いつもの夕飯

和食 07.12,2020

久しぶりにちゃんと食事を作った。
先週に母が冷蔵庫を冷凍庫をパンパンにしていってくれたお陰で、ずっと母の料理に甘えてた。冷蔵庫を開ける度に嬉しくって、ほっとした。

そろそろ冷蔵庫がすっからかんだ。私の料理を作ろう。
気持ちが乗らなかったけれど、手を動かし始めたら、やっぱり楽しい。

昨日作ったチキンスープに牛乳と味噌を入れてスープを作ったら最高に美味しかった。

味噌ミルクスープ
チキンスープ [手羽元、キャベツ、人参、大根をことこと煮込んだ白濁のスープ]
ブロッコリー
豆腐
味噌
牛乳

パンケーキと目玉焼き

朝食 05.12,2020

「菊地さん、卒業しましょう!」
先生が笑顔で言った。今日は1ヶ月ぶりの心療内科。私の鬱は霧みたいに消えていった。理由はわからない。だけど、苦しめてたのは、私。私自身だ。

朝から晩まで、新しい家の事で忙しい。必要な物を買い揃えたり、取り付けたり、新しい生活に不安がるテコをなだめながら、家中を走り回るように忙しくしてるのは、止まったら不安になるから。夜が来るのが怖いけれど、それまで動き続けよう。

私は、彼が好きだった。離婚なんてしたくなかった。
好きだけど、別れを選んだのは自分の人生を生きる為。病気も酒も暴力も、モラルに反するような行動も全て、彼自身の問題だ。私が「そんな酷い事は止めて!」 とお願いするのは一回まで。それ以上は彼の人生をコントロールする事になる。「あなたの為を想ってやったのに。」一昨晩に電話で私への怒りを露わにする友人の言葉にようやく気づけた。私も沢山、彼にかけてきた言葉だから。友人には心から感謝してる。とても大切な人。だけど、その発言は違う。

生きるっていうのは、幸せになる為の行動だと思う。どんなに世界でそれが正しくても、心からその人を想ってたとしても、誰かの幸せを行っちゃいけない。それに、もし、苦しみや悲しみを見つけたら、それは誰かにぶつけるものじゃない。それは自分の物。瞼を上げて世界を見てるのは自分。それが愛だと言うなら尚更、世界を今日愛したいのは自分だから。あなたの為は私の為の話。彼女が夫の為に、私の為にと翻弄される姿はまるで過去の私そのものだって。あれが私だったのかって。

今、寂しいのも苦しいのも哀しいのも、彼を想っていたからだ。未だに涙が流れるのは、彼といい人生を送ってきたからだ。だけど、私達は別の人生を生きる必要があったんだと思う。愛なんて全てじゃない。それは時に黒っぽい欲望に見えた。

12月4日

朝食 04.12,2020

離婚届を出した。夕方に仕事から帰って、走って役所に行って、待合のベンチで自分の引いた番号が呼ばれるのを待つ。とにかく何も考えないように、何も感じないようにって。

役所の帰り道に薬局に寄った。オレンジのボックスのホットケーキミックスが売ってて、なんだかほっとして買い物かごに入れる。明日の朝はホットケーキにしよう。



12月3日

Journal 03.12,2020

哀しい事があった。数ヶ月も前にあった事で彼が怒り、友達の夫に電話があったんだそう。彼らも友人同士。友達は声を震わにして私に怒りをぶつけてる。彼が起こした行動なのにどうして私が怒られているのか、よくわからない内容だった。胸が痛くなる。

人が怒るのは哀しい。とても哀しい。彼が未だに過去の事で怒っているのも哀しい。あれは自分の起こした罪だ。あの日は彼を残して誰一人として悪くない。私は朝まで帰らない彼を何も言わずに待っていただけ。いつもの様に。いつもの様に彼は嘘をついて帰らなかっただけ。大事な話の約束をしてたけど、当たり前のようにすっぽかされた。そういう日に起きた出来事。彼の40回目の誕生日。私にとっても特別な日だった。

もうこれ以上に哀しい気持ちになりたくない。自分だけじゃない。目の前で誰かが哀しむ顔だって見たく無い。友達が哀しむ顔も、知らない人の哀しむ顔も嫌だ。私には関係無いとは思えない、胸のどこかが勝手にひりひりとしてしまうから。もう本当に厭。

撮影から帰宅してすごく疲れてる。引っ越してきたばかりの家で、まだまだ心の整理もついてない、行き場のない不安だけが毎日を繋げてる。ぽろぽろと涙が落ちてきた。

彼は、私じゃない誰かも、自分の苦しみから逃れる為に平気で傷つけたんだ。どうして、彼にとって大切な友達を傷つけるんだろう。数ヶ月も前の事を掘り起こして、そこまでして自分の苦しみを誰かにぶつけても、楽になんてなれるわけがないのに。

引っ越しても、電車に乗っても、街を歩いても、私達の8年間の思い出が至る所にある。もし、あのまま我慢してたら、今でも私はあの家に住んでいただろう。帰らない彼を待って、寝ずに仕事に行って、作った食事は冷めたまま。だけど、そのうちに彼の病気が落ち着いたら、また一緒に食卓を囲める。季節が終わるように待てば、ずっと私達は一緒にいれたのかもしれない。私が友達に話さなければ、家族に話さなければ、病院へ警察へ行かなければ、弁護士の所に行かなければ、私は今も彼と一緒にいれた。毎日の苦しみから目を背けていれば、ずっと今も家族でいれた。ただ、食卓で彼の事を待っていさえすれば。

全て自分で選んだ。沢山の想いや選択があったし、ひとりぼっちになんてなりたく無かった。だけど、一つ一つの事から、もう、目をそらす事が出来ないし、ダメだって。彼からじゃない。自分から逃げちゃダメだって。

明日、ひとりで離婚届を出しにいく。なんで、今日に限ってこんな話を聞かなきゃいけないんだろう。一番に側で私を支えてくれた友人からの連絡は、とても残念で哀しいお知らせだった。

夕飯

和食 01.12,2020

姉と電話で話す。

「ママってデリカシー無いよね。」
「そうそう、そういう人なんだよ。結局さ、文句言いながらもパパと一緒にいるし、離婚の苦しみも、夫が死ぬ苦しみも、わかんないんだよ。」

ママが悪いとは思わないけど、デリカシーの無さに苛々する事がある。だけど、姉の言う通り、わかんないんだろう。それが例え親であっても、わからない。

いいとか、悪いじゃなくって、わからない。
夫が大病であっという間に死んで、看病の疲れや、悲しみに更ける間も無く、アメリカで三つの裁判に巻き込まれて、今、姉が、私によく言う言葉は「わかるよ。わかる。」「私なんて、酷い時はニコの骨壷に手を突っ込んで泣き叫んだからね。」

変な運命だと思う。蠍座の姉と、蠍座の妹。今までだって仲良し姉妹だったけれど、姉とは、姉妹を超えちゃった気がしてる。同じタイミングで私達に起きた事は、異常だった。こんな話、今まで知り合いの知り合いにだって聞いた事がない。どうして、こんなに世界が狂っちゃったのかわかんないけど、だけど、今の姉がいてくれたから、私は一人にならないですんだ。

10年前の今。ニコチャンはアメリカで流行り始めたブルーマンのツアーで忙しくしてて、私達はヘレナの小学校の友達のゲイカップルファミリーの豪邸にお邪魔して、映画みたいに大きなクリスマスツリーの前で最高な気分で乾杯した。まさか、こんな人生が待ってるなんて、人生って本当、どうかしてる。

11月30日

Journal 30.11,2020

今日は、朝からママと梃子と松陰神社の新しい家に来た。ママは着いて早々にスーパーと商店街で食材を沢山買ってきて、冷蔵庫と冷凍庫をいっぱいにして帰って行った。

「離婚届を千葉に送ったから、今すぐにお金を振込んでって。」

朝4時に起きて、色々とバタバタ動き回って片付けとか何だとか、もうボロボロの身体を湯船に浸からせ、一息ついた時だった。にーちゃんからのLINEが入る。時間は夜の20時前。胸は全く痛くない、ただ、深い溜息だけが出た。

彼から送られてくる筈の離婚届は一向に届かなかった。役所に離婚届を二度、取りに行く。何で、こんな事を二回もしなきゃ行けないんだろうって、虚しくて悲しかったけれど、今想うと自分で行って良かった。結局、そうして私が白紙の離婚届を準備して彼に渡す事となった。

彼は、いつも私におんぶにだっこ。人前で華やかに偉そうにしても、家に帰ると私が全部、彼が出来ない事をした。大変な事が起きても、私がどうにかする。いつもそう。ドラえもんみたいに、私に泣きついてくる。支えてるつもりだったけれど、嫁になったらいい嫁のつもりだったけれど、全部つもりだったのかもしれない。独りよがりの愛情は、結局、こうやって離婚届を二度も取りに行く事となる。私だって、哀しいし、辛い。私だって、弱いし、甘えたい。どうして、いつも一人で強くいなきゃいけなかったんだろう。

本当は離婚届は彼に出して欲しかった。最期くらいは、一度くらいは。

しばらく自分の幸せを望めない気がする。私の事を考えたくない。私から離れたい。人の哀しい顔をこれ以上見たくない。救ってくれた家族や友人を大切にしたい、今はそれ以外に何も思いつかない。何で、自分がここにいるのかだってよくわかんない。

風呂から出て、濡れた髪のままで銀行へ走る。身体が未だ火照ってる。だけど、悲しくない。どうかしてる。もう色々な修羅場を見すぎて強い女になっちゃったのかな、それとも、心をどこかに失くしてしまったのかな。


11月28日

Journal 28.11,2020

千葉から始発で池尻の部屋に向かう。
時間になっても、引越し屋さんが来ない。20分位経ってようやくきた。だけど、トラックのサイズを間違えたみたいで、今日は出来ないとなった。

ずっとやっぱり、頭がぐるぐるしてる。
本当に今日という時間が過ぎるだけで精一杯だ。私の荷物は重くて重くて、1分でも早くここから出したいのに、出れない。

にーちゃんからLINEが入る。
哀しくて下らない内容ばっかり。「俺の何が悪い?俺の皿を返せ、俺の椅子を返せ。」ってさ。にーちゃんは未だに苛々してるけど、私はもうずっと呆れてる。椅子も皿もそれ以外も全部、要らないよ。全てあげるし、そんな話は聞いてない。きちんと想ってる事を今、言わないとあなたは一生後悔するよ。

家族は彼を許さない。気持ちはわかる。こんなおかしな事、もし兄弟に起きたら、友達に起きたら、簡単に許そうなんて思えない。だけど、裁判をして誰が幸せになる??裁判で勝って何が幸せ??彼を犯罪者にして本当に幸せに戻れる?家族にぶつける言葉はまるで、いつも自分に問いてるみたいだった。私の腹の内に落ちた苦しみは、もうどうにも出来ないんだよって。

新しい部屋の鍵を不動産屋さんから受け取って、新しい家のカーテンだけつけて千葉に帰った。パパとビールを呑んでると、ふと思った。いわゆる悪い人って、もっともっと悪い人なんだって思ってた。今日ネットのニュースで読んだ若い俳優さんの記事を思い出す。そんな事で騒ぎ立てて、世間からバッシングされる程の事だろうか。

私の夫という人は、もっともっと悪い事を沢山してるよ。だけど、いい所だって沢山あって、落ちてゆく人を助け続けた私って一体なんだったんだろう。

あと少し、あと少しなんだけど、踏ん張れない。
進もうとすると隕石みたいのが降ってくる。痛いけど進もうとするのに、また降ってくる。そして、また降ってくる。

11月26日

Journal 26.11,2020

今日がこの部屋での最期の夜。夕方、駅前にある文化浴泉に行ってきた。久しぶりだな。サウナに入ったら、夏の日の事を思い出した。

彼から久しぶりに電話が鳴る。ドライヤーで髪を乾かしてた時だったかな。心臓が止まりそう。直ぐに3分20円のドライヤーを切って電話に出た。内容はたいした事は無かったけど、凄く怖かった。そう、ただただ凄く怖かった日のことを思い出した。

今日でぜーんぶ綺麗さっぱり銭湯行って、サウナですっきりって思ったんだけど、哀しくなって帰った。そうだ、あの日にあの日もあの日だって、凄く苦しかった。電話を切って、不思議な気持ちだった。私には、病気の彼と、そうじゃない彼と、いつもの彼が入り混ざって、だけど、もう本当に限界だった。明日もまた、酷い事が起きる。彼を信じようとする自分がいるのに、明日が来る事に怯えた。

どうして夫になったのに、どうして世界で一番信用しているのに、この生活を壊したんだろう。私が何より大事にしてるのに、何より大事にしてるここを、テコを、傷つけたんだろう。何回、何十回、何百回と思ったけど、彼は加速して最悪になっていった。

銭湯を出て、濡れた髪で家まで走る。最期の夜に気持ちよく終わろうとした自分に後悔した。簡単に逃れられるわけがないよ。苦しい事の方がずっとずっと多かったのだから。いい思い出がある筈なのに、出てこない。濡れた髪がどんどんと肩の上で冷たくなっていく。


苦しい夜は、今日で最期になって欲しい。
もう、これ以上の哀しみを世界に見たいと思えない。

林檎

Journal 25.11,2020

11月25日。空白の日だった。
あれが何時だったのか思い出せない。
離婚が決まった。

姉とLINEしてた時に、兄弟LINEにメールがはいる。にーちゃんからだ。

「終わったよ。」
協議離婚が固まったという内容だった。頭がまだぐちゃぐちゃ。本当に?本当に離婚出来るの?

彼の両親に書いた二通目の手紙の直後だった。最初からわかってた。彼には後始末が出来ない。だって、自分のした事について話が出来ないから、逃げるように家を飛び出して行った。

貯金を寄こせ、家具を寄こせ。惨めなメッセージばかりが、兄から入ってくる。「お金が無いみたいで、泣きついてきてる。」多分、両親が終わらせてくれたんだろう。直ぐにわかった。

この家を出るまで、後1日。

夜はキャベツとツナのナンプラーパスタ。写真を撮ったけど、消えちゃった。ずっと何だか動揺してる。この家から出ることが怖い。幸せになる事も怖い。一刻も早く、ここから離れたい。

和食 24.11,2020

胃が痛い。急に気持ちも滅入って午後から横になる。疲れた。全部が疲れた。この家に来た日から今日までの色々が頭の中でリプレイしてる。

悲しみは妄想だって、本で読んだ事がある。だから、悲しまなくっていいっていう内容の本。この半年以上、私は私の妄想の中で毎日、毎日、泣いたんだ。そんな妄想なんて欲していないのに、泣き続けた。会いたいとは思わないけど、記憶の中の彼が今日を壊していく。後、少し、あと数日でここから出れるのに。

彼の夢を見る。新しい女性と一緒に住んで、当たり前のように生活をしていた。悪びれたそぶりも無ければ、堂々としていた。夢の中の私は、驚きもしないし、悲しんでもいなかった。そういう事ができる人だって事を知ってるから。ただ、胸が鉛の様に重かった。泥のように重くて真っ黒な何かが、私の胸の中に住み着いていた。きっと、ずっと前からいたんじゃないかな。気づかなかった。だけど、どうにも出来ない。ねっとりとしたそれは、簡単には消えない気がした。

今の私に出来る事があるとしたら、一つ。彼と同じ事はやらない。死んでも、そんな惨めな事はやらない。今や自分や過去から逃げない、この苦しみを誰かの所為にしたりしない。絶対に。

これは私の問題。ベッドから起き上がって、荷造りを始める。
やるしかない。胃薬飲んで始めよう。今を乗り越えたら、いい事があるかもしれない。もし無かったとしても、今とは違う場所にいける。この悲しみに飲み込まれちゃいけない。


炊いた米
しらす
アボガド
納豆
マヨ
小豆島のヤマロク醤油のこの時期だけの菊醤


焼きカレー

カレー 23.11,2020

昨日のチキンカレーの残りにチーズをかけて、オーブンで焼く。30分もしたら、焼きカレーの出来上がり。熱々をハフハフしながら、食卓で頬張る。

家にある物が急にするすると無くなっていく。また一つ、また一つと誰かの手に渡っていく。荷造りをしてると、2年前か3年前の手紙が出てきた。手帳に大事に取って置いたものだ。メモみたいに短い文章が記してある。「ごめんね。」直ぐにゴミ箱に捨てた。

何回、何十回、何百回と、彼は私に謝っただろう。人を許すのは簡単だ。だけど、許した自分を捨てるのは簡単じゃない。後悔が私の後をずっとずっとついてくる。

早く引っ越しを終わらせたい。
叩いて出てきた埃みたいに、色々なものが出てくる。要らないもの。消えて欲しいもの。私にはもう必要が無いもの。

焼きチーズカレー
カレー

ピザ用チーズ


鮪丼

和食 21.11,2020

午後、絵描きの田中健太郎さんの個展へ行った。発熱のスタッフが出たみたいで、中止。今日をとっても楽しみにしてたけど、きっとまた近いうちに見れる。健太郎さん会いたかったな。すっごくカッコいいお兄ちゃん。愛のあるお兄ちゃん。憧れる人。

そのまま、青山にある、パリって勝手に呼んでるカフェで瞳ちゃんと会う。私は麦酒を、瞳ちゃんは白ワインを注文。辺りは直ぐに夜になって、遠くに東京タワーが赤く光ってる。心が安心してる。こんな時間を感じられる事が幸せ。

「新月の日にコスメのお仕事が出来ます様にって紙に書いてたの!」瞳ちゃんは新しいコスメの仕事が始まるんだそう。彼女は編集とライターをしてる。とっても嬉しそう。私も頑張ろう。頑張りたい。

私の人生はカバンをひっくり返したみたいに、全てがどっさり落ちて、すっからかんになった。ここに在るのは、私とテコと写真だけ。全部大事な物だった筈なのに、気づいたら失くなってた。だけど、大切なものは、ここにある。そんな気がしてる。

鮪丼

ご飯
青ネギ
醤油麹

芋煮

和食 20.11,2020

心が元気になればなるほどに、頭の中にやるべき事がわんさかと降ってくる。
仕事が出来なくなってしまった頃、今まで一度だって溜めた事が無い請求書が気づいたらあっという間に溜まっていた。酷い時は、1時間も吐き気で外出が出来なかった。電車に乗るのも精一杯。ほんの数ヶ月前の話。ようやく、私は私を取り戻してきた。生きる事って、こんなに楽だったんだって事を今、毎日を思い出してる。この半年以上の出来事が、まるで夢みたい。来る日も来る日も、胸が潰れる様な出来事が重なっていくと、人間は正気を失っていく。最期はずっと消えたいと願ってた。消えなくて良かった。

今日は久しぶりに穏やかな夜。コロナの前みたい。その時は、私の夫という人がこの家にいた。

にーちゃんからLINE。
「なんか人が変わったみたいに、電話が来た。今日は敬語だった。全部、終わらすって言ってるけど、未だ納得がいかないみたい、。俺は悪く無い、追い出されたんだとか、関係の無い事を主張してた。酷かったから少し言ったら、黙ってた。」

情けない。

妻である以上、彼の病気を救うと必死に頑張ってきた私の傲慢さは、私の罪だと思ってる。一度でも殴られた時に、一度でも大声で喚き散らされた時に、一度でもテコを蹴飛ばされた時に、荷物をまとめて、ここから逃げ出す事が出来た。それが愛かどうかなんて、わからない。ただ、反省してる。

病院の先生にどうして逃げなかったんですか?って、何度も聞かれた。
「犬がいるし、両親には心配をかけるから実家には帰れなかったんです。」私の答えは答えになってなかった。私が逃げない事を選択した。

離婚を選んだのは、怖かったからじゃない。苦しかったからじゃない。出て行ったからでも無い。病気でもいい、逃げてもいい、裏切っても、弱くても良かった。そういう彼を私は好きになったから。全部知って、悪い所もいい所も含めて彼を愛して結婚した。「もうお酒で傷つけないから一緒にいて欲しい。」彼の言葉を信じて、未来に希望を持って一緒に生きていく事を決めた。

「俺は今年1000万稼ぐから、お前とは違うんだよ!俺に構うな。」
一緒にいた8年間の殆どを無職で過ごした男が、すっかり依存症が始まって、心も身体もおかしくなった時に友達に貰ったお金や何かを手にした。色々なタイミングが揃って彼はおかしくなっていった。彼が荷物を持って出て行った日に私に言った言葉。あの日の顔も、あの日の声もよく覚えてる。何かの糸が切れて、それから私はあっと言う間に身体を壊した。

こんな人といたくない。私が好きだったのは、優しい彼だ。
ただただ情けなかった。人として、男として、ダサくて嫌だった。そんな男を救おうとする私も、もう許せなかった。離婚を決断した理由は多分、一つ。それだけ。

芋煮
ごま油 (肉を焼く時に使うのと、最期に風味付けで入れる)
味噌 二種(焼き付けるのと、最期に入れるよう)
豚肉
きのこ
里芋
人参
こんにゃく
青ネギ

ひっぱり素麺

Journal 18.11,2020

哀しい事があった。東京に帰ったらきっと、そうなるだろうって予測してた。だけど、こういう哀しみが待ってるとは思わなかった。

彼のお母さんには、2年前からお酒の事を相談し、一緒に彼のお酒を治そうって頑張った。彼が家で大暴れした時は、大阪から直ぐに東京に来てくれて、家族でお酒の事を話し合ったりもした。お母さんは、「何も知らない、彼はそんな事をしない、淑美ちゃんに悪いところは無いんですか?」って言ってる、全て知ってる筈なのに酷いよ、あの人。絶対に許せない。これ、犯罪なんだよ?姉が電話で怒ってる。うちの母は裁判するって。

また、人に裏切られたんだ。ずっと必死に頑張って信じてやってきた事は一体なんだったんだろう。私って本当に馬鹿な人間。ずっと哀しい午後だった。

夕方、薄暗い部屋に帰って、床に座った。哀しい。だけど、お母さんは私を傷つけようとしてる訳じゃなくて、彼と同じ、現実を受け止められないんじゃ無いか。今まで嫌がらせを受けて来たわけじゃない。それは、一緒に頑張ってくれた時間が証明してる。

人が人を傷つけるのは、自分を守る為なんじゃないか。彼もそうだった。自分が苦しみから逃れる為に、人を傷つけてしまう。決していい選択じゃ無いけど、仕方ない事な気がする。許すとか許さないの問題じゃない、哀しいのは、私が傷ついた心じゃなくて、その選択をしてしまったその人、そのものなんじゃないか。姉に言った。「みんなに伝えて。お母さんを咎めたりしないで欲しい。」

” 彼を救ってあげて下さい。” 先週にお母さんに書いた手紙は、簡単に意味が無いものとなった。彼もお母さんも、自分を守る事で必死だ。人はひとりじゃ生きていけないのに。少しの勇気があれば、少しだけでもいいから、自分の弱さを認めたら、ずっとずっと景色は変わる。

夜はやっちゃんが遊びに来てくれた。
一緒に、ひっぱり素麺をひっぱりながら、色々な話をした。大切にしたい。今も、側にいる人も、私の見える世界を大切にしたい。

ひっぱり素麺
美味しい小豆島の素麺
[タレ]
納豆
青ネギ
だし醤油
鯖缶水煮
お好みで卵


※ひっぱり饂飩
山形の郷土料理。鍋から饂飩をひっぱってタレをつけて食べる。
熱々の饂飩を食卓で楽しく食べる饂飩。

湯豆腐

和食 17.11,2020

渋谷の駅前で結婚指輪を売ってきた。45,000円。この指輪が大好きだった。
心がプラスチックになった気分。何も感じない。

今、この世界に違和感しかない。
一生、隣にいると約束した人が死んでも無いのにいなくなった。彼は、暴れて、喚いて、暴力をふるい、家族をゴミみたいに、ぽいっと捨てていなくなった。世界で一番信じてた人が、目の前にある世界を壊してゆく。

どうして、こうして、自分は今、ここにいるんだろうって思う。私の力じゃ無い何かが私を推し進めてる。空っぽな自分が歩いて、空っぽな自分が食べて、空っぽな自分が笑ってる。今、目の前にある世界は本当に私の世界なんだろうか。

今夜は湯豆腐。
引っ越しの手続きで忙しい。小豆島の醤油の蔵元で買ったポン酢で食べた。

湯豆腐
昆布
豆腐
ポン酢

夕飯

和食 16.11,2020

久しぶりの東京。
本当は東京に帰るのが少し怖かった。姉にメールする。「月末に引っ越しが決まったから、何かあっても私に直接伝えないよう、皆んなに言って。とにかく、姉を通して。」

元気を取り戻せば取り戻す程に、あの場所への恐怖が大きくなっていく。もう2度と、あそこへは行きたくない。もし、また大きな哀しみに襲われたら私はもう帰って来れなくなる。そんな気がしてならない。家に入ると、二つ鍵をしてチェーンをかけた。絶対にもう来ない事はわかってるのに外せない。

また堕ちたら、引っ越しなんて出来なくなる。やっと、ここまで元気を取り戻したのに。8年間想い続けて、何よりも誰よりも大切にしてきた人が、今だに私の毎日を襲い続けている。

家を出て行った次の日に彼と電話をした。9月の初め。「俺は忙しいから邪魔すんな。2度と連絡すんな。」沢山伝えたい事があるのに言葉の1つも出ない。彼じゃない彼が怒り狂う。一年前はあんな声を出す彼じゃなかった。だけど、その一年前はこの彼。私達には話す事が沢山ある。夫婦を続けるにしても止めるにしても、未だ夫婦。だけど、もう無理なんだってわかった。もうこの彼になったら話は出来ない。

あの時は私は胃癌の検査の再検査中で、不安だったし体調がとても悪かった。勿論、彼も知ってた。もう一人の彼はどういう気持ちであの電話を切ったんだろう。結局、私達は一度も話合う事が出来ないまま。何度も何度も何度も何度もお願いした話し合いは、結局に出来ずに来週、5年間住んだこの部屋を出る。

夕飯
梅干しご飯
具沢山のお味噌汁(パプリカ、セロリ、人参、ひき肉)
麩チャンプル



小豆島3日目

Travel 15.11,2020

6時過ぎに宿を出て、今日も港の喫茶店へ。辺りは未だ薄暗い。朝食を食べて、陽が上がった頃にシンジ君と二人で山頂にある展望台へと車で向かう、山道をすいすいと木漏れ日の中を走っていく。山若君は一人喫茶店に残って仕事。

私にはもう、何も無い。
彼との人生の為に妻として出来る事を思いっきりにやった。写真は好きな仕事だけど、がむしゃらに働き彼との未来の為に貯金をした。友達に会う時間だって月に数回程度で、とにかく毎日が家庭と仕事で終わった。あれだけ苦労して築いた全てが一瞬で壊れて、全く違う毎日が今ここにある。今、私は未だ彼の姓を纏い、ひとりぼっちの人生を歩き始めてる。

シンジ君は人に裏切られた苦しみを知ってる。10年も前の事なのに、彼の傷の深さが見える気がした。私は夫の酒乱が始まってから、下を向く事が増えた。前を向いて歩く事が出来ない時がある。目の中に入ってくる世界に後ろめたい気持ちになってしまう。

この世界に在るものが、美しいものばかりじゃ無い事を知りたくなかった。

雲のずっとずっと上にある展望台。光が全身に当たってとても眩しい。シンジ君が足元に広がる落ち葉を見ながら言った。「人が好きだから、出来るだけ答えたいんだよね。そうじゃない事だってあるんだけど、出来る事なら。」

シンジ君に出会えて、本当に良かった。私に起きた出来事は今でも整理出来ない。周りでこんな経験してる友達だって知り合いだっていない。変な例えだけど、不倫された方ががずっと良かった。ずっとずっといい。

私に明日があるのなら、シンジ君に出会えて良かった。苦しみを共感したいんじゃなくって、明るい場所にいるシンジ君に、苦しくても下を向いても、今も同じ自分で歩き続けてる事に、許された様な気持ちになる。

このまま、ずっと今見たいに明るい場所にいたい。

小豆島2日目

Travel 14.11,2020

小豆島2日目。
真っ暗の中起きて、山若君と朝6時からやってる港にある喫茶店に向かった。水平線の向こうに太陽が上がり始めてる。朝ごはんを食べながらお喋りする。しばらくすると、山若君は仕事を始めた。

彼との事が夢みたいに感じる。未だ全身に残ってる感触をどこかで感じてしまう。想い出したく無い夢。出来れば、階段から落ちて頭でも打って、その部分だけをすっぽりと私から失くして欲しい。要らない。楽しかった夢も全て要らない。

昨晩は、TBAFで昨年の夏に会ったシンジ君とシンジ君のお友達、山若君と皆んなでピェンロー鍋をした。誰かと囲む食卓は本当に楽しい。こんなに温かくて美味しい時間を、身体中が満たされていく事がなんだか惜しく感じてしまう程の夜を、どうして彼は捨てたんだろう。どうして。

偶然にも、姉とにーちゃんと同じ誕生日だったシンジ君。私とも同じ、蠍座。シンジ君の離婚の話を聞いた。10年経った今はもう時効だって。1年くらい、ずっと辛かった。本当にしんどかった。すごく苦しい離婚だった。だけど、大丈夫。絶対に大丈夫な日がくるから。何度も何度も言ってくれる。「絶対に大丈夫だから!」出会いって不思議だと思う。たまたま来る事になった小豆島で、こういう出会いがあるなんて想像もしてなかった。小さな出会いが、私に大きな勇気をくれる。

シンジ君が連れてってくれた山の中にあるお店でリングを買った。「ちえちゃんのリング、すっごくいいよ!!」山形の作家、西方 智衣子さんという方のリングだそう。何だか私を守ってくれるような気がした。

私にもきっと、大丈夫な日が来るんだ。


夜は山若君とシンジ君のやってるピザ屋、kamosでピザを食べた。
いい夜だった。温かい夜だった。

11月13日

Journal 13.11,2020

朝、4時に起きる。動き出そう。私がやらなきゃいけないんだ。直ぐにパソコンを開いて、彼の両親に丁寧に手紙を書く。

2年前から彼の酒乱の事を相談していた両親。一度、大暴れした時に、大阪から東京へ駆けつけてくれた。お互いに苦しい想いを散々してきた。彼を救って欲しい。どうか話をして欲しい。もう彼を救えるのは両親しかいない。兄も姉も、母も父も、皆んなが怒ってる。私の家族が怒りで傷を負い始めてる。もう止めたい。セブンイレブンで手紙と、アルコールの記録をプリントアウトして郵送をする。10時40分、チェックインの時間まであと少し、急いでパッキングする。頭が今にも割れそう。

高松駅の駅前のスタバでチャイティーを頼んだ。フェリーまでの時間、少し落ち着こう。これから友達に会うのだから、こんな顔して会いたく無い。少ししてLINEが鳴る。姉だ。

携帯から飛び出るような早口な声。怒ってるけど、何だか爽快だった。姉の意見は私と同じ。全部こうなる事なんてわかってた。本当に酷い事ばっかりだった。もう、これ以上相手に関わらないでいい。調停なんてしなくていい。裁判もしなくていい。

遺産相続で3つ目の裁判が終わった姉。嬉しそうに言った。
「最近、新しい目標を作ったんだけど、聞いてくれる?あの人達にされた事は法で裁かれたけど、今でも煮えくりかえる程に辛い。だけど、許そうと思って。だってさ、私が許さないって思う時間が嫌だなんだよね。」

「うん!私もそう思う。だけど、もし道で倒れてても、もう助けないよ。」
「地球で最期の一滴の水が目の前にあっても、絶対に譲らないね。」

1時間くらい、大声で笑って、話して、フェリー乗り場へ走った。出航まで後10分。私の人生を明るくしてくれるのは家族や友人。だけど、笑うのは私なんだ。

11月12日

Journal 12.11,2020

出張先での撮影が終わって、ホテルに帰る。心が切れそう。これはいつまで続くんだろう。セミダブルのベッドに横になる。こういう時は頭が全く動かない。辛い、哀しい、辛い、哀しいの繰り返し。感情が思考を支配する。

疲れた。

朝から開けなかった兄からのLINEを読む。「彼との話し合いが上手くいかない、よしみに怒りを露わにしているよ。調停をしよう。」

私の怒りなんて、とっくに失せてる。もう救いたいとも思わない。ただ、救われて欲しい。誰でもいいから、少しでもいいから、彼の側で彼の話を聞いてあげる人がいて欲しい。今、現実を見ないと、戻って来れなくなる。それは私も同じ、今から逃げちゃいけない。ここにあるものが苦しくて苦しくて堪らなくても、誰かのせいにしちゃいけない。自分で選んで歩いてきた筈。どっちが悪いじゃなくて、自分が前に進む為に痛みを飲み込む。

あかりちゃんに伝えたくなって、メールを送ると、直ぐに電話が鳴った。20分くらい話をして、気持ちが追いついてくる。

私は、調停も裁判もしたく無い。

「これはモラハラ問題です。酷いですね。裁判をやれば勝てます。」弁護士さんの言葉に心は全く響かなかった。裁判してどうするの?兄はここ最近ずっと怒ってる。「こんな酷い事をされて、相手は逃げ得になるんだよ?それでもいいの?」

酷い事をして、俺は知らないと声を荒げて言うのは認める事が出来ないだけだと思う。自分を守る為には、もう怒るしか無い。それは、決して得なんかじゃない。何があったのか知ってるのは彼自身なのだから、自分に嘘をつくのは自ら泥沼にはまっていくようなものじゃないかな。哀しい事だよ、だから、どうかもうやめて。

目玉焼きご飯

和食 10.11,2020

朝に納品を済ませて、新宿のマップカメラにレンズを返却しに行く。時間が少し空いたので、明治神宮を歩く事にした。

清々しい。涙が出てくる。
伊勢神宮に行ってから、こういう場所が好きになった。祈る事がずっと胡散臭いと思っていたけれど、祈るのは、願い事を叶えるわけでも、信仰の為でもなく、ただ、祈る事で目の前を見る事が出来る。瞑想みたいに、今、ここ。って。病気や災害、自分一人の力では乗り越えられない、どうにもこうにも出来ない時に、人は祈るんだろう。祈る事で救われる。起きてしまった現実は変わらなくても、今、ここにいる事が見える。お腹が鳴ったら食事をし、哀しみが今は襲って来ないのなら、ゆっくりする。そうして今がここにある事を知ると、少し元気になれる。いつだって、今なのだから。

彼の中には二人の彼がいた。
一人は優しくて私や家庭を大切にする、モラルも道徳もある気の弱い彼。もう一人は、酒を浴びるように呑み、女と遊び、汚い言葉を喚き脅し、人を傷つける事を厭わない彼。

私の心は両方を行ったり来たりした。全て現実だから、そうするしか無かった。本当に疲れてる。彼がお酒の時期に入ってしまってから、もう8ヶ月。あの頃に戻れそうな気がしてならない。もう一人の彼が帰ってくるのを、どこかで待ってる私がいる。

新しい家が決まった。私は今を生きなきゃいけない。

目玉焼きご飯
ご飯
目玉焼き
ニンニク醤油
小梅

蕪のトマトスパゲッティ

Journal 09.11,2020

昨晩、東京に帰った。
家まで編集部の方が車で送ってくれた。お土産に撮影時に購入した蕪をくれた。雨が少し降っていて、生ぬるい夜。

この部屋に帰る度に悲しさが溢れる。
不毛だってわかってるけれど止められ無い。何回も何十回も、何百回も思う。「どうして、こんなに苦しまなきゃいけないんだろう。」

幸せだった。結婚してからも、結婚する前も、ずっと本当に幸せだった。お酒の事を除いては毎日がとても幸せだった。後出しジャンケンみたいに、沢山の人が口を揃えて「ほら、だから言ったでしょ。」って。だから、あの男は駄目だって言ったのにって。幸せが無くなっていく毎日をどう思って、そんな事を言うんだろう。

兄から、彼と連絡を取ったとLINEが入る。
あまりいい内容じゃなかった。大体想像は出来てた。

あと何回、胸が潰されるように苦しんだら、私は普通になるんだろう。彼はきっと、これから鬱に入ると思う。冬にかけて、来年にかけて鬱に入ると思う。その頃には私達はもう他人になってるだろう。こんなに酷い事があっても、私は彼を嫌いになる事は出来ない。むしろ、兄を通してだけど、彼に会えた様な気がして、ほっとした。嫌いたいのに嫌いになれない。

神様という人がもしいるのなら、どうして、彼に病気を授けたんだろう。どうして、彼の様な弱い人間にそんな事をしたんだろう。彼には、直ぐに根をあげてくれて、他の男に飛びつく様な女が似合うのに、どうして私みたいなのが彼の隣にいたんだろう。

もう、本当に厭だ。喉のあたりが、ずっと満タンで、ぎゅっとなってる。哀しみが一気に溜まってしまって、声が出なくなるやつ。

11月8日

Journal 08.11,2020

栃木に出張。行きの車でずっとJpopが流れてる。彼の事を思い出して吐き気がする。知らない人の声なのに嘘つきの声に聞こえる。

歌を聞くのが辛い。どうしても彼に重ねてしまう。突然にやってきた彼の酒の時期。病気なのはわかってる。だけど、それが彼だった。ずっとずっと前から私は悲鳴をあげていたのに、私の手で両手で口を噤んだ。

「私なら大丈夫。」何百回と心の中で言ってきた口癖は、今、私を苦しめる。

いつもそう。撮影が終わると、急に世界がやってきて寂しくなる。自分が一番不幸だなんて思ってない。ただ、果ての来ない悲しさの中で、どこにも着地できないだけ。だから、私は手っ取り早く私を責める。責める理由が尽きる頃には、また悲しみに飲み込まれる。どうして、私はこんなに疲れちゃったんだろう。

寂しくて、どうしようも無い毎日が終わらない。

11月6日

Journal 06.11,2020

朝の4時、姉からLINEが入る。
” 本当によく頑張った。だけど、監禁されてたわけじゃない。あなたのチョイスだから。新しい人生を始める事に集中しよう “

何度も何度も話し合って、彼はいつも人が変わったように「僕を信じて。」と私の目を見て訴えた。選べない。そんな人を置いて出て行く事なんて、私には絶対に出来ない。酔っ払って暴力を振るっても、「二度としない。もう傷つけないから。」その言葉を諦める事が出来なかった。「今夜は早く帰るよ。」という言葉を信じて、彼と一緒に食べる為の食事を作り続けた。

私の人生な限り、全ては私が選んだ事になる。だけど、私と彼が決めた事。一緒に暮らそう。一緒に食事をしよう。一緒に生きていこう。結婚をしよう。

そんな簡単な約束じゃない。

姉の言葉はわかってる。とにかく、”もう離れて。”そう言ってるんだと思う。だけど、私には答えが見つからない。

トマトとほうれん草のスパゲッティ

Journal 05.11,2020

昨晩、兄の元にようやく彼から連絡があったそうだ。
彼の話は変だった。すっぽりと犯した全てが抜け落ちていた。現実だけが、ぽつんと残ってる。兄は困惑していた。

息を切らせて興奮して話す兄。それは無意味な事を私は知ってる。自分の常識で彼の話を聞いちゃいけない。彼の言葉じゃなくて、今、どういう行動をしてるのか、どうしたいのか意図を汲んであげないと、こっちが壊れる。彼との対話は簡単じゃない。

彼は、ある時期が来ると天地がひっくり返り別人となる。ある時、肩書きを沢山持つ人となっていた。プロデューサー、デザイナー、アーティスト、経営者、オーナー。見知らぬ人にいきなり自己紹介をして名刺を渡しまくる。一度や二度じゃない何十回とそんな彼を見てきた。それが段々と加速すると、人を使うようになる。音楽しか出来ない彼はまるで大社長かのようになって、とても威厳的で、身内の色々な弱い人に悪態をつき、汚い言葉や強い言葉を当たり前のように放つ。「お前さ、要らないから。別にもう連絡しないでいいから。」そんな風に人を物みたいに切っていった。お金も有り余るように持っているような態度になって、キャバクラに行くようになる。普段はシャイな人なのに見知らぬ女性との交流が激しくなっていく。毎晩違う女性と遊んでる。そんな時期が数ヶ月と過ぎると、「もう死にたい。」「もう音楽なんてやりたくない。」と、ベッドから数ヶ月出てこないような時が続く。「もう何も出来ないよ。ねぇ俺はどうしたらいい??ねぇ。」朝から晩まで弱々しい声で甘えてくるこの質問は私にまとわりついた。癇癪の時間も酷かった。それは完全に子供のそれ。だけど、数分も経つとケロッとしてるか、もしくは急に悲観的になって「どこにも行かないで」と私の腕を離さない。目は完全に怯えていて、全力で私に甘えた。彼の行動パターンを私は大体に熟知してた。こういう性格なんだって思って上手にやりくりしながら、奇妙な現実を誰にも公言する事なく私達の8年間は過ぎていった。彼の秘密を話す事は彼を傷つける事にもなるし、私は彼から離れなきゃいけなくなるんだろうという事もどこかでうっすらと気づいてたんだと思う。だから隠した。

今日は朝から辛い。だんだんと頭痛が始まってくる。私のトラウマはそんなに簡単には終わらしてくれない。駅を歩いてると、くらっとした。頭が破裂しそう。過度なストレスが溜まると、固まる。目の前は忙しなく動いているのに、私は石みたいに、ぽつんとその場所に停止してしまう。あれが始まると私は何も出来なくなる。

早く帰宅して横になる。苦しい。やらなきゃいけない事がたっぷりあるのに。兄の話していた彼が私の中でループする。人を憎みたくない。変わり果てた彼でも嫌いにはなれない。ただ、全身で嫌がってる。名前でさえ耳が拒否してる。ただただ、怖い。

少し横になってから、デスクに座った。
さぁ、始めよう。少しずつでいい、前に進もう。

目玉焼きとアボガドのトースト

朝食 04.11,2020

朝一番で姉から電話。
後、数年はかかると、先の見えなかった裁判が急に終わったと連絡があった。とにかく今は呆然としてる、って。嬉しくて涙が溢れて、わんわん泣いた。

「もう、これ以上苦しまないでいい。あなたをこれ以上私達は苦しめたくない。」裁判官が言った言葉に姉は号泣したそう。2年半、苦しんできた彼女を法が救った。

すごく嬉しい。未来が明るく見えた。

紫陽花

Journal 02.11,2020

11月2日、私の誕生日。
今日は時効の日。何ヶ月も前からずっと決めてた。今日という日がきたら、時効にしようって。私が飲み込んでしまった全ては、私の血や肉となってしまうのだろうけれど、もう知らない。トラウマが私を襲い続ける毎日を毎時間を隣に置いたままで、今を生きよう。今を生きなきゃ。

誕生日の前日に警察に被害届けを出しに行った。9月に出すようにと人に言われてたけれど行けなかった。今日の小さな勇気を捨てたら、あっという間に来年の今日になる、その日に後悔する私が見える。私を守るのは私しかいない。だけど、本当にこれが正しい決断だったのかわからない。もう全てがとにかく怖い。何ひとつ整理も出来なければ、答えも出ない。ただ、これ以上に傷つきたく無い。

震える口から出てくる言葉が変だった。女性の警察官に何度も強く言われた。「あなたのことを聞いてるから、あなたの話をして下さい。」私は私じゃなくて、彼だとか、誰かがとかばかりで、上手に話せなくて、時間をかけてゆっくりと話した。過剰に話さない。大丈夫です。とも言わない。他人事みたいに私が見た出来事を淡々と話した。

「それって、おかしいよ。DV受けてる人みたいだよ?」沢山の人に言われたんだけど、全く何を言ってるのか聞こえてこなかった。「実際には叩かれない事だって沢山あって、叩くふりをよくするんだよ。だから暴力じゃないよ。まるで酔拳なんだよ。」っておチャラけて返した。彼は私を傷つけたいわけじゃない。怒りを上手に爆発出来いみたいなんだよねって。だから殴ろうとした拳は私の顔の直前でピタっと止まる。親友みたいに仲良くしてた子もその話に同意してくれてたから、私の意見は正しいと信じてた。彼女の夫も病気持ち。「本人達はね、辛いんだよ。」って彼女は言ってた。私達よりもずっと辛いんだよって。

後になって知ったけれど、病院の先生と話してて、そうなんだって呆然としちゃったけど、拳を目の前で止めるのも、大声で喚いたり、壁や机を叩きわるような音を出すのも、暴力の1つで、それを世界ではモラスハラスメントって言うんだそう。本当に殴ったり、蹴ったり、首を絞めてくるのはドメスティックバイオレンス。どちらの事もよく知らなかった。だから、うちはモラハラとDVのセットみたい。

良い悪いじゃない。許す許さないじゃない。
今日で時効。どこかで決めたかった。思考ばっかりが回って回って、辛いしもう何が何だかわからないから。時効にしたい。

夜は友人と下北沢で食事をした。
外はずっと雨。全てが流れて無くなってくれたらいいのに。

ラザニア

Journal 01.11,2020

不安で押しつぶされそうな夜ばっかり。
ひとりの東京は本当に寂しい。誰かと一緒にいたいけど、誰でもいいわけじゃない。料理だけはちゃんとやろう。今夜はラザニア。こないだ、姉と電話でママの料理何食べたいシリーズで盛り上がった。「冬といえば、ラザニアだよねー」って。あれから無性にラザニアが食べたかった。

哀しい。心の病気のやつじゃなくって、癒えない心が哀しいって言ってるだけ。悲しんでも仕方ないのに止んでくれない。涙が溢れそうな予感がして、作ったラザニアをオーブンに放り込んだ。グツグツとミートソースが動いてる。いい色。私のミートソースはちょっと甘め。後でお腹が重くなるからチーズは少なめ。表面に焼き色をしっかりつける。熱々を一気に食べたら、少しだけ元気になったかな。

明日は誕生日。いい日になりますように。

ラザニア
ラザニア用のパスタ
ミートソース (玉ねぎ、豚ひき肉、にんにく、セロリ、トマトケチャップ、ソース、テン菜糖、コンソメ、トマト缶)
ピザ用チーズ