでみたり、好きなスピードで、上手にやればいいんだなって思った。きっと、そのうちにそれが毎日になっていく。



昨晩、自殺する夢を見た。
結局死ねなかったんだけど、正確には多分、薬の量が合わなくて生き残ったのかな。病院で薬を処方して貰って死を迎えようと、どきどきしてた。なんて夢だし、なんて世界だろう。私は時間が来ても、体調はそんなに悪くなくて、おかしいなぁって思いながら知り合いと話しをしてた。”申しわけないなぁ。私、もうすぐ死んじゃうのにな、迷惑をかけないといいな。” って。
そんな夢から目が覚めたのは、朝の5時前。まだ真っ暗。
何だか微妙な気持ちのままデスクに向かうけれど、そんなに気持ちが落ち込んでるわけじゃない。結局、なんだかんだと、世界に少しでも期待してるんだろうな。もしくは、捨てられない世界が未だどこかにある。夢くらい、気持ちよく死んでくれたらいいのに。
一人でせっせとスーパーへ走り、食事を作り、食卓を華やかにする。私って一体なんなんだろ。10年前、写真家を目指し始めた頃に「よしみちゃんはいい主婦になりそう!」って友人が言った。彼女は街中の男と寝てから主婦になって、私は主婦を辞めた。人の人生は色々だなって思う。どんな人でも主婦になれるし、辞める事も出来る。それがその人の人生となるだけ。いい事も悪い事もやっていい。情けない事も恥ずかしい事も何をやったっていい。自分が納得いっても、いかなくてもいい。何でもいい。
今日は朝から途方に暮れてる。夢でさえ生きながらえちゃうのなら、もう何かにしてくれたらいいのに。あったかいスープとか、とろけるチーズとか、なんなら餃子が焼ける音でもいい。この世界で良いものになりたい。
昨晩のおでん、味がいい感じに染み込んでる。朝から沢山食べた。あったかくて、美味しい。やっぱり、スープになりたいかな。人を温める事が出来るって最高だと思うから。

17時、渋谷は緊急事態宣言が出ても、まだ人が結構いる。編集の山若くん家の近所のカフェまで歩く。並木橋の交差点で信号が赤になった。丁度半年前くらいに、同じ交差点で同じ様に信号を待ったと思う。未だ夏のど真ん中で、暑いのか暑くないのかよくわからなくて、とにかく世界がずしりと重かった。
信号が青になるまで、不思議な時間を過ごした。
ここに立つ私も、私の前を走る車も、反対側で待つ人や、信号機に、ビルや街も夜も全てが軽やかだ。私にのしかかっていた何かはいつしか消えたんだ。あの重みは、一体何だったんだろう。
よく、事故の前にスローモーションに見えるって言うけど、私は私を苦しめるものがいなくなって、世界の重力が消えて見える。まるで自転車の重いギアから一番軽いギアに入れ替えたみたいに。くるくるとこげる。そういう感じ。寧ろ軽くて怖いくらい。
生きるって楽だったんだね。可笑しいな。軽いよ。とってもここは軽い。変だけど、全身が軽い。信号が変わって、カフェまで急ぎ足で向かう。
「写真を見てくれない?」そう、お願いしたのが半年前。あっという間のようで、果てしなく長い時間だった。話してなかった事を、ゆっくりと話す。夏はきちんと話せなかったし、出来なかった。ただ気持ちよくて撮ってた写真じゃないし、私が世界に嘘を吐き続けた年月があまりに長くて、どこからどう話していいのかわからなかった。
こんな日が来るなんて、変だな。変なの。山若君は本が好きな人。私が知ってる本好きの中でもダントツで好きな人。私の話を聞きながら、メモに何枚も何枚も、すらすらと装丁のイメージを描いてる。この人に相談して本当に良かった。楽しそう。
タイトルだけ決まった。
ずっとやってた菊地食堂じゃなくって、新しく始めた日記のタイトルになった。「新しい日記のタイトルを変えたの!eat new meっていうタイトル、可愛いでしょ!!」new meは、英語で心機一転とか、新しい自分とかそういう意味。「こんにちは、はじめまして、新しい私だよ。」私的にはそういう感じでネーミングしたけど、山若君はなんかエッチっぽいって笑ってた。だけど、カタカナで描くとすごくいいって、はしゃいでた。どっちにせよ、楽しそうで何より。私はタイトルが決まって嬉しい。
内容はこれから。思ってたより内容のボリュームがあったみたいで、纏められないってなった。「1500Pの写真集なんて無いよ!」って。確かに、ハリーポッターに出てきそうな魔女の本みたいになりそうだね。デザインも誰にお願いしていいのかわからないし、お金も数十万の話じゃなかった。ちょっとハードな内容になるし、何かを言ってくる人もいるかもしれない。だけど、人生は簡単じゃ無いし、仕方ないよ。生きてるんだから。毎日はそんなに美しく無いし、美しいのだから。
希望のある本になるといいな。


10年ぶりくらいに上町のオオゼキに行った。雑多な感じが無くなって、綺麗なスーパーになってた。オオゼキは野菜や果物、魚がいい。宝物探しするみたいな気持ちになる。それは昔から変わらない。
嬉しくって、ぐるぐるスーパーを歩き回る。楽しい。何も考えずに、ぽんぽん買い物かごに入れて行ったおかずは今夜のつまみとなった。
今夜はレバーのソース煮、牡蠣と蕪の豆乳煮、するめいかとブロッコリー、セロリの中華炒め、大根のぬか漬け。後、麦酒。
レバーのソース煮は、ソースと少しの醤油、ローリエで煮込む。ローリエがポイント。ポトフとかシチューじゃなくて、炒め物や炒め煮に使うと、ローリエの深い底力を知れる。なんて言ったらいんだろう。しっかりとした安定感。音符にしたら、ドの音って感じ。絶対にファとか、ラとか、そういうんじゃない。

夕方に緊急事態宣言が出た。
その頃、私は宗政君の家でプリントを刷ってた。
「もうくっついたり、離れたりは嫌だから、結婚しませんか?って、言ったの。」宗政君の奥さんが言った。付き合うっていうか、直ぐに結婚したんだそう。宗政君はお酒が回ってるからなのか、終始嬉しそうにはしゃいでる。こんな風に誰かと所帯を持つなんて想像もつかなかった。結婚って本当に不思議だなって思った。
家には明日パリに帰国する奥さんの大学時代の先輩がいて、パリに長いこと住んでたナオちゃんと友達だってわかった。「ナオちゃん、広尾においでよ!」。一時間もしないうちに、銀座にいたナオちゃんと皆んなですき焼きを囲んだ。何だかとっても面白い夜。
もう、くっついたり、離れたりは嫌だからって。なんかいいな。
恋愛が面倒だと思わないけど、面倒な人とは付き合いたく無い。友達でもそう。誰とでもそう。それに、一緒にいたらさよならする日がくる。大切な人とのさよならだけは二度と厭だ。
最近、私はちょっと人より早く、さよなら体験をしちゃったのかな。そう想う事にしてる。私と同じようにさよなら体験をしてる人は世の中には沢山いて、だけど、そういう人の事を知らなかった。年老いたら、そうなるのかなって、何となく、薄々は気づいていたけど、怖くて知らないふりをしてた。
ちょっとだけ想像してたさよならは、現実とは全然違かった。「いつか死んじゃうと思ったら、大切にしなきゃね。」そんな程度の問題じゃない。さよならは身体がちぎれる位に痛かった。いやちぎれてる。完全にちぎれた。だけど、仕方ない。ちぎれちゃってるものは、どうにもこうにもならない。
もし、私を好きになってくれる人が現れたら、聞いてみよう。「もうくっついたり、離れたりは嫌だって。」
ジャンクな明太パスタが好き。病み付きな味。私は美味しいくらいしかわかんない人になった。これは決していい事じゃない。人として見てはいけないものを見てしまったからだと思う。いいも悪いもわからない。もう、美味しいとしか、言わない。

午前は下北沢で取材。
撮影は直ぐに終わった。
楽しかったな。
終わってから、編集の野村さんとカレーを食べに行く。私はとにかく早食いだ。そんな話をしてたけど、野村さんはトップレベルの早食いだった。一番最後に私達のテーブルに到着したカレーは、一番早く真っさらになった。時間にしたら5分くらい。早食いが気に入ってるわけじゃないし、競ってるつもりも無い。理由は特に無いけど、ただ、早く食べたい。
取材が終わって、数年前にみうらじゅんさんを撮った時の事を思い出した。何を話しても本当に面白くて楽しくて、最初から最後までずっと笑ってた。
「嫌な事は面白く変換しちゃえばいいんですよ!」
みうらさんの名言をしっかりと家に持ち帰った。
何だかな。私は何を追い求めてきたんだろう。
なんてつまらない刺激を毎日毎日見てたんだろうな。
仕事のしない男が毎晩タクシーで帰って、大声出して、また飲み屋に行って、ちやほやされて、ライブをしてちやほやされて、可愛い人って言われて、家で暴れてる。男が大声で叫ぶ家。捨てられる料理。朝が来たら、ベッドにいるのは、よその猫みたいに小さく丸まった男。毎日、毎日が同じ事の繰り返し。変換の仕方、だいぶ間違えたな。
料理家の中島さんのお宅にHP用の写真撮影に向かう。アトリエにあるキッチンは、料理がしやすい様に色々な物が丁度良く整っていて、その中に中島さんが、可愛い可愛いエプロンをつけて立っている。世の中に可愛いエプロンが中々無い話とか、味噌とか、塩とか、色々な話をして、写真を撮って帰宅した。お土産に長崎の塩を頂いた。満月の夜に作る塩なんだそう。なんてロマンチックな塩。
夜はピェンロー鍋にしよう。塩で食べる鍋。頂いた塩で食べよう。

朝か昼かわからない時間に目玉焼きご飯をした。
後は味噌汁、白菜漬、明太子、ブロッコリーを茹でたもの。
今の米が美味しくなくて、ちょっと悲しい。
夜は香川出張で出会った鎌田さんと代々木八幡のポルトガル料理を食べに行った。
「おめでとうございます!」
香川の夜、離婚する事を伝えると笑顔で彼女が言った言葉。あの時は裁判をするかどうか大変な時だった。一瞬で心がぱっと明るくなって、何だか拍子抜けした。私に「大丈夫?」って声をかけてくる人はいても、「おめでとう!」は始めてだった。
私より10くらい歳が離れてて、可愛いくて、しっかりしていて、自分に正直。とても聡明な女性。世の中捨てたもんじゃない。こんなに可愛い女性が同じ世界で楽しく生きてるのだから。
とにかく美味しくて楽しい夜だった。
今、悩んでる話を聞いた。悩みだって前向きな悩みだ。じゃあ私の悩みって一体何だろう。よくよく考えてみると、傷はあっても、もう悩みは無かった。

昨日の残りの五目ちらし、たぬき汁、兄の白菜漬け。それから、昨日たまちゃんがお土産で持って来てくれた蒲鉾、納豆。
今年の兄の白菜漬はちょっとしょっぱかったな。今日は寝正月だ。
午前はベッドで本を読み、昼になってもごろごろ。パジャマの上からコートを羽織って梃子の散歩に行き、遅い昼食を食べながらお酒を呑んで、これからお風呂。そしてまたベッドで読書と映画。朝にベッドで決めてた。今日は何が何でも私はパジャマを脱がないって。
LINEに金髪のマルコスがきな粉餅を食べてる写真が送られてきた。スーパーサイヤ人が正月に餅パーティをしている様子。平和だね。平和っていい。
私も完全に平和主義者となった。
刺激的な毎日なんて要らない。刺激レス。全然レス。誰に何と言われようが、誰かがお金をいっぱい持って遊ぼうって声を掛けて来ようが、君が僕の人生にとって必要だから来てくれ!と言われようが、私は私の楽しい事しかしない。この平和な世界を邪魔する人がいたら、永遠に無視だ。あと、意地悪な人や、暇を弄ぶ為に声を掛けて来る人もお断り。人に危害を加える人なんてもっての他、目を合わせるどころか見てもやらない。嫌な事があったら嫌な事を言う人がいたら、即刻退場。私がね。そんな世界は一ミリも惜しむ事なく私から退場する。
世界を平和で最高の寝正月な今日にするのは私。
明日も明後日も、同じく。平和が一番。

秋に取材の時にお伺いした catering for me! さん、おせちのチラシを頂いてオーダーをしておいた。色々な料理家さんやケータリングで活動されている方々のおせち。スタンダードなおせちもあれば、エスニックなおせち、洋風に、変わり種はジビエなんてのも。どれもこれも、とっても美しいし、美味しいし、最高。拘り一杯のおせち。うちでは、ぴんくの五目ちらしを作って、実家から送られてきた蟹を焼いて、友達が持ってきれくれたお土産を並べたりして、とっても華やかな正月となった。東村山の親戚の家で食べる関東風のお雑煮を作ったけど、結局食べなかった。お腹がずっと張ちきれそうで、夕飯も結局食べられなかった。
今日が始まると、SNSで沢山の今年の豊富や、昨年の感謝を一斉に目にした。
素敵だな、いいな。
私の今年の豊富、やりたい事はあるけれど、意気揚々とは言えない。どちらかと言うなら、そっと空気を吸って、そっと吐いて、どこかの陽だまりの中でのんびりしたい。積み重なっていく毎日をこれから淡々とこなしていくのだろうって思うと少し、新年早々に少しうんざりもしてる。
過去も明日も要らない。今日だけで十分。おせちが美味しいとか、近所で買ったチューリップが綺麗で仕方ないとか、今日も梃子が可愛い、いい写真が撮れた。それだけで十分。
必要以上に人に会ったり、何かしたり、はしゃいだり、要らない物を作ったり、やったり、見たり。感じたり、想ったり、要らない。
今日も早く寝よう。
母直伝のぴんくの五目ちらし、上手に出来た。

目が覚めて、ベッドで変な事を思った。
私、もう誰かとセックスしていいんだ。
諦めていた事とか、無理だった事とか全部できるんだ。何でも手に入るし、何でも経験出来る。すごく、わくわくした。昨日と今日はそんなに変わって無い筈なのに、20歳の誕生日を迎えた時みたい。急に世界が広がった。
6時過ぎ。綺麗だな。朝になる時間がやってくる。
梃子はまだベッドで寝てる。一人で作業しながら時々窓に目をやる。朝陽が入る前も、入ってきてからも、この時間を見れる事が、毎日見てるのに、嬉しい。刻々と変わる静かな綺麗な時間。何度見ても飽きない。
今日まで日記を少しずつまとめてきた。大晦日までに終わらせたいって思って、終わった。数ヶ月前からずっと決めてたけど、中々、心が追いつかなくて手につけられなかったけど、1日1時間とか、1日2時間とか、少しずつ少しずつ、スピードを加速して、少しずつ、私の心に免疫をつけて進めてきた。向き合う事はやっぱり辛い。だけど、終わった。嬉しい。やればなんとかなるもんだ。
午後は、年賀状を書いた。ほんの数十枚だけど、仕事でお世話になった人とか、伝えたい事がある人、師匠、数人の友人、想う人にだけ。名前が変わるから、何だか今年はやめようかなって思ったけど、コソコソしたくないから書く事にした。ぎりぎりまで迷ってたけど、運良く年賀切手も買えて、それが可愛くてまた嬉しい。
こんなに大晦日を大切に過ごした事は無いと思う。今の所、人生で一番清々しい大晦日。一年の掃除と、一年の整理と、来年の支度をゆっくりと時間をかけてやる。いい日。
綺麗になった湯船に浸かりながら、ぼーっとする。夕陽が曇りガラスを照らしてる。この家の好きな所の1つは風呂の中に夕陽が落ちる。毎日、この時間にお風呂に入りたいって思ってた。入れない日の方が殆どで、何だか毎日惜しい気持ちになったけど、今日は入れた。
いい一年だったとは言わない。だけど、今日はいい。いい大晦日。お風呂から出たら、ビールを飲もう。母が送ってくれた鮭とばも焼こう。じゃあ、ご飯も炊こう。

今年の初め、編集のリリさんに本を何冊か借りた。
「リリさんセレクトでお願いします!」
読書が苦手な私の今年の抱負は読書。初めて手に取るような本がどさっと我が家にやってきた。色々もあって本を読める様な気持ちになれず、見知らぬジャンルに中々手が出せないままに結局、年の瀬。リリさんごめん。このまま返す訳にはいかない。読もう。
さくらももこさんの、”おんぶにだっこ”
1日10分でいいから読もう。寝る前におんぶにだっこを枕元に置いた。子供の頃の話なんて、全く興味無いよ。そう思ったのは5分位、読み始めて直ぐにケタケタ一人で笑い始めてる。
さくらももこさんが、何でちびまる子ちゃんっていうベストセラーを生み出したのかよくわかった。そういえば、子供の頃、世界があまりに未知で恐怖で摩訶不思議だった事を思い出した。私の恐怖は蜂だった。私は成人式を迎える前に蜂に殺されると信じていたし、どうしたら大人達はそんなに堂々と外を歩いてるんだろう。いつ蜂に刺されて殺されるかもわからないのに、本当に呑気で信じられない!って一人で苛々してた。
他にも沢山ある。私のベッドは朝ぐちゃぐちゃだけど、誰にもそれが見られたくないし、自分でも見たくないから、朝方にもぞもぞと綺麗に整えて朝を迎える。ぐちゃぐちゃのベッドを家族に見られた日は、苛々した。まだ、ここに来るのは早いよ!って。思い返してみれば、子供の頃は、苛々と恐怖の連続だった。
大人になって、子供っていうのは穏やかで伸び伸びと生きているね。なんて、決めつけるようになってしまったけど、子供には子供の悩みがあって、大人と同じ様に世界に必死だ。本、読んで良かった。りりさんありがとう。この本を手にしなかったら、あの頃の世界を忘れたままだった。いつだって人生に必死。何だか滑稽で可笑しい。
朝食はフレンチトーストを焼いた。蜂蜜をたっぷりかけて。

変な夢を見た。姉が大量の血を吐いて、私が背中をさすりながら「大丈夫。大丈夫だよ。」って言ってる。姉が大量の血を吐いたのは、ストレスの所為。そのストレスの原因は私の色々を全部受け止めてしまったから。昔、姉が怒り過ぎてホクロから血が吹き出した事があったけど、きっとその事がずっと胸にあったんだろう。姉の吐く血は、まるで蛇口から勢いよく出てくる水みたいな速さで、すごくびっくりしたけど、とても綺麗だった。
目覚めてから、あまりに強烈な夢にどきどきしながらgoogleで調べる。なんと、大金が入ってくる夢らしい。今の状況が悪ければ悪いほどに、大金だそう。やったー!姉にメールする。「私達、すごい大金が入るよ!」
昨日は昨日。今日は今日。明日は明日。泣いてばかりもいられないし、うつつを抜かしてばかりもいられない。
仕事の活動名、旧姓に戻す事を躊躇っていたら友達がダサいって言うし、心機一転で名前を変える事にした。さぁ、大金が入ったら家族や友人にご馳走しよう。飛び切り美味しいご飯を一緒に食べよう。
食べる事は生きること、生きることは食べること。
怖がらないで、新しい毎日を食べよう。新しい私を食べて、食べてもらおう。
新しい日記のタイトルは、eat new me.

久しぶりのチキンカレー。我ながら絶賛。私のチキンカレーは美味しい。この美味しさを誰かにあげたいって思う。今日は林檎を一個すりおろして入れた。いい感じの甘さ、最高。
全部捨てた筈だったのに、彼の写真が久しぶりに出てきた。見ちゃいけない。見たくない、怖い。とっさに目を伏せる。いや、見よう。もし、怖いと思うなら見た方がいい。今から逃げてても逃げ続けるだけ。ちゃんと見よう。彼のどこが好きで、どこが嫌いだったのか。
一つ一つを思い出す。
アトピーだから、首元はよくただれていたな。髪はいつもボサボサ、フケもすごいから彼用に少し高いオーガニックのシャンプーをネットで買ってた。顔だけはそこそこハンサムだけど、服を脱ぐとこなきじじいにそっくり。表向きは騙せても、身体は真実だなぁと関心した。服はボロボロで、お酒を飲むお金はあるのにいつも服を買ってとせがまれてた。なんでだろう。なんで私が服を買わなきゃいけないんだろう。お酒を呑むと変なテンションになって、お酒が入らないと借りてきた猫みたいで、子供みたいで、だけど、子供みたいっていい表現に聞こえるけど、それっていいのかな。みんなが可愛いと言う彼を私も可愛いと思ってたけど、本当に可愛かったんだろうか。みんなって誰。私の周りの人は誰もそんな事言ってない。
写真を覗けば覗くほどに、わかってくる気がした。人生をいつしか諦めてしまったのは私なんじゃないか。妻になったから、この人の悪い所全てを受け入れる。私が求める事、やりたい事、望む事が叶わないのなら、世界からそれを捨ててた。
前に仲の友人と子供の事について話した事があった。「うちは夫が子供を要らないって言うから、前は欲しかったんだけど今はいいかな。」ちょっと寂しそうに見えた。私より年が1つ上の彼女にとって、今という時間はいつなんだろう。彼女が自分の想いを世界から消失させてる気がした。きっとあの時の彼女と同じだ。私は一体何を望んで彼の妻として私の人生を生きてたんだろう。
彼の病気も、私の諦めも、同じように進んでいった。一緒にいれるだけでいい。本当にそうだったんだろうか。自分の人生の舵を誰かに委ねるような生き方って間違ってる。夫婦でも、相手に委ねるものじゃない。できる方がやればいい、それも間違ってた。世界は出来る出来ないで作られてない。出来る人も出来ない人も同じように今を生きてる。
結婚っていう幸せを手にしたから、私は人生を諦めちゃったのかな。
ああ、今日も最高なカレーだったな。
もう嫌だって、毎日、何度もどこかで人生をやめたくなる。
そうじゃない時間の方がずっとずっと多くなったけれど、そう思った時に全てもういいやってなって、ぶっきらぼうに適当な食事を食べると今日っていう日が何だかつまらなくなる。だから、やっぱり諦めない方がいい。
料理も人生も、今っていう時間を諦めない方がいい。