9月8日

Journal 08.9,2022

朝に少し吐き気がして、昼になれば治る。そんな数日が続いてる。今朝も朝食はあまり食べられなかった。朝から雨の予報だけど、東京に来れば来るほどに空が明るくなっていった。なんだか、今日はいい日になりそう。今日の編集は成田さん。映像は大場さん。大好きな二人と、ライターは柿本さんとういう女性だった。柿本さんの事は事前に成田さんからとても素敵な年上の女性の方ですと聞いていたけど、あっという間に好きになった。話し方も仕事の進め方も、とても心地がいい大人の女性。

「読者さんは、これ、出来ますか?」料理家のワタルさんが料理する手を止めて言った。ワタルさんがそう言う度に嬉しくなった。少し前のレシピ撮影の現場で配合がおかしい料理があった。そこそこ大きなプロジェクトだったから、とにかく現場はかつかつ。料理家も編集者も望んでしたわけじゃない事はわかってるけど、撮影は中断されなかった。レタッチでどうにかごまかされる料理、この料理は誰に届くんだろうか。あの日の事を思い出した。とても虚しかった日のこと。

ワタルさんの質問に対して丁寧に答えるライターの柿本さんや共に意見を重ねる編集の成田さん。側にいる大場さんも映像を撮りながら輪の中で話してる。平和や安全と同じで色々は当たり前なようで当たり前じゃない。小さくて見過ごしてしまいそうな優しさを、皆で拾い上げていくみたいだった。そして、それは綺麗に前へ前へと有機的に回転していくように見えた。それぞれがそれぞれの役割を全うしていくみたいに。撮影を始めて数時間で今日の現場がとても好きになって、当たり前の大切な事をきちんと伝えようとするワタルさんの料理をしっかりと私も撮りたいと思った。そして沢山の人に広まってほしい。この料理を作った人もそれを食べた人にも。

「自分の所に来た野菜がどう作られてるのか知りたかったんです。それを知れば知るほどに農家さんがどんなに大変な思いをして作っているのか。草むしりを手伝うだけでも色々な事を考えさせられるんですよ。」ワタルさんの素材への知識と圧倒的な愛情の深さ。撮影中の読者へのこともそうだけど、全て同じ。いつだって私達はひとりじゃない。料理を届ける相手もいれば、料理を提供する為に素材を作ってくれる生産者もいる。沢山の人の中に料理人としての自分が存在している事。日本各地、様々な場所を訪ねて、実際に畑に出て、農家さんの仕事を手伝う。そういう事を繰り返していくうちに自分の料理がようやく見えてきたとも言ってた。キッチンで立ってるだけじゃ見えない。きっとそんな感じだったのかな。少しわかる気がした。ベランダでハーブを取ってきては絵に書いたような料理が出来上がっていく。なんて綺麗なんだろう。シャッターを切りながら、皆の歓声を何度も聞いた。作られたばかりのとても美しい料理。そして、それは食べればなくなり、胃袋を満たし全身をじんわりと温めてゆく。やっぱり料理って楽しい。本当に最高なこと。

挨拶を交わすのを忘れちゃうくらい軽快に話し始めるカナちゃん。彼女も若きエース、料理家。今日の被写体のもうひとり。事前に頂いてた今日の献立を見る限り、大体、こんな感じかなと想像が出来てたけど、その中身は初体験のものばかり。料理が好きだけど、料理ってやっぱり楽しい。美味しいのもっともっと根源。生きた食材を自分の手で調理する時のわくわくした気持ちや、それがどんどん料理として一つの形になっていく時の胸の高まりだとか、側で見ていて色々な感情が沸々と湧き上がるようだった。それに、彼女がお金を稼ぐことよりも、何処まで生活水準を下げて自分の好きなことが出来るかという事に挑戦した時期があるという話も面白かった。それは貧しくなることを意味してるわけじゃなくて、美味しいものが食べられなくなることでもなくて、とても楽しかったと話していた。郊外に引っ越した理由もその一つだとか。美味しいごはんとワイン、そして仲間がいればお金がなくても楽しめるし、自分が望むものをきちんと得れたのだそう。笑顔で話すカナちゃん。ワタルさんよりもさらに若い。

一日があっという間に終わり、十分過ぎるほどに今日が満たされているのに、成田さんとも全然話していないし、大場さんや、柿本さんとも色々話したかったし、若きエースの二人とも話したい。まだ食べたい。美味しい食後の別腹のデザートみたいに、あの場所でずっと満たされていたかった。

朝食

朝食 07.9,2022

昨日撮影で貰ったおにぎりを朝ご飯に蒸し器で炊いた。ダイニングテーブルには数日前にペイントした名刺が乾かしてあるからここ数日は和室のちゃぶ台で食事をしてる。ちゃぶ台でおにぎり。なんだか特別に美味しい気がして、何度も目を見合わせて美味しいねと言った。私の体調の悪さが少し落ち着いてるからか、今日は平穏。

9月4日

Journal 04.9,2022

今日は昼からしみるさんといまむが遊びに来てくれた。なんだか世田谷の時みたいで懐かしい。みんなで集まって、食卓を囲んだり、お喋りしたり、楽しかったな。いつしかいまむは彼女と別れて、しみるさんは結婚して、もうすぐ子供が産まれる。埼玉の暮らしで失ったものと言えば、友人達との時間だけど、みんなにそれぞれの時間が流れてもまたこうして他愛も無いお喋りが出来るだけで幸せな気もした。

いまむは結婚のお祝いにとバーミュキュラのフライパンをくれた。私と周ちゃんからは、誕生日プレゼントに先日の那須出張で見つけた周ちゃん曰く超レアらしいお面をあげた。那須で見つけた時に、Googleで検索してもその実態が明確にわからない事に「やっぱりGoogleには皆が知ってる事しかないよね。」と言い、学芸員としての血が騒いだのか子供みたいに興奮していた周ちゃん。お面はニンマリととした顔で笑っていて、なんだかいい顔だった。それは、春の個展が終わってから元気が出ないと嘆いていたいまむにぴったりな気がしたし、超レアなら尚更、周ちゃんも酷く興奮しているし、広い民芸店の一角で見つけた事も、なんだか宝探しみたいで良かった。しみるさんには犬の張り子を先日の御礼と、安産を願って渡した。犬には昔から安産祈願や家庭円満の意味があるらしい。

それから、4人で食卓に座って私の新しい名刺のペインティングをした。前回の名刺のテーマは地味。誰にも気づかれないような、誰だかわからなくなってしまような名刺。さらっとした名刺にして欲しいとお願いして作って貰った。フォントはAesopのロゴデザインでも使われているもの。色は何色かわからない暖色にしてもらった。あの時は離婚して直ぐの頃で、元夫の名字をもう使いたくないと改名に迫られて、友人達の公募により結局一番シンプルだったyoshimiに決めた。好み的に言えば平仮名、そして明朝が良かったけれど、少しでも地味にしたかったから、英語の方にした。とにかく1ミリだって傷つきたくなかった頃のこと。フリーランスで働いているのに、どうか、私の事を構わないで下さい。そんな想いが込められていた。今となっては、過去の私らしい名刺。

新しい名刺は、東京の住所の記載を抜いたものを作らなければならなかった理由があって作ったけど、最近の色々も手伝って、もっと私らしい感じの名刺にしようと思った。明るくて楽しい感じの。少し前の苦い仕事の経験を考えても、ああいう写真は出来れば撮りたくない。誰かみたいになる必要もないし、有名とか偉くならなくてもいい。髪の毛を派手な色にしたり、フォトグラファーですからみたいな感じも、もう見るのだって疲れた。きっとそういうのが大事な時代があったんだと思う。だけど、もう変わってきてるのだから、東京を抜け出したように、さっさとドロップアウトしようと思った。

郊外の田舎暮らしを始めて、驚く事ばかりだったけれど、なにより胸に響いたのは野菜のこと。私が今まで食べていたのは、一体なんだったんだろう?採れたての野菜は同じ物とは思えないくらいに美味しかったし、全部が100円。東京で買っていた野菜と殆ど値段は変わらないのに味は格別に違う。世田谷で時々買っていた有機野菜はカレーも作れないような量で千円くらい。そして、本当に美味しいかどうかはよくわからなかった。ただ、安全だよっていう言葉だけを信じて買っていたように思う。地産地消やフードマイレージ。今までだって出来るだけそうしようと心がけていたけど、ようやくその意味がわかった。だって、美味しくて、楽しい。日に日に赤くなるトマトも、早朝に梃子の散歩に出かけて畑仕事をしてるおじちゃんと挨拶を交わすのも楽しい。畑を覗いては次にやってくる野菜を待ち遠しく思うのも楽しい。地産地消でもフードマイレージでも、試みっていうのは、自分にも還元されることを意味していたんだなって。誰かの為、何かの為にやることは素晴らしいことだけれど、その支点には自分がいないと楽しくない。だって、私が生きている世界なのだから。

「食卓みたいな感じが良くて。」私の意図を汲んでデザインしてくれたのは今回もしみるさん。表面は箔押しで色なしで名前を入れて貰った。庭の茄子や近所で採れた玉ねぎ、それからスーパーで買ったビーツなどでベジタブルダイを作って、箔押し部分にペイント。ペイントで名前が表現できるようになってる。ペインティングも食卓を囲むようにわいわいとやりたかったから、しみるさん、いまむ、周ちゃんの四人で描いた。それぞれが好きなように自由に。いまむは「俺は描かないよ。」と言ってたけど、みんなが楽しんで描いている様子を見てやり始めた。「楽しいでしょ。」と聞くと、「だって、よしみちゃんに失敗したら怒られると思ったんだもん。」と言い、何枚も何枚も描いていた。確かに私はいまむに直ぐに怒るけれど、絵くらいで怒るだろうか。いや、怒るかもしれない。いまむは絵描きだからか、なんだかすごく情緒的な感じのものを描いてて、これは人に渡してもよいものかと思う程だったけど、まぁいいかとなった。

みんなで楽しみたい。誰か一人が、誰かが失敗して、誰かだけが。そういうのは好きじゃないし、やりたくない。食卓と同じ。楽しくお喋りしながら、お腹を一緒に満たそう。そういう仕事がしたいなと思う。昼からしくしくとお腹が痛んだけど、いい日だった。やっぱり友達は大切だし、彼らとは何だかんだと10年くらい仲良くやってる。いつもありがとう。周ちゃんもありがとう。

カレー

カレー 01.9,2022

今日も朝から体調がいい。午後、書道家に転身した山田さんが遊びに来た。3週間後にパリで展示があるらしく、パリのまゆみちゃんの事をLINEのビデオ通話で紹介した。「ハロ〜ちゃみちゃん。」「ちゃみ〜!」半年とか1年ぶりのまゆみちゃんはすっかりパリの女。小花柄の黒いワンピースに眉毛よりずっと短い前髪。ビデオに映る白い壁の部屋はヨーロッパそのもので、いつもの様に子供っぽく笑うまゆみちゃんじゃないし、簡単に結いた髪もその首元もやっぱりパリ。文通で色々は聞いてるけど、私が知っているよりもずっと素敵な恋をしてるんだろう。山田さん交えて色々な話をした。それから、私達の愛称が互いにちゃみだって事も後に付け加えて説明した。ややこしい話だけど、愛称でもあり、lovelyとかHi!!みたいな挨拶にも使う。何かに由来してる訳でもないし、全く謎めいた言葉だけど、ここ何年も二人とも気に入っているし、やめる気もない。「へぇ。面白いですねぇ。」真面目な顔をして山田さんが言った。

山田さんは一緒に仕事をしていた時とは別人みたい。昔、大学生バイトでIDEEで働いてた時に10くらい年が離れた白井ちゃんの事を思い出した。いつも声が小さくて、「ねぇ、よしみ。どうしよう。もう嫌だ〜。」って仕事中に半べそかいてたのに、バイトをやめて数カ月後にパリで会った時はまるで別人だった。「白井ちゃん、なんだか人が変わったみたいだね!」「私ね、なんでだか、パリにいると生き生きするの。」パリのあちこちのチーズ屋さんに連れていってくれて、流暢に楽しそうに話すフランス語。見てるこっちまでわくわくした。そして、二十歳そこそこの私にチーズとバターというのはただの添え物ではなくて、メインディッシュになることも教えてくれた。

パリのまゆみちゃんとバイバイして、夕立が終わり夜になった所で山田さんも帰宅。時間は18時過ぎ。急いで夕飯の支度を始めた。山田さんのお母さんが育てたとゆうジャガイモを貰ったので昼に火にかけておいたチキンスープに入れてカレーを作って、ゴーヤのサラダ、茹でておいたビーツをスライスしてビネガーをかけた。

「今日ね、山田さんってゆうお姉さんが来たんだけど、書道家に転身してさ。」「へぇ。下の名前は?」「山田しおりさん。」「これ?」携帯でささっと検索して画面を見せてくれた。「素敵だねぇ。」周ちゃんは学芸員だからか、山田さんの作品にとても関心を持ってるようだった。「家に一枚欲しいね。」「そうだね。すごくいいね。」「ヨーロッパでうける理由がわかるよね。」「うん。炭の濃淡がいい。」山田さんはこのままヨーロッパでの活動が盛んになって、白井ちゃんや、まゆみちゃんみたいにパリに行ってしまう気がした。そしたら、まゆみちゃんに会いに行くときに山田さんにも会って、三人でお洒落なレストランでワインでも飲みたいなと思った。

朝カレー

カレー 21.8,2022

「昨晩、夜中に “楽しいね〜。” って寝言を言いながら笑っていたよ。」朝に周ちゃんに聞いた。よっぽど合宿が楽しかったのか。だけど、朝食にカレーを食べて二度寝をした時は悪夢で目を覚ました。やっぱりと思ってしばらく扇風機の前でぼーっと風に当たりながら考えた。私達の家はマンションの一室になっていて、今と同じ田舎暮らし。上の階に先輩が住んでいて、ある日、先輩が勝手に大家さんと一緒に私達の部屋の一室をリノベーションして住んでいた。その先輩は若い時によく遊びに誘ってくれて、とても良くしてくれる方で、歳が離れていた大人だったし、いつでも笑顔で応えていたように思う。嫌なことなんて殆ど無かったけど、一度だけBFと別れた時にメールで怒られた事をきっかけに距離を置くようになった。正確には無視されるようになったのかもしれない。暑い夏の日だった。太陽がいつものようにギラギラと夏を始めた朝に長文のメールが何度も携帯を鳴らして、胸がドキドキして怖くてよくわからなかったけど謝罪した。先輩は勘違いしているようだったけど、弁明しようとは思わなかった。私達ふたりの事だから。夢の中の私が、”ああ、もう嫌だ!” と、どうにも出来ない夢の中の現実にぎゅうっと締め付けられたところで目が覚めた。

下らない夢だった。それに、大して怖い夢でもない。だけど、そういう気持ちを思い出した。大きな圧力に押し付けられそうになる感じ。嫌だという気持ちはしっかりとあるのに、それを吐き出せないとき。私は違うと思っているし、それは良くないとわかってるのに、私が私を押さえつける。すごく嫌なのに。絶対に嫌なのに。これはきっと私の心の癖なんだと思う。完全に離婚のトラウマからやってきてる。

少しして起きた周ちゃんに、さっきの夢の話しだとか、昨日話した山若くんとの事を聞いて貰った。「俺は、よしみが作っていたの、凄く良かったと思ったよ。」私の作ったものが変更になったことを気にしてたんだろうか。山若くんは編集長だから意図に従わないと。私の想いに気づいたんだろうか。「今の面白い話しだね。」周ちゃんは嬉しい時に私の頭を撫でる。あまり綺麗じゃないと思う話を、私は別に綺麗ばかりじゃなくていいやと思って話しをすると、喜んでくれる。「行動パターンだよね?」「まぁ、その一つだよね。」「いいとか悪いとかじゃなくて。心理学勉強してるっていうのもあると思うんだけど、なんだか客観的に見ちゃって。」「うん。そうだね。」「嫌な奴だよね。私。」「いや、すごく面白い話しだったよ。悪い話しはしてないよ。話してくれて有難う。」

周ちゃんが出かけてからも、しばらくずっと胸がつかえていた。外の空気が吸いたくて駅前の本屋に欲しかった心理学の本を買いに出かけた。ついでに薬局に行ったり、スーパーで魚を買ったり。だけど、頭はずっと夢や山若くんとの話を考え続けた。このわだかまりは一体何なんだろう。山若くんのアドバイス。それが私の景色と異なってる事をありありと感じてる。けど、それは悪いことじゃない。それに、私が見たくない景色の話が面白くなかったとしても、それが凄いみたいに話されても、それをやってみたらとか、彼女や有名な写真家まで例えにだして話されても嫌なものは嫌だ。ただ、山若くんが悪いって事とは全然違う。

帰宅してからフミエさんにメールを入れた。”フミエさん。今回の作品って皆んなのものだけど、フミエさんらしさが出ているかどうかって、考えてもいいと思っています。編集意図に沿ってもいいし、沿わなくてもいいし。私自身、考えるべきだと思ったので、気になったのでお伝えしました。もし、必要があれば、私の写真を使って下さい。” “よしみちゃん。ありがとう。私も実は今日考えてたの。”

自分らしさってなんだろうと考えたり、誰かに合わせなきゃと自分を隠してみたり、あっちに行ったりこっちにきたりと忙しく考えて嫌になるときがある。別に好きでこんな風に考えてるわけじゃないのに、こんな事を感じてしまう自分が悪いような気さえしてくる。私は写真を撮るのだから、ああでなきゃ。こうでなきゃ。みたいな余計な事も勝手に色々を手伝ってきたりして。だけど、違う気がした。大事なことは、誰が、自分がじゃなくて、みんなで一緒に対話できるような場所があるかどうか。食卓と一緒。目の前にあるご馳走を分け合って食べる。勝手に檸檬をかけたり、好きだからと独り占めしたり、食べ方が間違ってると指摘したり、そんな事をしたら誰かは気持ちがいいかもしれないけど、誰かは楽しくなくなる。美味しいねって、それぞれがそれぞれの感覚で心やお腹を満たせれば、一緒に幸せになれる。

ここ最近、もう日記はやめようかなって思ってたけど、やっぱり書く事にした。私が嫌なことを考えてしまっても、今朝みたいに周ちゃんがいいよって言ってくれて嬉しかったし、山若くんが、夕飯を撮っていたら「イートニューミーやっとる!」と叫んでて、なんだか嬉しかった。合宿、楽しかった。色々な事を考えた。

西瓜

朝食 20.8,2022

昨日の夜が遅かったからすっかり寝坊。7時くらいにみんなで裏山に散歩へ行った。もうすぐ夏も終わりなのかな。山の中は少しひんやりしてた。帰宅して山若くんは温泉に行き、フミエさんと周ちゃんと私は山若くんが買ってきてくれた西瓜を食べた。周ちゃんは私が一つを食べ終わる前に3つくらい食べていたけど西瓜が好きだってことを初めて知った。それから、フミエさんは周ちゃんに聞きたかったという日本の豆文化について教えて貰い、私は書斎で写真の整理をした。

「お腹空いたな。何か食べる?ご飯かパンかひやむぎか。」帰ってきた山若くんに聞くと「ご飯!オランダ煮できる?」とのこと。昨晩も作ったオランダ煮。山若くんがよくお婆ちゃんに作って貰ったという石川県の郷土料理。昨晩に初めて作ったけど、揚げ浸しと似ている甘辛い味付け。こないだ那須で買ってきた米を研ぎ水に浸して、夕飯の残りのスペアリブと冬瓜の塩煮にゴボウや人参を入れて味噌汁にして、茄子のオランダ煮を今日は甘めに作って、あとは適当に梅干しとからっきょうとかを準備した。フミエさんと周ちゃんはずっと豆の話しをしてる。

「山若くん、ちょっと聞きたいんだけど。写真のレイアウト迷ってて。写真を組むのはすごく好きなんだけど、組んじゃうんだよね。言ってる意味わかる?」「え?どういうこと?」「うーんと、組で写真をコントロールしちゃうっていうか。」「ああ、写真の意図を作ったらいいんじゃない?」「うーん。そうなんだけどね。」「あのさ、例えばなんだけど、あれ、なんで俺ここにいるんだろう?って思うような事って無い?」「どういう意味?」「例えば、清澄白河に展示を見に行ったんだけど、そこで仲良くなった人がいて、うちでも展示やってるっていうからついて言ったら、なんかすごい狭い路地みたいな所にある部屋に連れていかれて、ドアをあけたら、明らかに怪しそうな入れ墨いっぱいの男の人がいてマリファナ吸いながら皆んなで作品を見るっていう場所で。」「え?それは、怖いねぇ。それってさ、若い時にしてたバックパッカーでの旅とかで遭遇しそうな状況。仲良くなった外人の家の実家に遊びに行ってそのままご飯をご馳走になるみたいなのでしょ。」「昔じゃなくて最近は無いの?」「えー?うーん。あるかなぁ。周ちゃんとの出会いがそうかな。」「えー。違うよ。それは面白くないよ。じゃあさ、例えば、ナナちゃんで言うと、こないだ仕事の人とご飯たべて、そのまま事務所に行く予定だったのだけど、たまたま出会ったタイ人と仲良くなってお家に言って、小さなマンションの一室にものすごい数のタイ人が住んでて、もの凄い辛いカレーを食べて帰ってきたんだけど、そういう感じ!」「うんうん。言ってることはわかるけど。最近はあるかなぁ。」それから、今やってるアレックスソスの展示の話し始めた。ソスの展示の中で1時間弱の映像作品があって、アメリカを横断しながら出会った人にちいて行き写真を撮るというドキュメンタリーなのだそうだけど、すごくいいよって。そういう事なのだそう。

山若くんはきっと、私に意図しないような出会いをレイアウトを組む時の参考にしてとアドバイスしたかったのだろうと直ぐに気づいたけど、期待に応えられるような返答が出来なかった。それに、それは一つの行動パターンに過ぎないよね、なんて事も言えなかった。山若くんはヒッピーや反社会的、社会不適合っていうキーワードに弱い。そこに強い憧れがあるんだろうなというのがよくわかる。その彼女のナナちゃんはいつも山若くんと一緒にいる所を見かけるし、行動パターンはおのずと似てくるだろう。だけど、。私はもうそういう世界は見たくない。前に元夫の友人が夫の事をアンダーグラウンドで面白いと言ってたけど、現実はコーラみたいに喉だけを刺激して去ってくれるようなものじゃない。身体が切り裂けるような痛みだったり、ゴールのない洞窟みたいな。もう、二度と見たくないし、二度と知りたくない。ぜんぜん面白くないしカッコよくもない。あそこは、ただの地獄。

一生懸命に説明してくれるのは嬉しかったけど、曖昧で凄いねとか、そうだねって優しそうな言葉でしか返せなかった。元夫と一緒だった時に、結局、悪そうな事をしたり、奇抜なことを好む人こそ程、地獄にはおちないよねって何度も意地悪く思った。実際に堕ちる人は勝手に堕ちていく。駄目だと言ってもあっという間に堕ちる。

目の前に起きる事がまるで運命かのように見えるような事もある。ただ雨が降っただけなのに、そこに虹がかかっただけなのに、この出会いは運命だとか導かれたとか。だけど、大体、殆どが自分の意思や目的でここにいるし、何処かへ行く。なんとなくでも、たまたまでも、選んでる。山若くんが言ったような話は映画みたいで面白そうな匂いがぷんぷんするけど、お父さんとお母さんがある日突然に街角で出会って稲妻が走ったように恋に落ちなくても、排卵日にセックスして精子が卵子に辿り着けば赤ちゃんが出来るのが現実であって、お互いが望んで好んで求めて出来た一つの結果だ。偶然や必然的なものが存在しないとは思わないけど、その可能性を膨らませているのは神様でもアンダーグラウンドな世界でもなくて自分自身なんじゃないかなと思う。

夕飯

夕飯 19.8,2022

今日からシェフインレジデンスの合宿。昼過ぎにフミエさんと、山若くんが家にやってきた。

五香粉の煮玉子と黒酢かけ麺

エスニック 12.8,2022

夕方に奥渋にあるシードル屋さんで編集の花沢さんと瞳ちゃんと待ち合わせ。台風が近づいているらしく、変な天気。2時間くらいお喋りしてから、RiCEのエシカルフードイベントのレセプションへ向かった。大きなイベントに行くのは久しぶり。お酒を一杯頂いてから、写真家の吉祥丸さんのVEGANラーメンを食べた。「これ、僕も持ってますよ。」「え?aria?」首からぶら下げていたariaのカメラを指差して隣にいた男の子が言った。「ここ、僕のラーメン屋さん。」「あ、やっぱり。私、吉祥丸さんのこと撮ったことあるよ。」「へー。どこで?」「ariaいいよね。」「うん。仕事でも使ってる。」「え?仕事で今もフィルム撮ってるの?」「70%くらいフィルム。ウエダに出してる。」「すごいね。」「大きい広告とかもフィルムで撮ってる。」「撮れるんだ。」「スキャニングをしてもらって。」話してる途中で友人に声をかけられて話は終わった。もっと話したかったな。ariaを使ってる男の人は、たったの一人しか知らない。それに、男の人は使わないカメラ。だから、ツァイスのレンズが好きかariaが好きな人。ariaは女みたいなカメラだから。どうしてariaなのか聞きたかったな。

「よしみさん。」「えー!ゆうちゃん?!嬉しいよ。」久しぶりのゆうちゃんと樋口さん。あまりに嬉しくてこのまま飲みに行ってしまいたいくらいだった。「下北に引っ越しましたよ。」「え!よく中目黒脱出できたね。」聞きたい事が山程あるし、話したいこともある。結婚と引っ越しの事を伝えると、インスタを見たよと言ってた。それから、樋口さんは来年にインドに一年スパイスの調査の為にあちこちに移り住みながら暮らすそうで、私も行きたいとお願いした。来月にゆうちゃん家でごはんを食べようと約束して別れた。ふたりと話していると清々しくなる。女を謳歌しているし、女で有ることについて、ふたりから一度だって愚痴を聞いた事がないし、恋をお休みしてるとか、男がいないなんて話も聞かない。昔、樋口さんに中目黒の立体交差点で50代のインド人シェフに雨の中でキスをされた話を聞いたけど、あの話は最高だった。最近はもう強く生きたいとは願わなくなったけど、彼女たちみたいに凛々しく生きたい。すごく何だか元気がでたし、東京の夜みたいで嬉しかった。

今日は花沢さんに結婚祝いに冷やして飲むと美味しいといういう赤ワインを貰った。グルメな花沢さんがくれるワイン。どんな味なんだろう。次は花沢さん家の子供も一緒にご飯へ行こうと約束した。子供がもりもり食べるところが見たい。

出し卵のサンドウィッチ

朝食 11.8,2022

今日から周ちゃんは久しぶりにフィールドワークに出かけた。行ってらっしゃいと、笑顔で送ったけど、本当は結構寂しい。だけど、すごくいい時間だと信じてる。毎週デートするよりも、断然、時々デートの方がいい。私が自分の時間を大切にしたいように、周ちゃんの時間も大切にしてほしいから。私達はいつでも同等であって、いつかサヨナラする日が来ても、それぞれがしっかりと自分のままでいてほしい。もし、二人で一つの形を成してしまったら、足らない何かに苦しまなきゃいけなくなる。今でもいつかでも互いに幸せでありたい。

周ちゃんが朝に出かけてから夕方までずっと昨年に訪ねた氷見で撮ったシェフインレジデンスの作品作りを進めた。フィルムで撮影したデーターの現像作業と日記のリライト。書いていない数日については記憶で書き進めた。夜は残り物を食べて、ビールとポテチで晩酌して、何事もなかったように周ちゃんに電話しておやすみを言ってから布団に入った。

最近、自由になりたいと強く望んでる。また金髪にしようかなとか、なんかそれは違くない?とか。ああなりたい、あの人が羨ましいとか。けど、私はそれじゃないよねとか。そんな風にどこに行こうか迷ってるし、もう全部、何でもいいんじゃないか?とも思う。美味しいだけでいいとか、楽しいだけでいいとか。人が好きだなと想ったり、あの人はやっぱり苦手とふさいでみたり。別にそんなにもう無理しなくてもいいし、結局のところすべて私が決めてる。いいも悪いも。そうやって一周回っては、別にどうでもいいじゃんとなる。そしてまた自由になりたいと望んでる。

ユーチューブで田中みな実さんが、欠点を見つけたらチャンス!だと言った言葉に流石だなぁと感心した。しばらく欠点について考えたけど、欠点って?とも思った。そんな事を言ったら私なんて欠点だらけだし。けど、逆に言えば、きっとシチューみたいに色々が詰まってる。時々、焦げた玉ねぎが出てきても、それが飴色だと言えば、旨味なわけだし。けど、みんなそう。みんな個性的でみんな欠点を持ってる。昔、BFが私の事をスルメイカみたいな子だねと言ったけど、あまりに素晴らしい表現だったので今でもしっかりと覚えてる。理由は、噛めば噛むほどに味がでるのだそうで、それは私だけではなくて、人そのものに対する考察だ。人の欠点は味そのもの。甘いのに辛い?とか、酸っぱいのに柔らかいとか。その個性ひとつひとつに惚れていく。大人になればなるほどに惚れっぽくなるのは舌が肥えてきている証拠だ。世界には愛おしい人が沢山いる。

梃子と私だけのベッドは最高だった。周ちゃん、いつ帰って来るんだろう。そして、私はどうして自由になりたいんだろう。近い感覚と言えば、バックパッカーしてた時の気持ちと似てる。誰も私を知らない場所で自由に旅したい感じ。厭だな、青臭い。

トマトスパゲッティー

パスタ 07.8,2022

今日は朝から家族会議。夏休みの色々を話した。月末に行く予定だった西表島。探しても探しても高いチケットしか残ってない。それなら秋に予定していた東北へ行こうとなった。そして、沖縄は秋に。というのも、秋にミルク様という神様の秘祭を離島で行うから。写真家の石川直樹さんが撮っている日本の祭り。同じく、フランス人の写真家が撮っている祭りの衣装の写真集がある。周ちゃんが働くミュージアムにも置いてある写真集。日本の祭や、沖縄独特な秘祭文化の話で盛り上がった。「クロマタは写真に撮ったら殺されるんだよ。」「え?」「昔に暴行事件になったほどで、今でも写真は大昔に誰かが隠れて撮ったものが少しあるだけ。」ネットで調べるとそれはモノクロの写真でまったく何が何だかわからない神様った。「面白いね。周ちゃんは見たことあるの?」「パーントゥはあるよ。泥の神様で、観光客でも見れるよ。泥をつけられちゃうんだけど。」「えー!これ?すごー。」「これは見たことある?」「ミルク様は無いよ。」「見にいく?」「え?いいの?!」「いいよ。ぜんぜん大丈夫だよ。行こうよ。」ミルク様がやってくる日程はまだハッキリとはわからないらしいけど、秋にミルク様に会いに行くことなった。

東北旅行の安宿やレンタカーを手配。私はその土地の郷土料理だとか、地場野菜などの食材を見つけられたらいい。周ちゃんは何も言ってなかったけど、山岳文化とか、山の神様の場所に行きたいみたいだった。知り合いの山伏の方がドキュメンタリーの映像制作か何かでドイツに行っているらしくて、山伏の奥さんがやってるレストランに行こうと話してたけど、どうやら奥さんもいないみたい。山伏の奥さんで料理を作ってる女性。妄想だけでお腹一杯になってしまいそうなくらいに素敵で魅力的だ。次に行く機会があったら会いたい。

そして、数年前に東京から山形に帰郷したざおーにも会う。こないだ一緒に山形の仕事をしたばかりだけど、会うのは2年半ぶり。すごく嬉しい。一緒にワインを飲む約束をしてる。あと、山の中にある廃校となった小学校で野菜のレストランを開いてる女性の料理も食べに行こうと約束してる。すごく楽しみ。

桃のトースト

朝食 30.7,2022

今週はあっという間に終わった。今日は土曜日だけど周ちゃんは月一回の休日出勤。昼からミュージアムへ出かけて行った。今日はいつもよりもずっと優しくハグをして出かけて行った気がする。友人達にあげる豆板醤を瓶詰めして喜んで見せびらかしてたからだろうか。けど、途中の発酵で出た白カビを綺麗に取り除いてくれたのは周ちゃんだし、豆を綺麗に潰してくれたのも周ちゃんだ。だけど、確実に周ちゃんは豆板醤を愛でる私を愛でていた。ありがたいけど、特になにもしていないし、なんだかちょっとズルをしたような気分。

ここ数日のご機嫌は豆板醤がいい感じに作れたことだけじゃない。りりさんから突然入った “よしみさん、日曜日に群馬に行きませんか?” っていうメールもすごく嬉しかったし、まゆみちゃんがパリで新しい家が見つかったよという知らせが入ったことも、ADのしみるさんにお願いしてる新しい名刺がいい感じになりそうだったり、朝に成田さんと請求書のやりとりの片隅で密やかに、だけど心では大声で威勢よく互いに明るい未来の話をしたことも、そして新しく発刊された料理の雑誌がすごく素敵だった事だったり、ふみえさんを撮った映像がいい感じになりそうだとか、買ったばかりの川島小鳥さんの写真集が部屋に入る度に目が合うことも。すべてがしっくりとパズルがはまるみたいに私が喜ぶところにピタリとハマってる。重かった肩の荷を下ろしたら、すっかりとご機嫌だし世界はまた好きに戻った。

8月は楽しいことが沢山待ってる。新しい水着を下ろすのもそうだし、数年ぶりにりょうこちゃんに会えることも、いまむと約束してる花火も。あと、ふみえさんと編集の山若くんとうちで作品合宿をするのも楽しみだ。ああ、夏が好き。大好き。いよいよ来たよ、私の夏。遊びも仕事も思いっきりに楽しもう。

マンゴーと海老のサラダ

Journal 29.7,2022

出張中に母から送られてきた果物や野菜が冷蔵庫を占領してる。野菜室の奥に熟れてるマンゴーを見つけた。周ちゃん食べたら良かったのに。どうしよう。私はときどき、素晴らしいアイデアレシピを思いつくことがある。夕飯に作ったマンゴーと海老のサラダ。目をつぶって唸る周ちゃん。私もここはタイだと思った。あまりに美味しくって、ふたりともいつまでも上機嫌だった。

人生で一度しか行ったことがないけど、タイを数日放浪したことがある。覚えてないくらい、小さな街や、小さな島みたいなところに行った気がする。鍵の壊れた宿に泊って、適当にバスに乗って、適当に降りて、適当に船に乗った。一緒にいた友人のお陰だと思う。いい加減な若者だった私達のいい加減すぎる旅。友人は朝ごはんに野ざらしの街の食堂でレッドカレーを食べて辛すぎると怒ってたけど、トイレットペーパーのないタイ式のトイレについては何も言わなかった。ものすごく甘くてものすごく辛いタイのごはん。不思議なのだけど、それがどうにもこうにも合う。

マンゴーと海老のサラダ
よく熟れた甘いマンゴー
ボイルした海老
パクチー
干しエビのみじん切り
ナンプラー
トムヤムペースト
レモンを絞ったもの

トムヤムクンラーメン

エスニック 28.7,2022

朝1番で代官山蔦屋へ料理本を探しに行った。池尻に住んでた時は毎週のように通っていた場所。元夫の事を思い出したくなかったから、なるべく避けていたけど、急にもういいやと思った。ここは私が料理写真の勉強をしにくるところだ。ここにしか無い本が沢山あるし、ここで沢山の料理写真を学んだ大切なところ。独学ではじめた料理写真。私の先生は蔦屋書店だ。まだまだ勉強したいことが山程ある。トラウマなんて捨てちゃえ。

昼前に切り上げて電車で帰宅。少し遅めのランチにエダジュンさんのトムヤムクンラーメンを作った。エダさんは小動物みたいで本当に可愛い。だけど、実はすごく努力家だってところも好きだ。前に本を作りたいって話をしたら、「出版社に営業に行ってます?」ってエダさんが言った。待っても来ないよ。作りたいのなら自分でどんどん行かなきゃ。っていう風にも聞こえた。エダさんの言葉にちょっと恥ずかしくなったし、エダさんのことがやっぱり好きって思った言葉。またいつかエダさんのご飯が撮れたらいいな。

エダジュンさんのトムヤムクンラーメン/ youtubeのレシピにて
エダさんのレシピだと、ミニトマトは入ってなくて、桜海老のみじん切りが大さじ1入ってる。忘れてしまった。
素麺 1束
えび 3尾
鶏ももひき肉 100g
にんにく(みじん切り) 1片
もやし 1/2パック
パクチー 
ミニトマト
カットレモン
酒 大さじ2
トムヤムクンペースト 大さじ1
ナンプラー 小さじ1
ごま油 小さじ2

7月27日

Journal 27.7,2022

今朝も3時半に起きた。結局、ホテルから現場に向かっても、自宅から向かっても変わらない時間に目が覚める。ベッドでしばらく本を読んでると、部屋がどんどんオレンジ色で一杯になってゆく。最近気に入ってる青山のホテル。窓が大きくて、夜は東京の街を、朝は太陽を独り占め出来る。撮影が終わったのは夕方の18時過ぎ。ホテルに戻って機材を置いてから瞳ちゃん家に猫を見に行った。数ヶ月前に瞳ちゃんは念願の保護猫を飼うことに決めた。

何だか今日はすごく清々としてる。心に溜まっていたものが、吹っ切れたようにも思う。仕事の事で人間不信になった自分を、馬鹿じゃん、だとか、ズルく生きたらいいよ、とか、心にもないような言葉をぽいぽいとかけてみたりして。かと思えば、頑張ってる友人を思い出して何とか前へ進めと背中を押してみたり。ここ数日は、よく編集の成田さんの事を思い出した。仕事での愚痴を季節が変わるみたいに私に溢してゆく成田さん。彼の事を心から尊敬しているし、彼のそれは私に勇気さえ与えてくれる。

だけど、そう思えば思う程に、なんだコレって思いながらシャッターをきる事に心が苦しくなる。写真が好きで膨大な写真を、料理本や雑誌、写真集を数え切れないくらいに子供の頃から見てきたのに、そうして沢山を私なりに勉強してこの職についたのに、私よりもずっと写真を知らない人がとんちんかんな写真を、表現としておかしな写真をこれが写真だと言う。これは一体何を誰に語るの?私の心が苦しくなるのは私が撮りたいものを撮れないからじゃなくて、インド人はカレーを手で食べるけど、日本人はラーメンを手で食べないよ。「だって数字が伸びるから、だってクライアントがそう言ってるから。」そんな事を言われたって、火傷しちゃうよ。痛いよ。可愛そうだよ。愛がないじゃん。って、心がぎゅうっと小さく潰されそうになる。やっぱり思い出しちゃう。「よしみちゃん。それって愛があるんかな。」絵描きの健太郎さんとお仕事をする時に言われた言葉。ここに愛がないのに、どうやったら愛を届けられるんだろうか。健太郎さん、本当にそう。愛ってのは交換するものだよね。片一方だけが満足するものは愛じゃない。だから、やっぱり何度も成田さんを思い出した。だって、面白い本を作りたい。そういう過程で彼に出会ったから。それはただ、やみくもに仕事をするとか、頑張るってことも意味してない。

今日は仕事の事で、写真を撮ることで沢山を考えた。熱い夏の日。太陽の光で写真が撮れることが、とにかく嬉しかったし気持ちが良かった。仕事で出会う人は色々な人がいて、好きになる人もいれば、そう思えない人もいる。けど、きっとそれでいい。無理してみんなを好きになる必要なんてない。だから、精進して前へ進もうと思う。嫌なことがあったとしても、悲しんだとしても、傷ついたりしても、それは昨日までの事。写真が撮りたいのは明日の話。だから、まったくもって大丈夫。すっごく楽しみながら、すっごく頑張ろうと思う。

夜は久しぶりに広尾を歩いた。アシスタントの時によく通った場所。西麻布の交差点にクロマートというプロラボがあって、撮影が終わるとフィルムを出しに行った。11年前のこと。よく師匠と蕎麦を食べたし、よく師匠の車で通った道。ロケが多い撮影では、夏は死ぬほど熱くて、冬は死ぬほど寒かった。色々と大変なこともあったけど殆どもう覚えてないし、いい記憶ばかりが残ってる。そういえば、師匠はとても温厚な人だったけれど、写真のことで雑誌の編集者と言い合いになった事があると聞いたことがあった。やっぱり、写真のことでは譲らなくていいんだ。

7月22日

Journal 22.7,2022

2泊3日の出張。キックオフミーティングと土地のリサーチを兼ねて。周ちゃんと梃子、家族を連れての仕事旅行。結局、私は免許が予定通り取れなくて、周ちゃんが運転をしてくれた。なんだかすごく穏やかな3日間で、穏やかすぎて私は何かを勘違いしてしまいそうなくらいだった。そうして、私はまた一気に怖がりに戻った。ひとりの時は強くなれるのに、誰かがいると思うと気を抜いてしまうらしい。怖いことを怖いと声にだしたら怖くなるし、嫌なことを嫌だと言ったらもうしたくなくなる。周ちゃんは私のことを自立してると言うけど、全くだ。十分過ぎるくらいに周ちゃんに甘えているし、甘えてばかりいる私にもういい加減にしてよと思う。

打ち合わせに5分くらい遅れて会議室に入ると、丁度なっちゃんが自己紹介をしている時だった。2年ぶりのなっちゃん。最後に会ったときは私はきくちよしみという名前で、そういう人をやってた。だけど、なっちゃんはやっぱりなっちゃんで、大勢の前で話すなっちゃんはなっちゃんだった。ゆっくりと探るように声を出す話し方や、すらっとして背が高くて線が細い感じとか、柔らかそうだけど芯のある感じや、一気になっちゃんの輪郭がしっかりと見えてくるようだった。打ち合わせが終わり、なっちゃんはそのまま次の打ち合わせに入って、私は周ちゃんと近くの店でランチをしながら待って合流。それから、新しく出来たGood newsとか、タミゼに行った。「よしみちゃん〜。元気そうで良かったよ。」「なっちゃんのお陰だよ。あの時、私の周りには離婚した人がいなかったから。すごく勇気を貰ったんだよ。」周ちゃんとなっちゃんはアート関連の仕事で共通の色々があるみたいで話が盛り上がってた。それから、あの時はそんな話を聞かなかったけど、なっちゃんが東京と田舎の2拠点暮らしをしていたことや、超東京のど真ん中に住んでるのに、自然が無いと生きていけないとか、車が好きだから時々一人でドライブしてるとか、知らないなっちゃんの話を沢山聞いた。

「よしみとなっちゃんて中学の同級生だったみたいだね。昔からの友達みたいって思ったよ。」「え。違うよ。大人になってからだし、なっちゃんは友達の紹介で出会ってさ。そもそも、その友達も、しみるさんの同僚だし。だけど、なっちゃんって素敵だよね。所謂、東京の綺麗なお姉さんなのに、仕事も立派だし。なのにというか、あの独特な空気感。」「そうだね。バランス感が絶妙だよね。」「そう。色々な意味ですごくフラットなんだよね。」

新しい仕事のメンバーで偶然また再開したなっちゃん。次の打ち合わせの時は、車で温泉を巡ろうねって話をした。思い出の中にいたなっちゃんも好きだったけれど、ずっとずっとまたなっちゃんが好きになった。

山形のだし

朝食 20.7,2022

朝からふみえさんのアトリエで映像の撮影。久しぶりのふみえさん。なんだか心がほっとした。撮影の前にあんみつを食べながら色々と話したけれど、この一ヶ月色々とあって、少し心が忙しかったのだとか。不思議なもので、私もそうだった。私も、殆どを私の部屋で過ごしていたように思う。仕事のことがあってから、心が忙しくて中々作業が進まなかったり、外にもあまり行かなかった。丁度、一週間前あたり。免許の卒業証書の紛失あたりでドスンとまた落ちて、そこから急に這い上がってきた。

「私、今までの環境がきっと良すぎたんだと思います。思ってる以上に落ち込んじゃって、。なんか酷い時には、写真の仕事をやめようかなとまで考えたりしました。」簡単にではあるけど、仕事で起きたことや、友人のADが言ってくれた言葉、色々をざっと話した。「信頼してたのに、信頼が途切れたことが辛かったんです。」「うん。そうね。」「ショックで。けど、もう大丈夫だし、やめません。」ふみえさんは長かった髪をバッサリと切って夏らしくて可愛かった。「なんかね、星?的に今って色々が変わる時期らしいよ。」「そうなんですね。なんか、最近、私も何かで見たような。。」まぁいっか。そんな感じで話は終わった。同じような時期に別々の問題だけど、お互いに何かと戦ってた一ヶ月だったんだなって思うと、少しおかしかった。

それから、今日の朝食は山形のだしだった。和室のちゃぶ台にパソコンを広げて映像のチェックをしつつ、手元でプリントアウトした資料をペンでマーカーしつつ、急いでご飯を頬張ってると周ちゃんがダイニングテーブルからカメラをこちらに向けながら言った。「マルチタスクすごいね!」「だって、女だからね。」

トマトと豚肉の水餃子

エスニック 18.7,2022

東京はまた感染者が酷いらしい。朝は周ちゃんと庭の畑の掃除。おばけみたいに大きくなったパイナップルセージの苗をカットしたり、枯れてしまった胡瓜の土を耕したり、雑草をとったりした。遅い朝ごはんに周ちゃんが朝に作った山形のだしを食べて、私は作業に取り掛かり、周ちゃんは東京の展示をチェックしに自転車ででかけた。夜はトマトと豚肉の水餃子。あとは、朝に無人販売所で買ったツルムラサキのお浸し、白身魚の青ゆずセビーチェ、温麺とだし。長時間サイクリングを終えた周ちゃんは大体いつもアドレナリンがビシバシでテンションが高い。だけど、食事を終えるとパーマンのコピーロボットみたいに電池がぱたりと切れる。

朝食

朝食 17.7,2022

相変わらず新婚みたいな生活を続けてる。夜はキスをして寝て、朝はまたセックスをする。もうこれが最後のセックスなんだろうと思うけど、もう他の誰かとしなくていいと思う。もう十分に誰かを愛したり愛されたりを繰り返してきたから、きっと私の隅々までが欲してない。一昨日の夜に周ちゃんが少し変なことを言ったのは、きっと私が悪かった。私の方がずっとデリカシーがないから。

「三茶が好きかって聞いたでしょ。」「うん。英語でね。」「気になって考えてたの。好きというわけじゃないし、住みたいとも思わない街。だけど、胸に何かがすごくひかかって。それでね、思い出したんだけど、昔に付き合ってた男を振った街だったの。あとはすごく好きだった子のお母さんがやってるスナックがあって、デートで訪ねたりして、それから、少し年上の人、会社とかやってる面白い男が好きだったんだけど。初めてというか誰かと結婚したいって思ったんだよね。彼と出会ったのも三茶だったの。あとは、20代前半の大学生の頃に初めて三茶に行ったんだけど、2つくらい上の好きな男の子の家でさ、何度か通ってさ。」「えー!?よしみにとってすごい街じゃない。」「自分でもびっくりしてるよ。何も思い入れないと思ってたのに。それから、まだあるんだよ。10年付き合ってた子とね、結婚しようとしてたのだけど振ったの。別れた後に居酒屋でご飯たべたのが三茶で。そしたらまだ俺の女だって言われたんだけど。あれも三茶だった。彼と会ったのはそれが最後。あとは、元旦那さんと出会ったのも三茶。」それから、少し機嫌が良くなかった。思い違いかもしれないけど、なんか変だった。私の恋愛のほとんどが三茶だったことじゃなくて、あまり話さない元夫のこと?

私は別に周ちゃんの前の彼女の話だって、前の彼女達とどうセックスをしてたとか平然と聞ける。私の話だって、笑い話のように色々を引張りだしてきては楽しませてあげることが出来る。だけど、一番最後の婚約者だけは別だ。彼女の事は未だに気になるし、私のジェラシーが見え隠れする度にばれないかとヒヤヒヤするときだってある。そんなこと、私の一人問答だってこともわかってるのだけど。

周ちゃんは昼からフィールドワークにでかけた。今日は近場に行くのだそう。私はフィルムのスキャニングとか、映像機材の事とか、一昨日にアップデートしたパソコンの整理とかをした。夕方に図書館に行って、無人販売所で夕飯用にほうれん草、トウモロコシ、ゴーヤを買って、最近ハマってる神戸のクラフトビールを駅前に買いに行った。「陽が暮れる時間がすごく気持ちがいいんだよ。」「へぇーそうなんだ。」「山がね、さわさわ言うの。ひぐらしの音も聞こえるし。山だとか空がすごくきれいなんだよ。風がね、昼はないのに、いい風がふくんだよ。」夕飯を食べながら話した。夏がきてから食卓が鮮やかになった。地場で採れる夏野菜のお陰だ。毎晩、食卓に並ぶ野菜の話をしてる。新鮮な野菜の味は濃いから調味はなるべく薄味にする。それが薄ければ薄いほどに、シンプルなほどに周ちゃんは喜んで食べる。

馬鹿みたいなのだけど、一度目の結婚のときも同じように思った。このままでいい。この時間が何度も何度も続くだけでいい。もう誰も愛さなくていい。このままどっちかが先に死ぬんだろうけど、どっちでもいい。ただ、それまで思い切りに愛していこう、って。人間ていう生き物は変わらなくて、馬鹿みたいだなと思う。一度目の結婚とは全然違うのに、一度目みたいな気持ちに落ち着くことがある。けど、周ちゃんとの結婚は圧倒的に違うものもある。それは何も望んでいなかったって事。私を幸せにして、子供を産みたい、誕生日は一緒に祝って。結婚してとも思わなかった。ただ、別々でいてくれればいい。それだけをお願いして結婚をした。今、想うことは、周ちゃんを幸せにしてあげたい。また大切なものを失うのが怖いんじゃない。過去を後悔してるわけでもない。ただ幸せであってほしいと願っていたい。お腹いっぱいでいて欲しいとか、ぐっすり眠って欲しいとか、そうして翌朝は寝坊してしまうくらいに寝て欲しいとか、朝ごはんを美味しい美味しいって口いっぱいに頬張って欲しいとか、無邪気なままに沢山のなにかに満たされていて欲しいと毎日想う。

最近、またハグの形が変わってきてる。それが具体的にどうなのかはわからないけど、ハグの中にあるものを掴むような感じが、何度やってもまた感じるそれが重ねても重ねても嬉しくなる。何度食べても美味しい好物みたいに。

夕飯

夕飯 14.7,2022

明日、免許の学科試験を受けるために早朝から試験勉強。ここ数日根詰めて頑張った。28歳の時にとった時は勉強なんて殆どしなかったのに。こんなに記憶力がなくなっちゃうものかと怖くなる。だけど、気持ちは万全。早く運転がしたいし、ドライブしてるところを想像するだけでワクワクする。

明日は出発が早いから、試験会場への持ち物を早めに準備しておこうと教習所卒業時に配られた資料を探した。え?ない。まるっと一式ない。ん??? 物は失くさない自信があるし、几帳面な方だし、何処に置いたかわからないなんて事はないのに。だけど、ない。置いておいた場所にない。えーーー!!急いで周ちゃんに連絡した。”大変なことが起きたよ!”

午後は近くのカフェで最後の追い込みの勉強をする筈だったけれど、もう完全に現実にノックアウトされた。もう嫌だ。最近、なんだか色々が上手くいってない。それもどれもが一緒になって、あれもこれもそれもどれも、やることなす事上手くいかないと駄々をこねる子どものようになった。「もう嫌だ。」何度も口に出して言った。雨が降る窓に向かって、マックのスクリーンセーバーに向かって、誰もいないリビングの先に向かって。とにかく、「もう本当に嫌だ。」と言い続けた。始まりは先月の仕事から。頑張ってる事だとか、自分が真剣に向き合ってる事が上手くいかなくなった時に、色々と反省したり改善したりする余地は十分に見つけられたとしても、再出発の旗を振って荒野に出た途端に嵐に巻き込まれるみたいな感じで、6月の終わり頃から、再出発を何度も繰り返してる。何度も嵐に叩きつけられて、もうドアを開けるのも億劫に感じてる。もう、いい加減にしてよ。写真なんか嫌だ。嫌、悪いのは写真じゃない。色々とひとり押問答してるうちにまただ。卒業証明書なんて再発行すればいいだけじゃない。面倒だしお金はかかるけど、それだけだよ。それなのに、度重なるちっちゃな不運たちに被害妄想だけが膨らんでいく。

来週から沖縄へひとり旅にでも行ってこようかな。旅はきっと私を癒してくれる。昨年のように。きっと。けどさ、昨年の今頃、私は半死にしていたわけじゃん。今の生活をみてみなよ。安心に暮らせて、ぐっすり寝てるじゃん。愚痴を聞いてくれる人がいるよ。毎日食卓を囲んで、作ったものを食べてくれる人がいる。何を言っちゃってんだよ。仕事でちょっと嫌なことがあったくらいの程度じゃん。それが続いたくらいで、私は死なないし、ビールだって飲める。ベッドは今夜も私をすっぽりと包んでくれるし、夫の胸に飛び込めば私をぎゅっと抱きしめてくれる。仕事のことだって、また好きな仕事をすればいいし、それが無いなら自分で探しにいったらいいじゃん。私の傲慢さたるや、恐ろしい。

それに、誰かを悪く想うことに心を痛めたり、会うたびにそう感じてしまう自分を非難したりしてしまったけれど、それも結局のところ私の我儘だ。タイプじゃない男だとか、面倒そうな男に言い寄られたら、めんどくさって思えるのに、どうして仕事だと好きにならなきゃ!とか、私の何処が悪かったんだろう?って、頑張っちゃうのだろう。しかも、自分が嫌だって思うことを相手はしているのに。それって、やっぱりおかしい。結局、私の問題だ。相手がどうこうじゃない。「うん。またご飯行こう!」心の中では2度と行かない〜って思いながら笑顔で断る男と同じでいい筈。「聞いてる音楽がダサくて嫌。」とか「ポジティブすぎてロボットみたいでつまらないんだよ。」何んて意地悪言うわけがないし、もっと分かり合おうと努力もしない。誘ってくれてありがとう。じゃあね。でいい。だって、私はあなたと一緒にいても楽しくないんだもん。

まとわりついてる埃をパンパン叩いてみると、あ、結構今って悪くないのかも。そんな風にも見えてきた。確かに上手くはいってないけど、今まで見えなかったことが見えてる。それに新しい仕事が始まりそう。それで、早速いまむを誘ってみた。こないだ仕事の事で励ましてくれて、この人と一緒に仕事がしたいなって思ったし、仕事で大切にしたいのはやっぱり信頼関係でいいんだって気づかせてくれたから。この人とだからやりたい。一緒にやれることを大事にしたい。ひとりなら不安になってしまうことも、誰かがいる、信じて貰えてるって想うだけで、私はより高くジャンプが出来る!先月末からどんよりモードだったけれど、今日もまた雨だけど、今度こそ梅雨明けでいい。

なんだか、新しく本が作りたいと急に思った。大好きなカップルの話。ふみえさんとの料理本の出版企画書を周ちゃんにブラッシュアップしてもらう中で、私が何がしたいのかが見えてきた。そう。私はあの人たちの本が作りたい。新しい企画書を作って、一緒に作ってくれる編集者を探そう。だってやってみるのはタダだし。それで失敗したらまた落ち込むのだろうけど、そしたら、またやればいいし。嫌になったらやめればいいし。時々、周ちゃんの胸を借りて、何かをチャージしてビールも飲んで、またやればいいじゃない。あのカップルの食卓は家庭に溺れていく私を救ってくれた。彼らは同じように誰かのことも救ってくれると思う。冷えていく心を見つけては温めてくれるはず。だから作りたい!

7月12日

Journal 12.7,2022

21時09分。周ちゃんはまだ帰ってこない。今夜を密かに楽しみにしてた。夕方に駅前に買い物へ出かけた。コスキチでアムリターラのバスソルトとエコストアの歯磨き粉を買って、西武の地下でパッケージが可愛いクラフトビールを買って、西友でポテチとバナナを買った。今夜の準備は万端。外は雨が降ってるし、夏なのに肌寒い。周ちゃん、大丈夫かな。今日も自転車で出かけてる。

「明日はディナーミーティングだから。」「何それ?飲み会でしょ?」「夕飯を食べるだけだよ。」「え、それ、ただの飲み会じゃん!」「知らないよ。だって上司がディナーミーティングって言ったし。」「へぇ。楽しそうだなぁ。いいなぁ。何食べるんだろうね。朝帰りにならないといいなぁ。タクシーが朝の5時に家の前できゅっと止まってさ、そっと玄関が開いて、寝室に入ってきた周ちゃんから石鹸のいい香りがしてさ、小さな声で遅くなってごめんねって。朝帰りはきついなぁ。」「もう、やめてよ!」周ちゃんは少し本気で怒ってた。「冗談じゃん!ごめんね。全然いいんだよ。飲み会だっていいんだから。」幾らだって最悪な事態は想像出来るよ。だけど、周ちゃんがそうじゃないことは最初から知ってる。いつもみたいに一人ドラマを作って楽しんでいただけ。それに、もし本当にそんな事があったとしても大丈夫。私達はそんな事じゃ死なないし、ただ、最低って思って嫌いになるだけ。好きとか嫌いで片付くことは簡単なんだよ。

こないだ友達が浮気されたことを許せないって言ってた。「いいんじゃない。」って伝えた。いいと思う。許さなくていいよ。許してもいいとも思う。どっちでもいいよ。ただ、許したくないって自分が言ってるなら、許したくない自分と一緒にいたらいいんじゃないかな。お気にいりの皿を割ったとしても、しばらくは落ち込むけど、そんなに時間をかけずにわかる。もう戻らないって。だから、忘れたくないんだと思う。相手の問題じゃなくて、答えはきっと自分で、愛したかったとか、愛されなかった自分についてとか。愛の話がすればするほどにそれは愛じゃない。愛っていうのは、信じることも出来るし、望むことも与えて受け取れることも、なんでもどうやら出来る。だから、愛っていうのは嘘も簡単につける。尊くもあれるし、ぽいっと捨てられるものにもなる。愛っていうシールをつけると、どこでも通行許可が通るみたいになっちゃうけど、実際にはどこも通れない。愛だけじゃ、結婚もできない時代だし。愛だけじゃお金持ちにもなれない。だから、許せないのなら許さなくてよしだと思う。大切なのはたぶん、そんな自分と向き合っていくことで、いつか答えがでる日を信じて戦い続けるしかないんだと思う。友達に話すのもそうだし、どんどん世界に馴染ませていくうちに、苦しんだり悲しんだりを繰り返していくうちに、何かが見えてくるんじゃないかなって。

豆板醤

保存食 11.7,2022

豆板醤をこれでもかってくらいに作った。夕飯にスリランカカレーを作ったけど、トゥナパハやシナモンがなくて味が微妙となり、結局インドカレーにシフトした。