ねぎそば

Journal 11.10,2020

お腹が空いた。もうすぐ2時だ、お昼食べなきゃ。

以前なら次から次へと入って来る仕事を綺麗にこなしてた。とにかく時間がない、朝から晩まで時間がない、だから効率的にやるには、記憶の浅いうちにデーターを仕上げる。だけど、今は何でもいい。いいタイミングでいい。夫の世話が無くなった私にはたっぷり時間がある。心の言う通りにしていたら、あっという間に週末には仕事が溜まっていた。

朝から作業をして、納品を終えると同時に寂しさがやってきた。朝から曇っていた空から陽射しが部屋に差し込む。すごく寂しい。その後ろには未だ怒りもいる。この苦しみに何の意味があるんだろう。べったりと心にこびりついてるそれを何度も何度も拭ったけど、取れない。取れたとしても、また翌朝には出てくる。決めようと思う。

もう許さない。前に進む為に。

ねぎそば
中華麺
ねぎ
黒酢
ごま油
中華だし


目玉焼きトースト

Journal 10.10,2020

2週間ぶりの心療内科。
「先生、実は、薬は3日目で吐き気が止まらなくってやめちゃいました。だけど、お酒はずっと飲んでません!心も体もすごくいいです。」

私の元気な様子に先生はびっくりしてた。笑顔で言う。
「よく頑張りましたね。お酒は睡眠に障害を与えるし、どうしても枯渇していってしまうからね。いい状態で良かったです。何があったのかな。」

1週間前、夫が鍵をポストに入れていった。
それが理由なのかわからない。だけど、私はこの2週間で見違えるように元気を取り戻した。もう怖く無い。まだ完全じゃないけど、今日は前へ向かってる。

2週間前、病院に中々着かなかった。
246を三茶に向かって歩く。歩いても歩いても進まない。歩くって、こんなに大変なんだって。身体が重くて、足を前へ運ぶのが、歩くことが、どこかへ向かう全てが辛い。生きるってこういう事なんだ。時間が流れている以上、私は生きるしか選べないんだ。ここで全てを止めたい止まりたいのに、時間も止まって欲しいのに止まらない。目の前の世界がテレビのノイズみたい。何も聞こえないのに煩くて堪らない世界が重く私にのしかかった。

チーズトーストを焼いて、その上に目玉焼きをのせて、ケチャップをかける。ぱくぱくと頬張ると、お皿の上にゆっくりとしたスピードで黄身が落ちていった。なんだか音が聞こえてきそう。黄色い黄身。すごく綺麗。慌てて食べないでしばらく見ていよう。静かに時間の中に落ちていく。

チーズトースト
6枚切りの食パン
スライスチーズ
目玉焼き2つ
ケチャップ

キムチチャーハン

中華 09.10,2020

朝一番で納品を終えてベッドに入る。外はずっと雨。昨日、友人に送ったメールがずっと胸にある。もう苦しみたくない。大事な友達だから伝えたかった。私はただ、私の味方になって欲しかった。もう私を責めたくないから。

みんな誰だって自分の人生を生きてる。想いやるにも体力がいるし、相手の事に踏み入るのは簡単じゃない。友人は、私の事で沢山、沢山、傷ついた筈だ。だけど、私の気持ちは私にしかわからない。話せるうちは元気だって言うけど、話せない事だって沢山ある。人前では明るく振る舞うから元気だって思われても、誰にも見せられない顔だってある。みんなそう。私だけじゃない。苦しみはいつだって自分のもの。

段々と痛みや恐怖が薄れていって、意識が世界へと少しずつ、少しずつ向けられるようになってきた。視界だけじゃない、感情もだ。前へ進むと、何かにつまずく。そうやって私の中に疑問が生まれてゆくのを感じる。

姉に電話した。話し出したら止まらない、少し私は怒ってる。声を荒げて話す私に、姉は言った。

「 誰にもわからないから。」

「親だって家族だって友達でも。あなたが受けてきた苦しみは誰にもわからない。私は沢山の話を聞いたけど、私が知ってる痛みは一部に過ぎない事だってわかる。わかってるから。もう誰かの声に耳を傾けないでいい。肝に命じて、自分を守って。わかった。自分を守れるのは自分だからね。」言葉の全てが綺麗に聞こえた。

この苦しみは今も私の腹の中。
友人にわかって欲しいと思うのは間違ってたんだと思った。

「あなたも悪いんだからさ、彼にもあなたにも良い相手が出来るから。」今まで献身的に支えてくれた友人が急に突拍子も無い事を言い出した。そして、離婚が決まってから彼女とはパタリと会わなくなった。理由は仕事が忙しいと言ってたけど、本当の所はわからない。離婚を選択すれば、必然的に彼を公に非難する事となる。それは、病気の事も暴力やお酒の色々も全て明るみとなるっていう意味だ。優しくて面倒見のいい彼女がいつも言う言葉。「病だから仕方ないんだよ。すごく彼も辛いんだよ。」真っ直ぐな瞳だった。私はあの言葉を裏切った事になったのかもしれない。

 

夕飯

和食 08.10,2020

結婚してから手帳に書き続けている日記がある。久しぶりにぱらっと読み返した。日々、夫の事を記してる。怒ってしまった事、言ってしまった事、喧嘩した事。私の気持ちは書いてない。私が改める事と、今をどう楽しむか知恵を振り絞る事ばかりを記している。手帳の最後に今年叶えたい夢100という頁があって、毎年同じ言葉をゆっくりとした丁寧な字で綴ってある、綺麗に並べるように綴ってある。

夫の音楽がうまくいきますように、夫が仕事で稼げるようになりますように、夫の夢が叶いますように。

夫に会社を作ってあげた呑み友達が酔っ払って言う。「あなたは悪い所、無いの?」その日は夫が仕事を放って泥酔して行方不明になり大変だった夜。私は家で夫を待っていた。電話の向こうで、いつも無口な男が饒舌に意地悪を言って、ケタケタと笑ってる。時間は夜中の1時過ぎ。結局、いつもの様に朝まで寝れなくて、一度泣いてから撮影に行った。彼は夫のパートナーだと言うけど、家で起こってる事は何1つ知らない。そしてきっと夫が酒を止めている事も知らなかったのかもしれない。いつも中目黒でお酒を飲み歩いてる。のっぺらぼうみたいな顔の人。夫と散々遊び歩いてると聞いていたけど、俺はいつも一緒にいるわけじゃないと言ってた。どうして私に嘘をついたんだろう。それとも夫が嘘をついていたのか。

過去に記した言葉が私を救う。もう私を責めないでいい。私、夫を大切にしてきたんだった。

今日は頭が痛い。だけど、楽しかった。だんだん撮れるようになってきた。数週間前、カメラを持つ手に力が入らなくなくて、怖くなった。あれから、少しずつ、少しずつ。少しずつ、写真を撮ってる。もう大丈夫。しっかりと手に収まってる。

撮影の後、お喋りしながら笑って帰った。写真も、写真に関わってくれる人もありがとう。本当にありがとう。

夕飯
ご飯
きのこと茄子の味噌汁
アボガドと納豆
焼き鮭とキムチマヨ

ポキ

Journal 07.10,2020

昨晩、ベッドで考えてた。

今日1日に起こって感じた事について。色々がするするとわかってくる。夫との過去をずっと探してる。救えなかった事だけじゃない。何が悪かったんだろう。私達がこうなる事は最初からわかってたのかな。

2年前の酒乱が始まるまで、ずっと仲良しだった。お酒や暴力があっても、夫はとにかく謝った。それは本心だったと思う。僕は変わりたい。その言葉も本心だったから、私の隣で謝り続けたんじゃないか。

私が夫の音楽に興味無かろうが、夫が私の写真に興味無かろうが、そんなのはどうでもいい。ただ、一緒にいたかった。それだけで十分だった。

茄子のミートパスタ

洋食 06.10,2020

パスタを食べて昼寝をした。
最近、何か一つ作業をしたら、休む。これを繰り返してる。大丈夫だと思っても、思った様に身体が動かなくなるから、大事をとって休み休み。ぼんやり目が覚める。14時58分。ぼんやりしてる。

今、なんだっけ。起きて洗面所へ向かう。あ、遅刻だ。どうしよう。確か15時過ぎに家を出る予定だった。鼓動がばくばくと全身で鳴ってる。どうしよう、私、今日撮れない。床にへたりと座った。落ち着け、落ち着け。ゆっくりと深呼吸する。私が今立っている場所は、ぎりぎりの場所。一歩間違えると直ぐにまた落ちてしまう。だけど、大丈夫。深呼吸して。下を見ないで。落ち着いてそこから離れれば、いつもの場所にいける。大丈夫。大丈夫。

ゆっくりと起き上がる。深呼吸を繰り返す。大丈夫。私、支度10分で出来るから。何も考えないように支度を済ませて家を出る。あ、風が気持ちがいい。あーあ、遅刻だな。

目の前で電車が行っちゃった。あーあ。何だか思った。世界は怖くない。虚しくて仕方なかった世界も、本当は虚しくないのかもしれない。夫との生活の中には行き場の無い寂しさたちが何も言わずにいた。それはもしかして今と変わらないのかもしれない。今でもやり直せそうな気がする。だけど違う。わかってる。夫は変わらない。変わるのは私。もう怖くない。

秋刀魚の刺身

Journal 05.10,2020

「大事で大好きな友達だよ!」「ずっと我慢してたのは、バカなんかじゃなくって愛情深いからだよ。」数日前、りょーこちゃんから貰ったメールが胸にずっとある。彼女の言葉は私を救う。私は何ヶ月もずっと、私を責め続けている。

3年前の春だったかな、りょーこちゃんから数年振りにFBのメッセンジャーが入る。「久しぶり。よしみちゃん、お料理撮ってるの?」料理写真を始めた頃だった。菊地食堂の写真を見てくれたのかな。嬉しかった。お仕事をお願いしたいっていう連絡だった。それまでは、私も師匠にならって人を撮ってた。料理を撮ってみたい、だけど。

自分で作って自分で撮って日記を書く。やってみよう。それが菊地食堂の始まり。そのうちに夫の酒乱の時期に入った。苦しかった。だけど、とにかく作って撮って書いた。気づいたらお仕事も増えて、ぽんぽんって、うまく撮れた。私は技術を持って無い。学校もスタジオも通ってないし、人を得意とする師匠についてたから、いつもちょっと申し訳ないような気持ちだった。だけど、好きな料理の写真が撮れる事がとっても嬉しくて楽しかった。壊れた家庭の中で正気を失ってゆく自分を捨てて、私は写真に向かった。地獄の毎日の中にはもう生きる目的が少しだって残ってなかったから、私の居場所は写真しか無かった。私が沢山の料理写真を撮り続けるようになった頃、夫の酒乱は霧の様に消えていた。

まやかしみたいな1年だったように思う。あれから2年後、すごい勢いでまたアレは春に帰ってくる。アレは夫の闇に潜んでただけ、夏が終わる頃に夫は夫を捨ててた。蝉の抜け殻みたいに、するって。私に料理写真を与えてくれた夫には感謝してる。夫じゃなきゃ、私はここまで来れなかったと思うから。

私には大好きな言葉がある。
「よしみちゃんの好きなように撮って。」りょーこちゃんが現場で言う言葉。この言葉が私は大好きだった。彼女はいつも私を信じてくれる。彼女の強さが私に勇気を与えてくれた。

今年は久しぶりに秋刀魚を焼かなかったな。夫は焼き魚が好きで、よく焼いた。何だかずっとずっと昔の事みたい。もう、この家を出よう。夫の抜け殻が残るこの家にはいたくない。私はきっと夫の帰りを待ってしまうだろうから。

秋刀魚の刺身
秋刀魚の刺身
にんにく醤油 [にんにくを甘い醤油に漬けたもの]

こてっちゃん

Journal 04.10,2020

お腹が空いた。
夫が帰らなくなってから寂しかったけど、夫がいた時も寂しかった。最近は寂しくない。深夜過ぎた頃にうとうとして、棚の上にある時計を見るのが本当に嫌いだった。キッチンには冷めきった夕飯。当たり前のように嘘をつく夫の帰りを待つ時間。あんな夜は二度と味わいたくない。

無性にこてっちゃんが食べたくなった。こうやってお腹が空く感じも何だか久しぶり。オオゼキにこてっちゃんを買いに行く。フライパンにごま油をひいて、スライスしたニンニクを炒め、こてっちゃん、ピーマンの順に焼く。ピーマンは軽めの焼き加減がいい。やっぱり温かいご飯は美味しい。

食事

Journal 03.10,2020

一昨日「眠い眠い」って言ってたら、友達に「自律神経が乱れてるんじゃない?」って。そうか。確かに、私の自律神経は長いストレス生活でぼろぼろだ。心はもう全然辛くない。だから薬はやめたけど、この眠さは自律神経。確かに。発酵食品を食べよう。きちんとした食事を食べよう。自分の身体も、自分の人生も、自分で責任持ってやろう。これからはもう自分が苦しくなるような人とは一緒にいちゃいけない。家族や友達が哀しむから。大切な人は世界にたった一人じゃないって事が良くわかった。大切なのは私を傷つける人じゃなくて、私を大切にしてくれる人みんな。だから、私は私の事を大切にしよう。

梅干し饂飩

Journal 02.10,2020

朝5時。普通に目が覚めた。何ヶ月ぶりだろう、この感じ。
姉から電話がくる。色々とこれからの事を話した。姉は、夫のした事は絶対に許される事じゃないって思ってたけど、私が別れを決意するまで待ってたんだよって。何ヶ月も待ってたって。いつも病気だからって彼を庇う私が気づいてくれる日を待ってたんだよ。本当によく頑張った。もう隠さないでいい。大丈夫。って。なんだか、すごくほっとした。本当に長かった。コロナが始まって直ぐに夫は酒に溺れた。私は守りたかった。だけど守れなかった。もう、諦めていいんだ。

「今日は久しぶりに一日予定を入れたの!」「うん。無理しないで。」そう言って電話を切った。午後を過ぎた頃、撮影中に目が回る。また吐き気。何だか倒れそうな気がして先に現場を出た。氷川神社だ。なんとなく吸い込まれるように入った。知らない道、知らない場所、大きな木だとか手水舎の水が光に反射してきらきらしてる、綺麗。朦朧とする世界の中でぼーっと歩いた。遠くに中学生みたいな子達が座ってる。近づくと、写真家のななちゃん、編集の山若君とお友達がいた。何だか夢の中みたいな光景だった。

3人とお別れして、編集のあきちゃんの事務所に行く。今日はeatLoveの作品をあきちゃんに見せる約束をしてたから。ふらふらする。血の気が引いてくのがわかる。目の前がぐるぐるして事務所の前のコンクリートに腰掛けた。私はいつまでこのグレーな世界にいるんだろう。

遠くから手を振ってるあきちゃんが見える。何だかすごくほっとした。あきちゃんはいつも元気だ。あきちゃんみたいになりたいって思う。弱い自分がいても隠さないし素直だし、今に負けようとしない。私みたいに弱い自分に蓋をしたりしない。

帰ってベッドに横たわった。身体は元気なのに頭の中が濁ってる。すごく疲れた。今日は楽しい事ばかりだったのに。姉との電話を思い出したら、涙がポロポロと溢れてきた。テコが私の胸の上にへばりついてずっと顔を舐めてる。私、今幸せだ。苦しいけれど、幸せ。これは嬉しい涙。だから今日はもうちょっと泣こう。

林檎

Journal 01.10,2020

昨日、やっちゃんがバスの中で言ってた。「秋は果物が美味しいからね。毎日、本当に幸せなの。今日は梨、今日はぶどうって食べてるんだよ。」うちに泊まって、すっぴんのまま出てきたやっちゃんの満面の笑み。やっちゃんって、時々、子供みたいだなって思う。「うん。私も果物食べてみる。」やっちゃんとバイバイしてから、スーパーに寄って梨を探したけど、高いのしか無くて林檎を買った。ぺろっと一個食べた。林檎、久しぶりだな。美味しい。

朝の10時、玄関がガチャガチャとなった。鍵を開けようとする音がする。姉に急いでメールを打とうとするけど手が震えてる。心臓が飛び出しそうだ。身体が夫を怖がってる。鍵は2つしてるから入っては来ない。だけど、もし、大家さんにもう一本の鍵を借りて入って来たら。聞こえなかったと言い訳出来るようにヘッドホンを手に持つ。数分してガチャガチャは消えた。

弁護士さんのところに行った帰りに、林檎を一つ買って帰る。弁護士さんいい人だった。「まずは家を出ましょう。安心出来ると思う所に引っ越しましょう。」他人に話せば話すほど、何かが見えてくる。私達夫婦に起こった事はただの酒乱でも、ただの喧嘩でも無かったんだ。すごく怖くなった。私が頑張れば頑張るほどに夫を庇う事になってたんだ。

何だかやっちゃんの笑顔が忘れられなくてまた林檎が食べたくなった。もう抗うつ剤止めよう。今日でまだ3日目だけど、もう要らない。だって今、1ミリも哀しくない。大丈夫。林檎すごく美味しかったから大丈夫。

茄子のミートグラタン

洋食 30.9,2020

抗うつ剤2日目。昨日に引き続き吐き気が止まらない。日中はずっと眠くて変なあくびが出る。畳にひいた布団でごろごろする。太陽が当たって気持ちがいい。隣でやっちゃんが来月に行く沖縄のツアーを取ってくれてる。何もしたくない。胃痛と吐き気と光の中で溜息ばかりが出てくる。本当に疲れた。

夕飯に茄子のミートグラタンを作る。上手に出来た。グラタン綺麗だな。

やっちゃんとUber

Journal 29.9,2020

撮影が夕方までだったから、夕飯はUberにした。
せっかく泊まりに来てくれたのにごめんね。何だか頑張って作る気力が今日は出なかった。「私、初Uberだよ。」嬉しそうなやっちゃん、良かった。

本当は映画を見る筈だったんだけど、お喋りして早めに寝た。心療内科の結果を話したら、びっくりした顔してた。多分気を使ってくれたんだろう。薬の副作用なのかな、吐き気と胃痛で食欲が無い。ずっと世界に麻痺してるような感じでぼんやりしてる。誰かが側にいてくれるだけでほっとする。

ニラキーマとアボガド

カレー 28.9,2020

朝から天気が良くて洗濯機を二回まわした。14時から心療内科の電話診療だ。緊張してる。

14時を過ぎた頃に電話が鳴る。
「菊地さんのお電話ですか。今から電話診療に入りますね。先生に変わります。」

ドキドキする。看護婦さんに伝えていた内容を確認しながらゆっくりと先生は話す。友達のお父さんみたい。丁寧で気さくな感じ。

先生が言った。
「イネイブラーって知ってますか?お酒を飲む人を家族が支えてしまう事を言います。」
「今夜、旦那さんが帰ってきたらどうしますか?」
「もう荷物を全部持っていったので帰って来ません。」

私の生い立ちだとか、先生の質問は続く。しばらくして、先生がまた同じ質問をする。
「今夜、旦那さんが帰ってきたらどうしますか?」
「もう、帰って来ません。荷物も持って行ったし、それに…」

先生は、夫が今どこにいる?とか、どこに泊まっているの?とか、やたら夫の事ばかり聞くなぁって思った。私の話を聞いてほしいのに。

別の話をする、体調はどうですか?どんな感じですか?

しばらくすると、先生がまた言った。
「今夜、旦那さん帰ってきたらどうしますか?」
「もう無理です。夫が来るのが怖いから。」「もう離婚なんです。」
私は私の声にびっくりした。

「あなたが離れる事を決めているなら、もう大丈夫。これから状況は良くなりますよ。もう大丈夫です。」

先生の質問の意図がようやくわかった。私の意思がきちんと自分で理解出来ているのか気付かせたかったんだろう。そして、私は鬱病だと風邪ですよっていう感じで先生が言った。不眠も頭痛も恐怖も涙も止まったのに鬱なんだ。きっと夏がピークだった様に思う。2年前もきっと鬱を発症してただろうな。だけど、毎日朝から晩まで仕事してたし、自然と治った。現場に行って仕事の人に会うとすごくほっとして、現場から出るとまた哀しくなった。家に着く頃には目からポロポロと涙が落ちる。あの時も写真以外の全てが憂鬱だったな。

先生に当たり前のように、あなたは鬱だからって話をされてほっとした。私、もうギブアップって誰かに認められたかったのかな。もう夫を助ける事を止めたかったのかな。夫を嫌いになったわけじゃないのに。

ニラキーマとアボガド
ニンニク・生姜 1片 みじん切り
玉ねぎ 1/2個 みじん切り
ひき肉 100-200g
青唐辛子 1本 みじん切り
アボガド 1/2個 スライスするトゥナパハ 大さじ1
ナンプラー

炒飯とビール

中華 27.9,2020

今日、また女優さんが亡くなった。
ほんの数日前に思い出した。あの人、再婚して幸せなんだよな。離婚しても、また家庭を持って、新しいひとの子供と人生をするってどんな感じなんだろう。だけど、幸せになれるんだ。私には未だそれがわからないけれど、いつかわかるのかなって。

夫の酒乱で私がトラウマを持っている事を夫は知らない。酒乱が始まった時に震えが止まらなかった事を夫は知らない。怖くて怖くて、友達に助けてって電話しようとした事を夫は知らない。夫は外の人に、鬼嫁だって言ってるって聞いた事がある。私が外で強くいるから、その事を言ってるんだろう。だけど、本当はずっと怖くて苦しかった。夫が全くの別人に変わったのを見てしまってから、私は夫との溝を埋める事が出来なくなったんだと思う。いつだったかな。覚えてない。怖い事が当たり前になりすぎちゃった。だから怖く無いんだ。今だけ負けないように強く言えばいい。優しい夫は明日の朝に帰ってくる。

お酒をやめて欲しい。全うに生きて欲しい。「信じてるから。」夫に何百回とメールしたと思う。だけど、怖くて悲しくて辛いって、言わなかった。いつだったか私の涙を見た夫が気持ち悪いって発狂した。私は慰めて欲しかったのに、心の弱い夫の前で涙を流す事は事態を悪化させるから駄目なんだ。私が弱音を吐くと世界のリズムが狂うんだ。私は私の事を言うのを止めよう。そうやって私はひとりぼっちになっていった気がする。

2018年の酒乱が始まった時に人に言われてアルコールの記録をつけ始めて、2020年の時も記録した。私が夫にその記録を見せた時に夫は寂しかったと思う。私は夫を救いたくてつけた記録が夫をひとりにさせた。私がひとりでつけ続けた記録だから。

餃子

Journal 26.9,2020

夕方に後藤さんが来てくれる。
ベッドで泣いて目をつぶった。起きてお風呂に入って食事の支度をする。

やっぱりずっと頭の中をぐるぐるしてる。どうして、夫と話せなかったんだろう。
「俺の好きなようにさせろ。うざったい。言う事を聞かないなら離婚でいい。」夫から出る言葉はCDをリプレイしてるみたいに聞こえた。何ヶ月も同じ言葉が流れ続ける。

ダメだってわかってるけれど、未だにどうしてって思う。
私を救ってくれた友人や兄弟が言う。「もう絶対に戻っちゃ駄目だから。絶対に駄目。」わかってる。戻り方もわかんないから大丈夫。だけど、あんなに酷い事があっても、私は今でも答えを探してる。

後藤さんはいつも笑顔。
もう、一人じゃ解決出来ないから弁護士に相談したいって話をした。「とにかく早く幸せになんなよ。」「優しすぎるんだよ。そういうの捨てて。どうしたいのか決めないと前へ進まないよ!」笑顔で言う。いい笑顔。昔からそう。

餃子、焼きすぎちゃって失敗した。だけど、楽しい夜だった。明るい夜だった。

餃子
白菜 細かくカットして塩もみして軽く水切り
ニラ
豚ひき肉
ごま油
鶏ガラスープ
中華だしの素
塩・胡椒
餃子の皮

胡瓜と緑のケース

Asinan food 25.9,2020

いつも電話の向こうでシャキシャキと音がした。「今日も胡瓜ですか?」「シャキシャキ。そう。」ここ4ヶ月、姉は毎日のように電話の向こうで胡瓜だ。いつだったかテレビ電話をした時に「この緑のがやばいんだよ。」と、緑のケースを見せてくれた。「ケースのまんまなんて、汚いよ。お願いだから皿に入れて。」「めんどくさい。シャキシャキ。」姉の横で、ヘレナもシャキシャキしてた。

6月から、日課の様に私の生存確認をしてくれる姉。ご苦労様。本当にありがとう。私の姉でいてくれてありがとう。胡瓜片手に私を救ってくれて本当にありがとう。

今日は電話の向こうで怒ってる。隣のばばぁがさぁって、電話が割れそうだ。「怒らないでよ。」「もう直ぐだから。」「わかる、わかるよ。だけど怒らないで。」怒り狂う姉の理由はよくわかる。本当に傷ついた。もう十分だと思う。お願いだから神様やめてやってくれって思う。だけどね、もうすぐだから。姉をなだめてる自分に気づいた。あ、私が帰ってきた。

昨日の夕方に夫からメールが入る。怖くて心臓がバクバクしてる。お腹が痛い。痛いよ。いつもと同じやつ。メールが読めない。メールを閉じては開いてを繰り返す。テキストが中々入ってこなくて暗号のよう。何度も繰り返す。5分位かな、ようやく頭に入ってきた。

あれ。この人、だいぶ酷い。そして、もしかして、、
TOKIOの山口さんを思い出した。伊勢谷さんもそう。夫みたいって。モラルが無い。ちょっと可笑しくなった。私、イかれちゃったのかな。サウナへ行って汗を流そう。週に何度も行ってたサウナ。すっかりサウナの事を忘れてた。246の横断歩道で信号が青に変わるのを待つ。信号が変わる。歩き始めると、頭をふとよぎった。 ” 私はあのメールの人にずっと苦しめられていたの??”

心療内科に予約の電話を入れる。

もし、また夫からのコンタクトがあったら、私は堕ちてしまうかも。頭よりも身体が先に反応して不安に飲み込まれてしまうかもしれない。だから、病院へ行く。だけど、仕方がない気がしてる。半年も苦しんできたから、心と身体が苦しみ方を完全に覚えちゃってる。だけど、私のどこかは気づき始めてる。

今夜は成城石井に売ってるお気に入りのレモンチューハイと胡瓜と緑のケース。そう、緑のケースのまんまでいいよ。衛生的な事なんて気にせずいこう。もう何だっていい。美味しければいいよ。だけど、美味しく無いものは食べちゃいけない。美味しいものを食べよう。

胡瓜と緑のケース
胡瓜
サムジャン

色の無いパスタ

洋食 24.9,2020

今日はトレーニングの日。
10日間くらい、ウェイトオーバー食をサボってる。「頑張らない。」「無理をしない。」「ゆっくりゆっくり。」姉とアカリちゃんから入るLINEの言葉を忠実に守ってる。食べたく無いから無理して食べない。そして、また痩せた。

「菊地さん、食事増やしましょうね!」先生が笑顔で言う。

何だか今日は貧血気味でふらふらした。気分が悪くてトレーニング中もぼーっとする。早くお家へ帰ろう。雨も降ってる。

帰宅して、パスタを作る。真っ白な色の無いパスタを作った。何だかうんざりした。うんざりしながら食べる。人生って本当にうんざりする。9月の記憶が殆ど無い。苦しい事もあんまり覚えてない。

目が覚めたら何かをしよう。今日は何か出来そうな気がする。

9月23日

Journal 23.9,2020

「私はお兄ちゃんの味方だからね!」って言ったの。大好きなお兄ちゃんの話を嬉しそうに話してる。

アカリちゃんのこういう所が好きだ。彼女は自分の身の回りにいる人をとことん守る。フランケンシュタインみたいな風貌の極悪人を目の前にしたって、小さな体で立ちはだかる。そんな果敢な彼女の姿に心打たれて悪い奴は退散してしまうだろう。「ごめん。悪かった。」って。

夫の友人の奥さんだった。
カメラマン同士で、何となくお喋りするようになって、少しずつ少しずつ、気づいたらすごく仲良しになった。彼女の前で何十回と泣いただろう。私ってこんなに人前で泣けるんだ。びっくりした。いつも冷静な私が、ぽろぽろと落ちる涙をぐちゃぐちゃになってゆく顔を見て、彼女はうんうんって聞いてくれる。夫のお陰だ。夫に出会わなかったら、彼女に出会う事は無かった。

「私、すーちゃんの写真が本当に好きだよ!すーちゃんは愛があるから大丈夫!」いつも励ましてくれる。夫が言ってくれなかった言葉を、彼女は私の目を見て言ってくれた。

「深呼吸。深呼吸。」LINEにメールが入る。
深呼吸。そう深呼吸。私には大切な人が沢山いる。深呼吸、深呼吸。大丈夫。ゆっくりと前へ進もう。夫はもう帰って来ない。私が怖いのは、私が見ている世界なだけ。

もう戦わなくていいんだ。だから怖く無い。だって出ていっちゃたから。もう助けちゃいけないんだ。

友達との夕飯

Journal 22.9,2020

シミルサン、たまちゃんカップル。今むが遊びに来てくれた。楽しくて、楽しくって沢山笑った。みんなが来るまで上手に笑えるか不安だったけれど、笑うって結構簡単。直ぐに出来た。

私はずっと夫の歌が好きになれなかった気がする。人を叩いた手でギターを鳴らして、人を傷つける口から出る言葉、なんだかいつもちゃんと歌ってよって思った。最低でも弱くてもいいのに、格好ばっかりつけるのは止めたらいいのに。あなたが最低なら最低な歌を歌えばいいのに。どうしていつも違うっぽい人になって歌うんだろう。それはファンが喜ぶから?10数枚のチケットをソールドアウトさせたいから?

夫との距離が離れれば離れるほどに私は何かに気づいてゆく。あの鼻歌の理由もわかった。

夫は家族から逃げたんじゃなくって好んで出て行く事を決めたんだろう。女と毎晩のように遊んでたのもそう、現実から逃げるためじゃなくって、本当に楽しくて仕方なかったんじゃないか。だって、鼻歌って気分のいい時に唄う歌でしょ。そんなに楽しいなら、翌朝に謝ったりしないで。それがあなたの歌だよね。

友達との夕飯。
ベジジャーマンポテト
砂肝のアジア風サラダ
ポキ
蛸のセビーチェ
麻婆豆腐
ご飯
ポキ
まぐろ
アボガド
レモン
玉ねぎ みじん切り
青唐辛子 みじん切り
青葱
ごま油
大蒜醤油

夜食

和食 21.9,2020

早朝、家の前に出した荷物を何も言わずに夫は運んで行った。ずっとそわそわした。ダメだ、気持ちの一ミリだってもう戻っちゃいけない。だけど、これが最後だと思うと伝えたかった。

「僕は変わりたいんだ。もう絶対にお酒で傷つけない。だから一緒にいて欲しい。」ポッケに入った婚姻届、折り曲げられた婚姻届を見て素直に嬉しかった。その数ヶ月後に私達は籍を入れた。2016年の事。お酒の事はずっと誰にも話せなかった。それから1年後にまたアレは始まった。

夫にメールする。
「何の話合いも出来ていないのに、離婚で本当にいいの?私達は8年間、ずっと一緒にいたんだよ。」

返答は無し、ずっと夫は無視だ。4月からずっと無視。どんなに酷い事をしても無視。「お前が悪い。」酒を飲んで夜中に泥酔して言う言葉はいつも同じ。「うざったい。俺の好きなようにさせろ。俺は忙しい。」

中目黒の酒場で私から家を追い出されたと夫が言ってると耳に入る。情けない。どうして嘘ばかりつくんだろう。私だけじゃない、世界にも自分にも嘘をついてる。そんなに自分の身を守る事で必死なのかな。私が作り続けた食事、あれは一体なんだったんだろう。この家にいる全てが夫の帰りを待っていた。毎日毎日、また同じ夜を一緒に過ごせるようにと静かに待ってた。

「助けを求めない溺れる人を助けると溺れますよ。」夏に夫の事で行った心療内科の先生の言葉。ちゃんと聞けば良かったと思う。夜みたいな一日がいる。秋の風が気持ちがいい筈なのに、身体に当たるそれが怖い。頭がどこかに置いてきたみたいな感じがする。空は青くて晴れてるのに、太陽の温かさが届いてこない。私、たぶん溺れた。

夜食
ご飯と梅干し
しじみ汁

トマトとモッツァレラのスパゲッティ

洋食 20.9,2020

5日前の事、夕方に夫が大阪でレンタカーを借りたようで、その通知が私のgmailに入る。心臓がばくばくして、ぎゅうっと全身を締め付けた。昨日と同じだ。不安の渦の中に堕ちる。堕ちてゆく体がどっかにいっちゃう。目の前に世界があるのに、頭はここに無いみたい。胸騒ぎが止まらない。すごく怖い。少し時間が経って落ち着いた頃、直ぐに友人に連絡する。「病院に行きたい。行ってもいいのかな。」

今日はアカリちゃんと笑って食卓を囲んでる。
姉が数カ月前に言ってた。「大丈夫。絶対に大丈夫。ある日、嘘みたいに抜けるから。今までの事が何だったんだろうって日が絶対に来るから。絶対に来る!ほんとだから。絶対に、来る。」うん。あの日より今日はずっと楽。色々も急に抜けた。

夫の酒に気づいたのは4月。夫が友人に会社を作って貰った月。今思えば、きっと後ろめたかったんだろう。急に背中を向けて寝出したのもこの頃。人が変わった様に毎日忙しいと言い、目を合わせなくなった。理由は音楽だと言ってた。邪魔しちゃいけないと思って、「頑張ってね。」と言い、殆ど家には寝にだけ帰るようになった夫の夜食を作るようになった。2ヶ月くらい。殆ど顔を合わせて無い。その1ヶ月前はいつも通り、毎日の様に一緒にいた。結局、私が会社の事を知ったのは6月。もう完全にお酒が始まった頃だった。多分病気もしっかりと始まっていた。私が反対するわけないのに何で話してくれなかったんだろう。この8年間、彼の未来を明るく支えてきたつもりだったのに、私は彼の妻になったのに、こういう裏切りってあるんだろうか。

何年か前、あれは今思うと完全に鬱の季節だった。夫は数ヶ月もの間、世界から身を隠す様に家に引きこもった。「死にたい、音楽をやめたい、何もしたくない」。私が仕事だとか買い物に出ると電話が鳴る。甘えた声で夫が言う。「どこにいるの?今すぐに帰ってきて。」着信は数十件と夫の名前が連なり、酷い時には10分もしないうちに次の電話が鳴った。私への依存は日に日に増していく。何かが間違ってる事がわかった。だけど、これは私達だけの秘密にしておこう。私は彼を救える。いや、救う。

「一度きりの人生なのだから何だっていい。悪い時があってもいいよ。ただ、自分が好きな事をして欲しい。あなたは大丈夫。私が想っているから大丈夫だよ。」ベッドに堕ちていく夫に何度も何度も伝えた。何度も何度も。

今、夫の弱さにお酒とお金と権力が注がれていくのがわかる。何だか嫌な予感がする。勢いよく溢れないといい。思いっきりに注がれたものが溢れ散って底にいつまでも鎮座する不味いビールみたいになりそうだ。きっとまたあの場所に留まる気がする。変わり果てた夫の恐怖に怯える私がいるのに、ついもう一人の夫を心配する私がいる。

とにかく色々と後悔してる。私も悪かった。わかってる。救おうと必死になったのも、私の心を押し殺して我慢したのも私だ。ここまで私を追い詰めたのは私だ。彼がしてきた事は人がする事を超えていたけど、両手を広げて受け取ったのは私。愛だと勘違いした。8年前の無知な私がした行い。アルコール依存症も、双極性障害も、鬱も、依存や、色々。あまりに色々。世界には愛だけで乗り越えられない物が存在する事を知らなかった。全力で信じてても、死ぬほど想っても、世界は自分の思い通りになんてならない。死ぬ時はいつだって簡単にその日が来る。

中目黒に夫が仲良くしてる居酒屋があって、よく一緒に夕飯を食べに行った。夫はお酒が入り苛つくと、カウンターの下で私に何度も肘つきをした。「痛いからやめてよ!」強く言った。私は夫の隣にいるようになってから、どんどんと強そうな女になっていった。泣いたり、辛そうにしたり、弱みを露出することは、私達のリレーションシップから反してた。酒が入って強くなる夫に、走ってついていく私。誰も気づいてくれなかったんじゃなくって、私がきっと隠した。きちんと、痛いし、悲しいよって声を出せば良かった。そうしたら、きっと誰かが私達を助けてくれた筈だ。夫の事も私の事も庇う必要は無かったんだ。弱い私達の事を助けてくれる人はいたと思う。あの酒場にはいなくても、どこかにきっと。

今日は朝から雨予報。ずっと手をつけられなかった夫の荷物を片付ける。遅い昼食は大好きなトマトとモッツアレラのスパゲッティ。

モツちゃんぽん

和食 18.9,2020

久しぶりのラーメン!前はよくラーメンを食べてたな。

夫は月の1/3位は不在となる事が普通だった。昼間は一緒に回ってるミュージシャンと地方のリサイクルショップを巡って自分のコレクション探しとご当地グルメを食べる。夜はライブして、お金が無いから、タダか安く泊まれる場所で雑魚寝してお酒を飲んでって。それが夫の言う音楽のツアーという仕事。赤にならなければいい。俺はいい方だっていつも言ってた。何が良くて何が悪いのよくわからないので、ただ頷いた。ツアー中に夫からの連絡は殆ど無い。こっちからメールすれば、さくっと返ってくるだけ。「いつ帰るの?」と聞いても返答が曖昧な事も多かった。時々、お土産に醤油を買ってきてくれた。夫は元気な時はとにかく忙しい人だったけど、お金だけはいつもとにかく無くて、本当にお財布もポッケも空っぽみたいで、私の誕生日は半分いつも私がお金を出して何かを買った。少し出してと言われて、出す。お金が無いのなら仕方ないと思ったけど、不思議だった。デビューまでして手に入れたファンとの繋がりや、そのお陰で続けてられる音楽のツアーという仕事が夫にとって何より大事だった事はわかってる。だけど、それは私の夕飯を独りぼっちにさせる事が多かった。そんな夜にラーメンを食べていたんだと思う。ある時、健康診断でラーメン食べてる数が多い事を指摘されてやめた。

昨日の早朝に友人からメールが入った。
4時とか5時。大体ぼんやり起きてる時間。ああ、また今日がやってきたって目を開けても、目の前に起きてる現実にどん底になっている時間。起きてるけど寝てる。本当に寝れたらどんなに楽だろう。身体がここに在るのに、どこにもいけないままここにいる。まるで時間に張り付いてしまったような感じ。

朝陽だ。無理やり私をベッドから剥がしてくれた。テコの散歩へ行こう。

あ、メールが来てたんだ。歩きながら開いた。
直ぐにわかった。この子、私を一生懸命に救おうとしてる。

文章が沢山詰まったメールだった。メールの最後にモラハラリストと記載されたものがついている。慌てないよう、ゆっくりと落ち着いて読むようにした。何回も読み直す。リストを何回もやってみる。何回も繰り返したけど、全部そうだった。モラハラって何の事なのかよくわからなかったけど、モラハラリストを読む限り、私という妻はモラハラ被害者だった。

今しかないって思って送ってくれたんだろう。そんな感じだった。前に少しだけ夫の事をぽろっと話した事がある。彼女はずっと気にかけててくれたのかもしれない。丁寧にモラハラっていうそれについて教えてくれた。googleでモラハラっていうのを調べたけど、沢山読んだけどいまいちわからない。だけど、事象だけつまめば夫の私への行為は完璧にモラハラだった。よくわからない。これは弱い夫の心の叫びが溢れちゃっただけの事で、それを受け止める事が妻である私の役目なんじゃなかったのかな。私達だけ、家庭だけの秘密が明るみに出ようとしてる。姉が最近ずっと言ってた。「ねぇ、よしみ。聞いて。これって犯罪なんだよ?」って。アメリカではそういう言い方をするんだってずっと思ってた。アメリカ人は直ぐに裁判したがるからって。

今日の撮影。写真を撮れて、すごく楽しかった。
気分が大分落ち着いてる。大丈夫な気がしてる。

夕飯

和食 16.9,2020

何だか疲れた。寝よう。さっさと今日は終わらそう、夕飯を食べて。


夕飯

鯵のたたきとカボスと大蒜醤油
茎若芽
糠漬け
納豆しじみと若芽のお味噌汁
ご飯

水餃子

中華 15.9,2020

「今夜は何が食べたい?」「水餃子が食べたい!」やっちゃんからのリクエスト。オオゼキに売ってる関谷城南食品の厚皮で水餃子と、成城石井に売ってる八幡製麺の皮で焼き餃子、やっちゃんと言えばきのこ!って思って、あわび茸、しめじ、椎茸のきのこ汁を作る。仕事帰りのやっちゃんがビールを持って家にやってきた。やーっぱり食卓はいい。食卓に当たる光ってまるでスポットライトみたい。綺麗、本当に綺麗!

今までの事を整理しようって、ようやく気持ちが少し落ち着いてきたから、ここ数日まとめてる。アルコールで記録してた大変な事だとか、暴れた日の事だとか、いろいろ、何千日の中の一部。一部以外は思い出したく無いから記録されずに記憶から自然と消されていった。だけどそれはもう追いかけない。数日前に兄が言ってた言葉が引っかかってる。「それ、モラハラじゃん!」モラハラって何??夫はアルコールの病気なんじゃないの?

夫の最後のセリフはいつも同じ。散々な事をやらかした後に言い放つ。「俺の言う事を聞かないなら離婚でいい!」何十回と言われてきた。話し合いなんて皆無。不倫されてる方がよっぽど楽だろうって何度も思った。その方が理解ができる。だけど、もしかして、これがモラハラなのかな。そう思った途端に自分が可哀想になってしまった。夫の言う事を聞くのは妻の役目だと思っていたけれど、それは本当に私の愛情だったのかな。それは夫の何だったのかな。わからない。だけど、もう悲しんじゃいけないんだ。わからない事はわかる人に聞いて助けてもらおう。これ以上悲しんだってきっともう意味が無い。もう飽きた。こんな世界、もう飽きた。スポットライトの下で一緒に笑う世界がいい。人生は何があるか本当にわからない。だけど何があっても人のせいにしない。何だか今日そう決めた。


今夜の献立

小松菜と海老の水餃子
白菜と豚肉と木耳の焼き餃子
ズッキーニの塩麹と檸檬和え
もろきゅう
きのこ汁
ご飯

茄子の味噌炒め

中華 14.9,2020

悲しい唄を悲しくない時に聞くと気持ちがいい。
サムスミスが好き。「サムスミスってゲイなの?」サムスミスを知ったばかりの時に、何となく姉に聞いたら「どうみたってゲイでしょ。」って。男が男っぽく悲しい唄を歌うんじゃなくって、男の声で女みたいに悲しい唄を歌うのがすごく心地がいい。女が悲しい唄を歌うのは辛い。だからサムスミスがすごく好き。

やっぱり夫が好きだと思う。最低な事を散々されたけれど嫌いになる事は出来ない。それに、夫が最低な事をするのを止められなかったのは私のせいな気がした。それは夫が本当に弱い人間だっていうのを知ってるから。俳優の伊勢谷さんが逮捕された事件を見て思った。伊勢谷さんのニュースを見れば見るほどに、まるで夫みたいな人だった。弱い人間である事は悪くない。弱い事を知っていて、助けてあげない方がよっぽど悪い。きっとそう。もし、側にいたら助けてあげればいい。怖いのはみんな同じなんだから。この人は普通じゃないって事が側にいればわかる。

夫は荷物を全て持って出て行った。話は出来ない。同じ言葉だけを言ってる。「俺の言う通りにしろ!好きにやらせろ!酒もやめないし、嫌なら離婚でいい。」お酒が始まった途端にそんな事を急に言われても、簡単に離婚を選べない。私達はたったの数ヶ月前、いつもの食卓を囲んでた。2年前の酒乱を乗り越えて、夫の両親とも話し合って、お酒を止めると約束した。夫婦としてここからがスタートだと思っていた矢先だった。

毎日にまだ私は迷子になってる。夫に会いたい。だけど怖い。
夫の影の無い家が少し心地が良い気もしてる。汚れないトイレ、溜まらない洗濯物、深夜の静寂。多分、夫の為に使ってきた時間が余りに多すぎた。寂しい。

2年前に相談してた大人たちが、2年前と同じ事を言ってる。「自分の人生なのだから、幸せになってほしい。」って。テコと私だけになったこの部屋が少しだけ好きになれそうな気がしてる。毎日がどんどんと更新されていく。どこでもいいから、明るいところへ行きたい。

オムレツサンドウィッチ

パン 13.9,2020

久しぶりに明日はサンドウィッチにしよう!前日の夜にそう決めていた。夫は私のサンドウィッチを嬉しそうに食べてたな。本当によく作った。夏は冷えたサンドウィッチが寝起きに最高。だから、朝一番で作って置いて、冷蔵庫で冷やしておく。レタスや胡瓜を挟んだシャキシャキの野菜ハムサンドと卵サンド。トマトを挟んでも美味しい。マスタードマヨにしても美味しい。余ったら冷蔵庫に入れて夕方のおやつにしても美味しい。家の前の人がベランダでパーティみたいのをしてる。うるさい。だけど、わいわいした声は悪くない。わいわいと食事がしたい。家族や友人やみんなで同じテーブルを囲むような。そういう食卓が好きだから。

オムレツサンドウィッチ
食パン 2枚
チーズ
卵 2個

山形のだし

和食 12.9,2020

昨日から人生をお休みする事に決めた。お休みって言っても、特に何かするわけじゃない。ただ、もう頑張るのが疲れた。考えるのも疲れた。何もしたく無い。心も身体も衰弱しきってる。午後に会ったアカリちゃんに伝えた。「ちょっとお休みしようと思う。全部。写真も料理も。ぜーんぶを。」

ずっとずっとわかってたけど、頑張るのをやめられなかった。夫の酒乱に気づいたのは4月のいつか。夜22時を過ぎた頃、アカリちゃんに連絡をしようと携帯を取った。身体が硬直してる。血の気が引いていくのがわかる。「もしもし?どうしたの?」声を聞いてほっとしたのと同時に、声が失くなった。「助けて」と言いたいけど、声が出ない。喉の奥にぐっと閉じ込められた声が止まってる。

あの夜から。あれが始まりだった。
そして、2年前のトラウマも私をぎゅっと掴んで離してくれなかった。

人生をお休みすると決めて今日で2日目。お休みしたって結局憂鬱。とにかく休もう。ベッドに横たわると、いつしか寝ていた。大きな問題があるのだけど、今すぐに夫に連絡してあげなきゃっていう夢を見た。目覚めて、ぼんやりとする。現実がどっちかわからなくなる。ああ、夢。夫に会えた気がしてほっとした。

夕方、編集の仕事をしてる栗さんの紹介で料理写真家の梶原さんっていう方に写真を見てもらう約束をしていた。ポートフォリオを持って市ヶ谷の方にある事務所へ向かう。出会った瞬間、マスク越しでも優しい笑顔が溢れてるのがわかった。一枚一枚ゆっくり写真を見て、話をしてくれて、私の話も沢山聞いてくれる。嬉しい。すごく嬉しい。写真を沢山褒めてくれた。もう辺りは真っ暗だったけれど、いつもの怖い夜じゃない。御礼を言って事務所を出て駅まで歩く。やっぱり人生をお休みするのはやめる。

「あなたは広告じゃなくって、あなたの写真を撮った方がいい。残念だけど僕から紹介出来る仕事は無いよ。あなたの写真を見て、すごく写真が撮りたくなったよ。」

世界に突然嫌われてしまった毎日に、一人ぼっちになって信じるものが失くなってしまった毎日に、写真が私を救おうとしてる。どんな日だって料理も写真もやめない。今日もご飯を作って、写真を撮ろう。続ける事をやめたくない。

やっちゃんのレシピ、山形のだし
きゅうり、茄子、みょうが、大葉をみじん切り
お好みで鰹節や切り昆布
味付けは麺つゆ又は味どうらくの里などの出汁醤油で。

9月11日

Journal 11.9,2020

三茶の病院へ行くまでの10分、246を歩きながら姉と電話で話す。ここ数日、姉に電話が出来なかった。話をしたかったけれど、したくなかった。姉に言ったら現実になっちゃう。声は聞きたかったけれど、出来なかった。

話を一通り聞いた姉は穏やかだ。いつもは私よりも声を荒げて怒るのに今日は違う。優しくて落ち着いた声で言った。「あのさ、とりあえず離婚とかいいから、もう頑張らないでいい。とにかく休もう。」涙がどっと溢れた。暑い太陽の下でしくしくと泣いた。

もう私、頑張らなくっていいんだ。そっか。
うん。わかった。人生をお休みしよう。
もう全部お休み。とにかく、お休みする。

朝食

Journal 10.9,2020

夜の22時。デスクにいる。
健康診断で引っかかった胃ガン再検査が気になってる。父は胃ガンだった。まさこおばちゃんは乳ガンで40歳を過ぎた頃に亡くなった。今夜ははキッチンじゃなくってミントティーを持ってここに座ってる。外は雨。音楽はStevie WonderのOverjoyedがリビングから。 明日、料理王国の副編集長浅井さんと、ライスプレスの成田さんに、パドラーズで作品を見てくださいってお願いしていて、準備してる。eat LOVEっていう作品。男と男のカップルの食卓。料理は彼氏の伊藤通洋さん。それを私が撮る。そして彼氏の野村浩平さんの文章を書く。

プリントはずっとまとめていたんだけど、文章は久しぶりに読んだ。読んでなかった文章も読んだ。ごめんなさい。文章読むのが苦手だから読んでるようで読んでなかった。思ったよりも自分の事が書いてあってびっくりする。それにしたって野村さんの文章は素直で可愛くて、ぎゅっと胸を掴まれる。ぎゅって。とっても柔らかく、ぎゅっと。冷えた身体が温まってくような。

2年前の夫の酒乱の時期、彼らが私を救ってくれたんだった。彼らの食卓で温かい食事を食べ、ほっと安堵して家路に着く。それを何度も何度も繰り返した。作品を撮るプロジェクトで通っていたのだけど、彼らの食卓に私は愛を食べに通った。eat LOVEのタイトルの通り、私はあの場所へ愛を食べに行った。そんな事をふいに思い出したら、何だか気づいた。

さっきまで泣いていた。そのちょっと前も泣いた。哀しくて哀しくて仕方ない。急にそれがやってきて、家でも街でもスーパーでも写真を撮っていても人と話していても急に来て急に去っていく。eat LOVEをまとめていたら、私が今やる事は悲しむ事じゃないかもしれないって思った。

生きていると辛い事が結構ある。小さい事から大きい事まで。時にはあまりに大きすぎて前へ進めなかったりして、だけど、そんな事に構っていたら前へは進めない。私にはあの時にたっぷり補充した愛がある。大好きなふたり。大好きな作品、eat LOVE。作品が私を助けてくれる。作品をまとめながら思う。私を救ってくれたように、誰かの事を助ける作品になって欲しい。

朝食
目玉焼きと醤油マヨご飯
あかりちゃんにもらった梨
ほうじ茶